コーヒー片手に豆知識〜vol.2〜:
ミスを防ぐには?AIの力を借りてみよう!

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街の喧騒を抜けた細い路地に佇む、小さなコーヒースタンド。経理のプロが店長を務めるこのコーヒースタンドは、ただのカフェではなく、客が店長である杉浦に経理の悩みを相談する場でもあった。

ミスが多くて時間がかかる… ルーティン業務に潜む罠

空気のよく澄んだ冬のある日、一人の経理担当者がコーヒースタンドに足を踏み入れた。

スーツをきちんと着こなした若い男性だ。経理の仕事を始めたばかりの20代といった雰囲気を漂わせながら、彼はやや悩みありげにカウンターの奥の席に近づいた。

杉浦は「いらっしゃいませ」と優しい声で迎え、「今日のおすすめで良いですか?」
と問いかけた。

小さくうなづいた彼のためにゆっくりとコーヒーを淹れながら、軽く雑談を始めた。コーヒーの香りが広がるリラックスした雰囲気の中で、少しずつ彼の口から悩みが語られる。

「経理の仕事に慣れてきた頃ですね。でも、だからこそ見えてきた問題もあるんじゃないですか?」

杉浦が尋ねると、彼はふっと表情を曇らせ、ポツリと漏らした。

「実は、ルーティン業務の中で人為的なミスが多くて困っているんです…」

「なるほど。もしかしたらお役に立てるかもしれません。実は、秘密兵器があるんですよ。」

「なんですか?ぜひ教えてください!あ、僕は〇〇社のTと申します。」

パッと明るい顔になったTさんは、杉浦にサッと名刺を手渡した。

ChatGPTが相談相手に?!AIと共に解決する経理の課題

「Tさん、仕事にAIは活用していますか?」

「AIですか?うちの会社では使っていませんが…。」

「実は、経理の仕事にAIを使った方が良い理由があるんです。」

杉浦はゆっくりと説明を始めた。

「経理のルーティン業務で大事なのが『仕組みづくり』。そして、その仕組みづくりにAIを活用するのが効果的なんです。最初にミスをなくすための仕組みをしっかり作り込むことで、後々大きな効果をもたらしますよ。」

杉浦はメニューの黒板を使って図を描き始めた。

図1 業務時間の想定

「例えば、この図を見てください。最初に仕組みを作り込むと、初月は大変で時間がかかりますが、翌月以降は業務時間が短縮され、ミスも減っていきます。」

次に杉浦はもうひとつの図を描いた。

「しかし、初月に作り込まないと、業務時間はずっとそのままで、将来的にもずっと時間がかかってしまいます。」

「なるほど、初月にしっかりと仕組みを作り込めば、未来の自分がラクになるんですね!」

Tさんは杉浦の描いた図をじっくりと見つめていた。

「その通りです。」

杉浦は笑顔で話を続けた。

「初月は大変ですが、長い目で見ると、経理業務の効率化とミスの削減につながります。時間をかけてでも、初めにしっかりと仕組みを作ることが大切なんですよ。そして、仕組み作作りに力を貸してくれるのが『ChatGPT』、つまりAIです。」

今度は、ノートパソコンでChatGPTを立ち上げ、Tさんに画面を見せる。

「例えば、売上データを集計・仕訳化するスプレッドシートを作る場合、ChatGPTにこんなふうに質問をすれば、細かい構築手順を教えてくれます。」

図2 ChatGPTへの質問画面

興味深そうに画面を覗き込んでいるTさん。画面の中には、ChatGPTにより回答が打ち込まれていく。

「こうやって作り方を教えてくれるので、あとはコレに従ってスプレッドシートを設計していけばOKです。」

図3 ChatGPTの回答画面

杉浦はさらに具体的な使い方を説明する。

「何より、質問しながら進めていけるのがChatGPTのすごいところです!ミスを見つけるための関数の組み方など、細かい部分まで丁寧に教えてくれます。」

「すごいですね・・・。」

Tさんは身を乗り出して聞き入っている。

「特に、一人で経理を担当している方や、相談できる人が周りにいない場合には非常に役立ちますよ。これまでは全部自分で本を読んだりして調べながら進める必要がありましたが、今はAIの力を借りて、AIに相談しながら簡単に仕組みづくりができるんです。」

