起業、採用、株主との出会いもSNSから始まった。MATCHA社長の「僕がSNSをやる理由」

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訪日外国人向けに日本の情報を発信するWebメディア「MATCHA」。外国籍スタッフを含む編集チームが、国内の観光スポットや注目グルメなどを紹介するコンテンツを制作。世界の240以上の国と地域からアクセスを獲得しています。

同名の運営会社、MATCHAを率いる代表取締役社長の青木優さんは、「起業に至るにはTwitterやFacebookなどのSNSの影響が大きかった」と話します。個人や企業の「SNSの発信力」が世の中を大きく動かす現代。ビジネスにおけるSNSの活用術を聞きました。

【プロフィール】青木 優(あおき ゆう)
株式会社MATCHA代表取締役
1989年生まれ、東京都出身。明治大学国際日本学部卒。学生時代に世界一周の旅をし、2012年にドーハ国際ブックフェアのプロデュース業務に従事。デジタルエージェンシーaugment5 inc.に勤めた後、独立し起業。2014年2月より訪日外国人向けWeb メディア「MATCHA」の運営を開始。現在10言語に対応し、様々な企業や自治体と連携しながら海外への情報発信を行なっている。内閣府クールジャパン戦略における「クールジャパン・地域プロデューサー」も務める。
Twitter:@yuuu_a

Twitter歴10年。SNSで見える世界が広がった

――現在3万人のフォロワーを抱える青木さんのTwitterアカウント。最初に始めたきっかけは?

Twitterを始めたのは2009年の20歳のときでした。堀江貴文さんがブログで「絶対にTwitterを始めたほうがいい」と書かれていたことがきっかけです。ちょうど日本でも普及し始めた頃でした。

最初は、孫正義さんと堀江さんがフォローしている人を全員フォローしました。そうすることで、ビジネスのトップリーダーが見ている情報がわかるので、僕自身の目線が上がり、見える世界が広がると思ったんです。

――具体的にどのように世界が広がりましたか?

Twitterを始めてすぐ、大手企業の方がフォローを返してくれたのがきっかけで、有名企業の役員クラスが集まる飲み会に参加する機会に恵まれました。それ以降、面白そうな人には自分から連絡し、同時に「自分はその人に何を提供できるか」を考えるようになりました。

また、学生時代に世界一周をしたことがWebメディア「MATCHA」の構想につながったんですが、その旅のきっかけも学生で世界一周をしたという方のツイートを見たことでした。それを見て僕も世界一周を決意し、せっかくならばと始めたブログが次第に読まれるようになり、それに伴いTwitterのフォロワーも増えていきました。

――どのような投稿でフォロワーが増えましたか?

最初はブログに各地の美しい景色の写真をアップしていましたが、なかなか読者がつきませんでした。そこで、世界一周に必要な持ち物や航空券の取り方などをブログに書いて、Twitterで記事のリンクを投稿するようにしたんです。世界一周を検討している人に役立つ情報だったため、読者が増えていきました。

「MATCHA」でもこの経験を生かして、外国人が日本で戸惑いそうな「Suicaの購入方法」「コンビニコーヒーの買い方」などのハウツーを取り上げた記事を掲載し、実際によく読まれています。


※言語ごとに「MATCHA」のFacebookページを開設

SNSマーケティングというと新しい手法と思われがちですが、基本的な考え方は一般的なマーケティングと変わりません。ユーザーターゲットが誰で、その人にとって有用な情報は何かを考え、地道に発信することがフォロワーや読者を増やす近道ですね。

創業メンバーや株主との出会いもSNSだった

――起業時にもSNSが役立ったとお聞きしました。

創業メンバーは全員Twitterでつながった人です。また、設立時に「会社を作りました」とTwitterやFacebookへ投稿したところ、様々な企業の方に拡散され、「訪日観光客向けメディアは面白そうなので、うちと何かお仕事をしませんか?」と声を掛けてくれた企業もありました。それが初のクライアント獲得につながりました。

ほかにも「MATCHA」開設から1〜2カ月で、複数のSNSを通じて売上につながる連絡をいただきました。現在の株主との出会いもありましたね。

――SNSにどんなメリットを感じていますか?

