- 作成日 : 2025年12月24日
家賃はクレジットカード払いできる?借主・管理側のメリットを解説
家賃のクレジットカード払いは、入居者の利便性向上と管理業務の効率化を両立できる決済手段として注目されています。
支払い忘れの防止やポイント付与などのメリットが借主に支持される一方で、管理側にとっても入金消込の自動化や滞納リスクの軽減といった効果が期待できます。ただし、加盟店手数料の負担者や入金サイトの違いなど、導入前に知っておきたい注意点も存在します。
当記事では、導入方式ごとの特徴、運用上の注意点、費用構造の違いについて分かりやすく解説します。
目次
家賃のクレジットカード払いはできる?
家賃は、管理会社やオーナーが家賃決済サービスを導入することでクレジットカード払いに対応できます。近年は保証会社や決済代行会社が提供する継続課金システムが普及し、居住用・事業用問わずカード決済を採用する物件が増えていますが、対応している物件のみ可能です。入居者の利便性向上だけでなく、管理実務の効率化にもつながるため、賃貸管理における新しい集金方法の選択肢として注目されています。
借主のメリット
家賃をクレジットカードで支払う最大の利点は、支払管理のしやすさです。カード会社の締め日や引落日を活用することで、給与日とのズレを調整しやすく、毎月の家計管理がスムーズになります。また、決済額に応じてポイントやマイルが付与される場合があり、日常の支払いと同じ感覚で家賃分のポイントを積み上げられます。
さらに、自動決済で手続きが完結するため、銀行振込のように毎月操作をする必要がありません。スマートフォンから申込や変更ができるサービスも多く、転勤や引越しに伴う手続きがスムーズになる点も評価されています。
管理側のメリット
管理会社やオーナーにとっても、クレジットカード払いには多くのメリットがあります。
特に効果が大きいのが、入金管理の効率化です。決済代行会社や保証会社のシステムと連携することで、入金消込作業を自動化し、振込明細の照合や記入ミスの確認といった手作業を大幅に削減できます。
また、決済状況を画面上で即時に確認できるため、物件ごとの入金遅れを早期に把握でき、督促の優先順位も付けやすくなります。保証会社と連動する仕組みを選べば、滞納時の立替や回収フローを一本化でき、管理実務のリスク軽減にもつながります。
さらに、初期費用のカード決済にも対応できるサービスでは、遠方の入居者とも非対面で手続きを完結させることができ、鍵渡しまでの流れをスムーズに進められます。入居開始時のスピードが上がることで、空室期間の短縮にもつながるでしょう。
利用時の注意点
家賃のクレジットカード払いを導入する際は、事前のルール整備が大切です。
まず、加盟店手数料の負担者を明確にしておく必要があります。クレジットカード会社の加盟店規約上は手数料そのものを入居者に転嫁することが原則認められていないため、オーナー負担とするのが一般的です。借主に関連費用を負担させる場合はカード会社や決済サービスの規約を確認した上で、その内容を契約書や重要事項説明で明示し、誤解が生じないようにすることが欠かせません。
また、カード決済は売上計上からオーナーへの入金までに数日~数週間のタイムラグが発生するため、入金サイト(入金時期)の確認も必ず行いましょう。
セキュリティ面では、カード情報を管理会社側で保持しない仕組みを採用し、PCI DSSなどの基準を満たした決済会社を利用することが安全性の確保につながります。また、カード利用枠の不足によって初期費用や家賃が決済できないケースもあるため、複数回の分割請求や、口座振替・振込など代替手段の用意が求められます。
サービス導入前に利用可能ブランドや注意事項を整理し、入居者へ正確に案内することで、トラブルを防ぎつつ円滑な運用が可能です。
クレジットカード払いの導入ルートの比較
家賃のクレジットカード決済は、導入ルートによって手数料・入金スピード・管理工数が大きく変わります。代表的な方式は「自社加盟店型」「保証会社連動型」「代行アプリ型」の3種類で、それぞれ仕組みや管理負担が異なります。
ここでは、管理会社やオーナーが導入判断をしやすいように、それぞれの特徴と注意点を解説します。
自社加盟店型
自社加盟店型は、管理会社やオーナーがカード会社または決済代行会社と直接加盟店契約を結び、自ら家賃決済を処理する方式です。最大の特徴は、決済ルールや入金条件を比較的自由に設計できる点です。毎月の売上計上から送金までの流れを自社で把握しやすく、ブランドごとの手数料率も交渉できます。
ただし、加盟店審査が必要で、カード情報を扱う場合はPCI DSS(クレジットカード業界の国際セキュリティ基準)の安全基準に対応した環境が求められるため、情報管理の体制整備が必須です。システム連携も自社で構築する必要があり、導入初期のコストや内部管理の負担が増える点には注意しておきましょう。
