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創業期の事業を「早く」「大きく」する『財務』のチカラ 3.あなたの事業は「融資」向き?それとも「出資」向き?

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photo by Mark Lord

起業家は、「財務」を知ることで、もっと事業を発展させることができます。このブログでは、起業家が創業からもつべき「財務」の視点・考え方について、シリーズでお伝えしていきます。第2回で「事業資金の調達方法について」挙げましたが、今回は資金調達方法の中でも、メインとなってくる「融資」と「出資」について、あなたの事業にはどちらが適しているのかというお話です。(執筆者:税理士・公認会計士 萩口義治)

あなたの事業は、融資向きなのか、出資向きなのか

ここに2つの事業を想定します。
A事業: 成功確率90% 成功した時の利益は毎年1,200万円
B事業: 成功確率5% 成功した時の利益は毎年100億円

あなたがはじめようとしている事業がA事業の場合、あなたは事業資金を、「融資」から調達しますか?それとも、「出資」によって調達しますか?それぞれの条件は以下とします。

融資:毎月の元本返済と、2%の金利の支払い。事業が失敗しても、個人保証が必要で、社長自身に借金は残る。
出資:返済は不要。事業が失敗したら返済は不要だが、会社の持ち主である株主の地位を20%与えることになる。成功した場合のシェアを20%与えることになる。株主総会に出席し、経営意思決定に加わる権利を保有されることになる

成功確率が高いA事業の場合には、2%の金利だけを支払って、残りの利益をすべて自分のものにした方がよいと考えられる。仮に出資を受けた場合には、90%の確率で少ない利益の20%が出資者のものになる。

成功確率が低いB事業の場合には、成功した場合の利益のシェアを20%明け渡してでも、成功しない場合のリスクを出資者に負担してもらった方がよいと考えられる。融資を選択した場合は、事業が失敗し、社長個人に借金だけが残る可能性が高い。

資金提供側からみた、「融資」と「出資」

このことは、資金提供者側から見ても同様である。

金融機関は、自分たちの収益が2%の金利でしかないから、融資先が大成功しても、小さな成功でも大差はない。「大成功しなくていいから、倒産だけしないで。返せる程度に頑張って。」って思っている。大成功or倒産で、倒産の可能性も高いB事業には融資をしたくない。

一方で、出資者の利益は、通常、自分たちが出資した株式会社が「上場」するか「バイアウト(事業売却・株式売却)」することによる、株式売却益である。だとすると、社長の小さな成功は彼らにとって、成功ではない。「倒産してもいいから、一か八か、大化けしてね。」って思っている。
成功確率が高くても、小さな成功にしかならないA事業は、彼らにとって投資対象にはなりません。
(※上記は一般論で、当然、配当目当ての投資家もいれば、本当に応援してくれるだけで見返りを求めないエンジェル出資者もいるので、個別の例外はあります。)

「融資」か「出資」かの判断基準

これらを踏まえ、どんな事業が融資向きで、どんな事業が出資向きなのかをシンプル表現した図が、以下の図です。

まず、事業リスクが低い(=事業の成功確率が高い)場合は、まずは融資を検討することができます。少しの利息を払って、それ以外の利益を自身で享受するメリットの方が、失敗した時のリスクを負担してもらうという出資のメリットよりも大きいと考えられるからです。

一方で、事業リスクの高い(=事業の成功確率が低い)場合は、融資が難しいし、自身でも事業失敗時のリスクを全て負うことが得策でないかもしれません。その場合には、事業が失敗した時に返済不要であるという出資のメリットが大きくなり、事業が失敗しても返済が残る融資のデメリットもより大きくなるため、出資を受けたいところです。
しかし、出資は、成功確率が低いのと引き換えに、成功した場合のリターンが大きくないと、出資者もリスクとリターンが見合わず、資金を提供してもらえません。事業の成功確率が低い場合には、それを補う収益性や規模感を具備した事業を構想し、出資者を納得させる必要があります。

融資と出資を組み合わせて、事業をうまく成長させよう

①創業当初、出資を獲得することができなかった。

事業リスクの高い事業を経営しようとする際に、「出資」を求めるということもあると思いますが、以下のような障害も存在します。

  1. あまり早期に出資を受けることで、少額の調達でシェアや経営権を大きく奪われることは避けたい
  2. 始まってもいない事業、実績のない事業に出資をしてもらうことは、ハードルが高く、出資をしてもらえないことも多々ある

