定款に関する実態調査
作成日:2026年6月3日
1. 調査概要
本レポートは、会社の定款における「事業目的」の検討・決定の実態に関する調査結果をまとめたものです。決定プロセスへの関与度合い、参考にした情報源、内容決定時に重視した項目、文言作成で困難だった点、登記時の補正指示や変更時の追加コストなどを明らかにしており、自社の制度設計・運用改善やコンテンツ設計にお役立ていただけます。
- 調査時期:2026年3月実施
- 調査対象:定款の事業目的の決定または追加・変更に深く関与した方
- 有効回答数:全回答者803名(うち事業目的の決定に関与する693名がメイン対象)
- 回答者属性:設立時の事業目的決定に深く関与した(71.3%)、設立後の追加・変更に深く関与した(7.7%)、設立時・変更時の両方に深く関与した(8.0%)
回答者の事業目的決定への関与状況
- 設立時の事業目的決定に深く関与した:71.3%
- 関与していない/わからない:13.0%
- 設立時・変更時の両方に深く関与した:8.0%
- 設立後の事業目的の追加・変更に深く関与した:7.7%
2. 調査結果サマリー
4つのポイント
- 事業目的の決定で参考にした情報源は「司法書士や弁護士などの専門家からのアドバイス(35.8%)」が最多で、「同業他社の定款や登記情報(32.8%)」「公証役場や法務局の記載例(27.4%)」「インターネット上の雛形・テンプレート(27.3%)」が続き、専門家や他社事例といった「正解」を強く求める傾向が見られた。
- 内容決定で重視されたのは「現在行っている事業の正確な記述(54.4%)」と「将来的に行う可能性がある事業の網羅性(49.8%)」の2点が突出し、具体性と網羅性の両立が重視されている。
- 文言作成で困難だった点は「第三者に伝わる具体性(19.8%)」「将来の事業展開をどこまで含めるかの判断(17.0%)」「適度な包括性の表現(16.9%)」が拮抗し、具体性と包括性のバランスに苦慮している実態が明らかになった。
- 登記申請時にそのまま受理された割合は48.9%で、約4人に1人が法務局等から補正指示を受けており、後から事業目的を変更・追加した層の約6割が追加コストを負担している。
3. 調査結果の詳細
3-1. 事業目的の検討・決定プロセスへの関与度合い
回答者797名を対象に、勤め先の設立時や目的変更において「事業目的」を検討・決定するプロセスに関与したかを尋ねました。
- 設立時の事業目的決定に深く関与した:71.3%
- 関与していない/わからない:13.0%
- 設立時・変更時の両方に深く関与した:8.0%
- 設立後の事業目的の追加・変更に深く関与した:7.7%
「設立時の事業目的決定に深く関与した」が最も多く、設立時点での目的決定に多くの回答者が関わっています。年代によって関与のタイミングや度合いに特徴が見られ、男性50〜60代以上では「設立時の事業目的決定に深く関与した」が約72〜74%と高水準で推移しています。一方、男性30代では「設立後の事業目的の追加・変更に深く関与した」が18.9%と他の年代より突出しており、40代では「設立時・変更時の両方に深く関与した」が13.1%と目立ちます。
3-2. 事業目的を決定する際の参考情報(複数回答)
事業目的の決定に関与した693名を対象に、どのような情報を参考にしたかを尋ねました。
- 司法書士や弁護士などの専門家からのアドバイス:35.8%
- 同業他社の定款や登記情報:32.8%
- 公証役場や法務局が公開している記載例:27.4%
- インターネット上の雛形・テンプレート:27.3%
- 特に何も参考にせず自社で検討した:18.6%
- 銀行や金融機関からの融資条件に関するアドバイス:14.0%
- わからない/覚えていない:3.3%
- その他:2.5%
複数の情報源が拮抗していますが、「司法書士や弁護士などの専門家からのアドバイス」が最も多く、自社だけでゼロから考えるのではなく専門家や他社事例といった「正解」を求める傾向が読み取れます。属性別では、男性30〜40代で「同業他社の定款や登記情報」を参考にする割合が高く(30代53.1%、40代46.2%)、男性60歳以上では「専門家からのアドバイス」への依存度が40.4%と高くなる傾向があります。
3-3. 事業目的の内容決定において重視した項目(複数回答)
事業目的の内容を決定する際、特に重視した項目を尋ねました。
- 現在行っている事業の正確な記述:54.4%
- 将来的に行う可能性がある事業の網羅性:49.8%
- 許認可の申請に必要な文言の合致:19.5%
- 金融機関からの融資の受けやすさ:15.6%
- 取引先からの信頼性・イメージ:12.8%
- 目的の数を絞り、事業領域を明確にすること:12.6%
- 目的の数を増やし、多角化に備えること:10.0%
- 特になし/わからない:8.2%
- その他:0.4%
「現在行っている事業の正確な記述」と「将来的に行う可能性がある事業の網羅性」の2点が突出して重視されており、現在の正確さと将来への備えの両立が意識されています。属性別では、男性50〜60代以上で両項目への重視度がいずれも高く、60代以上では正確な記述が61.4%、網羅性が57.7%に達しています。一方、男性30代では「金融機関からの融資の受けやすさ」を重視する割合が34.4%と非常に高くなっています。
3-4. 事業目的の文言作成で最も困難だと感じた点
事業目的の文言作成において最も困難だと感じた点を尋ねました。
- 特になし/わからない:23.2%
- 第三者が見て何をしているか伝わるような具体性:19.8%
- 将来の事業展開をどこまで含めるかの判断:17.0%
- 具体的になりすぎないような適度な包括性の表現:16.9%
