<つぶれない会社の負けない経理戦略> 第11回 偏った持論ではなく、客観的な数字の事実で予測や経営判断を行う

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コロナの収束目途

コロナ禍でこの連載を始めてからちょうど1年が経ちました。1年前に「1年後の自分たちがどうなっているのか」という皆さんの予測は当たっていたでしょうか。

私自身はというと、コロナで打撃を受けた会社が通常の売上などに戻る環境に整うには3年くらいはかかるのではないかと予測していましたが、コロナの収束自体は1年後くらいには目途が立っているのではないかと思っていました。実際は1年経っても日本のコロナの収束はまだ見えておらず、日本企業の売上回復にももう少し時間がかかるのかもしれないと思い始めています。

少なくとも1年前に、「コロナなんて風邪と同じで半年くらいで収束して『一体あの騒動は何だったんだ』、となるはず」と予測していた人の予想は外れたということは確かです。

私のイメージでは、1年前に未来予測をしていた人たちについて、以下の3グループの割合はだいたい同じくらいだったような気がします。

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1.「ニューノーマルですべてが変わる」という人

2.「数年かかって落ち着く」という人

3.「半年、1年以内にインフルエンザのように普通の病気の一つとして落ち着く」という人

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1と2が正解かどうかはこれから数年経たないとまだわからない状態ですが、少なくとも3に関しては現時点で不正解になりました。しかし3を予想した人が「自分の見立てが甘かったです」などと反すうする書き込みやコメントなどを見聞きしたことはありません。

1から3のうち、一番強く持論を展開していたのは3の人たちだったような気がします。あらゆる過去の文献やデータを引用して、専門家や一般人の中にも声高に主張していた人がいた気がしますが、今はすっとフェードアウトした感があります。

これは専門家や一市民だからこそまだ許されることで、会社の経営判断と経営者がこのような判断をしていたら今日現在はとても許されない事態になっています

当てずっぽうとは違う、経営の予測

このコロナに関する予測を、そっくりそのまま経営者の経営判断に置き換えると次のようになります。

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1.「ニューノーマルですべてが変わる」から、これまでの考え方を改めて会社の事業内容や組織体制など全面的に見直す

2.「数年かかって落ち着く」はずだから、会社の基本的な部分は変えないけれど、数年間の有事期間に耐えられるような一時的な体制を急いで整える

3.「半年、1年以内にインフルエンザのように普通の病気の一つとして落ち着く」はずだから、何も変えないでこのまま突っ走ろう

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1年前なら、どれも考えとしては間違いではない経営判断ですが、結果として今日現在見ると、3の経営判断よりは1や2のほうが良い判断ということが言えます。3でも許されるのは資金が大量にある会社くらいのもので、多くの会社は売上や利益を確保していくために変化する外的環境にも対応していかなければいけません。そのため3の経営判断をした会社は1や2の経営判断をした会社に比べ、既に「出遅れ感」があります。売上や利益というのはタイムラグがありますから、今日現在というよりはこれから1年後、2年後にその差が開いてくると思います。

「動かない」ことへのリスクを感じた人たちの行動

それと同時に今回のコロナで顕著なのは、3のような経営方針の会社に勤めていた社員の中で、会社に対して「失望感」を持った人が他社へ移動をし始めたという点です。

この1年、今までにない流れとして「今の会社に失望したから転職をする」「今の会社に見切りをつけて転職をする」という人が私の周囲でもとても増えました。コロナ禍というこれほど不安定な状況の中で転職をするということは私には当初ハイリスクではないかと感じました。

しかし転職する当人たちの話を聞くと、「いや、こんなコロナの状況で何も対応しない会社、対応が遅い会社にいる方がハイリスクです。会社も潰れてしまうかもしれませんし、その前に自分がコロナに罹患して命をとられてしまうかもしれません」と言ってコロナ禍で転職活動をして希望する会社の内定をもらっていきました。

