人事労務のAI活用に関する実態調査

作成日:2026年8月31日

1. 調査概要

本レポートは、人事労務業務における生成AIの導入・活用実態について調査した結果をまとめたものです。導入状況や活用領域、実感している効果、課題・懸念点、今後の投資意向などを整理しており、自社の制度設計・運用改善にお役立ていただけます。

※本ページでは、調査結果の一部を抜粋してご紹介しています。ホワイトペーパー「人事労務における生成AI活用の実態調査」に、全設問の集計結果・グラフ・考察をまとめています。
https://biz.moneyforward.com/library/71245/

  • 調査時期:2026年7月実施
  • 調査対象:人事労務業務に携わる方を中心とした就業者
  • 有効回答数:全回答者844名(うち、人事労務業務で生成AIを導入・活用している421名、導入していない未導入層277名)
  • 回答者属性:全回答者844名のうち、「現在、人事労務業務に携わっており、生成AIを導入・活用している」と回答した約半数がメイン対象
  • 従業員規模の設問対象:698名

回答者の勤務先従業員規模

  • 1,001名以上:20.5%
  • 101名〜300名:20.2%
  • 11名〜50名:16.5%
  • 51名〜100名:16.2%
  • 501名〜1,000名:9.3%
  • 301名〜500名:8.5%
  • 10名以下:8.2%
  • わからない/答えられない:0.7%

2. 調査結果サマリー

4つのポイント

  1. 人事労務業務において生成AIを「導入・活用している」割合は49.9%にのぼり、約半数がすでに活用を開始しています。主な活用領域は「議事録の作成や文章の要約などの一般的な事務作業」(43.2%)、「社内規定やマニュアルの作成・改定業務」(39.9%)など、個人情報に直接触れにくいテキスト処理業務から導入が進んでいます。
  2. 導入効果としては「コスト(人件費や外注費など)の削減」(41.6%)、「人手不足の解消や業務負担の軽減」(39.9%)、「文章のクオリティ向上や表現の標準化」(39.7%)が高く評価されています。さらに導入企業の約89%(「大幅に増加・拡大する」28.3%と「やや増加・拡大する」60.8%の合計)が、今後の活用度合いや投資を拡大する意向を示しています。
  3. 導入企業・未導入企業ともに、トップ3の課題・懸念点は共通しています。「生成される情報の正確性や信頼性への不安」(導入済36.6% / 未導入43.7%)、「AIを使いこなすためのスキルやリテラシーの不足」(導入済36.1% / 未導入29.6%)、「機密情報や個人情報の漏洩リスク(セキュリティ面)」(導入済31.1% / 未導入26.0%)が挙がりました。
  4. 人事労務にAIを導入していない層(全体の32.8%)でも、「プライベート(私的な用途)で活用している」(57.8%)、「人事労務以外の社内業務で活用している」(34.3%)と、AI自体の利用経験はある割合が高くなっています。

3. 調査結果の詳細

3-1. 人事労務業務での生成AI導入・活用状況

全体844名を対象に、人事労務業務での生成AI導入・活用状況を尋ねました。

  • 現在、人事労務業務に携わっており、生成AIを導入・活用している:49.9%
  • 現在、人事労務業務に携わっているが、生成AIは導入・活用していない:32.8%
  • 人事労務業務に携わったことがない:13.9%
  • わからない/答えられない:3.4%

約半数にあたる「現在、人事労務業務に携わっており、生成AIを導入・活用している」(49.9%)が最も多い結果となりました。人事労務領域においても、生成AIの導入が着実に進行していることがうかがえます。

3-2. 生成AIをすでに導入・活用している領域(複数回答)

生成AIを導入・活用している421名を対象に、具体的な活用領域を尋ねました。

  • 議事録の作成や文章の要約などの一般的な事務作業:43.2%
  • 社内規定やマニュアルの作成・改定業務:39.9%
  • 労務関連の手続きや書類作成の効率化:36.1%
  • 従業員からの問い合わせ対応(ヘルプデスク、FAQ作成など):34.4%
  • 求人票の作成やスカウト文面の作成などの採用業務:33.7%
  • 人事評価のフィードバックコメントや評価シートの作成支援:33.3%
  • 研修プログラムの企画や教材の作成などの育成業務:30.9%
  • 組織サーベイやアンケート結果の分析:29.9%
  • その他:0.7%

最も多かったのは「議事録の作成や文章の要約などの一般的な事務作業」(43.2%)、次いで「社内規定やマニュアルの作成・改定業務」(39.9%)でした。個人情報に直接触れにくいテキスト処理業務から導入が進んでいる傾向が見て取れます。

3-3. 人事労務業務で活用している生成AIのツール(複数回答)

生成AIを導入・活用している421名を対象に、活用しているツールを尋ねました。

  • ChatGPT(OpenAI):47.0%
  • Gemini(Google):44.2%
  • Copilot(Microsoft):39.0%
  • 人事・労務向けの専門AIサービス(勤怠・給与システム付帯のAI機能など):27.1%
  • Claude(Anthropic):24.0%
  • 自社で独自に開発・構築したAIツール:18.5%
  • わからない/答えられない:0.5%
  • その他:0.2%

