<つぶれない会社の負けない経理戦略>第5回 つぶれない組織は「オフェンス重視」でも「ディフェンス重視」でもなく「バランス重視」

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売上減、ピンチの時こそ「守り」の人員も大切に

新型コロナウイルスの影響で、給与の削減や人員調整など、人件費の削減に関する記事が並び始めました。売上が3割減れば、費用もそれくらい削らなければ会社はいずれ立ちいかなくなります。全員を今のまま残す代わりに給与を3割削るか、それとも人員そのものを3割減らすか、会社の経営方針や業種によって、対応が分かれることでしょう。

このような時にいつも思うのは、「どうして売上減が原因なのに、売上を直接担っていない間接部門が削減のターゲットにされやすいのだろう」ということです。たとえばサッカーなどの球技の試合をイメージしてください。「新型コロナVS会社」の試合だとしたら、今は完全に守備固めをしなければいけない時期でしょう。チームとして守りの選手の割合を増やす、普段攻めの役割の選手も守りに加わるということもあるでしょう。

ところが会社の場合、経営が行き詰ると多くの会社がまず守りの部分である事務系の人件費を削る行動に移りたがります。これが最終的にどうなるか、サッカーの例をイメージすれば容易にわかることでしょう。守りのタイミングで守りの人を不在にしていったら、さらにチームは脆弱になり、「守り切る」ことはできずに、ゴールを量産されて大敗してしまうのです。

「売上が減ったから、さらに営業社員を増やさなければ」と、焦って間接部門の10人をリストラして営業社員を10人採用する、などということをしたら最悪です。今現在の販売戦略では売れないものを営業人員10人増やしたところでモノは売れませんし、反対に間接部門の社員が減ってさらに会社の守りの部分が脆弱になり、管理体制がずさんになります。経営がダッチロール状態になっているときによく起きていることです。私たちはニュースを見聞きすると「間接部門の固定コストが経営を圧迫している」というイメージを植え付けられてしまいますが、実際は違います。経営危機に陥る会社の人員構成は、オフェンスとディフェンスの人員体制の割合はオフェンスが圧倒的に多く、ディフェンスがほんの少ししかいない、というのが「リアル」なのです。そのような状態を目にするたびに「何事もバランスが大事」だといつも思わされます。

戦略のない人員構成になってしまっていないか

考えればわかるようなことなのに、それでも多くの会社がなぜそうしてしまいたくなるのでしょうか。理由はいくつかありますが、その一つに、会社には「定員がない」ということが挙げられると私は思います。「サッカーは11人」など、他のスポーツにも「定員」があります。定員の中で、オフェンスとディフェンスなど、役割を状況によって都度バランスを変えていくことでしょう。だから個々の力量も大切ですが「戦術」も同時に大切なはずです。

ところが会社というのは定員がありません。だから「良さそうな人だから」という理由だけでお金があればどんどん人を入れてしまい、本当に必要かどうかわからない職種や役職を増やしてチームを「肥大化」させてしまうということが起きがちです。そのような会社が、今回のようなコロナ禍などに置かれると、営業など売上を持つ部門を削るのはさらに売上が下がると怖い、と思い、まずは売上を持たない部門の中でスリム化できる箇所はないか、ということになり、精査した結果、ある間接部門は20人でできる仕事をこれまで30人でやっていた、じゃあ10人は……というようなことが起こるのではないかと思います。ただ実際には、そのような会社は「全部門が」、同じように人員過多になっているはずです。

客観的な視点で、各部門の数字・情報を判断しているか

また、経営者の方の中には、自分の出身部門の人員は他の部門の人員よりも擁護することもあります。親しい社員も他部署より数多くいますし、人員や予算を削ることで、どのようなリスクが発生するか「その部署に関しては」誰よりもよくわかってしまうからです。しかし、どの部署も基本的にリスクは同じです。営業を削れば営業のリスクがあり、開発を削れば開発のリスクがあり、経理を削れば経理のリスクがあるのです。CTO、CFO、営業部長など、各セクションの責任者に当たる方たちが「自分の部署がどれだけ大切か」を主張するのは健全なことだと思います。重要なのは経営者が、それらの主張や数字の情報などをもとに、どれだけ公平に正しく経営判断できるかです。このような時に、経理の役割が重要なのです。経営判断に必要な「正しい」数値データを「迅速に」会計データから抽出し、客観的な情報を経営者に提示することで、経営者は「情」と「理」のバランスを保ちながら経営判断をすることができるのです。

