パワハラに関する実態調査

作成日:2026年6月19日

1. 調査概要

本レポートは、企業のパワーハラスメント相談対応の実態に関する調査結果をまとめたものです。相談件数の傾向、寄せられる相談内容、実務上の課題、実際に行われている対応などを明らかにしており、自社のハラスメント相談体制の設計・運用改善にお役立ていただけます。

  • 調査時期:2026年5月実施
  • 調査対象:全回答者855名のうち、人事・労務管理、または従業員からの相談窓口の運営・対応業務に携わったことがあると回答した約8割の方
  • 有効回答数:相談内容・課題・対応に関する設問はn=564、属性設問はn=682〜849
  • 回答者属性:人事・労務管理や相談窓口の運営・対応業務への関与者が中心

回答者の勤務先従業員規模

  • 1,001名以上:23.2%
  • 11名〜50名:19.2%
  • 101名〜300名:18.5%
  • 51名〜100名:14.1%
  • 501名〜1,000名:9.4%
  • 301名〜500名:8.4%
  • 10名以下:7.0%
  • わからない/答えられない:0.3%

2. 調査結果サマリー

4つのポイント

  1. 過去3年間の相談件数について、「増加している」が29.5%、「横ばいである」が43.4%を占め、約7割強の企業でパワハラ相談が継続的または増加傾向にあります。
  2. 寄せられる相談内容で最も多いのは「精神的な攻撃」で48.8%に上り、「身体的な攻撃(20.6%)」よりも目に見えにくい性質のハラスメントが多く発生しています。
  3. 相談対応の実務上の課題は「当事者間で主張が食い違うこと(41.5%)」が最多で、判断基準の曖昧さやプライバシー保護の難しさなど、担当者が板挟み状態にあることがわかります。
  4. 実際の対応は当事者・第三者への事実ヒアリングが中心ですが、「社外の専門家への相談」を実施している企業も34.4%存在しています。

3. 調査結果の詳細

3-1. 人事・労務管理、または相談窓口の運営・対応業務への携わり状況

調査対象者849名に、人事・労務管理や相談窓口の運営・対応業務への関与状況を尋ねました。

  • 現在携わっている:59.8%
  • 過去に携わったことがある:20.5%
  • 携わったことがない:17.6%
  • わからない/答えられない:2.1%

「現在携わっている」と「過去に携わったことがある」を合わせ、約8割が実務経験を持っていることがわかりました。

3-2. 過去3年間におけるパワハラ相談件数の傾向

過去3年間の相談件数の傾向について尋ねました。

  • 相談件数は横ばいである:43.4%
  • 相談件数は増加している:29.5%
  • 過去3年間に相談は発生していない:12.8%
  • 相談件数は減少している:9.8%
  • わからない/答えられない:4.5%

「横ばいである」が最も多く、次いで「増加している」という結果になりました。約7割以上の企業において相談が継続的、あるいは増加傾向にあることがうかがえます。

3-3. 寄せられたパワハラ相談の具体的な内容(複数回答)

実際に寄せられた相談内容(n=564)について尋ねました。

  • 精神的な攻撃(暴言、過度な叱責などの行為):48.8%
  • 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制):35.1%
  • 人間関係からの切り離し(仲間外し、無視などの行為):31.9%
  • 個の侵害(プライベートへの過度な立ち入り):31.7%
  • 過小な要求(能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること):25.2%
  • 身体的な攻撃(殴る、蹴るなどの行為):20.6%
  • 該当するものはない:1.2%
  • わからない/答えられない:0.9%
  • その他:0.2%

暴言などの「精神的な攻撃」が半数近くを占め最多となりました。一方で「身体的な攻撃」は相対的に低く、目に見えにくいハラスメントが多いことがわかります。

3-4. 相談対応を進める際、実務上苦慮することや課題(複数回答)

相談対応を進める上での課題(n=564)について尋ねました。

  • 当事者間で主張が食い違うこと:41.5%
  • パワーハラスメントに該当するかどうかの判断基準が曖昧なこと:36.7%
  • 相談者のプライバシー保護と事実確認の両立が難しいこと:36.0%
  • 対応を行う担当者の人員やノウハウが不足していること:32.6%
  • 周囲の従業員から協力を得られにくいこと:32.1%
  • 特に苦慮することや課題はない:1.8%
  • その他:1.1%
  • わからない/答えられない:0.2%

「当事者間で主張が食い違うこと」が4割を超え最多でした。次いで判断基準の曖昧さや、プライバシー保護の難しさなど、現場の担当者が多くの板挟み状態にあることが明確になっています。