「ChatGPT(OpenAI)」(47.0%)と「Gemini(Google)」(44.2%)が上位を占めました。一方で、人事・労務向けの専門AIサービス(27.1%)や自社開発ツール(18.5%)も一定の割合で利用されています。

3-4. 生成AIを導入・活用することによって実感している効果(複数回答)

生成AIを導入・活用している421名を対象に、実感している効果を尋ねました。

  • コスト(人件費や外注費など)の削減:41.6%
  • 人手不足の解消や業務負担の軽減:39.9%
  • 文章のクオリティ向上や表現の標準化:39.7%
  • 定型業務や書類作成にかかる時間の削減(業務効率化):37.5%
  • データ分析や傾向把握の迅速化・高度化:36.8%
  • 施策のアイデア出しや企画の質の向上:34.2%
  • 従業員からの問い合わせへの回答スピード向上:31.4%
  • 実感している効果は特にない:0.7%
  • その他:0.2%

「コスト(人件費や外注費など)の削減」(41.6%)が最も多い結果となりました。「実感している効果は特にない」は0.7%にとどまっており、導入企業のほとんどが何らかの効果を実感しています。

3-5. 生成AIを導入・活用するにあたっての課題や懸念点(複数回答)

生成AIを導入・活用している421名を対象に、課題や懸念点を尋ねました。

  • 生成される情報の正確性や信頼性の不足:36.6%
  • AIを使いこなすためのスキルやリテラシーの不足:36.1%
  • 機密情報や個人情報の漏洩リスク(セキュリティ面):31.1%
  • 導入や運用にかかるコストの負担:30.6%
  • 人事労務領域における倫理的・法的な問題(バイアスや著作権など):29.9%
  • 既存の業務プロセスやシステムとの連携の難しさ:29.2%
  • 人事の判断が機械的になることへの社内の心理的抵抗感:27.1%
  • 経営層や周囲の理解・協力の不足:24.0%
  • 課題や懸念点は特にない:2.9%
  • その他:0.2%

「生成される情報の正確性や信頼性の不足」(36.6%)と「AIを使いこなすためのスキルやリテラシーの不足」(36.1%)が高い割合となりました。すでに導入している企業においても、使いこなすためのスキル・プロンプトの不足や、社内ルール(ガイドライン)の整備に課題を感じている状況です。

3-6. 導入・活用に伴い実施している取り組みや環境整備(複数回答)

生成AIを導入・活用している421名を対象に、実施している環境整備を尋ねました。

  • 利用ガイドラインや社内ルールの策定・周知:39.4%
  • セキュリティが担保された専用ツールや環境の導入:39.2%
  • 社内での具体的な活用事例やプロンプト(指示文)の共有:38.0%
  • 活用スキルを習得するための研修や勉強会の実施:36.3%
  • 推進チームの立ち上げや専門担当者の配置:34.2%
  • 外部の専門家(コンサルタントや社会保険労務士など)への相談・支援依頼:31.8%
  • 特に取り組んでいる施策はない:5.2%
  • その他:0.5%

「利用ガイドラインや社内ルールの策定・周知」(39.4%)、「セキュリティが担保された専用ツールや環境の導入」(39.2%)が多く挙げられました。ルール整備と環境整備の両面から、リスクへの対応が進められていることがわかります。

3-7. 今後の人事労務業務における生成AIの活用度合いや投資の変化

生成AIを導入・活用している421名を対象に、今後の投資見込みを尋ねました。

  • やや増加・拡大する:60.8%
  • 大幅に増加・拡大する:28.3%
  • 変わらない:8.1%
  • わからない/答えられない:1.9%
  • 減少・縮小する:1.0%

「やや増加・拡大する」(60.8%)と「大幅に増加・拡大する」(28.3%)を合わせて、約9割の企業が増加・拡大の意向を示しています。「減少・縮小する」は1.0%にとどまり、投資意欲の強さが際立つ結果となりました。

3-8. 人事労務業務以外での生成AIの活用状況(未導入層)

人事労務にAIを導入していない未導入層277名を対象に、その他の場面での活用状況を尋ねました。

  • プライベート(私的な用途)で活用している:57.8%
  • 人事労務以外の社内業務で活用している:34.3%
  • 業務・プライベートを問わず、活用していない:17.3%
  • 以前は活用していたが、現在は活用していない:3.6%

「プライベート(私的な用途)で活用している」(57.8%)が半数を超えました。人事労務業務では未導入でも、AI自体の利用経験はある割合が高くなっています。

3-9. 人事労務以外の社内業務での活用内容(複数回答)

人事労務以外で生成AIを活用している95名を対象に、活用業務を尋ねました。

  • メールやチャットなどの文章作成・校正:38.9%
  • 情報収集やリサーチ、市場動向の調査:38.9%
  • アイデア出しや企画の壁打ち:38.9%
  • 議事録の作成や文章の要約:32.6%
  • 企画書や提案資料などの各種資料の作成:29.5%
  • データの集計・分析やレポート作成:22.1%
  • 表計算・プログラミングやシステム関連の作業:17.9%
  • その他:1.1%

