信越ポリマー株式会社

“当たり前”を疑い業務フローを再設計──誰でも使える請求書システムで「使われない」をゼロに

信越ポリマー株式会社 営業本部 営業統括室 企画グループ 主査 渡辺 奈緒子様
営業本部 営業第四部 第一グループ 企画チーム主任 武田 美恵子様
  • 課題

    ・毎月約3,500通の売上伝票・請求書を基幹システムから印刷し、取引先ごとに振り分けてFAX送信や郵送する作業に膨大な工数がかかっていた。

    ・お客様ごとに送付方法が異なり(FAX/郵送/専用システムなど)、対応方法の把握が属人化。情報の引き継ぎが難しく、送り忘れや宛先ミスのリスクも高まっていた。

    ・本社営業本部と各支店・営業所(5拠点)で複数の社員が売上伝票、請求書の送付業務に関わるため、全社展開しやすいシステムと業務改善方法が求められていた。

  • 結果

    ・これまで計6時間かかっていた作業が、3時間未満で対応可能に。大幅な業務効率化を実現。

    ・取引先ごとに「Web画面・メール・郵送」といった送付方法をあらかじめ設定、システム上からまとめて送付できるようになった。これにより、送り忘れや宛先ミスといったヒューマンエラーを防げるようになった。

    ・誰でも扱えるシンプルな操作性で、営業本部・各支店の全社一括運用が可能に。誰一人取り残さない運用を実現できた。

慣例にとらわれずに業務を再構築したことで、効率化を実現
シリコーン、各種樹脂、導電性素材などを取り扱う信越ポリマー株式会社様は、樹脂加工メーカーのリーディングカンパニーとして多様な業界のニーズにこたえてきました。

今回は、信越ポリマー株式会社とグループ会社の株式会社キッチニスタ(2025年4月から信越ポリマーに吸収合併)の2社で、毎月3,500通にのぼる請求書等を電子化したプロセスをインタビュー。

長年、社内で続いていた慣習による課題や、クラウド上で請求作業が完結できて感じた利点、システム選定のコツについて詳しくお伺いしました。

月末の2時間立ち仕事。押印・封入・郵送に疲弊する現場

――会社の概要と事業内容について教えてください。

渡辺様:信越ポリマーは、1960年に設立された信越化学工業グループの一員です。親会社の信越化学工業は、塩化ビニル樹脂や半導体用シリコンで世界トップシェアを誇っており、当社もその技術を活かして製品展開を行っています。

事業としては、塩化ビニル樹脂やシリコーンゴムの加工を軸に、電気・電子機器、半導体関連製品、建設関連製品など、多様な業界に製品を提供しています。中でも、半導体関連製品は当社の主要分野のひとつとなっています。

――ご担当者様の担当業務について教えてください。

渡辺様:私の所属する営業本部 営業統括室  企画グループでは、本社営業部の請求書の発行から経理部への入金予定の連絡、入金後の消込までを担当しています。加えて、与信管理も私たちの業務範囲に含まれます。

なお、債権の管理や回収業務に関しては営業本部が責任を持っており、請求書発行も営業本部の社員が主体となって行っています。経理部門とは、入金情報の共有など必要に応じて連携しながら、スムーズな業務運営を心がけています。

武田様:私はもともと、キッチニスタに在籍しており、2025年4月に信越ポリマーと統合したタイミングで、統合業務にも携わるようになりました。現在は、主にフィルム関連製品を扱う営業部門に所属しています。

キッチニスタが信越ポリマーの子会社だった頃は、営業部に在籍しており、当時から請求書発行業務に関わっていました。そうした経緯もあり、今回のシステム導入にあたっては、各種マスタの作成にも関与させていただきました。

――マネーフォワードクラウドの導入前、請求書・売上伝票書の業務でお困りだった点について詳しく教えていただけますか?

