資金調達に関する実態調査

作成日:2026年6月3日

1. 調査概要

本レポートは、創業時(設立前後)の資金調達に関する実務経験者を対象とした調査結果をまとめたものです。実際に活用された調達手法、手法選定時に重視した項目、実務上の障壁、事前準備に関する後悔などを明らかにしており、自社の制度設計・運用改善やコンテンツ設計にお役立ていただけます。

  • 調査時期:2026年4月実施
  • 調査対象:創業時の資金調達に関する検討や実務に携わったことがある方
  • 有効回答数:全回答者787名(うち資金調達の実務に携わった経験がある約78%がメイン対象)
  • 回答者属性:創業時の資金調達の検討・実務経験者が中心

回答者の創業業種の内訳

  • サービス:24.9%
  • IT・通信:13.6%
  • 建設:13.1%
  • 小売・飲食:11.8%
  • その他:10.8%
  • 不動産:8.2%
  • 製造:8.0%
  • 医療・福祉:7.7%
  • わからない/答えられない:1.8%

2. 調査結果サマリー

4つのポイント

  1. 創業時の資金調達として最も多く活用されているのは「自己資金(65.2%)」で、外部調達としては「金融機関からのプロパー融資(24.3%)」「日本政策金融公庫からの借入(24.1%)」「親族・知人からの借入・出資(19.3%)」が上位を占めた。
  2. 手法選定時に重視されたのは「金利や手数料などのコストの低さ(30.5%)」「調達までのスピード・即時性(26.1%)」「無担保・無保証で利用できるか(21.8%)」など、条件面でのメリットが中心だった。
  3. 実務上の障壁としては「事業実績がないため将来性の証明が難しかった(22.1%)」「金融機関等との面談・交渉に不慣れだった(17.9%)」「必要書類の作成に多大な工数がかかった(17.0%)」など、実績証明と交渉・書類作成スキルの不足が挙がった。
  4. 事前に準備しておけばよかったこととしては「自己資金の計画的な蓄積(29.7%)」「金融機関との事前の関係構築(21.5%)」「より精緻な収支計画・資金繰り表の作成(20.8%)」「専門家への早期相談(18.4%)」が上位を占めた。

3. 調査結果の詳細

3-1. 創業時の資金調達に関する実務経験

全回答者に対し、創業時(設立前後)の資金調達に関する検討や実務に携わったことがあるかを尋ねました。

  • 過去に携わったことがある:41.9%
  • 現在携わっている:36.1%
  • 携わったことがない:19.8%
  • わからない/答えられない:2.2%

「過去に携わったことがある」と「現在携わっている」を合わせ、約8割が資金調達の実務経験を有していることがわかりました。創業期の資金調達が多くの事業者にとって避けて通れない実務であることがうかがえます。

3-2. 創業時に実施・検討した資金調達の手法(複数回答)

資金調達の実務経験者等610名を対象に、創業時に実施または具体的に検討した資金調達の手法を尋ねました。

  • 自己資金(発起人の拠出金等):65.2%
  • 金融機関からのプロパー融資:24.3%
  • 日本政策金融公庫(新創業融資制度等)からの借入:24.1%
  • 親族・知人からの借入・出資:19.3%
  • 創業関連の補助金・助成金の活用:12.5%
  • 自治体の創業融資(信用保証協会利用):11.8%
  • エンジェル投資家・ベンチャーキャピタルからの出資:5.4%
  • クラウドファンディング:5.2%
  • わからない/答えられない:2.1%
  • その他:1.5%

「自己資金」が65.2%と圧倒的に多く、創業時のもっとも基本的な調達元となっています。外部調達としては金融機関からのプロパー融資や日本政策金融公庫からの借入、親族・知人からの借入が上位に挙がっており、公的・民間の融資が外部調達の柱となっている一方、エクイティ(VC・エンジェル)やクラウドファンディングの活用は限定的です。

3-3. 手法選定時に重視した項目(複数回答)

資金調達の実務経験者610名に対し、手法を選定する際に実務上重視した項目を尋ねました。

  • 金利や手数料などのコストの低さ:30.5%
  • 特に重視した項目はない:26.2%
  • 調達までのスピード(即時性):26.1%
  • 無担保・無保証で利用できるか:21.8%
  • 創業直後でも利用可能な実績要件の低さ:15.7%
  • 社会的な信用力の補完:14.1%
  • 追加融資・出資へのつながりやすさ:11.8%
  • 事業計画に対するアドバイスや支援の有無:11.6%
  • 据置期間(元金返済猶予)の長さ:10.7%
  • わからない/答えられない:3.1%
  • その他:0.8%

「金利や手数料などのコストの低さ」や「調達までのスピード」など、条件面でのメリットが上位を占めました。創業者が「低コスト・ハイスピードで調達したい」という機能的なニーズを強く持っていることがうかがえます。一方で「無担保・無保証で利用できるか」や「実績要件の低さ」も重視されており、実績の乏しい創業期ならではの不安が選定基準に反映されています。

