<つぶれない会社の負けない経理戦略> 第9回 良い経理と良い税理士は会社を潰さない

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多様化する税理士との関係性

経営危機に陥る会社に共通している事項の一つに「税理士との関係性が希薄」という点が挙げられます。かつての一般的な、会社と税理士との関係は、月に1回は来社をして、経理の帳簿を見て、経理社員にアドバイスや実務の連絡をし、経営者と面談をして帰って行かれる、というのがスタンダードでした。

今の時代は、いろいろな料金体系が増えましたので、たとえば定期訪問をなくす代わりに料金を安くする、などのコースで契約をしているところもあるでしょう。また、経理社員が「特に今月は相談することもないので、いらっしゃらなくても大丈夫ですよ」ということもあると思います。

ただ、私はこの税理士と会社との関係性の浅さ深さがその会社の浮沈を決めるのだと、経営危機の会社を見て痛いほどよくわかりました。

経営危機にどれだけ経理と税理士が動けるか

会社が傾く時というのは、どのようなプロセスを辿るか想像できるでしょうか。多くの人がまず「売上が減ること」を想像することでしょう。その通りです。問題は、売上が下がった後に何をするかです。

  • その次の対応を間違える
  • 対応は合っているけれどとにかくスピードが遅い
  • 売上が下がったまま何もできない

このようなとき会社は一気に傾きます。

一般には会社の売上が下がった時には、次の対応をほぼ同時に行う必要があります。

  • 資金繰りの確認をして必要であれば借入の準備をしておく
  • 売上が下がった原因を探り、挽回する手立てを打つ
  • 売上が下げ止まる可能性が低ければ、経費の削減と、新たな収入源を考える

このような対応がすぐできる会社は、経営危機に陥る可能性は低いのですが、この3つは見て頂いてわかるように社長一人ではとてもできません。主に経理部が中心になって作業を行いますが、経理社員が少ない会社であればすぐ税理士に相談しなければいけません

経理社員が資料を揃え、社内で検討、解決できる会社もありますが、ひょっとしたら経営者が現実から目をそらして「なんとかなるから大丈夫だ」と経理の提案を却下してしまうかもしれません。そのような時に、税理士の先生の存在が重要なのです。

通常時と違って、経営危機の時というのは経営者もひとりの人間ですから、焦りがないと言えば嘘になります。視野が普段よりも狭まります。また、社員の手前、経営者としての面子もあります。そうなると、社員からの提案を簡単に受け入れられない心理状況に陥ることも多くなります。

社内の人間同士だけでやりとりをして結果的に経理の意見が却下されると、せっかく資料を準備したり提案をしたりした経理社員も、「この社長には何を言っても無駄だ」となり、どんどん関係性に溝ができてきます。そして社長は益々数字を遠ざけるようになり、経理は経営者とコミュニケーションもとらず、ただ処理をして資料を作って渡して後はさっさと帰宅をする、という関係性ができあがってしまうのです。

経営者と経理の関係悪化に浮かび上がる「税理士の不在」

このような関係性が一旦でき上がってしまうと、お互いに歩み寄らず、簡単にはその関係性は当人同士だけでは改善されません。私もそのような状況に何回か間に入ったことがあるのですが、その時にふと気づいて質問するのです。

「ところで、顧問税理士の先生はこの状況を何とおっしゃっているんですか」

そうすると、経営者も経理社員もそれまで言い合いをしていたのが「シーン」となってしまいます。「月に1回は来ていただいているんですよね?」と聞くと「いえ」と双方が言い、なぜなのかを問いただすと、

「毎月来てもらうまでは相談することがないので…」

「連絡をしても面倒そうに対応されるので、強く来てとも言えなくて…」

「そもそも税理士の先生にどこまで聞いていいのかわからなくて…」

「税理士の先生ってどこからどこまでが業務範囲なのですか」

という答えが今さら返ってきます。良い税理士の先生が定期的に会社の数字をチェックしてくれていれば、すぐ数字の変化に気付いて経営のアドバイスをしてくださるので、なかなか経営危機にはならないのです。なるべくして経営危機になっているわけです。

特に経理社員が悪意なくやってしまいがちな「会社を潰しかねない行動」というのが、「自分は特に用事がないから」という理由で税理士の先生や税理士事務所のスタッフが定期的に来る習慣を辞めさせてしまうことなのです。

税理士事務所にとれば、これはこれで稼働時間が減り助かるので「今月は来なくていいですよ」とクライアントに言われて無理やり訪問する人はいませんし、「助かる」と思います。でも結局これがどうなっていくかというと、経営者と税理士が会う機会が減り、数字の知識からモラルに至るまで、第三者が定期チェック、アドバイスをする機会がなくなっていくので、「自分たちの判断で大丈夫だろう」と会社が傾いているのに気づかず、気づいたときには相当傾いた状態になっている、ということが起こるのです。

「ワンチーム」を構築できるか

私は経理社員と税理士、会計士、コンサルタントなどは「一つのチーム」として常に考えています。会社員時代に経理部長だった時も、共有できるものはできるだけタイムリーに、顧問契約している士業やコンサルの皆さんへ包み隠さず情報開示していましたし、自分が言うよりも税理士や会計士の先生から経営陣の方へ言っていただいたほうがいいかなということは、先生方にお願いをして先生方を通して会社の役員の方に進言していただくこともありました。

常にどの立場の人がどのタイミングで進言することが一番効果があり、尚且つ言われた方たちもすんなりその意見を受け入れられるのかということを考え、先生方と連携して実践していました。

士業の先生やコンサルタントの方が会社に来るのは、実務作業や実務チェックをするためだけではなく、「経営者との面談」がメインの一つです。これは経営の計数感覚の維持のために非常に重要なことです。その機会を経理社員が「自分は用事がないから」と奪ってはいけないのです。

一度訪問の習慣がなくなってしまうと、「また来月から毎月来てください」と言われても、言われた方は「面倒だなあ」という気持ちにどうしてもなってしまいますし、特に相談事や用事が取り立ててなくても、外部の人が月に一度くらいの感覚で訪問すると「あれ、なんか会社の雰囲気良くなったな」とか、逆に「向こうで作業をしている現場の人達が殺伐としているけど何かあったのかな」ということはすぐわかります。そして実際の数字を見せてもらうと、実際に職場の雰囲気が良いと数字が伸びていますし、その逆だと数字が下がっています。

経営危機の会社の状況というのは、「どうしてもっと早く言ってくれかったのですか」ということがほとんどです。誰しもネガティブなことは自分からは言いたくないし、隠したいのです。だから「定期訪問」という習慣はとても大切なのです。定期訪問があれば、ネガティブ事象も「芽」の段階で摘み取って解決することができ、会社を経営危機に陥らせないのです。

会社と税理士との関係性を、社内で一度見直してみてください。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:前田 康二郎 (まえだ こうじろう)

フリーランステレワーカー。数社の民間企業で経理総務・IPO業務等を行い、海外での駐在業務を経て独立。現在はフリーランスでのコンサルタント活動、講演・執筆活動の他、節約アプリ『節約ウオッチ』(iOS版)を運営している。 著書に『スーパー経理部長が実践する50の習慣』『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』『職場がヤバい!不正に走る普通の人たち』『伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣』(以上 日本経済新聞出版社)、『スピード経理で会社が儲かる』(ダイヤモンド社)、『ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』『自分らしくはたらく手帳』(以上 クロスメディア・パブリッシング)、『経営を強くする戦略経理』(日本能率協会マネジメントセンター)など。最新刊は『つぶれない会社のリアルな経営経理戦略』(クロスメディア・パブリッシング)



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