中小企業経営者のための、「採用面接」の7つのポイント

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IT業界を中心に、採用難が続いています。経営者にお話を伺うと「そもそも応募がこない」という状況もあるようですが、少なくない数の企業が「面接のやり方がわからない。面接を辞退されてしまうことも頻繁にあり、原因を特定したい」という課題も抱えているようです。実際、私も採用の現場に立ち、そのような課題を目の当たりにしました。

実際、面接を行わずに採用活動をする会社はほとんどないでしょう。どの企業にとっても面接は重要事項の一つです。奇抜なことをせず、オーソドックスなやり方でも、少し考え方を変えるだけで「良い人が採れた」「辞退率を大幅に改善できた」という会社が数多くあります。そういった会社は一体何をしているのでしょう。そこで今回は、「採用面接のポイント」というテーマで、書かせていただきたいと思います。

中小企業経営者のための、「採用面接」のポイント

ポイント1.経営者の関与を多く

よく言われる話ですが、中小企業の面接においては、以下の3つの理由から社長自らが積極的に面接に関わったほうが良いでしょう。

1.会社の本気度のアピールができる
2.応募者からの質問に的確に回答できる
3.意思決定のスピードアップができる

応募者は企業が「どのくらい私のことを重要視してくれるか」について、非常に敏感です。中国の故事に「三国志」の英雄である劉備玄徳が軍師として名高い諸葛亮孔明を迎えるに当たり、自ら3回も彼の家に足を運んだというエピソードが有りますが、良い人材を得るために必要なことを全て教えてくれます。

劉備は自ら諸葛亮の家を訪問、「本気」のアピールを行い、彼からの質問に直接回答することで自らのビジョンや考え方を伝え、その場で「我が軍に来てほしい」と表明しました。その心意気に打たれ、当時は「一介の弱小勢力」であった劉備玄徳に当代きっての才能である諸葛亮が合流したのです。本来、良い人材を得るためには、ここまでする必要があります。社長が動かずに、「良い人が来ない」と言うのは、採用の本質を外していると言えるでしょう。

ポイント2.面接開始前に2つのことを決めておく

とは言え、経営者が単に面接をすれば良い、というものではありません。面接前にできれば次の2つのことを決めておく必要があります。

①面接参加者
社長だけが面接をする事にはリスクがあります。Googleが5回も面接をする理由は、偏った見方を排除するためです。できれば社長の腹心、現場のリーダーなど、社長とは異なる見方をする参加者を入れるなどで、多様な視点を確保することが必要です。

②取りたい人材のイメージを共有
Googleは5回も面接をします。しかし彼らはバラバラに動いているのではありません。彼らは全て「良い人材とはどのような人材か」を共有し、それを具現化する人を探しています。
Googleが欲しい人材は「スマート・クリエイティブ」と呼ばれる以下のような人です。

スマート・クリエイティブは、コンピューター科学者、医師、デザイナー、科学者、映画監督、エンジニア、シェフ、数学者など、高度な専門知識をもっており、実行力に優れ、単にコンセプトを考えるだけでなく、プロトタイプを創ることのできる人々だ。また、ビジネスセンスがあり、専門知識をプロダクトの優位性や事業の成功に結びつけて考えることができる。競争心も旺盛で、時には長時間労働に至る猛烈な努力も欠かさない。
(How Google Works:日本経済新聞出版社)

このように、ある程度「取りたい人材のイメージ」を定義することで、多様な目線を確保しながら、質の揃った人材を確保できます。

ポイント3. 面接スタート直後の自己紹介に気を配る

人の印象は出会ってから数秒で決まる、などという話もあるくらい、第一印象は大切です。第一印象を良くするためには面接の最初に「自己紹介」を行います。自己紹介をすることで、応募者の緊張感が和らぎ、「本来の自分」に近い状態で話をしてもらうことが出来ます。また、知らない人に自分の話をするのは嫌なものです。礼儀を失さないためにも重要な事でしょう。

ポイント4. 質問の注意事項を知る

面接時の質問には3つほど注意事項があります。

  1. 圧迫面接はご法度。
  2. 圧迫面接をする会社もありますが、圧迫はご法度です。リクルートの調査によれば面接官の態度によって応募者の志望度合いが上がりも下がりもすると言われます。むやみに応募者の志望度を下げる必要はありません。

    参考:大学生の就職活動ふり返り調査
    http://www.spi.recruit.co.jp/issue/research/files/13daigakureport.pdf

  3. 質問の意図を相手に伝えてから、質問する
  4. 質問の意図をはっきりさせてから質問をしないと、採用の可否に必要な情報が得られなくなります。例えば、「リーダーシップを取った経験を教えて下さい」とだけ聴くのと、「我々はリーダーシップが重要であると考えています。ただ、リーダーシップというものは急には身につきません。ですから、実際にリーダーシップを取った経験を教えて下さい」という質問では、得られる回答の精度が段違いです。

  5. 面接では聞いてはいけないことがあるので、押さえておく
  6. 面接では「聞いてはいけないこと」があります。何の気なしに聞いた質問がじつは「違法だった」では、応募者の信頼を損ねます。特に、「人生観」「尊敬する人物」「愛読書」「購読している新聞」などはつい聞いてしまいそうですが、聞いてはいけません。

    厚生労働省 公正な採用選考を目指して
    https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html

    <a.本人に責任のない事項の把握>

    • 本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
    • 家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
    • 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
    • 生活環境・家庭環境などに関すること

    <b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>

    • 宗教に関すること
    • 支持政党に関すること
    • 人生観、生活信条に関すること
    • 尊敬する人物に関すること
    • 思想に関すること
    • 労働組合・学生運動など社会運動に関すること
    • 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること

ポイント5.待遇を明示し、応募者と確認

転職後の不満として最も大きい物の一つが、「聞いていた話と違う」ということです。できれば紙に各種データや待遇の内容を書いて渡し、一緒に確認をしましょう。
特に次のような後で揉めやすい事項に関してはきちんと明示する必要があります。

  • 勤務地、転勤の有無
  • 給与、賞与、各種保険、手当
  • 人事制度
  • 離職率などの統計データを開示(必須ではないがあったほうがbetter)

ポイント6.質問受け付け時間は長くとる

面接の最後には必ず質問を受け付けます。時間は長く取ってください。なぜならこちらからの質問よりも、応募者からの質問のほうが人となりをよく知ることが出来るからです。
「どういったことに疑問を持ったのか?」
「何を心配しているか?」
「待遇について何が期になっているか?」

などは、かなり多くの情報を与えてくれます。時間がないからといって、応募者からの質問タイムを端折る会社がありますが、とんでもないことです。むしろこちらからの質問を省略してもよいくらいです。

ポイント7.クロージング

面接に来てくれたことに対して応募者に感謝をするのは当然ですが、最後にかならず、「●日以内に合否を回答します」と述べてください。応募者が最も嫌うのは、合否がわからずやきもきすることです。合否の判断は素早く、連絡は確実に、できれば電話で伝えてください。

まとめ

面接のポイントは以上になります。「採用難」といわれる時期が続いて久しいですが、面接を少し変えるだけで「今まで採れていなかった人」が採れるようになります。
ぜひ、試してみていただければと思います。

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