また、カードの有効期限切れや利用枠不足で決済が失敗した場合は、管理会社・オーナーが入居者へ連絡し、別の支払い方法への切り替えを依頼する対応が必要です。
ただ、長期的には手数料を抑えられる傾向があるため、一定規模の管理戸数を持つ会社に適した方式と言えます。
保証会社連動型
保証会社連動型は、家賃保証会社が提供するクレジットカード決済サービスを利用する方式です。特徴は、滞納保証とカード決済が一体化しており、管理会社の未収リスクを軽減しながら決済を運用できる点です。入居者がカードで家賃を支払えなかった場合、保証会社が管理会社(オーナー)へ家賃を立替し、入居者へ請求を行うため、管理側は決済失敗の処理や督促対応に追われにくく、事務負担を抑えられます。
また、初期費用から毎月の家賃までまとめて決済できる仕組みが整っている場合もあり、遠方の入居者や法人契約でも申し込みがスムーズです。入金サイトは保証会社の締め日に準じて一定化されるため、入金管理が安定しやすくなります。
一方、手数料は自社加盟店型より高めに設定される傾向があり、保証会社のサービス体系に依存する点がデメリットです。管理工数を最小限にしながら安定した入金を確保したい場合に適しています。
代行アプリ型
代行アプリ型は、入居者が専用アプリからカード決済を行い、決済代行会社が集金・送金までを一括で処理する方式です。管理会社やオーナーはカード契約を直接持つ必要がなく、アプリ事業者が加盟店となるため、導入のハードルが最も低い点が特徴です。入居者はアプリ上で家賃を支払い、管理側には決済済みデータが自動で連携されるため、消込作業の効率化にもつながります。
また、アプリにはチャット連絡、請求書発行、電子領収書などの機能が備わっている場合が多く、管理会社の事務作業を包括的に簡略化できます。入金サイトはサービスにより異なりますが、固定サイクルでの送金が一般的です。
管理会社(オーナー)の費用負担はゼロで、入居者にQRコードを案内するだけで事足ります。
ただし、入居者が負担する手数料率は比較的高め(例:賃料の5.5%)です。決済失敗時の対応フローもアプリ事業者の仕様に依存します。柔軟性は低いものの、導入スピードと手間の少なさを重視する管理会社に適した方式です。
家賃をクレジットカード払いする場合の費用と入金のポイント
家賃のカード決済を導入すると、手数料の負担や入金タイミングの違いが発生します。特に管理会社やオーナーは、費用構造・送金サイクル・既存の口座振替との違いを正しく理解しておくことが大切です。
ここでは、導入時に押さえておきたい手数料相場や入金サイト、他方式との比較ポイントを解説します。
加盟店手数料の相場
クレジットカード払いを導入する際に最も気になるのが加盟店手数料です。家賃決済の場合、相場は一般的に「2.5~4.0%」程度で、採用する決済ルートによって幅があります。自社加盟店型はブランド別に交渉できるため比較的低めに設定されやすく、代行アプリ型や保証会社連動型はサービス利用料が上乗せされる分、高めになる傾向があります。
また、初期費用・月額固定費が別途必要なサービスも存在するため、単純に「手数料率だけ」で判断するのは危険です。さらに、手数料負担の方法については、貸主負担を基本としつつ、クレジットカード会社の加盟店規約や決済サービスの条件に抵触しない範囲で契約上の合意内容を明確にし、重要事項説明や契約条項を整備することが不可欠です。
入金サイトの違い
クレジットカード払いは、売上計上からオーナーへの入金までに一定のタイムラグが発生します。一般的には「翌月10日払い」「月2回払い」「早期振込オプションあり」など、決済代行会社や保証会社によって送金スケジュールが異なるのが一般的です。。管理側はこのサイクルを把握しておかないと、オーナーへの送金日にズレが生じる可能性があります。
初期費用だけは即日~数日で送金される方式もありますが、基本的に毎月の家賃は固定サイクルでまとめて送金されるケースが多く見受けられます。
口座振替との比較
口座振替と比べると、クレジットカード払いは利便性が高い一方で、費用構造と入金サイクルが大きく異なります。口座振替の手数料は1件あたり数十~数百円と低額で、月末締め・翌月初旬振替などのサイクルが安定しています。管理会社は入金のバラつきが少なく、送金計画が立てやすい点が強みです。
一方、クレジットカード払いは加盟店手数料が数%と高めで、入金までの期間も方式によって変動します。ただし、決済成功率が高く、夜間・休日でも決済が完了するため、入居者の利便性向上や督促減少の効果が期待できます。また、初期費用をオンラインで支払える点や、非対面契約との相性が良い点はカード払いならではの強みです。
選択にあたっては「コストを抑えるか」「利便性や業務効率を優先するか」という観点が大切です。
クレジットカード以外の家賃の支払い手段の選択肢は?