数字データなどの根拠がないままの経営判断、たとえば営業出身の社長が「情」だけで、営業社員の人件費だけを削らずに、他の部署の人件費を削ったら「うちの社長は営業部長兼社長だ」、同様に、開発出身の社長が開発部門だけは予算を削らなかったら「うちの社長は、CTO兼CEOだ」という見方を社員がしてしまいます。そして外部の利害関係者からも同様な視点で見られてしまいます。この点は、会社として注意すべき点です。だからこそ会社の計数的なデータ管理は非常に重要であり、それを司る経理も重要なのです。経理の予算が削られて脆弱な体制になっている会社は、まず「正しく」「迅速」に会計データを出せない状態になってしまっています。そのため健全な経営判断ができない状態になってしまっているのです。

良い会社に必要な経営陣、各メンバーの意識

良い会社というのは、経営陣が組織を肥大化させないように「定員」をいつもイメージしています。定員をイメージすることで、「この事業だったら、だいたい現場が〇人でサポートスタッフは〇人いればいいかな」というように、気づかないうちに偏ったメンバー構成、予算のかかりすぎる組織にならないように気を配っています。また、定員を設けるのと設けないのとでは、社員同士の競争意識が全く違います。スポーツの世界を見ればわかりますが、人気のあるスポーツは、1部、2部、3部…と定員枠を設けて競い合い、緊張感があります。

競争しないで皆仲良く、というのもいいのですが、それには絶対条件があります。各メンバーが「自律・自立している」ということです。子供の頃、学校で担任の先生がその場に居なくてもきちんと自習し、掃除もさぼらなかったような人、そのような人は、自立、自律の心が大人になってもありますので、「競争」がなくても自発的に動くことができますが、そうでなかった人たちは、「三つ子の魂百まで」。やはり誰かが見ているところで、そして評価をされるような環境でないと、つい息抜きしてしまう誘惑に駆られてしまいます。「働かざる者食うべからず」とはよく言ったもので、働きが減った分、目に見えていなくても、確実に売上は減っています。そしてそれはいずれ給与にも反映されていきます。一般社員の人たちもそれは意識していなければいけないことです。

特にコロナ禍で在宅勤務などが増えた場合など、自立・自律している人とそうでない人の差はますます広がっていきます。コロナ禍の中でありながら、大ヒットアニメやゲームソフトが出てきたのも、通勤時間や対面の会議などがなくなった空いた時間を、それらを楽しむために充てていた人も一定数いたからかもしれません。一方で、それらの空き時間を、無料のオンラインセミナーをはしごして自己啓発したり、資格取得の勉強時間にこっそり充てたりしている人も一定数います。

「数字を伸ばせる組織」にするには

普段、総務人事担当者の方にお話しすることもあるのですが、その時は「組織というものを、社員満足度や、よりよいコミュニケーションという視点の他に、数字を伸ばせる組織にするのはどうしたら良いか、という点にも着目してみてください」とお伝えしています。

経理担当者の方たちも、普段の視点を少し変えて、「どのような組織体制を敷いている会社が実際に数字を伸ばしているのか、つぶれないのか」、「うちの会社の場合は、ピラミッド組織、フラット組織、それともどのような組織体制が本当は良い数字が出せるのだろう、コロナ禍を乗り切れるのだろう」、そのような視点で、会社や組織というものを経理担当者としての立場から分析してみてはいかがでしょうか。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:前田 康二郎 (まえだ こうじろう)

フリーランステレワーカー。数社の民間企業で経理総務・IPO業務等を行い、海外での駐在業務を経て独立。現在はフリーランスでのコンサルタント活動、講演・執筆活動の他、節約アプリ『節約ウオッチ』(iOS版)を運営している。 著書に『スーパー経理部長が実践する50の習慣』『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』『職場がヤバい!不正に走る普通の人たち』『伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣』(以上 日本経済新聞出版社)、『スピード経理で会社が儲かる』(ダイヤモンド社)、『ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』『自分らしくはたらく手帳』(以上 クロスメディア・パブリッシング)、『経営を強くする戦略経理』(日本能率協会マネジメントセンター)など。最新刊は『つぶれない会社のリアルな経営経理戦略』(クロスメディア・パブリッシング)



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