どのようなアクションとプロセスで事業が伸びているのか、事業成長の過程をカジュアルに発信できる点はとても効果を感じています。プレスリリースだけだと結果のみの発表になってしまいがちですが、例えば日頃から定期的に行なっているユーザーヒアリングの様子などをSNSで紹介すると、より多くの方に興味関心を持っていただけます。

採用にも影響を感じています。実際、スカウトメッセージへの返信や面接で「以前から興味ありました」「Twitterでフォローしていました」と言われるケースは多いです。僕の経歴や事業についてもSNSの投稿内容をチェックしてくれていると話がとてもスムーズに進みます。

――逆にリスクを感じたことはありますか?

これまでリスクを感じたことはないですし、むしろSNSでつながった人たちがいなければ「MATCHA」はなかったかもしれません。

特に経営者という立場だとSNS をオープンにすることにリスクを感じる人もいるかもしれません。でも、自宅が特定される投稿や他者を攻撃する投稿をしないだけでも、リスクは軽減できるはずです。それよりも情報をオープンにして出会いを得られるメリットの方が格段に大きいと考えています。

「SNS採用」で見ている3つのポイント

――SNSのつながりで人を採用する際、どのようなポイントを見ていますか?

投稿やプロフィールから主に3つの点を見ています。

まず1つ目は、その人の発言や活動内容に尊敬できる部分があるか。尊敬できるところがあると、その人の長所がより多く見え、一緒に働いても楽しいと思うんですよ。

2つ目は、会社のカルチャーに合う人かどうか。「MATCHA」には外国籍のメンバーが多いので、英語が話せなくても、異文化に抵抗なくコミュニケーションを楽しめる人だと合いやすいですね。

反対にSNSに愚痴を書く人は、経験上、後々会社と合わなくなりますね。長く一緒に働くのは難しいです。SNSの投稿は、自分が思っている以上に人間性がにじみ出てしまうんですよね。

そして最後の3つ目はスキルセット。今後の事業に対して必要な力をその人が身につけているかどうかを見ています。

――これまでSNSからのつながりで採用に結びついた例を教えてください。

起業の約1カ月前から開催していた朝会に、SNS経由で知り合って参加してくれた大学生がいました。起業後も「MATCHA」に関わってくれたのですが、大学卒業のタイミングで大手広告代理店へ就職したんです。でも、僕は一緒に働きたいと強く思っていたので、SNSで毎週のように連絡を取り続けていたところ、2年越しで戻ってきてくれました。それが、現在のCPO(最高プロダクト責任者)です。

きっかけだけでなく、関係性を継続できるのもSNSの利点ですね。いいなと思った人は、その時は採用のタイミングが合わなくても、FacebookやTwitterでつながって事あるごとに連絡を取るようにしています。

――採用以外で「会いたい」と連絡を受けたときは、どのような点を見ていますか?

送られてきた文面の熱量を見ています。「とにかく誰でもいいから会いたい」などが理由の場合はお会いできないこともありますが、連絡をくれた人には可能な限り会うように心がけています。僕自身、SNSで世界が広がったからこそ、SNSの発信や実際にお会いしたことで誰かの何かのきっかけになれたら嬉しいですね。

「SNSがなかったら経営者じゃなかったかも」

――青木さんにとってSNSとは?

普通に生活しているだけでは出会えない人との「つながり」を提供してくれる存在です。

SNSで出会ったことのない人々と交流する前は、友達や同僚などの「横のつながり」と、先輩後輩のような「縦のつながり」だけで僕の世界は完結していましたが、SNSを通して縦横とは違うゾーンで興味関心の重なる人たちの「斜めのつながり」ができました。この「斜めのつながり」は、自分の生活圏外の人と出会えるという意味で「旅」と近いものがあると思っています。

SNSがなかったら、僕は経営者にはならずに今頃キャリア選択に困っていたかもしれません。SNSで広がった世界にチャンスを掴む機会がたくさんあったからこそ、今がある。僕の人生に大きな影響を与えてくれた大切なツールですね。

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