「それは助かりますね。関数を上手に組み込めば、ミスも減らせるということですね?」

「そのとおりです。」

杉浦はうなずいた。

「こうやって自動化することによって業務時間が短縮されるので、空いた時間でまた別の改善を考えていくんです。その結果、ルーティン業務がどんどんラクになっていくというわけです!」

「ChatGPT、恐るべしですね!これを活用しない手はないなと思いました。」

Tさんは期待に満ちた表情でさっそくスマホでChatGPTを検索し、ふと浮かんできた疑問を投げかけた。

「ただ、これって質問の仕方が難しそうですね…求めている答えを引き出すためには、どんな質問をすれば良いのでしょうか?」

「いい質問ですね。まずは『こんなことをしたい!』という完成形を明確にして、必要な情報を具体的に伝えることが大切です。詳細に伝えれば伝えるほど答えが的確になるので、ある程度長くなっても大丈夫ですよ。」

「これは僕がよく使っている方法なんですが…」

熱心に聞いているTさんに向かって、杉浦は続けた。

「ChatGPTに提供した情報が十分かどうか自分でもわからないことがあるので、『情報が足りない場合は質問してください』と付け加えておくのがおすすめです。あと、同じチャットで会話を続けていると、ChatGPTは自身の回答を肯定した前提で進んでいく傾向にあるので、新しいチャットを開いて『以下を評価してください』と回答内容の評価を指示するのも効果的です。そうすると修正点を教えてくれるので、さらに精度の高い仕組みを構築できるというわけです。」

「なるほど!そんな裏技もあるんですね。」

「最後に大事なことをひとつ。会社特有の情報を入力するとChatGPTに学習されてしまうので、あくまで一般的な情報をもとに質問するようにしてください。」

「はい、勉強になります!」

Tさんは杉浦の話をメモにまとめた。

図4 (ChatGPTへの質問のポイントーまとめー)

「さっそく明日からでも実践できそうです。ありがとうございます!」

Tさんはメモを見ながら満足そうにうなずき、杉浦に礼を伝えた。

「お役に立てたら嬉しいです。AIの力を借りて、仕事をもっと楽しく効率的にしてみてくださいね。ところで、コーヒーのおかわりはいかがですか?」

杉浦は空になったTさんのコーヒーカップに目をやり、さりげなく声をかけた。

「いただきます!このコーヒー、とても美味しいですね。どんなコーヒーなんですか?」

コーヒーが彩る豊かな時間

「こちらは『エルサルバドル ドン・ハイメ』というコーヒーです。華やかな香りを感じていただけましたか?」

杉浦は嬉しそうに語り始める。

「確かに、花のような良い香りがしますね!それだけじゃなく、ちょっとフルーツのような香りも感じるような…」

Tさんはじっくり味わいながら言った。

「よくわかりましたね、そのとおりです。『エルサルバドル ドン・ハイメ』は、フローラルをはじめ、梅やチェリーなどの香りが特徴です。ホットワインのような深い味わいと、ベリーのコンポートのような甘酸っぱさが楽しめますよ。」

「とっても繊細でバランスの取れたコーヒーなんですね!なんだか心が落ち着く味わいでした。」

Tさんはしみじみと呟いた。

「ええ。一息ついて落ち着きたいときや、リラックスしたいときにぴったりのコーヒーですよ。ベリー系の甘酸っぱさが心を穏やかにしてくれるんです。」

杉浦も満足気に微笑む。

「今日はたくさんのことを学んで知識が増え、コーヒーで心も満たされて非常に豊かな時間を過ごせました。本当にありがとうございます。」

「コーヒーは日々の生活を豊かにしてくれます。毎日の仕事の中でも、こうしてホッとする時間をぜひ作ってみてくださいね。」

Tさんはうなずき、穏やかな笑顔でコーヒースタンドを後にしたのだった。

■杉浦大貴(スギウラマサタカ)のプロフィール

立教大学在学中、下町のカフェを中心としたコミュニティで過ごし、コーヒーの持つ多彩な魅力を知る。
卒業後は一部上場企業経理部を経て、マネーフォワードに入社。
2019年8月から京都に移住し、プロダクトマネージャーとしてクラウド会計Plusの立ち上げより関わる。
会計PlusはIPO市場を中心にPMFを達成。0→1、1→10のプロダクト成長フェーズを経験する。
大学時代よりコーヒーが好きであり続けたことからKOHIIに興味を持ち、2022年9月よりプロダクトマネージャーを担当。
2023年7月から会計とプロダクトマネジメントの知見を活かして、合同会社KurasuのCFOとしてジョインする。

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