請求書の作成や印刷・封入、入金と請求情報の照合──こうした業務の多くが、いまも手作業に頼っている経理現場は少なくない。
当社で開催したセミナー「AI活用・自動化で請求書・入金消込はどう進化する?経理業務効率化の最前線」では、当社ERPマーケティング本部の合江篤が請求書発行・入金消込業務の課題とAI活用・自動化の市場動向を、当社ERPプロダクトマネジメント本部プロダクトマネージャーの高武俊平がマネーフォワード クラウドによる具体的な解決策を語った。本記事ではその要点を振り返る。
株式会社マネーフォワード
ERPドメインリサーチャー
合江 篤
2019年に株式会社マネーフォワードに入社。Fintech研究所にて金融制度、年金制度、海外金融サービス動向を中心とする調査研究をはじめ、弊社Fintech研究所Blogにおける海外Fintech企業の動向の発信や、金融財政事情などの金融専門誌への寄稿などを行う。
2022年から電子帳簿保存法・インボイス制度対応など法制度関連のマーケティング施策に従事。2024年12月からERPマーケティング本部にて企業のバックオフィス業務効率化・DXを推進する取り組みや、企業の経理・財務領域を中心としたバックオフィスパーソンへの情報発信を行っている。
株式会社マネーフォワード
ERPプロダクトマネジメント本部 プロダクトマネージャー
高武 俊平
外食・食品業界のスタートアップにおいて、新規事業の立ち上げおよび成長に従事。店舗運営、商品開発、財務経理など、事業の根幹に関わる業務を経験し、営業、マーケティング、プロダクト開発に至るまで幅広く推進。C2CマーケットプレイスやバーティカルSaaSなど、様々なビジネスモデルに携わる中で、0から1、1から10のフェーズで新しい事業やプロダクトの芽を育てることにやりがいを感じ、マネーフォワードに参画。
現在、債権領域全体の業務効率化や様々な課題解決に向けた取り組みに従事し、特に入金消込業務に特化した「マネーフォワード クラウド債権管理」のプロダクトマネージャーを務める。
請求書発行・入金消込業務に潜む3つの課題
セミナーは、請求書発行から入金消込までの一般的な業務フローの整理から始まった。合江は、業務全体を「1. 取引発生〜収益確定」「2. 請求」「3. 決済/与信管理」の3段階に分け、各プロセスの中に、手作業による時間・手間や人的ミスの発生源が潜んでいると指摘する。

請求書発行に関しては、次の3つの課題が挙げられた。
- 入力の手間
販売管理システムに入力済みの内容を請求書へ手動で転記するなど、二重入力のコストが発生する。- 印刷・封入・郵送の手間
請求書データの印刷から手作業での封入、郵送料金の計算、切手の貼付までを1件ずつ行う。- 顧客数増加に伴う管理の手間
受注伝票を分割して請求したくてもシステムが対応しておらず、表計算ソフトなどで手動調整せざるを得ない。
これを裏づけるのが、請求業務における課題意識を調査した結果だ。最も多かった回答は「請求書の作成に時間がかかる」(30.0%)で、「請求書の印刷・捺印・郵送の手間」(25.8%)、「請求書の抜け漏れ確認が非効率」(20.4%)が続いた。(※1)

