人生をかけられる環境へ。リディラバ安部敏樹が語る「悩んだ末の法人化とその後」

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「社会の無関心を打破する」。その思いのもと、社会問題が起こっている現場へ足を運ぶ「スタディツアー」の企画運営を手掛けるのが、一般社団法人リディラバ代表の安部敏樹さんです。

東京大学在学中の2009年にリディラバを立ち上げ、2012年に法人化。2017年には、フォーブスがアジアを代表する30歳未満の30人を表彰した「30 UNDER 30 ASIA」にも選出されました。現在、リディラバはスタディツアーを軸に、メディア事業も手掛けるなど活動の幅を広げています。

今は一般社団法人のリディラバですが、もともとボランティア組織として始まりました。組織立ち上げから数年、法人化すべきか悩んでいた安部さんを決意させたのは、仲間から掛けられた「リディラバが本当にやりたいことは何か」という問いがきっかけでした。

悩んだ末の法人化。決意のきっかけは仲間の言葉

【プロフィール】安部 敏樹(あべ としき)
一般社団法人リディラバ、株式会社Ridilover代表
社会問題をツアーにして発信・共有する集まり「リディラバ」を大学在学中の2009年に設立。250種類以上の社会問題のスタディツアーの実績があり、これまでに10,000人以上を社会問題の現場に送り込む。また中高生の修学旅行や企業研修などにもスタディツアーを提供。総務省主催「第1回起業家甲子園」最優秀賞、東京都主催「第10回学生起業家選手権」優秀賞、観光庁主催「第2回若者旅行を応援する取組表彰」観光庁長官賞(最優秀賞)など受賞多数。
Twitter:@toshikiabe

――2009年の組織立ち上がから10年。リディラバの当初の活動を教えてください。

リディラバは任意のボランティアの集まりとして、私と友人数名でスタートしました。理念は「社会の無関心を打破する」。主な事業は社会問題の現場を旅する「スタディツアー」の企画運営です。この理念と事業は活動開始から10年経った今でも変わらずリディラバの根幹です。

仲間集めのために開いた説明会や懇親会では、ユニークな企画をすることに気合が入っていましたね。今思うと説明会として機能したか未知数ですが(笑)、初めは10人ぐらいだった基幹メンバーが最初の説明会で30人程度に増えました。

「Ridiculous things lover(バカバカしいことが好きな人)」という団体名の由来どおり、バカバカしいことも考えたりと遊び心を持って楽しんでいました。どんどん活動の輪は広がり、3年後にはボランティアスタッフが総勢600人にまで増えました。

――2012年に法人化されましたが、当初から法人化は計画していたのですか?

実は、法人化すべきか、最初はかなり悩んだんです。

立ち上げから3年になる頃には規模も大きくなったため、周囲から「法人化しないのか」と聞かれる機会が増えました。確かに、ボランティア活動で続けるよりも、法人化した方が組織として基盤が整います。一方でボランティア組織には、フラットな関係性やムーブメントとも言えるような勢いある雰囲気など、ボランティアならではのよさがあります。だからこそ、法人化すべきか迷っていました。

そんなとき、仲間たちが「私たちが最もやりたいことは『社会の無関心を打破する』ことじゃないの?」と言ってくれたんです。その言葉のおかげで原点回帰することができました。リディラバは「社会の無関心を打破する」ことがゴールであり、それを達成しないと私たちは敗北なワケです。


2012年の法人化前に行ったツアー報告会の様子(リディラバ提供)

そう考えると、これから日本中を巻き込む組織作りや活動を本気でやっていくには、人生をかけて一緒にゴールを目指してくれる仲間が必要だと思ったんです。一方で、ボランティア組織のままではメンバーの生活や人生を背負えません。その状態で理念達成への階段を登っていくのは無理があります。当時のリディラバにはメンバーが人生をかけて活動に打ち込める環境がありませんでした。

「リディラバ」という船に乗る仲間に、長い時間一緒に航海してもらうために、メンバーの生活の糧をちゃんと作りたかった。組織の経済面を整備し、給与を払える環境を作る手段として、法人化を視野に入れるようになりました。

ビジコンをきっかけに法人登記。周囲の評価も“サークル”から変化

――リディラバは「一般社団法人リディラバ」と「株式会社Ridilover」の2つの法人格がありますが、何か理由はありますか?

法人格の種類にこだわりはありませんでした。2012年に出場したあるビジコンで賞金を受け取る際に法人登記が必要だったんです。この機会に法人化しようと一般社団法人で登記しました。特に法人格の指定はなかったのですが、後になってから運営事務局から「株式会社のみを想定していたため、一般社団法人では賞金を受け取れない」と連絡があり、慌てて株式会社Ridiloverを作ったんです。結果的に株式会社であることで旅行業登録に必要な証明がスムーズではありました。

――ビジコンにはなぜ出場したのでしょうか?