3-5. 相談があった後、実務として実際に行われている対応(複数回答)

実際の対応(n=564)について尋ねました。

  • 相談者および行為者への個別の事実ヒアリング:43.6%
  • 第三者への事実ヒアリング:40.4%
  • 相談者へのメンタルケアや配置転換などの保護措置:38.8%
  • 行為者への指導、注意、または処分:38.1%
  • 社外の専門家への相談:34.4%
  • わからない/答えられない:1.2%
  • その他:0.5%

当事者や第三者へのヒアリングなど、事実確認を主軸とした対応が多く行われています。また、社外の専門家を頼るケースも3割以上存在しています。

3-6. 属性別の傾向

性別や年代など、属性によって課題や実態の傾向が異なる点も特徴的です。

  • 男性40〜49歳層:具体的な相談内容として「精神的な攻撃」が66.7%に上り、全体平均(48.8%)と比較して大きく突出しています。
  • 男性40〜49歳層:実際の対応として「個別の事実ヒアリング」を55.6%が実施しており、現場で直接対応にあたるケースが多い層であることがうかがえます。
  • 女性20〜39歳層:具体的な相談内容として「個の侵害(プライベートへの過度な立ち入り)」が比較的高い傾向にあります(20代:24.6%、30代:33.8%)。
  • 女性20〜39歳層:相談件数が「増加している」と回答する割合が全体平均(29.5%)と同等またはそれ以上となっています(20代:29.8%、30代:31.2%)。

4. 調査結果から見える課題と対策

本調査の結果から、現代のパワハラ相談対応をめぐる3つの課題と、その対策の方向性が浮かび上がりました。

課題①:主張の食い違いと判断基準の曖昧さ

物理的な暴力よりも「精神的な攻撃(48.8%)」や「過大な要求(35.1%)」が主流であるため、いざ相談を受けてヒアリングを行っても、「言った・言わない」の主張の食い違いが発生しやすくなっています。実際、実務上の課題でも「当事者間で主張が食い違うこと(41.5%)」「判断基準が曖昧なこと(36.7%)」が上位を占めています。

対策の方向性:当事者・第三者への事実確認ヒアリングの質問テンプレートや、グレーゾーンを見極めるための判断基準チェックリストを整備し、属人的な対応から脱却することが有効です。

課題②:プライバシー保護と事実確認の板挟み

担当者は事実を明らかにしたくても、「相談者のプライバシーを守らなければならない(36.0%)」という制約と、「周囲の協力が得にくい(32.1%)」という壁に挟まれています。事実確認とプライバシー保護を両立させる難しさが、対応の停滞を招いています。

対策の方向性:プライバシーに配慮しながら周囲から事実確認を行うための実務フローを明文化し、担当者が安心して調査を進められる仕組みを用意することが求められます。

課題③:人員・ノウハウ不足による担当者の孤立

相談件数が増加・横ばい傾向にある一方で、「担当者の人員やノウハウが不足している(32.6%)」という課題が挙げられています。明確な判断基準も十分な人員もない中で、担当者が孤立しながら対応に苦慮している様子が浮き彫りになっています。

対策の方向性:社外の専門家への相談(実施率34.4%)やアウトソーシングを活用し、社内だけで抱え込まない体制を構築することが、会社と従業員を守る現実的な選択肢となります。

5. まとめ

本調査からは、現代のパワハラが目に見えにくく、事実確認と判断が極めて困難であるという実態が明らかになりました。担当者は主張の食い違い、判断基準の曖昧さ、プライバシー保護の制約、人員・ノウハウ不足といった複数の困難の中で対応を迫られています。

  • 主張の食い違いと判断基準の曖昧さ:精神的な攻撃など目に見えにくいハラスメントが主流 → 「言った・言わない」が発生し、客観的な事実認定が難しくなる
  • プライバシー保護と事実確認の板挟み:相談者の保護と周囲への確認が両立しにくい → 調査が停滞し、適切な対応が遅れるリスクがある
  • 人員・ノウハウ不足による担当者の孤立:相談件数が増える一方で社内リソースが不足 → 担当者が孤立し、対応品質のばらつきや負担増を招く

これらの課題を解決するには、事実確認ヒアリングや判断基準の標準化に加え、社外の専門家やツールを適切に活用し、社内だけで抱え込まない体制を整えることが有効な方向性といえます。

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出典

マネーフォワード クラウド、パワハラに関する調査データ(回答者:855名(人事・労務管理または相談窓口の運営・対応業務に携わった約8割が対象)、集計期間:2026年5月実施)

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