【後編】地方在住や発展途上のプレイヤーのサポートにも注力

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【後編】地方在住や発展途上のプレイヤーのサポートにも注力

「公認会計士山内真理事務所」の代表である公認会計士・税理士の山内真理先生へのインタビュー後編です。(前編はこちら)

自らのミッションを「文化と産業の融合の触媒」と掲げる山内先生。インタビュー前編では、アート・クリエイティブ分野を専門領域として、広くアーティスト・クリエイターの他プロダクション、エージェント、プラットフォーマーなど周辺事業者に至るまで幅広くサポートする活動についてお伺いしました。

「文化芸術分野の人々を会計の面からサポートする」という山内先生の信念は、地方在住の表現者や文化経営者、税理士や会計士に依頼する前段階の人々にも向けられています。

今回お届けする後編では、そんな山内先生がいま注力している、地方在住プレイヤーのサポートと、学生や発展途上のプレイヤー向けの基本的な税務知識の必要性、レクチャー活動についてお話いただきました。

地方在住プレイヤーのサポートの機会も増えている

地方の芸術文化に携わる方と協働することは多いのですか?

最近は増えてきていますね。例えばデザインの分野は領域拡張しており、グラフィックやプロダクトのデザインのみならず、コミュニケーション全体のデザイン、ブランディングや地域活性の施策のデザインなど、地域事業創出の全体的な工程に積極的に関わるケースが増えています。すると、デザイン能力だけでなく、収支計画の組み立てやファイナンスといった視点も必要性が増していきます。コンサルティングの立場から、そうした取組みの援護射撃をするケースも少しずつ増えてきています。
足元では「事業再構築補助金」という、新分野への展開や事業再編など事業シフトへの補助金があり、国はかなり力を入れて支援しています。こういった制度も1つの切り口にしながら、地方のクリエイティブなプレイヤーのサポートをするのは、今後弊所の事業の方向性の1つになっていくと思います。
また、今は東京だけでなく、あるいは国内だけでなく、複数拠点で活躍するプレイヤーも珍しくない時代です。国際展開や地方の拠点の設置なども増えてきています。しかし、国や地域によって税制やビジネス環境が違うことが、展開の広がりにおける障壁となるケースがあるんです。こういった機会損失を防ぐための支援を厚くすることも考えています。地方文化への支援は、まだまだ深化、多角化できると思っていますね。

こういった総合的なプロジェクトの場合、法的な関係から税理士・会計士だけでは対応しきれない内容もあります。ですから、私たちも弁護士や弁理士、司法書士など異分野の専門家と組んで、広範な問題を解決できるチームを作っているんですね。色々なプレイヤーと繋がっているぶん、適切なアドバイザーの紹介もできます。弊所を選んでくださるクライアントは、そこに価値を求めてくださっているという面もあると思います。

コロナ禍における税務知識のレクチャー活動にも注力

コロナ禍での持続化給付金の利用や申請は多かったですか?

そうですね、「持続化給付金」と「家賃支援給付金」の申請はかなりありました。文化芸術分野のなかでも、ステイホームの影響でマンガ・ゲーム・デジタルコンテンツなどの業界はじめ好況な分野もあるのですが、物理的なスペースと生身の表現を核とする舞台芸術や音楽分野などは大打撃と、明暗が分かれています。新規の融資や低利の融資へ借り換えはじめ、ファイナンス関連のサポート案件は非常に多く、特に補助金関連のご相談は現在も多く寄せられています。

クリエイターはお金や税務の困りことがあった場合、どこに相談すればよいのでしょうか?

日頃の会計税務、節税対策や、ファイナンスや経営戦略の相談などを複合的にできるのは、やはり会計事務所ではないでしょうか。会計事務所の方針にもよりますが、私たちは融資・補助金のサポートや事業計画策定の支援などまでおこないます。こういったワンストップの支援をする会計事務所は増えてきています。

会計事務所にフィーを払う資金的余力がない事業者については、公的機関の電話窓口や、無料相談会などの機会を利用するといいと思います。また確定申告は必ずしてください。フリーランスにとって確定申告は、第三者に自分の社会的立場や事業の状況を説明するための、唯一の身分証のようなものです。補助金や給付金も確定申告をしていることが大前提、してなければ受けることができません。権利と義務は表裏です。きちんとおこなっておかないと、いざという時に自らを救えない、ということもあります。

コロナ禍といった非常時のために、基本的な会計は必ずしておかなければいけないということですね。

そうですね。文化芸術分野の大学の各学科や専門学校では、会計や税金、ファイナンスに関する教育が十分でない状況が長らく続いています。この分野の学生は、他分野よりも圧倒的に早期にフリーランスの働き方を選ぶ人の割合が多いわけです。学校を出ていきなり契約ごとや確定申告に直面するうえに、自分の活動を自分で分析して改善していくマネジメントの土台もないというのは、教育的に大きな課題だと思います。

ですから、求められれば、クリエイティブ領域での働き方や税務面での基礎を大学などにも積極的に教えに行くようにはしています。また、自治体やその外郭団体、非営利団体などが主催するセミナーにも積極的に講師参加しています。最近は、各業界の専門誌で会計の連載を持たせて頂いたり、会計や税務の啓蒙活動にも力を入れています。今も書籍化プロジェクトが水面下で進行していますが、少し前のものだと、企画段階から関わった「漫画家と税金」というマンガ家向け税金マンガもあります。
マンガという媒体は、複雑な内容を柔らかく伝えるものとして、有益性が高いです。骨が折れることも多いですが、自分の社会的立場・責任として、こうした活動は今後も続けていく予定です。

これからの文化芸術分野をどのように見ていらっしゃいますか?

公認会計士山内真理事務所 山内真理様(代表)
ある方が先日、紀元前からの演劇の歴史において、その芸術としての発展は一様ではなく、例えば疫病が流行した時代においては、芸術が表現として大きく花開き、前に進む時代があった、と。

新型コロナウイルスという現代の疫病は、それ自体は大変な苦難をもたらし、今もその渦中にありますが、一方でその苦難の中でこそ新たな芸術の芽が無数に芽生えていることでしょう。各ジャンルにおいて様々な実験的な取組みがおこなわれています。VR、ARやオンライン配信などの手法を使った表現やエンタメの模索も身近なものとなりました。これまで東京や特定地域にいないと見られなかった芸術作品も、オンライン配信することで、遠方からアクセスできるようにもなりました。映像表現への昇華により、長期に渡って収益化する方法や、海外などの他地域への紹介も試みられました。デジタル時代の新しい流通モデルもどんどん登場しています。
今は「これまでになかったこと」が連続でおこっている状況です。この変化をとらえ、試行錯誤して挑戦する方が、新しい時代を切り開いていくのだと思っています。私はこれからも、そういった文化芸術分野のチャレンジャーに伴走し、全力で応援したいと思っています。

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