節税に関する実態調査
作成日:2026年6月19日
1. 調査概要
本レポートは、法人の新規設立(または個人事業からの法人化)に際して、税金対策の検討や税務・会計上の初期設定などの実務に携わった経験を持つ担当者を対象に実施した調査結果をまとめたものです。法人化による節税効果の実感や実際の節税額、実践している節税対策、税務面での不安要素、相談先の実態を明らかにし、自社の制度設計・運用改善にお役立ていただけます。
- 調査時期:2026年5月実施
- 調査対象:法人の新規設立(または個人事業からの法人化)に際して、税金対策の検討や税務・会計上の初期設定などの実務に「過去に携わったことがある」「現在携わっている」と回答した方
- 有効回答数:全回答者790名のうち、上記実務に携わった経験を持つ約7割(558名)
- 回答者属性:法人設立・法人化の実務経験を持つ担当者・経営層
2. 調査結果サマリー
4つのポイント
- 法人化による税金対策の効果は約65%が実感している一方、実際の年間節税額は約半数が100万円未満にとどまる
- 実践している節税対策は「赤字の繰越控除」「少額減価償却資産の特例」「経費範囲の拡大」など日常的・手続き的な項目が上位
- 法人化時の不安は「会計・経理処理の複雑化」が最多で、税金以外の業務の手間や周辺コストへの懸念が強い
- 新しい税金対策の相談先は「顧問税理士・会計士」が過半数を占めるが、インターネットや書籍に頼る層も一定数存在する
3. 調査結果の詳細
3-1. 法人設立・法人化に伴う税金対策等の実務経験
対象者780名に対し、法人の新規設立(または個人事業からの法人化)に際して、税金対策の検討や税務・会計上の初期設定などの実務に携わった経験を尋ねました。
- 過去に携わったことがある:40.1%
- 現在携わっている:31.4%
- 携わったことがない:26.3%
- わからない/答えられない:2.2%
「過去に携わったことがある」(40.1%)と「現在携わっている」(31.4%)を合わせ、約7割が実務経験を持っていることがわかりました。法人設立・法人化に伴う税務実務は、多くの担当者にとって身近な業務であるといえます。
3-2. 法人化による税金対策の効果実感
実務経験者等558名を対象に、法人として組織化したこと(または個人事業から法人化したこと)による税金対策の効果をどの程度実感しているかを尋ねました。
- ある程度実感している:45.3%
- あまり実感していない:23.7%
- 非常に実感している:20.1%
- 全く実感していない:5.9%
- わからない/答えられない:3.8%
- 設立(法人化)から間もないため、まだわからない:1.3%
「ある程度実感している」(45.3%)が最も多く、「非常に実感している」(20.1%)と合わせ、6割以上の層が効果を実感する結果となりました。法人化による税金対策には一定の手応えを感じている担当者が多数を占めています。
3-3. 法人化後に取り組んでいる節税対策(複数回答)
同じく558名を対象に、法人化したあとに取り組んでいる、または取り組んだことがある節税対策を尋ねました。
- 赤字の繰越控除(法人は最大10年)の活用:35.1%
- 30万円未満の備品・設備の一括経費計上(少額減価償却資産の特例):33.7%
- 経費にできる範囲の拡大(社宅・出張手当・福利厚生費・健康診断等):33.0%
- 消費税の免税期間の活用:29.2%
- 役員報酬の設定による所得の分散:28.0%
- 社会保険料の負担の最適化:24.6%
- 決算期における未払費用(賞与・社会保険料等)の計上:18.3%
- 経営セーフティ共済(倒産防止共済)や法人保険への加入:17.0%
- 設備投資に対する特別償却・税額控除(中小企業投資促進税制等):15.8%
- 家族への給与支給を通じた所得分散:15.4%
- 退職金制度を活用した節税:13.4%
- 特に取り組んでいるものはない:12.0%
- 家賃・保険料等の年払いによる短期前払費用の活用:10.9%
- 不良在庫や遊休資産の廃棄・売却による損金計上:8.6%
- わからない/答えられない:2.9%
- その他:0.7%
「赤字の繰越控除の活用」(35.1%)、「少額減価償却資産の特例による一括経費計上」(33.7%)、「経費にできる範囲の拡大」(33.0%)が上位を占めました。いずれも日常的・手続き的に取り組みやすい節税対策が中心であり、専門性の高い手法よりも実務で着手しやすい項目が選ばれる傾向がうかがえます。
3-4. 法人化による年間節税効果
対象者365名に対し、個人事業を続けていた場合と比べて、年間でおおよそどのくらいの節税効果があったと感じているかを尋ねました。
- わからない/答えられない:26.0%
- 50万円〜100万円未満:25.2%
- 50万円未満:24.1%
- 100万円〜300万円未満:14.0%
- 300万円〜500万円未満:5.8%
- 500万円以上:4.9%
「50万円〜100万円未満」(25.2%)と「50万円未満」(24.1%)がそれぞれ20%台で拮抗し、両者を合わせて約半数(49.3%)が100万円未満にとどまりました。効果は実感しているものの、実際の金額規模は比較的小さい層が中心であることがわかります。また「わからない/答えられない」も26.0%存在し、節税額を具体的に把握できていない層も一定数いることがうかがえます。
