
創業300余年の老舗が挑むバックオフィスDX 会計・人事労務システム連携で実現した業務効率化と未来への挑戦
管理課 労務担当 森岡 咲菜様
管理課 経理担当 澤本 真瑞様
課題
・利用していたオンプレミスの会計システムが保守切れとなるため、システムへの切り替えが必要だった
・勤怠と給与が一体となった旧システムが、会社の成長や変化に伴い、自社の運用に合わなくなってきていた
・紙ベースの経費精算による業務負担が重たかった結果
・新バージョンへのアップデートではなく、クラウド会計システムに入れ替え連携性が向上
・人事労務業務全般の手作業が削減され、工数不足が改善
・経費精算で紙の提出を廃止、時間のかかっていた差し戻し業務や紙の管理が減り現場・経理双方の負担が軽減
急速な事業拡大の裏側で、バックオフィス業務の効率化とDX推進が喫緊の課題として浮上していました。特に、長年利用されてきた会計システムの保守切れや、紙ベースで運用されていた経費精算、システム間連携が課題だった人事労務業務は、会社の成長を支える上でボトルネックとなりつつありました。
今回は、どのようにしてシステム切り替え・導入を決断し、これらの課題を解決していったのか、そしてバックオフィス体制の強化を通じて、どのような挑戦を続けているのかをお伺いしました。
歴史ある会社でも、少数精鋭での業務運用とDX化推進・経営変革が求められていた

――まずは、貴社の業務内容と経理部門の体制を教えてください。
亀元様:株式会社中川政七商店は、創業から 300余年を迎え「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げています。工芸業界初のSPA(製造小売り)業態から全国に約60の直営店を展開するほか、合同展示会・業界特化型の経営コンサルティング・教育講座などの産地支援事業を展開しています。奈良という地からビジョン実現に向け取り組んでいます。
弊社のバックオフィスの実務は管理課で担っています。管理職が1名、経理の実務担当が3名、人事労務の実務担当が3名、その他に管理課全体でパート社員2名ほどが在籍しています。全従業員が600名以上いる中で、バックオフィス業務の体制としては少数精鋭で運営しているのではと思います。
私自身は、マネーフォワード クラウド会計Plusとマネーフォワード クラウド経費(以下マネーフォワードは省略)導入当時はシステム導入選定と経理財務の担当として中川政七商店の経理業務に従事していました。
現在はグループ会社3社全体の数字管理に加え、デジタル推進室と連携しながら会社のDX化、業務変革を加速させる役割を担っています。財務も担当しており、経営全体を俯瞰する立場にいるためバックオフィスの重要性を感じています。
森岡様:私は労務担当として給与計算に紐づく勤怠管理や、入社から退社までの手続きをメインに担当しています。一部外部委託やパートの方の力も借りていますが、労務業務はほぼ1名で対応しています。
澤本様:経理担当として毎月の請求書作成や経費精算を担当しています。クラウド経費の導入以降、従業員設定やワークフローの設定など、実務の細かい部分は私が対応しました。
システム導入タイミングは異なるものの、経理・人事どちらもシステム保守切れやDX化による業務効率化対策が早急に必要だった
――労務・経理それぞれどのような課題があったのでしょうか。
人事労務業務の手作業や旧システムの限界
森岡様:人事労務領域では、手作業による業務が大きな負担となっていました。特に、約600名の従業員の給与計算は当時は3名体制で実施していて、勤怠管理から入社・退社手続き、さらには住民税に関する市区町村への申請業務など、多岐にわたる業務に多くの工数がかかっていました。そのほとんどの業務がシステム自動連携とはなっておらず、システムから出力して手動運用をおこなう必要がありました。
その当時は別の会社で勤怠と給与が一体となったシステムを使っていましたが、会社の成長・変化が大きい中で、徐々に自社の運用に合わなくなってきました。
会計システムの保守切れに向けてだけでなく、さらなる業務効率化を検討したことがきっかけ
亀元様:長年利用されてきたオンプレミスの会計システムは、翌年の春にサポート切れを迎えることが決まっており、このタイミングでクラウド型のシステムへの切り替えを検討しました。また、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応も喫緊の課題でした。
利用していたシステムの新しいバージョンへの切り替えで対応できる部分もありましたが、従業員の働き方の多様化に対応するため、内部統制機能を備えたクラウド型のシステムへの移行が必要だと考えていました。
澤本様:経費精算については、店舗からの領収書が紙で郵送されてくるため、回収・処理に非常に手間がかかっていました。
当時もシステムは導入していたものの、提出回収のプロセスが非常に煩雑で、月次決算の締め作業においても、経理だけではなく店舗の方々にも大きな負担がかかっていました。
月次決算の締め自体は当時も今も10営業日で変わっていませんが、経費精算の手間は大きく、店舗の従業員1名と連絡が取れないだけで業務が滞ることもありました。
DX推進プロジェクトの立ち上げから他社システム連携性や利便性を重視した