「メールやチャットなどの文章作成・校正」「情報収集やリサーチ、市場動向の調査」「アイデア出しや企画の壁打ち」がいずれも同率(38.9%)で最多となりました。人事労務業務以外でも、文章作成を中心としたテキスト処理での活用が中心となっています。

3-10. 導入・活用していない理由として課題や懸念に感じている点(複数回答)

未導入層277名に対して、導入していない理由・懸念点を尋ねました。

  • 生成される情報の正確性や信頼性への不安:43.7%
  • AIを使いこなすためのスキルやリテラシーの不足:29.6%
  • 機密情報や個人情報の漏洩リスク(セキュリティ面):26.0%
  • 人事労務領域における倫理的・法的な問題(バイアスや著作権など):23.1%
  • 導入や運用にかかるコストの負担:17.7%
  • 特に課題や懸念点はない:14.4%
  • 人事の判断が機械的になることへの社内の心理的抵抗感:9.7%
  • 経営層や周囲の理解・協力の不足:6.9%
  • その他:0.7%

「生成される情報の正確性や信頼性への不安」(43.7%)が最も多い結果となりました。導入済み企業(36.6%)と比較しても高く、未導入層ほど出力内容の信頼性に対する警戒心が強いことがうかがえます。

4. 調査結果から見える課題と対策

本調査の結果から、人事労務領域における生成AI活用には3つの課題と、その対策の方向性が浮かび上がりました。

課題①:生成される情報の正確性・信頼性への不安

「生成される情報の正確性や信頼性」への不安は、導入済み企業で36.6%、未導入企業で43.7%と、いずれの層でも最上位クラスの懸念点となっています。ハルシネーション(誤った情報の出力)への警戒心が、活用範囲の拡大や新規導入の障壁になっています。

対策の方向性:AIの万能性を前提とせず、「AIは間違えることもある」というリスクを先回りして共有したうえで、正確な回答を引き出すためのプロンプトの型や、出力内容を人がチェックする運用フローを整備することが有効です。

課題②:AIを使いこなすためのスキル・リテラシーの不足

スキルやリテラシーの不足は、導入済み企業で36.1%、未導入企業で29.6%が課題として挙げています。すでに導入している企業でも、使いこなすためのスキル・プロンプトの不足や社内ルールの整備に課題を感じており、導入したものの活用が定着しない状況が生じています。

対策の方向性:業務別のプロンプト集やテンプレートなど、すぐに実務で使える「型」を提供することが有効です。実際、導入企業では「活用スキルを習得するための研修や勉強会の実施」(36.3%)や「社内での具体的な活用事例やプロンプトの共有」(38.0%)が進められています。

課題③:機密情報・個人情報の漏洩リスク

機密情報や個人情報の漏洩リスクは、導入済み企業で31.1%、未導入企業で26.0%が懸念点として挙げています。人事労務領域は機密性の高いデータを扱う特性上、セキュリティ面への配慮が不可欠であり、この不安が個人情報に直接触れにくいテキスト処理業務から導入が進む背景にもなっています。

対策の方向性:「利用ガイドラインや社内ルールの策定・周知」(39.4%)や「セキュリティが担保された専用ツールや環境の導入」(39.2%)といった環境整備を先行させ、一般事務や規定改定などのテキスト業務から始めて、社内ルールが整った段階で専用ツールを導入するという段階的なロードマップを描くことが有効です。

5. まとめ

本調査から、人事労務領域では生成AIの導入が着実に進行していることが明らかになりました。導入・活用している割合は49.9%と約半数に達し、まずは低リスクな文書業務から活用が始まり、コスト削減や業務負担の軽減といった効果も高く評価されています。今後の活用・投資についても約89%が拡大意向を示しており、勢いは続く見込みです。一方で、活用をさらに広げるうえでは、以下の課題への対応が鍵となります。

  • 情報の正確性・信頼性への不安:導入済み36.6%・未導入43.7%が懸念 → 誤った出力の混入による意思決定や書類作成の品質低下
  • スキル・リテラシーの不足:導入済み36.1%・未導入29.6%が懸念 → 導入しても活用が定着せず、期待した効果が得られない
  • 機密情報・個人情報の漏洩リスク:導入済み31.1%・未導入26.0%が懸念 → 人事労務データを扱う業務への展開が進まない

未導入層でも57.8%がプライベートで生成AIを活用しているように、AIそのものへの接触経験は高い水準にあります。求められているのは「業務が楽になる」という利便性の訴求ではなく、「いかに安全に、正確に、具体的に使いこなすか」という実践的なノウハウです。ガイドラインの整備とセキュリティが担保された環境の導入を先行させ、テキスト業務からのスモールスタートで納得感のある導入導線をつくることが、活用拡大への近道といえます。

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出典

マネーフォワード クラウド【人事労務 AI活用に関する調査データ】
https://biz.moneyforward.com/employee/topics/17392

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