- 作成日 : 2025年12月24日
全日とは?全宅との違いや保証協会の加入メリット・加入の流れを解説
全日本不動産協会(全日)は、宅地建物取引業者が加盟する全国組織の業界団体です。内閣総理大臣の公益認定を受けた公益社団法人として、宅建業者の健全な事業運営と消費者保護を目的に幅広い事業を展開しています。法令遵守のための研修や相談窓口、会員向け物件情報サイト「ラビーネット」の運営などを通じて、不動産取引の安全性と信頼性を高めている団体です。
当記事では、全日の特徴を整理しつつ、全宅との違いや加入メリット、入会手続きの流れを解説します。
目次
不動産保証協会とは?
不動産保証協会とは、宅地建物取引業法第64条の2に基づいて設立された公益社団法人で、宅地建物取引業者(宅建業者)が社員として加入する保証団体です。宅建業者が営業保証金を供託する代わりに、弁済業務保証金分担金を納めて加入することで、万一の取引トラブルに備える仕組みを整えています。
消費者が不動産取引で損害を受けた際には、弁済業務保証金から弁済を行う制度が設けられており、被害の迅速な救済を実現します。また、苦情相談や紛争解決の支援、会員に対する研修・指導、手付金等保全制度の提供などを通じて、不動産取引の安全性向上に取り組んでいます。
不動産保証協会の役割
不動産保証協会の主な役割は、不動産取引における安全性と信頼性の確保です。まず、宅建業者が取引上の債務を履行できない場合に備え、弁済業務保証金制度を運用して消費者の損害を弁済します。また、取引に関する苦情や紛争が生じた際には、専門の相談員が公正な立場で調停を行い、トラブルの早期解決を図ります。
さらに、会員に対しては法令遵守や業務改善のための研修・指導を実施し、不動産業界全体の健全化に寄与しています。加えて、消費者向けの情報発信や注意喚起を行うことで、安心して不動産取引ができる社会環境の整備を推進しています。
全日(公益社団法人 全日本不動産協会)とは?
公益社団法人全日本不動産協会(略称:全日)は、1952年に設立された日本有数の歴史ある不動産業界団体の1つです。内閣総理大臣の認可を受けた公益社団法人として、業界の適正な発展と消費者保護を目的に活動しています。全国47都道府県に地方本部を構え、数万社規模の宅地建物取引業者が会員として加盟しており、全国的なネットワークを形成しています。
全日は、法令遵守の徹底や業務品質向上を目的とした研修・講習の実施、苦情や紛争への相談対応、業界倫理の向上に努めている団体です。また、不動産保証協会と緊密に連携し、取引における弁済制度を通じて消費者の利益を守る体制を整備しています。さらに、物件情報を共有できる会員向け物件情報サイト『ラビーネット』を運営し、信頼性の高い不動産情報の提供を進めることで、業界の透明化と取引の安全性向上に取り組んでいます。
全宅(公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会)とは?
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(略称:全宅連)は、1967年に設立された不動産業界最大級の団体で、内閣総理大臣から公益社団法人としての認定を受けています。宅地建物取引業法の趣旨を踏まえ、会員である宅建業者に対して法令遵守や業務品質の向上を促し、安全で公正な不動産取引の推進を目的としています。全国47都道府県の宅建協会を会員組織とし、約10万社を超える業者が加盟している点が特徴です。
主な活動内容は、宅建業者への研修・教育、消費者からの苦情相談や紛争解決支援、業界に関する調査研究や政策提言などです。また、不動産保証協会と連携して弁済業務保証金制度を運用し、万一のトラブル時にも消費者が保護される仕組みを整備しています。さらに、物件情報ネットワーク「ハトマークサイト」を通じて、信頼性の高い不動産情報を一般に提供しています。
全日と全宅の違いは?
