「経理へ異動になりました」~必要なスキルや経理の常識、心構えを知る~

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ごくごくリアルな経理担当者のお悩みにフォーカスする、前田康二郎さんの連載。第6回のテーマは、「経理への異動」です。

編集部が企業の導入事例などを取材する際、意外によくお聞きするのが「他部署からの異動で経理になった」というケース。

皆さん立派にご活躍されていますが、いざ配属が決まった直後は「必要なスキルは?」「心構えは?」と迷われる方も多いのではないでしょうか。 異動先で良いスタートを切るためのヒントを、前田さんに伺いました。

【連載一覧】
「わたし、このままでいいんでしょうか?」前田先生に聞く経理の現在地、そして将来のこと ~経理担当者が夜にふと考えてしまう現在・将来に対する不安や悩みにお答えします~
「給料が上がりません」。~前田先生に聴く・経理担当者が夜にふと考えてしまう現在・将来に対するお悩み相談Vol.2~
「スタッフが辞めてしまいます」。~前田先生に聴く・経理担当者が夜にふと考えてしまう現在・将来に対するお悩み相談Vol.3~
「不正を見つけてしまいました」。~前田先生に聴く・経理担当者が夜にふと考えてしまう現在・将来に対するお悩み相談Vol.4~
「転職すべきか迷っています」~要求されるスキルから考えるキャリア戦略~

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この記事は、『デキる上司がデキる部下を潰してしまう。はなぜ起こるのか?』(クロスメディア・パブリッシング社刊)をはじめ人気著書を多数持つ前田康二郎さんが、株式上場や中国での業務など数多くの現場を経験してきたからこそ書ける内容です。ぜひ最後までお楽しみください!




『デキる上司がデキる部下を潰してしまう。はなぜ起こるのか?』クロスメディア・パブリッシング
前田康二郎 著
 

今回の相談内容

入社10年目ですが、今月から他部署から経理部門に配属されることになり、うまくやっていけるか不安です。必要なスキル、資格、常識、心構えなどあれば知っておきたいです。

経理に異動したら、まず何から始めればいい?

私は現在、「経理座談会」という、経理社員だけを集めて、お互いに日頃の悩みを共有し解決し合う、というイベントをイベント会社と組んで東京・名古屋・大阪で定期的にやらせていただいています。そのイベントに集まる方々のうち、毎回2割~3割、ご相談者様のように30代以降で最近他部署から経理部門に異動になった、という方が参加されています。

参加理由として、「経理部門や経理社員の方たちのことをもっとよく知りたくて」とおっしゃっています。「経理をやっている人」というのは、仕事柄、外出したり他社と交流したりする機会が多くありません。

たとえば営業なら、私たちは日常的に営業勧誘をされることも多々ありますので「なんとなくこういう感じが一般的な営業社員」というイメージを持てるでしょうが、経理は「こういう感じが一般的な経理社員」というイメージがなかなかしにくいということのようです。

確かに「経理のイメージ」と言われても一言で表現するのは難しいかもしれません。そのため、「何十人も経理社員が集まっているイベントに参加すれば、なんとなく経理社員の人たちってこんな感じなんだな」ということが確かにわかるのだろうと思います。

そのイベントも今では延べ千人近く参加してくださっています。ここまで続けてきて「意外だな」と思ったのは、「経理社員の人たちは意外とよくしゃべる」ということです。

立ち上げの第一回目のイベントの際、私が一番心配していたのは、各テーブルに4人~6人掛けで経理社員の人たちに座っていただきフリートークをしていただく予定だったのですが、「お互いに緊張して沈黙になってしまった場合にどうしようか」ということでした。

そのため、「うちの会社では経理関連の申請を皆が期日までに出してくれないのだけれど、皆さんはどのように工夫されていますか」「経理部門や経理社員をもっと評価してもらうためにどのようなアピールをしていますか」など、10個ほど、悩みの「お題」を用意しておき、「もし話題のテーマが尽きてしまったときは私が用意したお題も使ってみてください」とお伝えしました。

