「透明なパンツ」でバズったONE NOVAに聞く、クラファン成功の裏にあった泥臭い努力

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ONENOVA_インタビュー

インターネットで支援を呼び掛け資金を集めるクラウドファンディング。今や資金調達手段として定着し、市場規模も年々拡大しています。

今回は、「世界一“透明な”パンツ」というキャッチコピーのクラウドファンディングプロジェクトが話題になったONE NOVAの代表取締役・高山泰歌さんと共同創業者兼広報の金丸百合花さんにインタビュー。ONE NOVAがクラウドファンディングを成功させた工夫や裏側にあった泥臭い作業、その後売上が落ち込んだ際に行った戦略の見直し、企業の活用におけるポイントなどをお聞きしました。

友達全員にメッセージ。泥臭い作業が成功のポイント

【プロフィール】高山 泰歌(たかやま たいが)
株式会社ONE NOVA CEO。1998年生まれ。幼い頃から「起業」に憧れを抱き、慶應義塾大学(SFC)に入学直後の2017年に高校から同級生の金丸さんとONE NOVAを立ち上げ、2018年より全生産工程を開示した「透明なパンツ」を発売。
Twitter:@taigatkym
【プロフィール】金丸 百合花(かねまる りりあん)
株式会社ONE NOVA共同創業者兼広報。1999年生まれ。高校生の頃からフェアトレードのバナナに関する活動を行い、ビジネスで社会問題の解決に取り組むソーシャルビジネスに関心を持つ。慶應義塾大学(SFC)に入学後、高山さんと一緒にONE NOVAを立ち上げる。
Twitter:@liliank_on

――ONE NOVAの事業について教えてください。
高山泰歌さん(以下、高山):アンダーウェアをインターネットで販売しています。現在販売しているのは、男性用のパンツ。オーガニックコットンを使用し、フィット感なども考えて作られた快適なパンツであることに加え、どの素材はどこで作っているなどの生産工程をすべてオープンにしていることが特徴です。この「透明性」から、クラウドファンディングでは「世界一“透明な”パンツ」と名付けて売り出しました。

――起業後すぐにクラウドファンディングを行った理由を教えてください。

高山:ブランドの認知度を上げるためです。大学入学時にはクラウドファンディングは世の中に定着していたので、もちろん知っていました。クラウドファンディングなら目標の支援金額を達成できなくても一定のユーザーには見てもらえるチャンスがあると考えました。

金丸百合花さん(以下、金丸):クラウドファンディングのプロジェクトページには、私たちがパンツにかけている想いも一緒に載せられることがよかったですね。

毎日履くパンツだからこそ、本当に心地いいものを選んでほしい。そんな想いで起業した私たちだからこそ、想いや考えを載せられるクラウドファンディングは相性がよかったんです。

――クラウドファンディング実施に向けて、どんな準備をしましたか?

高山:クラウドファンディングに挑戦しようと決めたものの、最初は何の知識もありませんでした。だから、クラウドファンディングを活用しているアパレルブランド「ALL YOURS」に連絡をしたんです。話を聞いてもらい、ノウハウを教えてもらいながら、準備を進めていきました。

実は今、僕たち2人ともインターンとしてALL YOURSで働いていて、アパレル業界について学ばせてもらっています。

金丸:実際の準備期間はプロジェクトページの文章を書いたり、写真を揃えたりなどトータルで2カ月くらい。それまでに商品を作るために構想を練ってきているので、プロジェクトのためだけに手を動かしたという部分では、実際にそこまで時間はかかっていないですね。

――プロジェクトでは成功に向けどんな工夫をしましたか?

金丸:大きく2つあります。1つ目が、下書き状態のプロジェクトページの公開。クラウドファンディング開始の2カ月前から下書き状態のプロジェクトページを公開していました。

スタート前からの過程を見せることでユーザーとの距離が近くなり、本公開をしたときに購入してもらいやすい状況を作れたと感じます。事前に文章の間違いを指摘していただいたこともありました。

高山:もう1つが知り合い全員への個別メッセージです。クラウドファンディングはページを出したら見知らぬ誰かが支援してくれると勘違いしがちですが、実際は本当に知人からのスタート。一人一人に頭を下げてお願いをする姿勢がないとなかなかうまくいかないと思います。だから、まずは友達、知人、家族に知ってもらうことが大前提なんです。

作成したプロジェクトページのリンクをメッセージに添付して、連絡先の分かる友達全員に送っていました。「もし文章に間違いがあったら教えてね」と周囲を巻き込むようにひたすらメッセージしていましたね。メッセージの文章も、一人一人の近況に合わせて変えていました。

――全員ですか……!

金丸:はい(笑)。2人のFacebookの友達を合わせた700人のリストを作って、コツコツ送っていましたね。ALL YOURSの代表・木村昌史さんに「友達全員が支援したくなるようなページを作りなよ」と言われていて、その一手として、できる限り友人全員に届けて、プロジェクトに巻き込もうと心がけていました。

高山:あとは、「透明なパンツ」という惹きのあるキャッチフレーズをつけたこともポイントだったと思います。「透明なパンツ」というフレーズは木村さんと初めてお会いして相談したときに生まれました。「透明性を大切にしているんです」という私たちの言葉を聞いて「それってもう世界一透明なパンツじゃん!」と言ってくださったんです。

聞いた人が思わず反応してしまうようなフレーズをつけたことで、WEBメディアでも取り上げていただけました。その記事公開の時期も、プロジェクト期間に合わせて調整してもらったりしました。

――プロジェクトを公開してから終了まで、支援はどのように推移しましたか?
金丸:最初は勢いがあったのですが、途中で支援が思うように伸びず、中だるみしてしまった時期がありました。