渡辺様:本社には4つの営業部があり、そのうち営業第一部~営業第三部の請求書発行業務は、以前から営業統括室 企画グループが対応していました。社内体制の変更に伴って、これまで営業統括室 業務グループで処理していた営業第四部・機能材料プロジェクト室の請求書発行業務も対応することになり、業務量の増加に危機感を持ちました。

特に営業第四部は紙の請求書が多く、月初には4名体制で2時間以上もかかっていました。急な欠員が出た場合、対応しきれなくなるリスクもあるため、業務改善の必要性を感じました。

加えて、売上伝票の郵送コストも無視できません。郵送料が110円に値上がりしたこともあり、コスト面での負担も大きくなっていました。こうした背景から、請求書と売上伝票をあわせて電子化する方向で検討を始めました。

武田様:私が以前在籍していたキッチニスタでも、紙による請求書発行業務に多くの手間と時間がかかっていました。信越ポリマーとの統合を前にして、キッチニスタ側でも業務フロー全体を見直すことになり、今回一緒に電子化を進めました。

両社の運用を総合的に見直した結果、請求書と売上伝票をあわせて3,500通をマネーフォワードのシステムで利用することにしました。

――長い歴史を持つ企業特有の課題はありましたか?

渡辺様:当社では、請求書を基幹システムから印刷、内容を確認し、押印・封入して郵送するという一連の作業を、本社営業部と各支店・営業所の社員が分担して行っていました。これは信越ポリマーに昔から根付いている運用であり、「請求書は紙で郵送し、押印するのが当然」といった意識が強く残っていました。

実際に、お客様からも郵送での受領を求められるケースが多く、さらに請求書1通ごとに、担当者印・上長印の2つの押印を行っていました。月末には数百通の請求書に押印作業が発生し、長年にわたって“当たり前の業務”として行ってきたのが実情です。

しかし今回、業務の電子化に向けて業務全体を見直していたところ、「そもそも本当に押印は必要なのか?」という疑問があがりました。確認した結果、基幹システム上で請求書を発行している時点でIT統制が効いており、改めて紙に押印する必要はないという正式な見解が得られました。

今回、長年続いてきた社内慣習の意味を問い直すところまで踏み込んだことは、効率化の大きな転換点になったと感じています。

武田様:とはいえ、すべてのお客様が電子化にすぐ対応できるわけではありません。中には、請求書の郵送書類が届く前にFAXで送ってほしいと依頼されるケースもあり、FAXと郵送を両方求められることも珍しくありませんでした。

信越ポリマーは製品の幅が広く、取引先の業界も多岐にわたります。そのため、電子化が進んでいる企業もあれば、従来どおり紙でのやり取りが必要な企業もあります。お客様によって求められる対応が異なることも、現場にとっては一つの大きな負担になっていました。

渡辺様:そうした背景から、私たちとしても「お客様ごとに求められる方法で対応をする必要がある」という点を課題として認識していました。電子化の推進と、現場の柔軟な対応をどう両立するかは、今回の導入にあたっても重要なテーマの一つだったと思います。

誰でも迷わず使える操作性を重視して比較検討を実施

――どのような流れでシステムを探しましたか?比較検討のプロセスを詳しく教えてください。

渡辺様:まずはインターネットで情報収集を行い、気になる企業をいくつかピックアップして資料請求・問い合わせを進めました。

比較・選定の際は、当社の基幹システムから出力されるPDF形式の請求書をそのまま活用できることと、柔軟なワークフローをオンライン上で再現できる承認機能の2つを必須条件と定めました。ただ、検討を進める中で、紙への押印は不要と判断したため、主にPDFの取り扱い方法を重視して検討を行いました。

具体的に言うと、CSVデータの取り込みしかできないサービスでは、既存の基幹システムから出力した請求書PDFを活用したいという自社の要件にそぐわないため自社にはフィットしていないと判断しました。PDF形式の請求書をアップロードしたうえで、取引先ごとに請求書を自動で分割できる機能があるシステムを探していきました。

――複数のシステムから絞り込む際、ほかに重視したポイントはありましたか?

