本当にいた!経理部の困った上司1〜承認マシーンと化した部長〜

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私は、数年前までとある企業で経理を担当していました。比較的規模の大きな会社で、いくつかの事業所を経験したので、さまざまなタイプの上司がいました。

今回は、私が出会った上司のなかでもインパクト抜群の困った上司をご紹介します。ちなみにこれは、まだパワハラなどが大きく取り沙汰される前の、上司が絶対だった時代の話です。

ダブルチェックが機能しない不安な経理

数ある支店のひとつで売上規模も小さかった私の部署では、実務的な部分は私と派遣社員Nさんの二人に任されており、特に経理の実務経験もない関係会社からの出向者が部長として配属されるのが恒例の人事でした。

出向者は2〜3年という短いサイクルで戻ることが多く、その年もまた新しい部長が着任しました。この部長も例によって経理経験がなかったため、日頃私たちが行っている実務をまったく理解できなかったようです。

 

少しでも理解してもらえるように何度も説明を試みましたが、初めて目にする複雑かつ細かい処理に嫌気がさしたのか、経理業務の把握を半ば諦めているようにも見えました。

基本的には私たちの処理したものを承認するだけなので、傍目には問題なく数ヶ月は無事に過ぎていきました。

 

しかし、私たちは、一緒に提出している証憑書類にまったく目を通さずに、ひたすら承認ボタンを押すだけの部長に不安を感じていました。

チェックすべき項目にすべてマーカーを引き、「こことここの数字が合っているかチェックしてください」と再三お願いするものの、ダブルチェックしてくれている気配はありません。

実際に、部長の承認後に自分でミスを発見したことも数回ありました。不安はますます募っていきます…。

 

そんな中、ついに決定的なミスが起こってしまいました。

取引先への請求金額にミスがあり、誰も気づかないまま請求書を発行してしまったのです。そのまま誤った金額で入金され、取引先の方から「間違っているのでは?」と連絡があったのはその翌月のことでした。

私たちは「いつかはこんな日が来る気がしていた」と思いながら、慌ただしく処理に追われました。

 

大きな会社だったので、こうした経理事故を起こすと本社に「事故報告書」を提出しなければならない規則がありました。部長がスムーズに処理をしてくれていたので、「こんな時ばかりは部長らしく動いてくれるんだな」と安心していたのですが…。

後日、部長が本社に提出したと思われる事故報告書が、部長のデスクに無造作に置かれているのを派遣社員のNさんが見つけました。

今回の件は部長によるダブルチェック機能が働いていなかったことが明らかな原因にもかかわらず、なんとその報告書には「承認後に派遣社員Nが誤って修正前のデータを送付した」と書かれていたのです。

直後、Nさんは「もうやってられません!」と辞めていきました。

部長をやる気にさせるには、どうすれば良かったのか?

「社会人としてどうなの?」と思ってしまうような話ですが、本当にあった残念な出来事です。

当時はただただ呆れて、部長が任期を終えるまでの残りの期間を平穏にやり過ごすことしか考えていなかった私ですが、今になって振り返ってみるとさまざまな問題点が見えてきます。

 

部長の姿勢に問題があったことは明白ですが、それを除くと、部長がやる気になれなかった当時の経理にも問題があったのかもしれません。

今考えると、数年間携わっていた私にとっては理解できていた業務でも、事業内容からしてまったく初めて触れる部長にとっては、わかりやすいとは到底言い難いものでした。

 

一つひとつの作業がアナログだったため、常に流れを追っている担当者は理解していても、できあがった数字だけを部分的に見せられる部長にとっては、何をどうチェックしていいかわかりづらかったのではないでしょうか。

初めて経験する業務だったにもかかわらず、こうしたわかりづらさが重なって、部長はやる気を失ってしまったのかもしれません。

足りなかったのは経理全体の「わかりやすさ」

初めて経理に触れる部長が、内容をしっかり理解したうえで承認するためには、経理全体のわかりやすさが重要です。アナログで全体が見えづらかった当時の経理に提案したいのが、クラウドシステムの利用です。

クラウドシステムなら、誰でも、いつでも経理の情報を確認できるので、常に全体を把握しやすくなります。数字が確定するまでの過程も視覚化されるため、経理初心者でも業務の流れを理解しやすくなるでしょう。

さらに、銀行口座やクレジットカード情報などさまざまなサービスとデータを自動連携できるサービスを導入すれば、入力の手間やミスを削減できるというメリットもあります。

領収書や明細データ、交通系サービスなど幅広く連携すれば、手入力によるヒューマンエラーを最低限に抑えられるため、ダブルチェックもかなり楽になるのではないでしょうか。

まとめ

今回は、実務を理解してくれないうえにとんでもない責任逃れを画策した、困った上司のエピソードを紹介しました。社会人としてこんなにひどい上司はめったにいないのではないでしょうか。

今となっては、むしろ出会えたこと自体が貴重な経験にも思えますが、もしも当時クラウドシステムのように画期的なツールを導入していれば、部長も積極的に関わりやすく、派遣社員がこんな風に傷つけられることもなかったのではないかと悔やまれます。

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