BPOは経理の人材不足を解決するか?

読了まで約 6

前回に引き続き、経理業務のBPOがもつ可能性について公認会計士・税理士の中尾篤史先生に教えてもらいます。今回は、超高齢化社会の日本が抱える人材不足の課題と、そのような状況における企業の経理人材について。経理のBPO活用はどのようなケースで増えてきているのでしょうか。

労働者人口の減少は日本全体の課題

日本は超高齢化社会に突入していて、少子化は国家の大きな課題となっています。少子化による直接的な影響は、今後労働者人口が減少していくということです。

労働者人口への対策として、定年の年齢の引き上げ等を通じてシルバー人材の活用も実施されています。しかし、既に団塊の世代はほぼ退職をし、今後はそれ以降の世代の退職が現実化することとなっていますので、シルバー人材の活用だけでは労働者人口の減少には歯止めがかからない状況に突入しています。

労働者人口が減少することで国内総生産(GDP)が減少し、経済が停滞することは懸念のひとつになっています。すでにIT業界などでは人材が不足していて、データ分析やデジタル化等を通じた企業の成長に影響が出ているといわれています。

経理を第一優先にする会社は少ない、という現実

それでは、IT人材などと違って、経理部門の要員は労働者人口の減少の影響を受けずに済んでいるのでしょうか。

新聞等で経理人材が不足しているというニュースが飛び込んでこないので、影響を受けていないと考える向きもあるかもしれませんが、少子化等の影響は産業界全体に影響を及ぼす事象です。経理にも、既にその影響が出ているというのが現場での実感です。

経理部門含めた管理系の部門は、一見すると企業の成長に直接寄与するように映らないため、多くの企業で、事業部門に比べると人材の割り当ての優先順位が低いという問題もあります。つまり、直接的に稼いでくれる事業部門には人は投入しますが、間接部門である経理部門には企業が成長してもそれと比例するように潤沢に人が投入されていないというケースも多くみられます。

その結果、経理部門でも人材は不足しているというのが現状です。さらに課題として考えられるのは、そのような状況の結果、転職市場などで経理スキルを持った人が多くいないことです。実際、経理人材を補充しようと転職市場で応募をかけた企業の多くが、「経理スキルをもった人材に巡り合えず、うまく補充が出来ない」という声を聞くことが多くなりました。

経理部門の「退職者を減らすこと」も重要テーマ

そもそも十分な人数をあてがわれておらず、さらに補充することも簡単ではないとなると、経理部門の責任者としては経理部員から退職者が出ないようにするマネジメントも重要な業務の一つといえます。

経理部員が業務の特性を理由に退職するパターンとしては次のようなことがあげられます。

  • 定期的に四半期決算等で激務が発生して、それに耐えることが出来ない
  • 何年経過しても単純作業や同じ業務ばかりで、一定の難易度のある業務に携わることができず成長を感じることが出来ない

前者の事由は、経理部門特有の理由のひとつと考えられます。四半期ごとにくる決算対応はもちろんですが、月次レベルでも月初の請求書発行や入金消込といった比較的短い期間に大量の処理をする必要がある場合は、残業で対応せざるを得なくなると思います。

上場企業やその子会社などの場合は、四半期ごとに決算対応をすることもあるので、残業が多くなり激務が続くと、「また決算対応をしなければならないのか・・・、これが続くのか・・・」と考え込んで、心が折れて退職を決意するということも現実的に起きています。

後者のパターンは、経理部門だけの問題ではないかもしれませんが、単純作業を誰にも引き渡すことが出来ないために、何年たっても新たな業務に携われなかったり、より高度な業務にチャレンジできないことが退職のきっかけになる人も一定数います。

このようなことが理由で経理部員が退職してしまって、仮に新たなメンバーを迎え入れたとしても同じことが繰り返されてしまっては負のスパイラル陥ってしまいます。そのため、これらの要因を取り除いて、退職者を減らしていく努力が必要となるのです。

退職者からの引継ぎがスムーズでない、という問題

退職者が出た場合の問題として、引継ぎがうまくいかないということも現場ではありがちです。本当の円満退社であれば良いのですが、何か不満を持っての退職となると業務に後ろ向きのケースも多く、あまり親切に引継ぎをしてくれないという場面に遭遇した人もいるのではないでしょうか。

仮に後ろ向きであっても、マニュアルや業務プロセスが可視化されていて、退職者のモチベーションに関係なく引継ぎが完了すれば良いのですが、それらの可視化がされておらず、属人化されているケースは、経理部門においてもあります。

特に、引継前は退職予定者しかその業務に携わっていないというケースなどはかなり業務がブラックボックス化されていて、引継ぎを受ける人自体が嫌になってしまって退職の連鎖などとなると目も当てられません。

打開策としてBPOが活用されるケースも増えている

このような経理部門における退職者が出ないようにするためや、転職市場から十分な経理知識を持ったメンバーを獲得することが難しいということを打開するために経理のBPOサービスを活用する企業も増えてきています。

季節変動要素の大きい決算業務や月初の入金消込の一部や全部をBPOすることで、社内の経理部員の業務負担を軽減することが可能となり、激務が原因で退職するというリスクを低下させることが可能になります。

また、ルーティーン化された単純業務をBPOすることで、経理部員はより難易度の高い業務に挑戦することが出来るようになり、やりがいをもって働くことが可能となります。

さらに、仮に退職者が出てしまった場合においても、経理業務を専門にしているBPOサービス会社であれば、一定の経理の専門スキルを持っているメンバーが業務に携わることになります。その点は退職者と同等程度のスキルがあることが想定されますので、新たに採用するよりも安心感をもって利用することが可能です。

経理部員はより経営に近い業務に携わる体制へ

このように経理業務の一部をBPOすることで、経理部門が安定的に稼働するようになるという利点もありますが、それ以上に経理部門にとっても経営陣にとっても有益なのは、BPOによって生み出された時間を、より経営に資することに使えるようになることです。

今まで単純作業に追われてできなかった戦略的なことや、未来のための業務を経理部員が携われるようになる素地ができるのです。

AI等の発達によって、「経理部員は何をしたら良いのか」ということを聞かれることも増えてきました。経営に近い仕事をして、経営参謀化することが今後の経理部員に求められてくるのだと思います。

そうなるとより自分が成長したり、会社に貢献しているという実感を感じることができるようになり、やりがいをもって働けるようになるはずです。そのための一助として、経理業務のBPOの活用をしている会社が最近は増えてきています。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:中尾 篤史(公認会計士/税理士)

CSアカウンティング株式会社 /代表取締役社長
日本公認会計士協会 租税調査会 租税政策検討専門部会・専門委員
著書に『経理部門の働き方改革のススメ』、『瞬殺!法人税申告書の見方』(税務研究会出版局)、
『正確な決算を早くラクに実現する経理の技30』、
『BPOの導入で会社の経理は軽くて強くなる』(共著)、
『対話式で気がついたら決算書が作れるようになる本』(共著)、
『経理・財務お仕事マニュアル入門編』(以上、税務経理協会)、
『たった3つの公式で「決算書」がスッキリわかる』(宝島社)、
『経理・財務スキル検定[FASS]テキスト&問題集』(日本能率協会マネジメントセンター)、
『明快図解 節約法人税のしくみ』(共著、千舷社)など多数。



本ブログは、経費精算システム「マネーフォワード クラウド経費」を提供しているマネーフォワードが運営しています。

月初に発生する立替経費の原本突合たいへんですよね

領収書のBPOサービスの概要資料をプレゼント!

経費精算の本音調査





「マネーフォワード クラウド」シリーズのサービス資料