しかし、私の心配は杞憂でした。皆さん、初対面にも関わらず和気あいあいと各テーブルで盛り上がってくださいました。イベント後に感想を伺うと、「自分一人で『このやり方が正しいのかな』と悩んでいたことが皆さんに質問したり確認したりすることができて良かった」「経理は専門職なので、仕事の大変さを同僚に言ってもなかなか伝わりづらいので、同じ仕事をやっている人たちと日頃の悩みを共有、共感できて楽しかった」という感想をいただき、今も続いています。

経理のスキルは、どこまで身につければいい?

経理の悩みというのは、はじめは「スキル的に足りないところ、わからないところがある」という実務作業の悩みに始まり、そこが解決されると今度は「自分ではうまくやれていると思っているけれど、これからもこの働き方でいいのか確信が持てない」という漠然とした不安のようなものが生まれてきやすいのではないかと思います。

そうすると、今回のお悩みにも適合すると思うのですが、経理の漠然とした悩みや不安は

1.経理社員はスキルをどのレベル、どの範囲まで積めばいいのか

2.1がクリアできたら、あとは何を意識して日々仕事をしたらいいのか

ということが中心になってくるのではないかと思います。

まずスキルに関してですが、その会社で使うであろう業務スキルは積んでいただかなければいけませんが、一通り経理業務ができるようになった以降については、経理社員の人たちそれぞれで考えが違うと思います。

ある方は、「会社では使わないスキルであっても、会計に関する知識はないよりあったほうがいいから」と、税理士の科目受験を目標にして仕事の合間に会計や税務のより深い知識を勉強している、という方もいます。

また、私などは「売上や利益などの仕組みは知識で学んだので、実際にもっと売上や利益を伸ばすにはどうすればいいのかということを学んだり分析したりしたい」という気持ちのほうが強くありました。

そのため、上場会社が開示している決算短信の資料などを仕事の待ち時間などに見て、「この会社はどのような事業でどれだけ儲かっているのか」、「今の時代は、こういう事業が流行っているんだ」、「それだったら、うちの会社も同じリソースがあるのだからやればいいのに」という分析などを会社員時代によくしていました。

これは、新卒で10代、20代から経理を始めた人でも、30代、40代で経理に異動した人でも同じことで、まず「一通りの経理業務」を覚えていただき、それ以降は「自分が業務を通じて関心のあるもの」を学んでいくのがいいのかなと思います。

たとえば「税理士など士業にも少し憧れがあったな…」という人でしたら、その勉強をしたほうがいいですが、特にそう思っていない人が「やはり経理というものは税理士資格レベルの知識がないといけないから」という理由で資格の勉強を始めても楽しくないでしょう。

それよりも、「自分が興味関心のあることと経理を何とか紐づけられないかな」と考えていったほうが楽しくスキルアップもできるのではないかと思います。

経理に必要なのは「数字のスキルだけ」ではない

そして、「日々何を意識して日常業務を過ごしていくか」に関してですが、経理というのは社内を代表する「きちんとした人」であるということが重要だと思います。

では「きちんとした人」とは具体的にどのような人なのでしょうか。私が思う「きちんとした人」は、

1. 数字で表すことができる行動が遅滞なく順守できる人

2. 「グレーゾーンの不正をしない人」

この2点ではないかと思います。

まず「数字で表すことができる行動」とは何かというと、「9時までに」「28日までに」「3日以内に」というように、数字で表すことができる社内の行動を「余裕を持って」その通り守れる人のことです。経理業務に必要な「計数感覚」と、前述のような数字で表される「行動感覚」。この二つは経理社員である以上、両方持っていないとなかなか大変ではないかなと思います。

しばしば、経理社員の中で、学歴や職歴はとても高いのだけれど、勤怠の悪い方がいらっしゃいます。そのような人たちには同じ特徴があり、「自分のペースでしか仕事が進められない」という点です。たとえば皆さんが経費精算の経理担当だとして、経理部長から「来週月曜日の午後に私が経費精算の最終チェックをして締めるから、そのスケジュールでよろしくね」と言われたとします。