法人化の資金として賞金に目をつけたのもあったのですが(笑)、一番の目的は「社会問題は事業として可能性がある」と証明するためです。

当時、外から見ると“リディラバは面白いサークル”としか思われていない節があったんですね。起業サークルの人たちに「東大まで来て何やってるの?(※安部さんが東京大学学部在学時)」と言われたこともあります。でも私は、リディラバの活動にビジネスとしても可能性を感じていたんです。

――実際にどのような反応がありましたか?

「ビジコン荒らし」と言われたほど、2012年はビジコンに片っ端から出場し、その多くで優勝、準優勝をいただきました。それにより、目的どおり「リディラバの事業、ひいては社会問題を取り扱う事業はポテンシャルがある」と社会的に認知してもらえました。

リディラバはスタディツアーを通じて、社会課題に対するアクセシビリティ(接点)を作っています。そのアクセシビリティからまた個人の行動に何かしら変化が生まれます。どんどん変化を生み出す、個人がアクションを起こすという意味で、社会課題の解決への可能性が高い。それを自身が信じるだけでなく、ビジコンで評価されたことで「あれ? リディラバの活動ってそんなに評価されるの?」と周囲や仲間の目も変わりました。

「フルタイムで働く社員」のおかげで生まれた変化

――周囲の評価のほかに、法人化の前後で変化はありましたか?

法人として社員に給料を払えるようになったことですね。一度活動から離れた仲間にも、生活を支える環境が整ったからこそ、再度声をかけることができました。第一期社員で任意団体の立ち上げから今も続けているメンバーは、一度は一般企業に就職したメンバーです。

新卒採用を始めたこともインパクトが大きかったです。2016年に初めての新卒社員を採用し、学生にとってのキャリアの選択肢、それも社会人人生のスタート地点に選ばれるようになるまで、組織の信頼と事業の可能性が成長したのだと感じました。

現在の基幹メンバーはインターン生を含めて約45人。事業のコアな業務に関わっている人数は少しずつですが大きくなっています。フルタイムで働いてくれる人材の確保は、事業推進において大きな転換になりました。

――社員を雇えるようになったことで、事業にはどんな変化がありましたか?

ボランティア組織だったときの課題として、メンバーが入れ替わりやすいのでなかなか知識や経験などの専門性を蓄積できないというものがありました。給与のある社員となれば、継続して活動にコミットメントできるようになります。そのため専門性を深めやすく、ツアー企画の質にもよりこだわれるようになりました。

さらに、社員の存在により組織の重心がしっかりすることで、様々なステークホルダーと関われるようにもなりました。スタディツアーの提供先も企業、自治体、学校などに広がり、活動を拡大する視点も培われています。

最初は安部個人への信頼ベースだった活動が、今ではリディラバという組織への信頼に変わっています。


一度は他社へ就職し、法人化でリディラバに戻った社員第一期の中島利恭さん。立ち上げの様子を知る人物として、安部さんと一緒に当時の様子を語ってくださいました

「2060年までの長期計画を作っている」リディラバの今後の展望

――今ではスタディツアーを教育現場や企業研修で提供したり、メディア事業を立ち上げたりと、多方面に事業展開されています。今後のリディラバの展望を教えてください。

事業の展開は、すベて「社会の無関心を打破する」という理念の達成から逆算して必要だから行っています。理念達成に向け、リディラバでは2060年までの長期計画を作っています。中長期の目標になるほど「組織としてこの状態を達成する」という抽象度の高い目標を定めています。

「2060年には世界各国のGDPがこうなり社会課題に関するガバメントマーケットはこうなるはずだ」「その世界でリディラバがこのポジションを取るために必要なことは」と逆算していきます。最終的に「このぐらいの売上が立ち、こういう状態だ」となるように考えています。

人類が社会で活動するには、何かしらの問題が生まれます。そうである以上、その社会と個々人のあり方を最適化するシステムが必要です。そしてリディラバは、そのシステムでありたい 。「社会の無関心の打破」に向け、最終的には30億人以上を巻き込み、社会システムそのものを変えたいと仲間たちと語っています。それにはまず現在の活動を広げていき、より社会へのインパクトを大きくしていかなければなりません。

とはいいつつも、やりたいことは次から次にどんどん出てきます。広げた風呂敷を畳むことが大変だったりします(笑)。

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Bizpedia編集部

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