- 許認可取得の要件を満たす正確な表現:16.7%
- 法務局で補正(修正)指示が出ないための確認:5.9%
- その他:0.4%
各項目が16〜19%台で拮抗しており、具体性・将来の事業展開の判断・適度な包括性の表現といった様々な観点で悩みを抱えていることがわかります。事業内容を具体的に伝えることと、将来に備えて包括的に書くことのバランスに苦慮している実態が読み取れます。属性別では、男性30代で「伝わるような具体性」(28.1%)、男性40代で「許認可取得の要件を満たす正確な表現」(26.9%)が特に困難だと感じられています。
3-5. 登記申請時の修正(補正)指示の有無
公証役場や法務局での登記申請時に、事業目的の表現について修正や再検討の指示を受けたかを尋ねました。
- 指示はなく、そのまま受理された:48.9%
- 指示があり、軽微な文言修正をした:18.0%
- 専門家(司法書士等)に一任していたためわからない:15.2%
- 覚えていない:10.1%
- 指示があり、大幅に修正した:7.8%
約半数は「そのまま受理された」と回答した一方、「軽微な文言修正」と「大幅な修正」を合わせると約4人に1人以上が何らかの補正指示を受けています。属性別では、男性30代で「指示があり、大幅に修正した」割合が34.4%と全年代の中で突出して高く、「軽微な文言修正をした(40.6%)」と合わせると約75%が修正を経験しています。一方、男性50〜60代以上では半数以上が「そのまま受理された」と回答しています。
3-6. 事業目的の追加・変更登記に伴う追加コスト
後から事業目的の追加・変更登記を行った179名を対象に、追加コストを尋ねました。
- 追加コストは発生していない:33.0%
- 5万円未満:26.3%
- 5万円~10万円未満:16.2%
- 10万円~15万円未満:10.1%
- 15万円~20万円未満:5.6%
- 20万円以上:4.5%
- わからない/覚えていない:4.5%
「追加コストは発生していない」が最多であった一方、約6割の企業で追加の費用負担が生じています。設立時の事業目的の書き方によっては、後からの変更・追加登記で数万円〜10万円以上のコストが発生することがわかります。属性別では、男性30〜40代でコスト負担が発生している割合が高く、30代では「5万円未満」「5万円〜10万円未満」を合計すると62.5%に達します。一方、男性60代以上では「追加コストは発生していない」が54.3%と過半数を占めています。
4. 調査結果から見える課題と対策
本調査の結果から、定款の事業目的の作成において、3つの課題と、その対策の方向性が浮かび上がりました。
課題①:具体性と包括性のジレンマ
内容決定では「現在の正確な記述(54.4%)」と「将来の網羅性(49.8%)」がともに重視される一方、文言作成では具体性・将来の判断・適度な包括性が拮抗して困難視されています。具体的に書きすぎれば将来の変更登記が必要になり、包括的すぎれば何をしている会社か伝わらないという板挟みが生じています。
対策の方向性:業種別の事業目的記載例やテンプレートを提供し、現在の事業の正確さと将来の網羅性を両立できる表現の型を示すことで、バランス調整の負担を軽減することが有効です。
課題②:補正指示による手戻りリスク
登記申請時に約4人に1人以上が補正指示を受けており、特に男性30代では約75%が修正を経験しています。許認可要件を満たす正確な表現への難しさもあり、差し戻しによる手戻りが負担となっています。
対策の方向性:許認可申請に必要な文言を満たすための表現チェックリストや、補正が出にくい記載例を提供し、申請前に不備を潰せる仕組みを整えることが望まれます。
課題③:将来の変更に伴う追加コスト
後から事業目的を変更・追加した層の約6割が追加コストを負担しており、数万円〜10万円以上の費用と手間が発生しています。設立時の書き方が将来のコストに直結する構造になっています。
対策の方向性:設立時点で将来の事業展開を見据えた網羅的な事業目的を設計できるよう、専門家監修のノウハウやテンプレートを提供し、後からの変更登記によるコストを抑える支援を行うことが効果的です。
5. まとめ
本調査からは、定款の事業目的の作成において、回答者が「現在の事業を具体的に伝えたい」というニーズと「将来に備えて網羅的に書きたい」というニーズの板挟みになっている実態が明らかになりました。専門家や他社事例という「正解」を求める傾向が強い一方、約4人に1人が補正指示を受け、変更時には約6割が追加コストを負担しています。
- 具体性と包括性のジレンマ:現在の正確さと将来の網羅性の両立に苦慮 → 表現の過不足による伝達不全や将来の変更リスク
- 補正指示による手戻り:約4人に1人以上が登記時に修正を経験 → 差し戻しによる手続きの遅延・負担増
- 将来の変更に伴う追加コスト:変更・追加登記で約6割がコストを負担 → 数万円〜10万円以上の費用と手間の発生
これらの課題に対しては、業種別の記載例・テンプレートの提供、許認可要件を満たす表現チェックリストの整備、将来を見据えた事業目的設計を支援する専門家監修のノウハウ提供を進めることが、手戻りや無駄なコストを避け、適切な定款作成を実現する鍵となります。
本調査データの引用・転載について
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出典
マネーフォワード クラウド、定款に関する調査データ(回答者:803名のうち事業目的の決定・変更に関与する693名、集計期間:2026年3月)
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