3-4. 調達時の実務上の障壁・苦労したこと(複数回答)

資金調達の実務経験者610名に対し、資金調達を進めるにあたって実務上の障壁となったことや苦労したことを尋ねました。

  • 特に苦労したことはない:43.0%
  • 事業実績がないため、将来性の証明が難しかった:22.1%
  • 金融機関等との面談・交渉に不慣れだった:17.9%
  • 必要書類(事業計画書等)の作成に多大な工数がかかった:17.0%
  • 専門知識を持つ人材が不足していた:13.9%
  • 自己資金の要件を満たすのが困難だった:13.0%
  • 適切な相談先や調達先が見つからなかった:11.0%
  • 審査の結果、希望額通りの調達ができなかった:10.3%
  • わからない/答えられない:2.3%
  • その他:0.3%

「特に苦労したことはない」が最多であった一方、何らかの障壁を感じた層では「将来性の証明」「面談・交渉」「書類作成」など実務的な壁が多く挙がりました。実績不足による将来性の証明と、交渉・書類作成スキルの不足が、創業者の資金調達における主要なハードルになっていることが読み取れます。

3-5. 事前に準備しておけばよかったと感じること(複数回答)

資金調達の実務経験者610名に対し、資金調達を振り返り、実務担当者の視点として事前に準備しておけばよかったと感じるものを尋ねました。

  • 特にない:33.1%
  • 自己資金の計画的な蓄積:29.7%
  • 金融機関との事前の関係構築:21.5%
  • より精緻な収支計画・資金繰り表の作成:20.8%
  • 公的な支援機関や専門家(税理士等)への早期相談:18.4%
  • 創業計画を裏付ける市場調査やデータの収集:13.4%
  • 資本政策(株式比率等)の長期的な検討:13.1%
  • ピッチ(事業説明)スキルの向上:9.7%
  • わからない/答えられない:3.8%
  • その他:0.3%

「自己資金の計画的な蓄積」が最も多く、次いで「金融機関との事前の関係構築」「より精緻な収支計画・資金繰り表の作成」「専門家への早期相談」が続きました。事前の計画や周囲の巻き込み不足に対する後悔が多く、より早い段階から準備や相談を行うことの重要性が示唆されています。

4. 調査結果から見える課題と対策

本調査の結果から、創業時の資金調達において、3つの課題と、その対策の方向性が浮かび上がりました。

課題①:実績不足による「将来性の証明」の難しさ

創業者は低コスト・スピーディな調達を望む一方、実務では「事業実績がないため将来性の証明が難しかった(22.1%)」という壁に直面しています。実績の乏しい創業期に金融機関を納得させる難しさが大きなハードルとなっています。

対策の方向性:記入例付きの事業計画書・資金繰り表テンプレートなどを活用し、実績がない段階でも将来性を論理的に証明できる資料作成を支援することが有効です。

課題②:交渉・書類作成スキルの不足

「金融機関等との面談・交渉に不慣れだった(17.9%)」「必要書類の作成に多大な工数がかかった(17.0%)」が上位に挙がり、交渉や書類作成のノウハウ不足が実務担当者の負担となっています。

対策の方向性:金融機関面談・交渉のマニュアルや書類作成テンプレートを提供し、工数削減と交渉力の補完を図ることで、調達プロセスの不安を軽減することが望まれます。

課題③:事前準備・早期相談の不足

「自己資金の計画的な蓄積(29.7%)」「金融機関との事前の関係構築(21.5%)」「専門家への早期相談(18.4%)」など、事前準備や周囲の巻き込み不足に対する後悔が多く挙がっています。準備を始める時期の遅れが調達の難易度を高めています。

対策の方向性:事前準備のチェックリストを提供するとともに、専門家への早期相談の心理的ハードルを下げる導線を整え、計画的な準備と早期の関係構築を促すことが効果的です。

5. まとめ

本調査からは、創業時の資金調達が自己資金を基本としつつ公的・民間融資で補う構造であり、創業者は低コスト・スピードを重視する一方で、実績不足による将来性の証明や交渉・書類作成といった実務的な壁に直面している実態が明らかになりました。また、事前準備や専門家への早期相談を行わなかったことへの後悔も多く見られます。

  • 将来性の証明の難しさ:事業実績がない創業期に金融機関を納得させにくい → 調達の難航や希望額未達のリスク
  • 交渉・書類作成スキルの不足:面談・交渉への不慣れや書類作成の工数負担 → 調達プロセスの遅延・心理的負担の増大
  • 事前準備・早期相談の不足:自己資金蓄積や関係構築、専門家相談の遅れ → 調達条件の悪化や後悔につながるリスク

これらの課題に対しては、事業計画書・資金繰り表の作成支援、面談・交渉ノウハウの提供、事前準備チェックリストや専門家への早期相談の促進を進めることが、創業者が円滑かつ有利に資金調達を実現するための鍵となります。

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出典

マネーフォワード クラウド、資金調達に関する調査データ(回答者:787名のうち創業時の資金調達の実務経験者、集計期間:2026年4月)

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