――労務側から導入頂いたようですが、どのようなきっかけだったのでしょうか。
森岡様:労務課題を解決するためと成長に合わせたバックオフィス強化が必要だということで、社内でDX推進のプロジェクトが立ち上げられることになりました。
最初は人事管理の他社システムの導入を検討するタイミングで、そのシステムとAPI連携ができるものを求めていたことも、新たなシステム導入の大きなきっかけとなりました。
勤怠管理システムについては多くの従業員がシステムを継続して使用するため、その点でも連携性を詳細に確認しました。
システムそのものではないですが、以前利用していたシステムはサポートを受けるのに電話が必要な点が不便に感じていました。マネーフォワード クラウドでは、チャットサポートが使いやすい点もよかったです。これらのサポート体制も選定の重要な要素だったなと思います。
――経理側については、労務側の状況も選定のポイントの1つだったと伺いましたがいかがでしょうか。
亀元様:システムのデザインや操作性についてはクラウド給与・クラウド年末調整を導入した際に管理課内で共有されていました。
会計と経費精算のシステムをマネーフォワード クラウドにしようとなった最大の決め手は、圧倒的なAPI連携性でした。経費システムからのデータ自動連携はもちろん、金融機関からの入出金データの自動取得、そして給与システムとの自動連携は、手作業による入力業務を大幅に削減し、業務効率化を実現できると感じました。
金融機関の情報を連携できるシステムは他に2社ほどありましたが、内部統制を担保する必要があったため、 クラウド会計Plusが最適だと判断しました。
澤本様:私は経理未経験でクラウド会計Plusとクラウド経費の導入タイミングで入社しましたが、直感的に操作できるインターフェースだったため迷わずに使えるようになりました。
経費精算は全国の従業員も利用するため、店舗スタッフがスマートフォンで簡単に操作できるという点もいいなと思っています。
業務効率化と品質向上に繋がった。3人で対応していた労務業務は1名に、経費精算はスマホ活用でスムーズに
――労務業務で感じられた変化や業務効率効果はありますでしょうか。
森岡様:いくつかありますが、以前は正社員3人で給与計算を実施していたところ現在では私1名で対応することができています。これは、クラウド給与がなければ不可能だったと思います。
また、年末調整業務ではクラウド年末調整とeLTAXの連携性のおかげで本当に効率化できています。
全国に60店舗以上展開しており、手作業で100を超える市区町村に手動で対応していたため、当時は管理課の他のメンバーに協力してもらっていました。その時期になると残業も発生したりしていましたが、システム化されたことで大幅に負担が軽減されました。
システム導入による時間削減効果は、本来やりたかった「問題発見をして会社をより良くしていけるように労務として時間を作る」という点にも寄与してくれています。
――経理業務ではいかがでしょうか。
澤本様:長年課題だった紙ベースの経費精算をシステム化しペーパーレスも実現できました。
領収書をすべて添付できるようになったので、紙で実施していた時よりも格段に良くなりました。店舗のスタッフはシフト制かつ、常にパソコンを見ているわけではないため電話やメールだと連絡が滞ることもありますが、チャット機能でスマートフォンから確認・やり取りできるのが非常にスムーズで助かっています。
亀元様:決算書まで出力できるのが非常に良いです。税務申告書に必要なものが揃っている点が助かっています。また、金融機関の連携が全てクラウド会計Plusに飛んでくることで、仕訳を自動連携しているので非常に楽になりました。
例えば以前は雑収入・雑損失についてメールが来たものを手入力していましたが、Excelでマスタ作成をして自動化するなど、業務の形自体も変えていこうと業務フローの改善も進んでいます。
監査対応に関しても、税理士さんに渡す資料をディスクで焼く必要がなくなり、証憑に関しても一部紙で見てもらうことはあるものの、その他はシステム上で確認できるようになり、デジタル化の恩恵も実感しています。
問題発見や会社の新しい取り組みのサポートと業務効率化と改善を強化していきたい

――今後の管理課の展望についても教えてください。
森岡様:1名体制で業務が回せるようになっているため、問題発見をして会社をよりよくしていけるように労務として時間を作っていきたいと考えています。具体的には、自動化できるところはして、AIの活用ができたらと思っています。
社内でAI学び部という有志の取り組みがあり、旗振り役の人に教えてもらいながら業務改善のためにアプリを作る取り組みにもチャレンジしています。
亀元様:経理では、業務改善MTGを月数回実施しています。労務ほどシステム化が進んでいない点もあるため、課題の洗い出しをしてシステム連携やツール導入を検討しています。
歴史ある会社ですが、この20年ほどで急速に拡大してきたため、業務の属人化は店舗・本社含めて課題としてまだある状態です。会社の新たなチャレンジを支援する上で、作業に追われているようでは、経営戦略支援に貢献できません。システム化を進めることで、より本質的な業務に時間を割けるようになり、会社をより良くしていきたいと考えています。
――これからマネーフォワード クラウドの導入を検討する企業様にコメントをお願いします。
森岡様:要望を伝えると真摯に耳を傾け、積極的に機能に反映してくれるので、もう少し待てば、さらに使いやすくなるという期待感が持てます。このような柔軟性は、マネーフォワードの大きな魅力だと思います。
亀元様:マネーフォワード クラウドの連携性は非常に良いです。CSVの取り込みやAPI連携、金融機関情報の自動取得、給与連携の自動化など、本当に素晴らしいと感じています。
また、ウェブサイトもたまに見ているのですが、法改正への対応が早い点も安心して利用できるなと感じています。
澤本様:私は経理未経験で入社していますが、クラウド会計Plusもクラウド経費もユーザーインターフェースがよく直感的に操作できるところがいいなと思います。店舗スタッフも若い人が多く、スマートフォンでスムーズに使いこなしています。勘定科目と経費精算科目が分かりやすく連動して設定できるのも、わかりやすく助かっています。
公開日:2025年8月22日 公開当時の情報となります

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