家賃の支払い方法はクレジットカード以外にも複数存在するので、物件の管理方針や入居者の属性に応じて最適な方式を選ぶことが大切です。ここでは代表的な2つの支払い手段の特徴と注意点を解説します。
口座振替
口座振替は、家賃支払い方法の中でも最も安定した方式として多くの管理会社が採用しています。最大の特徴は、手数料が数十~数百円と低く、クレジットカード決済に比べて運用コストを大幅に抑えられる点です。また、入居者にとっても「一度申込をすれば毎月自動で支払われる」という安心感があり、支払い忘れのリスクが低い点は大きなメリットです。
ただし、引落口座に残高が足りない場合は再振替が必要となることがあり、その際の手続きや督促対応は管理会社側の負担になります。さらに、申込書の記入や印鑑の押印が必要な金融機関もあるため、完全非対面契約との相性はカード決済より劣ることがあります。
振込・コンビニ払い
振込やコンビニ払いは、入居者の事情に合わせて柔軟に支払い方法を選べる手段として利用されています。銀行振込では、入居者が毎月自由なタイミングで支払えるため、口座振替に抵抗がある人や、短期契約者・法人契約者に向いている方式です。ただし、管理会社側は振込名義や金額の確認が必要で、消込作業に時間がかかる点が課題となります。
コンビニ払いは、夜間や休日でも支払える利便性の高さが特徴で、若年層の入居者やネットバンキングを使わない人に選ばれやすい方式です。収納代行を利用するため、管理側は入金データをまとめて受け取れますが、手数料は1件ごとに発生し、カード決済よりは低いものの、口座振替よりは高めです。また、支払期限を過ぎた場合に払込票が無効になるなど、運用上の注意点もあります。振込手数料は入居者負担が一般的です。
運用の柔軟性とコストのバランスを踏まえて導入を検討することが求められます。
利便性と効率化を両立する家賃のクレジットカード決済
家賃のクレジットカード払いは、利便性の向上と入金管理の効率化を同時に実現できる決済手段です。借主にとっては支払い管理の容易さやポイント付与が魅力となり、管理会社やオーナーにとっては入金消込の自動化や督促負担の軽減が期待できます。
一方で、手数料負担の明確化や入金サイクルの把握、セキュリティ基準を満たした決済会社の選定など、導入前に確認すべき運用条件も多くあります。導入ルートによって費用・事務負担・柔軟性が大きく異なるため、自社の管理体制や物件規模に合わせた選択を行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
供託金とは?不動産開業に必要な金額・種類・手続きを解説
宅地建物取引業を開業する際に耳にする「供託金」という言葉。具体的にどのような制度で、なぜ必要なのかご存知でしょうか。供託金とは、事業者が法律の規定に基づき、国が管理する供託所に預ける金銭のことです。特に宅地建物取引業においては、消費者を保護…
詳しくみる不動産のAMとPMとは?役割や違い、密接な関係性を徹底解説
不動産業界で頻繁に耳にする「AM」や「PM」という言葉。これは不動産投資の成否を左右する重要な専門業務、AM(アセットマネジメント)とPM(プロパティマネジメント)を指します。 この記事では、AMとPMそれぞれの役割や業務内容、明確な違い、…
詳しくみる不動産AM(アセットマネジメント)とは?仕事内容から事業の始め方まで徹底解説
不動産AM事業の開業を目指す方へ。「AM(アセットマネジメント)」を正しく理解していますか?本記事では、不動産におけるAMについて徹底解説しています。PM・BMとの違いから仕事内容、必要な法律や事業の始め方まで、不動産AMのプロになるための…
詳しくみる【オーナー向け】家賃滞納の対応方法・予防方法は?回収時の注意点も
家賃滞納は、賃貸経営における代表的なリスクであり、発生後の対応が遅れるほど回収が難しくなる傾向があります。支払い忘れのような軽度のケースから、事故・病気による収入減、慢性的な資金不足、さらには支払意思の欠如といった悪質事案まで、滞納の背景は…
詳しくみる不動産におけるリーシングとは?プロに依頼するメリットや流れを解説
賃貸用不動産の収益を安定させる上で、リーシングは単なる空室埋めではなく、市場調査からターゲット設定、募集戦略の設計、仲介会社への展開、内見対応、条件交渉、契約までを包括的に管理する専門的な業務です。不動産の稼働率と賃料水準は収益に直結するた…
詳しくみる管理業務主任者とは?仕事内容から設置の役割、資格取得についてまで徹底解説
マンションでの快適な暮らしを支える専門家、「管理業務主任者」という国家資格をご存知でしょうか。不動産管理会社に欠かせない存在で、安定した需要が見込めることから注目されています。 本記事では「管理業務主任者とは?」という基本から、混合されがち…
詳しくみる