金丸:プロジェクトの中間時期は支援も伸びづらく、何をしたらいいか分からなくなり、私たちのモチベーションも下がってきてしまって……友達にメッセージを送るのが申し訳なくなり、精神的に辛くなってしまったんです。

一人一人へのメッセージ送信も怠ってしまっていたのですが、木村さんに喝を入れていただき、もう一度いつまでにどれだけメッセージを送るかなど計画を立てて行動に移しました。終盤にはラストスパートで発信量を増やし、それに伴って支援も増えていきました。最終的には、無事にプロジェクトを達成できてホッとしました。

高山:ここまで伸びるとは思っていなかったので、達成したときはとても嬉しかったです。目標設定額を低くしていたというのもありますが、200万円を超えるとは思っていませんでしたね。

「透明なパンツ」と言い続けてもモノは売れない

――プロジェクト達成後、事業はどのように変化しましたか?

高山:クラウドファンディング自体は盛り上がり話題にもなったのですが、その後は受注数が落ち込んでしまいました。「透明なパンツ」という見せ方だけで売るのに限界が来たんです。

メディアやクラウドファンディングでの話題性だけだと「透明なパンツ」はキャッチーでウケがいい。予想以上の反応があったので、そのまま続ければいいと思っていました。でも、実際のところ消費者は話題性だけではモノを買わない。クラウドファンディングが終わってから初めてそのことを実感しました。

――どのように立て直したのでしょう?

金丸:透明性を売りにするのではなく、このパンツがどういいのか、履き心地がどうかといった機能性を伝えるよう工夫しました。

ポップアップストアなど対面で販売するときは「透明なパンツです」と直接伝えるよりも、「窮屈さを感じません」「ポジションが維持されますよ」とおすすめしてから「実は生産工程も見える“透明”なパンツなんです」と伝えたほうが、圧倒的に売れるんです。

高山:その違いで、ブランディングとマーケティングは異なるのだと理解しました。「透明なパンツ」は発信時のブランディング。人に商品のよさを伝えて売るときは、違う伝え方をしないといけないということが分かり、そこから持ち直したように思います。

――その後、なぜ「透明なくつ下」で2度目のクラウドファンディングを行ったのでしょうか?

金丸:新しいプロダクトとして「くつ下」ができたタイミングで、改めて「透明」という言葉を使う理由を考え直したからです。

「透明」だけだと売れないと痛感し、今後は使わないようにしようかとも思いました。しかし、商品が手元に届くまでのすべての工程を見える化しているのがブランドの特徴であり、そこに共感して手にとってくださる方もいますし、2人のキャラクターが好きとおっしゃってくれる人など、お客さまがONE NOVAのパンツを購入する理由は様々です。

一人一人の「これがあるからONE NOVAのパンツが好き!」というポイントを全部肯定したいので、やはり「透明であり続けよう」と思いました。そういった想いを改めて皆さんにお伝えしたいと考え、2度目のクラウドファンディングに挑戦しました。

企業のクラウドファンディング活用におけるポイント

――企業がクラウドファンディングを実施する際、どんなことに注意したらいいでしょうか?

高山:まず大切なのが、目的と手段を履き違えないことです。クラウドファンディングは、あくまで手段。「クラウドファンディングをやりたいからやってみる」だとうまくいかない可能性が高いです。

最近だとクラウドファンディングのプラットフォームは、1つの販売チャネルとしてECサイトのように使われるケースが多々あります。ですがその商品を売るのに本当にクラウドファンディングじゃないといけないのか、よく考えるといいと思います。

金丸:もう1つのポイントは、リターンの設定です。リターンはユーザーにとって商品。そこに買う理由がないと手を出しません。「こういう想いでやっています!」と一生懸命に書いているプロジェクトが多いですが、その想いとリターンに筋が通っていないと、周囲の人は応援しにくいですよね。

高山:リターンが適切か迷った場合は「3,000円でそのリターンだった場合、自分なら購入するか?」と、自問自答するのがおすすめです。例えば、リターンがプロジェクト結果報告のメールのみや感謝のお手紙だけだと、あまり魅力的には思えませんよね。クラウドファンディングは募金ではなく、商品やサービスを売っている場所。リターンの価値があるのかは案外見落としがちですが、非常に大切だと思います。

ただ、感謝のお手紙がダメというわけではありません。クラウドファンディングは商品やサービスとともに、手掛けている人の想いを届けている場所でもあるからです。個人と同じようにうまくカラーを出すような企業の場合は、クラウドファンディングに向いている可能性も大いにありますよ。

違うやり方で更なる成長を。3度目のクラファンに挑戦

――最後に、今後の展望を教えてください。

高山:下着というジャンルを通して、人々の生活をどう変化させるのかを突き詰めていきたいですね。男女や年齢問わず、試行錯誤してブランドを展開させていきたいです。

実は、来年1月に海外のクラウドファンディングプラットフォーム「Kickstarter」で3回目のプロジェクトを行う予定です。国境がないブランド作りをしたいという気持ちがあり、将来海外への販売も視野に入れています。「Kickstarter」に参入している日本の事業者はまだ多くないので、大きなチャンスでもあります。

今回は「透明」という言葉以外でのチャレンジをしようと思っています。2度のクラウドファンディング経て、「透明性」という言葉だけではユーザーを増やすことは難しいと感じました。だから次は、商品自体をアップデートしながら、「透明」という言葉を使わずにどうPRするか構想中です。

「『ONE NOVA』の商品を待っていた!」と毎回思ってもらえるようなブランドになれるよう、今後も挑戦していきたいですね。

(取材・文:田中さやか、編集:東京通信社)

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

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