渡辺様:複数のシステムを絞り込む段階で最も重視したのは、「自社の運用に沿った仕様であること」「社員の誰でも使いやすい操作画面であること」、そして「初期費用を抑えられること」の3点です。先ほどお伝えしたとおり、自社の基幹システムから出力されるPDF請求書をそのまま活用できるかどうかは外せない条件でした。

加えて、当社と同じくらいの事業規模でも対応が容易なサービスであるかどうかも確認しました。例えば、大手企業の導入実績があり、なおかつ月500件以上の処理が安定して可能かどうか、導入事例記事を参考に確かめていきました。

――最終比較となった他社システムとの違いについて教えてください。

渡辺様:実を言うと、最終的に比較した他社システムとマネーフォワード クラウドの機能に、大きな差はありませんでした。しかし、運用面での柔軟性ではマネーフォワード クラウドが優勢と判断しました。

他社システムでは、PDFファイルの中に1つでもマスタ未登録の取引先があると、ファイル全体がエラーとなり、取り込めない仕様となっていました。年に一度程度しか発生しない取引先や、新規取引先などの登録漏れによってエラーが起こる可能性が高く、その都度マスタをメンテナンスする作業は、現場の負担になることが想定されました。

当社は売上伝票を作成する人が多数いる関係上、「誰でも簡単に使えること」は重要な指標でもありましたから、これらは最終判断の有力な材料となりました。さらに、マネーフォワード クラウドインボイスはコスト面でも導入しやすいと感じました。

――改めて、マネーフォワード クラウドインボイス送付を導入した決め手について教えてください。

渡辺様:最終的な決め手は「自分たちにとって使いやすいかどうか」でした。特定の社員に頼らず、誰が使っても迷わないこと。そうした操作性や視認性の高さが決め手となりました。

マネーフォワードクラウドは、請求書の内容を確認する際、画面上でページをめくるような感覚で表示でき、紙でペラペラとめくるのと近い感覚を覚えました。他社システムでは、PDFをその都度PCにダウンロードしないと中身が確認できなかったため、この違いは大きかったです。「これなら各支店・営業所の社員にもレクチャーしやすい」と率直に感じました。

また、マスタ未登録の取引先があっても、PDFのアップロード自体は可能で、画面上で取引先情報の追加や修正ができる点も決め手となりました。これらの特徴から、従来の業務フローを大きく変えずに運用できると判断しました。

さらに、他社システムではPDFの分割機能が別システム扱いで、外付けの処理が必要でしたが、マネーフォワードは一貫して対応でき、取引窓口を増やさずに済む点も大きな魅力でした。

PDFをアップロードすると、取引先名を起点に分割できる

――他社比較や社内稟議を行う際に大変だったことや、工夫した点はございますか?

渡辺様:比較検討のプロセスでは、2社から隔週で提案をいただき、2〜3カ月かけてじっくり検討を重ねました。請求書や売上伝票に関わる業務は全国の各支店・営業所で対応しており、関係者が多いため、違和感、抵抗感なく導入できるかを確かめるため、かなり突っ込んだ質問も行いました。

最終的に、「社員の誰もが使いやすいかどうか」という判断軸で決めるように心がけました。

社内稟議に関しては、会社全体でちょうどDXや属人化の解消を推進していたこともあり、比較的スムーズに進められたと思います。

紙対応の業務を見直し、処理時間を大幅に削減

――マネーフォワード クラウドを利用した感想についてお聞かせください。

武田様:以前はA4用紙の印刷から、取引先ごとの仕分け、押印・三つ折り・封入まで、キッチニスタでは3人がかりで2時間近く立ち作業を行っていました。また「郵送かFAXか」といった送付方法の判断も、担当者の記憶頼みという属人的な運用で、ヒューマンエラーの温床になっていたと思います。