皆さんは、いつまでに経費精算の作業を終わらせるでしょうか。私でしたら金曜日の帰りには自分に届いている分は全て終わらせて、帰る時に経理部長に「自分に来ているところは全て終わっていますが、あと現場で出し忘れがあるかもしれませんので、それがないか午前中待って、最終報告します」というスケジュール組みをします。そうすると経理部長も安心して週末を迎えられるからです。

しかし、勤怠の悪い人は「月曜日に終わっていればいいんですよね」と、金曜日までは全然手を付けておらず、土日に休日出勤や徹夜をしてタイムリミットギリギリに息せき切って「出来ました」と経理部長に言ってきます。

そうすると経理部長としては「出来たっていうけど、これ本当に合ってる?ちゃんとダブルチェックした?」と尋ねざるを得ないわけです。そんなにギリギリに慌てた様子で計算されても最終責任は経理部長がとらないといけないわけですから、怖いわけです。

経理は経理社員同士の「信頼の連鎖」で生産性が上がるかが決まる側面がありますので、「この人は余裕を持って完璧に数字チェックをしてくれているか」という「見え方」がとても大事です。

「結果的に合ってたんだからいいでしょ」「仮に間違っていたとしても直せばいいんだからいいじゃん、大げさだな」という考えの人では難しい職種なのではないかと思います。

「ちょっとくらい…」が、経理では信用を失うことになる

もう一つの「グレーゾーンの不正をしない」人に関してです。会社には、「完全なる不正」と「グレーゾーンの不正」とが存在します。

完全なる不正は、私物の領収書の精算など、皆さんの想像通りの内容ですが、グレーゾーンの不正というのは「本来タクシーを使う必要がないのに、面倒だからという理由でタクシーを使う」「仕事もないのにお金が欲しいから残業して残業代を稼ぐ」という、モラルがある人とない人とで、行動が分かれる事案です。

以前、職場にいた経理の同僚が前述のようなことをしているのを偶然見て、私はそれ以来、その人のことを信用しなくなりましたし、経理業務をしてはいけない人だと思いました。

一般的な経理社員は、大企業でも中小企業でもベンチャー企業でも関係なく「現場はタクシー代を使ってもいいけど、経理はどんなに忙しくても終電があるうちに帰って、次の日に朝早く出社しよう」「仕事があれば残業しなければいけないけれど、特にないならさっさと帰ろう、居残っているだけで残業代もオフィスの光熱費もかかっちゃうし」という発想でしょうし、そのように経理部長が周知していることでしょう。

期日管理の社内への啓蒙と同様に「さまざまな不正をしてはいけない」という啓蒙をするのが「人間の経理社員」の役割です。だから「グレーなんだから別にいいじゃん」という人は、少なくとも経理部門にいてはいけないと思います。

目指したいのは「居てくれるだけで安心な人」

ご相談者様が経理に異動される際には、スキルの部分はそれほど心配なさらなくても今の時代は会計ソフトの機能も充実していますので、1か月、3か月、1年と、その時々に発生する処理や対応を一通り経験して慣れてしまえば問題ないと思います。むしろ意識していただきたいのは、「行動感覚」と「モラル」です。

特にモラルに関しては、モラルの有無で人の信用も決まります。皆さんはモラルのない人に、自分の個人のお金や印鑑を預けられるでしょうか。できないはずです。だから経理はモラルのある人でなければいけません。

「もし自分の個人のお金や印鑑を預けても、この人は絶対に持ち逃げしたり使い込んだりしないだろう」と、現場や社長が思う人が、ある意味「理想の経理社員像」とも言えます。

少しやわらかい表現に言い換えるとすれば「居るだけでなんだか心配・不穏な存在」ではなく「居てくれるだけで皆にとって安心・信頼できる存在」をイメージしながら日々業務を行っていただけたらと思います。

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