全日本不動産協会(全日)と全国宅地建物取引業協会連合会(全宅)は、いずれも宅地建物取引業に関わる公益社団法人です。ただし、宅地建物取引業法に団体として規定されているのは全宅連と各都道府県の宅地建物取引業協会です。
どちらも不動産取引の安全と信頼を守る役割を担っていますが、設立の経緯や組織構成、サポート内容に違いがあります。ここでは、その主な相違点を整理して解説します。
法的位置づけの違い
全日と全宅の法的位置づけの違いは、両者がいずれも内閣総理大臣認定の公益認定を受けた公益社団法人である一方、担当する役割や制度上の位置づけが異なる点にあります。
全日本不動産協会(全日)と全国宅地建物取引業協会連合会(全宅)はいずれも公益社団法人として不動産業界の健全化を目的に活動していますが、制度上は別個の団体です。全日は宅建業者の業務支援や研修、苦情対応などを中心に行う業界団体であり、全宅は47都道府県の宅建協会を束ねる連合会組織として、広域的な調査研究や政策提言を担う役割が強いのが特徴です。両者は法令上の権限を持つ行政機関ではなく、宅建業法の枠組みを踏まえて自主的に業界の質向上を促す位置づけにあります。
加入費用の違い
加入費用は、一般的に全宅(ハトマーク)のほうが全日(ウサギマーク)より高くなる傾向にあります。両団体とも加入時には協会の入会金・年会費に加えて、それぞれ対応する不動産保証協会への加入費用が必要ですが、全宅は「都道府県宅建協会」を母体とするため、各協会の入会金設定が高めに構えられている地域が多いことが費用差につながっています。一方、全日は独立した協会として運営されており、入会金や年会費が比較的抑えられている地域が多いため、初期費用全体では全宅より低い水準になりやすい構造です。
ただし、どちらの団体でも不動産保証協会の弁済業務保証金分担金は同額であるため、差が生じる部分は主に協会本体の入会金・会費の設定によるものと理解しておくとよいでしょう。
組織体制の違い
全日と全宅の組織体制の違いは、全日が「全国一体型」、全宅が「連合会型」の構造を採っている点にあります。全日は全国本部を中心に、47都道府県の地方本部が本部方針に沿って運営される一体型の組織です。意思決定や基本方針が本部で整理されるため、研修や啓発活動などを全国で統一的に実施しやすい体制が整っています。
一方、全宅は全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)の下に、47都道府県の宅建協会が加盟する連合会型の組織体制です。都道府県協会には一定の裁量が与えられており、地域の行政・企業との連携、地域事情に合わせた独自の事業やサービスを展開しやすい特徴があります。このように、全日は全国規模での制度設計や統一的な運営に強みがあり、全宅は地域密着型の活動や地域特性を踏まえた柔軟な取り組みに強みがある点が両者の違いです。
会員サポートの違い
全日と全宅はどちらも研修や相談窓口などの会員サポートを行いますが、全日の会員サポートは全国統一型、全宅の会員サポートは地域密着型という違いがあります。
全日は全国共通カリキュラムによる法改正対応セミナーや実務研修、トラブル相談、紛争解決支援を軸に、物件情報サイト「ラビーネット」での集客支援も行うなど、全国一律のサービスが中心です。
一方、全宅は各都道府県協会が主体となり、地域事情に即した勉強会や行政との合同セミナー、地場事業者向けの個別相談を展開し、「ハトマークサイト」を通じて地域密着型の情報発信を強化しています。全国的な一体感を重視するなら全日、地域密着のきめ細かな支援を求めるなら全宅が向いていると言えます。
不動産保証協会に加入するメリットは?