入金消込業務についても、社名と異なる振込依頼人名義(カナ)での入金や、複数の請求先の売掛金がまとめて入金されるケースなど、照合作業に時間を要する要因が複数あるという。加えて、過去の入金や前受金を表計算ソフトで管理し、債権管理帳票を消込後に別途作成する手間、営業部門への回収状況の共有に電話・メールを介する手間も課題として挙げられた。
経理・財務業務における自動化の潮流
続くセクションで合江は、こうした課題を解決する鍵として、AI活用・自動化の市場動向を紹介した。世界的には、経理業務全体にAIを組み込んだ「知的自動化」への移行期にあるという。
諸外国では、請求書処理や債権管理などの経理業務全般でAI・自動化の活用事例が充実している一方、日本国内はまだ利用普及の途上にあると合江は分析する。今後の方向性として、合江は2つのイメージを示した。1つは、個別業務の自動化から、発注から支払いまでの一連のプロセス全体を自動化する「エンドツーエンドオートメーション」への移行である。もう1つは、バックオフィス担当者の役割が「データの入力者」から「データの分析者」へ変化し、コア業務へリソースがシフトすることで、AIとの協働による新しい働き方モデルの確立が期待できるというものだ。
※セミナー開催後補足:本セミナー開催から時間が経過するなかで、生成AI・AIエージェントの機能や経理業務への組み込み方は、さらにアップデートが進んでいる。エンドツーエンドオートメーションや「データの分析者」への役割変化という方向性そのものは現在も変わっていないが、AIが担える業務範囲や自律性は当時よりも広がりつつあり、今後もこうした潮流はさらに加速していくと考えられる。
合江は、当社が2025年4月2日に発表した「マネーフォワード クラウド」におけるAIエージェントの提供にも触れた。カード決済の利用履歴から経費申請を従業員に提案したり、経理担当者に代わって従業員への支払申請のリマインドや異常値チェックを行ったりする機能を例に挙げ、「DXからAX(AIトランスフォーメーション)へ」という方向性のもとバックオフィス業務を支えていく方針を説明した。
経理担当者が今日から使える生成AI活用術
セミナーの後半では、実践的な生成AI活用の事例が紹介された。合江が挙げたのは、ChatGPT、Gemini、Gemini Notebook、Claudeの4つだ。

具体例として最初に紹介されたのは、FAQ作成への活用だ。経費精算に関するよくある質問をリストアップするようプロンプトで指示すると質問リストが生成され、続けて各質問への回答例作成を指示することで回答例まで作成できるという。合江は、プロンプトを複数回に分けて具体的な指示を重ねることで、より質の高いFAQが作成できると説明する。
経理フロー図の作成にも活用できる。経費精算の流れをステップ・バイ・ステップで整理するよう依頼すればロードマップが生成され、続けてMermaid記法のコードで出力するよう指示すれば、テキストベースのフローチャートコードが得られる。このコードをdraw.ioなどのブラウザ上の作図ツールに貼り付けることで、GitHubやNotionといったプラットフォーム上でも共有しやすい本格的なフロー図に仕立てられるという。

決算書類やレポートの分析にChatGPTを使う例も紹介された。決算書類の数値や項目をもとに分析を依頼すれば、傾向や改善提案が得られ、経営層への報告資料作成の効率化にもつながる。ただし、機密情報を含むデータの添付は慎重になるべきだという注意点も合わせて示された。
新リース会計基準の判定業務にGemini Notebookを活用する例も語られた。複数の契約書や社内規定をGemini Notebookに読み込ませ、契約文言からリースが契約に含まれているかの判定と根拠の提示を指示すると、契約内容を分析し該当性とその根拠を示してくれるという。合江は、こうした活用によって煩雑な契約書確認やリース判定業務の効率化と判断精度の向上が期待できると述べた。
※セミナー開催後補足:2025年11月には「マネーフォワード クラウドリース会計」が、リース判定から使用権資産・リース負債の算定、仕訳作成までを一貫して支援するサービスとして正式提供を開始した。また、リース契約管理の人手不足を補うAI-BPOサービス「マネーフォワード おまかせリース契約管理」も提供されている。このようなシステムやシステム内に実装されているAIの活用により、セミナー当時よりもリース判定業務のハードルはさらに下がりつつある。
マネーフォワード クラウドによる請求書・入金消込の効率化
後半は高武が登壇し、当社のプロダクトを紹介した。高武は、外食チェーンで全店の経理業務を担当していた経験から、バックオフィスの生産性向上が企業経営、さらには社会全体の活性化につながるという思いで当社に加わったと語った。
高武は、債権管理の根本的なミッションは「すべての債権を、しっかりと請求して回収すること」にあるとした上で、業務の中に存在する3つの「スキマ」を指摘した。①一部の業務のみがシステム化され他は手作業が残る「システム化のスキマ」、②販売システムと会計システムが連携しておらずデータの同期・更新を人が担う「システム間のスキマ」、③関係部署間の情報共有を資料作成や個別連絡で担う「コミュニケーションのスキマ」の3つだ。これらを自動化し、シームレスに業務を遂行できる状態を作っていくことが当社の製品開発の方針だと説明した。

