テレワークでも業務効率を最大化するためのメンタルマネジメント

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テレワークと子育て

テレワークの導入を検討する企業にとって、最も気になるのが業務効率(生産性)の問題ではないでしょうか。オフィスで顔を突き合わせながら仕事をするのが当たり前だったのに、各従業員が別々の場所で業務に従事するとなると、本当にこれまでと同じように仕事をしてくれるのか、心配になるのは当然でしょう。

そこで今回は、テレワークでも業務効率を維持・向上させるために企業ができる工夫について紹介します。テレワークを導入するに当たって考えられる課題を挙げるとともに、それらを解決する方法をご説明します。

従業員のさぼりを防止するためには?

テレワークを自社に導入するにあたって、従業員がオフィスと同じように(あるいはそれ以上に)集中できるかどうかを懸念する人も多いのではないでしょうか。業務マネジメントを見直すことで、「さぼり」の懸念を軽減することにつながります。

テレワークで不安視される「さぼり」

従業員をマネジメントする立場からすると、自分の見えないところでメンバーが本当にきちんと働いているのか、心配になるのは当然だと思います。日本テレワーク協会の調査でも、「社員がサボっていないか」といった不安を始めとした労務管理が問題として挙げられています。

テレワークを導入しようがしまいが、会社やチームに求められる成果のレベルは変わりません。ここでは、テレワークによる従業員の「さぼり」を防止するための工夫として、2つの側面から業務を可視化することを挙げたいと思います。

業務のプロセスを可視化する

上記の日本テレワーク協会は、テレワークの推進と理解促進のために「労務管理の見える化と管理者の適正なマネジメントがポイント」であるとしています。特に業務の開始・終了・中断時間や業務プロセスの見直しが重要なポイントです。

総務省は、テレワークを導入する際に、必要に応じて対象業務の選定や業務プロセス・フローの見直しが必要であると解説しています。 業務に必要な手続き、システム、帳票作成、決裁などの現状を棚卸し、テレワークで行うことのできる業務とできない業務を洗い出すようにしましょう。

プロセスを可視化することで、テレワークによって担われている業務範囲がどれくらい終わっているのか・終わっていないのかを判断しやすくなります。

業務の成果を可視化する

成果を明確にすることも、テレワークの「さぼり」を防ぐためには欠かせません。

そもそも、上司の目の届かないところで仕事をするテレワークでは、完璧に労働時間を管理することは極めて困難です。常にパソコンを立ち上げておりオンライン(何らかの作業をしている)であるかどうかをチェックするツールがないわけではありませんが、それでもオンラインのように見せかけて席を外す行為を防ぎきるわけではありません。

それであれば、労働時間というプロセスを管理するよりも、そこから出てくるアウトプット=成果を管理するやり方に切り替えた方がよいかもしれません。あらかじめ業務範囲とプロセスを明確にしておけば、その結果生まれる成果も「提案資料10ページ分」「アポ取り3件」などと定義しやすいはずです。

成果を可視化するようにすれば、それを達成できているかどうかで「さぼり」の有無を判断できます。労働時間を細かく管理する必要もなくなるので、管理者の負担も増やさずに済むでしょう。

テレワークでもモチベーションを向上・維持するためには?

調査によると、モチベーションと生産性には密接な関係があります。 テレワークという新しい働き方を導入するのみならず、その働き方を整備することでさらなるモチベーションの向上を図ることも可能です。

テレワークの導入自体にモチベーション向上効果がある可能性

まず、テレワーク自体が従業員のモチベーションアップにつながると考えられています。国土交通省は、テレワーク導入によってオフィスワーカーにモチベーションの向上をもたらすと述べています。また、テレワークをしている会社員の方が一般会社員より高いモチベーションを持っているという調査結果も出ています。

テレワーク導入によって働き方に柔軟性が生まれ、子供の世話やプライベートの用事などを平日(営業日)にこなしながら業務時間を自分の裁量で管理できます。出社・退社の時間もなくなるため、その分をプライベート時間に充てることも可能です。こうした事情から、テレワーク制度の導入が従業員のモチベーション向上につながると考えられるのです。