それだけ今回は、「動かない」ということが皆の不安材料の一つになっているのだろうと思います。そろそろコロナが収束に向かえばいいですが、この状態がまだしばらく続くと、3の判断を変えない会社からは危機感のある人たちがさらに組織から流出して、危機感を持たないメンバーだけの組織になり、まったく危機管理の対応ができない会社になってしまうことでしょう。

誰もが収束しないことなど願ってはいませんが、このような有事での危機対応としては、万が一を考えて、「新しい売上」について毎日考えている経営者、社員のいる会社がリスクヘッジできている会社であるということは言えます。

コロナに関しては、今回はこのような結果になっていますが、誰が当たって誰が外れたかということを競い合うために予測というものがあるわけではありません。予測は予測でしかなく、もし3の予測をしていても、その1か月後、3か月後に「あれ、ちょっと予測と違うかも」と思ったら、「すみませんでしたっ!」とすぐ方針転換をすればいいだけの話です。明らかに予測と大きく異なる事実が次々と起きているのに意固地に考えを変えずに強硬路線に走ってしまうことのほうがハイリスクです。

予測「だけ」ならタコでもできる。大事なのはその先

経理の仕事にも経理処理作業の後に分析、つまり予測をする仕事があります。

予測というのは、するだけならば、誰でもできます。社会人経験のない学生でも会社の数字を見せれば、その数字が良くなるか悪くなるかくらい予測はできます。いつもサッカーのワールドカップの時期になると、どちらの国が勝つか、市場のタコが予測するニュースが話題になりますが、予測する「だけ」なら人間でなくてもできるのです。

だからコロナがどうなるかという予測も、予測をして当たったから偉いとかすごいとか、そういうことではなく、予測の上に、どう自分たちが行動するのかを進言でき、そして実際に行動できるかということが大事です。会社員の仕事としてお金をもらえる価値があるのはそこです。予測の先の部分です。

保守的、面倒くさがりの傾向がある人は、楽をしてお金をもらいたいので「自分は何もしなくていい」「これまでの行動を何も変えなくて良い」という「願望」から逆算して予測をたてます。だから、「誰がどう考えても今行動を変えないと会社がつぶれてしまう」という状況でも、「今までの伝統が大事」「このままやっていればいずれ景気が良くなるはず」という予測を立てやすいのです。

人間が予測を立てるパターンには、

  • 実際にリアルな現状を見て予測を立てる人
  • 自分の願望から逆算して予測を立てる人

の二つのパターンがあります。

会社経営に関する予測の立て方の正解はもちろん1です。

経理という仕事がなぜ会社経営にとって重要なのか。それは「会社の数字」が「リアルの象徴」だからです。経営者や社員の「願望」ではなく、「リアルな数字」という材料を基に予測は立てないと、会社のリスクヘッジが甘くなります。リアルな数字で見立てをした予測の上であれば「既存の事業では少なくとも今後2年は売上の回復は見込めないから早急に新規事業を考えた方がいい」など、どう自分たちが行動する必要があるか、ということが提案できます。このような経理社員がいる会社は、会社がつぶれることはまずないでしょう。

実務は「常に最悪の状況を想定して逆算する」というリアリズム。気持ちは「もうすぐ良いことがあるはず」とポジティブに。これが有事の環境と上手く付き合っていくコツだと思います。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

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執筆:前田 康二郎 (まえだ こうじろう)

フリーランステレワーカー。数社の民間企業で経理総務・IPO業務等を行い、海外での駐在業務を経て独立。現在はフリーランスでのコンサルタント活動、講演・執筆活動の他、節約アプリ『節約ウオッチ』(iOS版)を運営している。 著書に『スーパー経理部長が実践する50の習慣』『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』『職場がヤバい!不正に走る普通の人たち』『伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣』(以上 日本経済新聞出版社)、『スピード経理で会社が儲かる』(ダイヤモンド社)、『ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』『自分らしくはたらく手帳』『つぶれない会社のリアルな経営経理戦略』(以上 クロスメディア・パブリッシング)、『経営を強くする戦略経理』(日本能率協会マネジメントセンター)など。最新刊は『図で考えると会社は良くなる』(クロスメディア・パブリッシング)

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