当社は、経理財務・人事労務・法務領域を網羅する「マネーフォワード クラウドERP」を、必要な機能を組み合わせて導入できるコンポーネント型ERPとして提供している。債権領域には4つの製品があり、請求書の発行から消込までを一元管理したい場合は「マネーフォワード クラウド請求書Plus」、送付業務に特化して効率化したい場合は「マネーフォワード クラウド請求書発行」、入金消込に特化して効率化したい場合は「マネーフォワード クラウド債権管理」、請求から決済までまとめて効率化したい場合は「マネーフォワード 掛け払い」が選択肢となる。セミナーでは、このうち前者3製品の基本機能が紹介された。

「マネーフォワード クラウド請求書Plus」は、請求書の作成・発行から消込、債権残高の管理までを幅広くカバーするサービスだ。事前に取引先や品目のマスターを登録しておけば、販売管理システムとの連携などで取り込んだデータの分割・締めを手入力なしで行い、作成した請求書は上長のレビューを含む承認ワークフローを経て、ワンクリックで送付まで完了できる。また「案件」機能を使えば、年間契約で決済が一括の場合でも、売上計上を毎月按分した仕訳として会計システムへ連携できるという。
「マネーフォワード クラウド請求書発行」は、すでに基幹システムなどで請求データを保有している企業向けに、送付業務のみをクラウド上で完結させるサービスだ。CSVまたはPDF形式で取り込んだ帳票データを、Web送付・メール送付・郵送代行のいずれかの方法で一括送付できるうえ、送付済みの帳票は改正電子帳簿保存法に対応した形で電子保管される。
「マネーフォワード クラウド債権管理」は、入金消込に特化したサービスで、販売管理システムなどから取り込んだ請求データと、全国の金融機関から自動取得した入金データをシステム上で照合・消込できる。得意先名と振込依頼人名、金額の一致が確認できたデータは一括消込が可能で、手数料差分のような小さな差額も過去の消込結果から自動的に「手数料差分」と認識して自動消込の対象にできるという。複数の請求先に対する売掛金が1本の入金でまとめて振り込まれるケースについても、得意先を親子関係でグルーピングする機能で対応できる。

最大の特長は、この照合処理を支える機械学習機能だ。振込依頼人名、仕向銀行・支店、債権代表者によるグループ化、振込手数料の差額、仮想口座、得意先コード、電話番号といった照合キーをもとに、消込結果の履歴を独自ロジックで学習し、使うほど自動照合率が高まっていく。たとえば、振込依頼人名が請求先の社名と異なる入金(不明入金)があった場合、初回は社内で確認して消込を行うことになるが、次回以降は同じ組み合わせのパターンを自動照合できるようになる。消込結果は仕訳データとして会計システムへ連携できるほか、表計算ソフトで別途管理されがちな残高の滞留状況などの管理帳票も、消込結果をもとにシステム内でリアルタイムに更新・確認できる。
最後に、Salesforceとの連携ソリューションも紹介された。「マネーフォワード クラウド請求書Plus for Salesforce」は、Salesforceの商談データから見積書・請求書を連携し、売上計上業務までを効率化する。また「マネーフォワード クラウド債権管理 for Salesforce」は、Salesforceから連携した請求データをもとに消込を行い、その結果をSalesforce側に連携することで、営業部門と経理部門が債権の回収状況をタイムリーに共有できるようにするものだ。
まとめ
本セミナーでは、請求書発行・入金消込業務に根強く残る手作業依存の課題を出発点に、AI・自動化活用の潮流、経理担当者がすぐに試せる生成AIの活用法、そして当社プロダクトによる具体的な解決策までが語られた。合江が示した「データの入力者から分析者へ」という役割の変化は、ChatGPTやGemini Notebookといった身近なツールから始められる取り組みでもある。高武が語った「3つのスキマ」を埋めていく視点は、自社の業務プロセスを見直す際のチェックポイントとしても役立つだろう。
本記事で紹介した各製品の詳細資料は、以下より無料でダウンロードできます。気になる製品があれば、ぜひご確認ください。
マネーフォワード クラウド請求書Plus
マネーフォワード クラウド請求書発行
マネーフォワード クラウド債権管理
マネーフォワード クラウド請求書Plus for Salesforce
マネーフォワード クラウド債権管理 for Salesforce
マネーフォワード クラウドリース会計
マネーフォワード おまかせリース契約
※本記事は、2025年4月24日に開催されたセミナー「AI活用・自動化で請求書・入金消込はどう進化する?経理業務効率化の最前線」をもとに構成しています。
※掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。