業績評価制度を明確にする

先に挙げた業務成果の可視化とも相通じていますが、テレワークを想定した評価制度を定める必要があります。

テレワークの導入・実施のためのガイドラインにおいて、厚生労働省も「評価制度及び賃金制度を明確にすることが望ましい」「評価者に対して、労働者の勤務状況が見えないことのみを理由に不当な評価を行わないよう注意喚起することが望ましい」と述べています。特に、仕事の成果に重点を置いた評価を行う場合は、テレワークしている人としていない人とで同等の評価が可能となるはずです。

評価制度を明確にすれば、テレワークをする人も何を目標に働けばいいか明確になります。「上司がそばにいないから低く評価されるのではないか」という不安も払拭され、高いモチベーションを維持しやすいのではないでしょうか。

長時間労働を防ぐ

テレワークのデメリットの一つとして、長時間労働が挙げられています。自宅で働いているとONとOFFのメリハリがつきにくく、つい深夜や早朝、休日も働いてしまいがちなのです。おのずとモチベーションの低下にもつながってくるでしょう。こうした長時間労働の抑制も労務管理の課題です。

評価を明確にすることは、長時間労働の予防にもつながります。長時間にわたって働いても評価対象にならないこと、業務効率を上げて良い成果物を出すことが評価対象となることを全社的に周知すれば、「つい長時間労働してしまう」という働き方を回避するよう従業員を方向付けることができるでしょう。

社員のコミュニケーション不足を防ぐためには?

テレワークですと、上司や同僚と顔を合わせる機会が減ります。そのため、コミュニケーション不足は大きな課題です。業務の遂行に当たってコミュニケーションは必要ですから、コミュニケーション不足は業務効率の低下に直結します。コミュニケーションの機会を補う仕組み作りが欠かせません。

従業員の孤独感が課題

日本テレワーク協会は、テレワークを実施する企業の課題として「孤独感」があると指摘しています。「職場の人たちとのコミュニケーションが不足すると孤独感を感じやすい」と述べていることからも、コミュニケーションの問題を放置していると従業員の孤独感につながり、ひいてはモチベーションの低下や離職を招きかねません。

コミュニケーション不足を解消するためにも、テレワーク実施者が常にコミュニケーションを取れる・取りやすい仕組みや文化を構築することが企業には求められるでしょう。

常にオンラインにしてコミュニケーションの窓を開けておく

日本テレワーク協会は、独自のバーチャルオフィスシステムやコミュニケーションツールの活用により、社員全員が常時接続の状態を作り出すことで、テレワークであってもオフィスにいるのと同等のコミュニケーション環境を実現した企業の事例を紹介しています。緊密なコミュニケーションが可能なので、社員が孤独にならないのです。

こうしたツール・環境構築が難しいとしても、テレワーカー(テレワークしている従業員)に加えてオフィスワーカーも同じツール・環境に常時オンラインにしておき、コミュニケーションをいつでも交わせる状態を作ることでテレワーカーの孤独感を防ぐことが可能となります。

休憩時のチャットや「オンライン雑談」を認める

オフィスにいると、上司や同僚とのちょっとした雑談が息抜きや業務遂行のヒントになることがあります。仕事中の雑談が仕事に効果があるとするアンケート結果も存在するほどです。 実際、行き詰まったときの雑談で突破口を見いだしたという経験を持つ方もいるのではないでしょうか。

テレワークでも、こうした雑談の機会を設けるとよいかもしれません。仕事上で必要なやり取りだけではなく、休憩中にもチャットやWEB会議システムなどを通じて雑談することを認めれば、テレワーカーの孤独感を防ぐことができますし、モチベーションの向上や孤独感の低下も期待できます。

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まとめ

テレワークの導入というと、ネットワーク環境やセキュリティー設定などインフラ整備を気にされる企業が多くあります。確かにこうした準備がなければテレワークを実現することは難しいのですが、それ以上に「生産性を向上させるための準備」も求められます。

今回ご紹介したメンタルマネジメントの工夫を参考に、テレワークの生産性の上げ方について検討する必要があるでしょう。

【参考】
日本テレワーク協会 テレワークの推進と理解促進のための9つの提言
総務省 テレワーク導入手順書
国土交通省 テレワークの効果・効用
厚生労働省 情報通信技術を利用した事業場外勤務の 適切な導入及び実施のためのガイドライン

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