マネーフォワード クラウドの導入により電子化を実現したことで、作業時間の大幅削減と属人化の解消を同時に実現できました。請求書取り込み後のプレビュー機能も、業務の正確性と安心感につながっています。

紙をめくる感覚で確認できるプレビュー機能

渡辺様:私も同じく、送信前にプレビューで内容を確認できるのは大きなメリットだと感じています。従来はメールや特定のシステムなど送付手段ごとの対応に時間がかかっていました。マネーフォワード クラウドなら、取引先ごとにあらかじめ設定した送付方法で、ワンクリックで一括送信ができるため、非常に助かっています。

取引先ごとに送付先・送付方法を自動割り振りできる

さらに、社内アンケートでも「作業が楽になった」という声が多く上がっています。紙の請求書を見ながら「どの企業は誰が担当しているか」を覚える必要がなくなり、担当変更時の引き継ぎもスムーズになりました。

――定量的な変化は得られましたか?

武田様:キッチニスタでは、基幹システムからPDFを出力し、マネーフォワード クラウドに取り込みさえ終われば、末締め作業はたったの15分程度で完了します。以前に比べて大幅な時間短縮が実現しました。

渡辺様:信越ポリマーでは4人がかりでも2時間以上かかっていた作業が、現在は2人、場合によっては1人でも1時間弱で完了しています。今までは、1台のプリンターで大量の紙を出すのに時間がかかってしまい、他の人が使用中だと作業が中断してしまうこともありました。今はPDFをそのままマネーフォワード クラウドに取り込むだけなので、印刷待ちのストレスもなくなり、座り作業で対応できるようになった点も大きな変化です。

マスタ整備はお早めに。電子化をもっとスムーズに

――今後のチーム体制や業務についてお考えになっていることがあれば教えてください。

渡辺様:現在、債権の消込作業が特定の日に集中している点が課題の1つです。業務の負荷がかかりやすい部分なので、今後は債権の消込作業を見直したいと考えています。テーマは変わっても、継続的に業務改善を続けていきたいです。

武田様:キッチニスタと信越ポリマーが合併したばかりなので、まずは統合作業に集中し、業務のキャッチアップにしっかり取り組みたいと考えています。

――ご導入を検討している企業様に、導入におけるメリットやお勧めしたい機能・使い方等コメントがあれば教えてください。

渡辺様:会社の歴史が長い会社ほど、マスタ整備に時間がかかる可能性があると思います。導入初期で一番大変だったのもマスタの確認・統一作業だったので、皆さんにも「マスタ整備はお早めに」とお伝えしたいです。逆に言うと、個人・支店・部門単位でバラバラだった管理ルールを整理する山場を超えてしまえば、その後の導入はスムーズだったと思います。

また、当社が押印文化を見直したように、「この作業は本当に必要かな?」と一つひとつ精査することも肝心です。抜本的に業務フローを見直すことが、業務効率化につながる第一歩だと思います。

武田様:電子化を進めることで、属人化の解消につながることは大きなメリットです。特に転職や異動が多い今の時代には、業務が個人に依存しない体制づくりを目指していくと良いと思います。

公開日:2025年9月10日 公開当時の情報となります

信越ポリマー株式会社
信越ポリマーは、塩化ビニル樹脂や半導体シリコンの世界トップメーカーである信越化学工業のグループ会社として、1960年に設立しました。信越ポリマーは、塩化ビニル樹脂やシリコーンゴムの加工をコア技術として、電気・電子機器や半導体関連製品から建設関連製品まで、多彩な製品を提供しており、お客様の多様で高度なニーズにお応えし、素材配合技術や各種加工技術を組合わせ、高付加価値製品を提供することが使命であり強みです。グローバルなネットワークを通じ、世界を舞台に活動する先進企業のパートナーとして活躍しています。