不動産保証協会に加入すると、営業保証金の供託負担が軽くなるだけでなく、経営や実務に役立つさまざまなサポートを受けられます。さらに、重要な物件情報ネットワークであるレインズの利用にもつながります。ここでは、その主なメリットを解説します。
営業保証金の供託義務が免除される
不動産保証協会に加入する大きなメリットは、営業保証金1,000万円(主たる事務所の場合)を供託する義務が免除される点です。宅地建物取引業者は、本来、営業開始前に主たる事務所1,000万円・従たる事務所ごとに500万円の営業保証金を供託する必要がありますが、不動産保証協会に加入し、弁済業務保証金分担金(主たる事務所60万円、従たる事務所1か所につき30万円)を納付することで、供託に代えて同等の保護制度に加入できます。
これにより、開業時の資金負担を大きく抑えつつ、万一のトラブル時には協会の弁済制度により取引相手が保護される仕組みを利用できるため、「資金面のハードルを下げつつ、消費者保護制度を確保できる」ことが大きな利点です。
経営サポートを受けられる
不動産保証協会に加入すると、法令遵守・実務運営を中心とした各種サポートを受けられます。たとえば、宅建業法や関連法令の改正情報、実務上の留意点を解説する研修・セミナー、トラブル事例の共有などを通じて、法令遵守とリスク管理をサポートしてもらえます。
また、消費者からの苦情・紛争に関する相談窓口や双方からの事情聴取や調停の場を設ける仕組みが整備されており、中小事業者でも専門的な助言を受けながら問題解決を図ることが可能です。協会会員であること自体が一定の安心材料として評価される場合もあり、対外的な信頼性向上や営業面でのプラス効果も期待できます。
レインズを利用できる
不動産保証協会に加入すると営業保証金の供託が免除され、宅建業者として開業する際に開業資金を大きく軽減できます。宅建業者になればREINS(Real Estate Information Network System)を利用することが可能です。レインズは、宅建業者だけが利用できる不動産情報ネットワークで、全国の会員業者が登録した物件情報を相互に閲覧できます。専任・専属専任媒介物件の登録義務により情報が集約されるため、豊富な物件の中から顧客ニーズに合うものを探しやすくなり、取引のスピードアップにもつながります。
成約事例や価格帯データから市場動向を把握できるため、適正な価格設定や根拠ある提案がしやすくなり、業務効率化と顧客満足度の向上の両面で大きく貢献します。
全日に入会するまでの流れ
全日に入会するまでの基本的な流れは、「宅建業免許の申請」と「協会への入会手続き」を並行して進める形になります。以下で表にまとめました。
| 1. 開業準備 | 会社設立(または個人開業)の準備、事務所の確保、専任宅地建物取引士の選任など、宅建業免許申請の前提条件を整える。 |
|---|---|
| 2. 宅建業免許の申請 | 管轄の都道府県知事または国土交通大臣宛てに宅建業免許を申請する。全日の入会手続きとは並行して進めることが多い。 |
| 3. 全日・不動産保証協会への入会申込 | 全日本不動産協会(全日)の都道府県本部や支部に連絡し、入会申込書類一式の交付を受け、申込書を提出する。 |
| 4. 書類審査・事務所調査 | 提出書類の内容確認に加え、事務所の使用実態や標識掲示、応接スペースなどが協会担当者によって調査される。 |
| 5. 入会承認・費用納付 | 入会が承認されたら、入会金・年会費・弁済業務保証金分担金など、指定された費用を期限内に支払う。 |
| 6. 供託・行政への届出 | 不動産保証協会が弁済業務保証金を法務局に供託し、その旨を免許権者に届出。営業保証金の代替措置が整う。 |
| 7. 営業開始 | 免許証の交付と協会入会手続きが完了したら、宅建業としての営業を正式に開始できる。 |
全日に入会するのに必要な書類
全日に入会する際は、協会所定の申込書類に加えて、免許や事務所に関する基本的な公的書類をそろえる必要があります。細かな様式や必要部数は、加入を希望する都道府県本部・支部によって異なるため、下記の一覧を目安としつつ、最終的には必ず最新の案内を確認しましょう。
| 区分 | 必要書類の例 |
|---|---|
| 協会指定書類 |
|
| 事業者共通 |
|
| 法人の場合 |
|
| 個人の場合 |
|
| 必要に応じて | 営業保証金供託書の写し など |
不動産保証協会と業界団体で安心な不動産取引環境を整える
不動産保証協会と全日・全宅は、不動産取引の安全と消費者保護を支える団体です。営業保証金の代替となる弁済制度や苦情・紛争対応、研修を通じて業界の健全化を推進します。全日は全国統一型、全宅は地域密着型という違いがあり、加入により法令遵守や実務運営を中心としたサポートも受けられます。宅建業者になることにより、レインズの利用も可能です。
開業時は宅建業免許申請と並行して全日などに入会し、所定の申込書や免許関係書類、事務所の情報などを整える流れが一般的です。費用や必要書類の詳細は都道府県本部ごとに異なるため、最新情報の確認が欠かせません。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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