だとすると、当初は、自己資金と融資で、事業をある程度成長させた時点で出資を募る方が、出資をよりよい条件で獲得することができます。
であれば、創業当初は、なんとか融資を獲得することで事業をある程度軌道に乗せることも必要でしょう。

そんな時は、事業リスクの高い事業と短期的な資金を稼げる事業リスクの低い事業を同時に展開することも考えていいと思います。事業は資金がなくなれば続かないわけですから、短期的に資金を稼ぐための事業と組み合わせることで、事業リスクの高い事業の事業リスクを軽減することで、融資の可能性を高めることが可能です。

ベンチャーが赤字の時代を乗り切るために、本来の事業への事業投資をペースダウンし、短期的な資金を稼ぐための事業で食いつなぐというという話は実際にはとても多いです。もちろん、自分たちの長期的に実現させたい本来の事業に直線的に突っ走れるための環境があれば、それでいいのですが、ベンチャーで世の中を変えるような事業は、マネタイズするにも時間がかかることが多く、その間を食いつなぐのに、資金調達だけでなく、短期資金を獲得できる事業を事業ポートフォリオとして持っておくことは、事業を存続する上で、とても大切なことであると考えています。

②事業が軌道に乗ってきた

創業期に出資を獲得でき、事業を進めてきたが、黒字化し事業が軌道に乗ってきた。

このような場合には、事業リスクが「高→低」になっているかもしれません。ですから、これ以上シェアを取られる出資を選択する必要はなく、ここから先は融資資金調達を進めていくということも大いに考えられます。

③事業を着実に成長させてきたが、ここらで、一気に勝負をかけたい

自己資金と融資で、事業を成長させてきた。金融機関からも評価を得ており、追加融資も可能であるが、融資では調達額に限りがある。今が勝負時であると判断しており、大型の出資を獲得して勝負をかけたい。
このような場合には、出資の方が適しているといえるかもしれません。

①~③は一例にすぎませんが、同じ事業でも、事業の成長フェーズや、必要な資金調達額などによって、適切な資金調達方法や、その順番を選択しなくてはなりません。そのあたりの判断も、事業を「早く」「大きく」する「財務」の力であるといえます。

まとめ

  1. 「融資」か「出資」の判断は、「事業リスクの高低」を軸に、事業リスクが高ければ「出資」、低ければ「融資」という考え方がベースとなる。
  2. 経営者側だけでなく、資金提供者側から見ても、 事業リスクが低い事業は「融資」、事業リスクが高くても収益性の高い事業は「出資」という考え方になる。
  3. 事業の成長フェーズや、調達希望額、事業計画の進捗状況によって、融資と出資を使い分けながら資金を調達していくことで、より一層事業を「早く」「大きく」できる。

私はこの「財務」の考え方をしっかりと起業家に伝えたいと思いながら、日々の事業を行っています。「財務」があれば、開業できる事業は増えます。継続できる事業も増えます。もっと拡大できる事業が増えます。そして、ひいては起業家の皆様の頑張りが、世の中を便利にし、世の中の需要と雇用を生み出し、日本や世界の人々を豊かにすることができると考えております。
そのために、私たちは起業家の皆様に「財務」の考え方を伝えていくことが使命だと思っております。このブログもその活動の一環として考えており、このブログが起業家の皆様にとって、「財務」と出会い、「財務」の力を事業存続・事業成長に生かしていただける一助となれば、大変嬉しいです。

この記事の執筆者

株式会社HG&カンパニー / はぎぐち公認会計士・税理士事務所 萩口 義治

株式会社HG&カンパニー / はぎぐち公認会計士・税理士事務所
萩口 義治(はぎぐち よしはる)氏

事務所の紹介 (http://hgand.co.jp)
中小企業から上場企業まで支援するキャリアを経て、大きくなる事業に必要なものは「財務」であるという。「税務」最適は経営最適と一致しないことが多く、税務だけでなく、財務・経営の視点から起業家の事業成長を支援することをミッションとする。

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