3-5. 法人設立・法人化時の税務面での不安要素
対象者558名に、法人を設立する(または個人事業から法人化する)際に税務面で最も不安に感じたことを尋ねました。
- 会計・経理処理が複雑になること:17.9%
- 特に不安はなかった:17.0%
- 社会保険料の負担が増えること:14.5%
- 法人税・法人住民税など税負担が増えないか:12.0%
- 税理士への報酬コスト:12.0%
- 税務調査を受けるリスク:10.0%
- わからない/答えられない:6.5%
- 役員報酬の設定(金額・タイミング)の判断:6.1%
- そもそも法人化すべきタイミングがわからなかった:3.9%
「会計・経理処理が複雑になること」(17.9%)が最多となりました。次いで「社会保険料の負担が増えること」(14.5%)、「法人税等の税負担増」(12.0%)、「税理士への報酬コスト」(12.0%)が挙げられており、税金そのものよりも、業務の手間や周辺コストへの懸念が強いことがうかがえます。
3-6. 新しい税金対策導入時の主な相談先
対象者558名に対し、新しい税金対策を導入する際の主な相談先を尋ねました。
- 顧問税理士・会計士:52.9%
- インターネットや書籍等の情報:13.1%
- わからない/答えられない:9.0%
- 社内の専門部署・担当者のみで判断:7.0%
- 商工会議所・法人会等の団体:6.5%
- 金融機関(銀行・信用金庫等):6.3%
- 親会社やグループ会社の担当部署:4.5%
- その他:0.9%
「顧問税理士・会計士」が52.9%と過半数を占め、専門家への依存度の高さが示されました。一方で「インターネットや書籍等の情報」に頼る層も13.1%存在しており、専門家に相談する前に自ら基礎知識を得ようとする層が一定数いることがうかがえます。
4. 調査結果から見える課題と対策
本調査の結果から、法人化に伴う税務対応において多くの担当者が直面する3つの課題と、その対策の方向性が浮かび上がりました。
課題①:節税効果の「実感」と「実額」のギャップ
約65%が節税効果を実感している一方、実際の年間節税額は約半数が100万円未満にとどまり、「わからない/答えられない」も26.0%存在します。効果への期待と実際の金額規模との間にギャップがあり、節税額を正確に把握できていない層も少なくありません。
対策の方向性:法人化によって実際に得られる節税額の現実的な相場感を提示しつつ、社会保険料や税理士費用といった追加コストも含めたトータルでの損益を可視化することで、過度な期待によるミスマッチを防ぎ、誠実な情報提供による信頼獲得につなげることが重要です。
課題②:節税以外の「業務の手間」と「周辺コスト」への不安
法人化時の不安として「会計・経理処理が複雑になること」(17.9%)が最多であり、社会保険料の負担増や税理士報酬コストといった、税金そのもの以外の懸念が上位を占めています。節税メリットだけでは解消されない不安が存在しています。
対策の方向性:節税ノウハウの提供にとどまらず、複雑化する経理業務をいかに簡単に解決するかというソリューション(会計ツール、バックオフィス代行、税理士紹介など)を併せて提示することで、ペインポイントに直接寄り添ったコミュニケーションが可能になります。
課題③:自力での情報収集層への対応不足
相談先は「顧問税理士・会計士」が過半数を占める一方、「インターネットや書籍等の情報」に頼る層も13.1%存在します。専門家に相談する前に、自分で基礎知識をつけたい・自らコントロールしたいと考える顕在層が一定数います。
対策の方向性:実際の調査データをフックにした実践的なお役立ち資料(実際の節税額と隠れたコストの解説、初年度から使える節税チェックリスト等)を提供することで、自力で情報収集する層を取り込み、その後のソリューション提案へとつなげる導線を整備することが有効です。
5. まとめ
本調査により、法人化に伴う税務対応において、多くの担当者が「効果実感と実額のギャップ」「業務の手間・周辺コストへの不安」「自力での情報収集ニーズ」という3つの傾向を抱えていることが明らかになりました。
- 節税効果の実感と実額のギャップ:約65%が効果を実感する一方、実額は約半数が100万円未満 → 過度な期待によるミスマッチ・節税額の把握不足
- 業務の手間・周辺コストへの不安:不安要素の最多は会計・経理処理の複雑化 → 節税メリットだけでは解消されない経理負担・追加コスト懸念
- 自力での情報収集ニーズ:インターネットや書籍に頼る層が13.1% → 専門家相談前の基礎知識ニーズへの対応不足
これらの傾向に対しては、現実的な節税額とトータルコストの可視化、複雑化する経理業務を簡単にするソリューションの提示、データに基づく実践的な情報提供を組み合わせて進めることが重要です。節税ノウハウの提供から経理業務の解決までを一貫して支援する設計が、担当者の不安解消と意思決定の後押しにつながります。
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出典
マネーフォワード クラウド、節税に関する調査データ(回答者:790名(有効回答:法人設立・法人化の税務実務に携わる558名)、集計期間:2026年5月実施)
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