5月病の正体は「適応障害」 その疲れ、放置するとうつ病リスクも?

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今年は10連休と長いゴールデンウィークとなりました。長期休暇の後はリフレッシュして仕事に邁進できるはずですが、この時期は5月病に悩まされる人も多いもの。

さらに休暇中の遊び疲れが続いているのか、久しぶりの仕事で参ったのか、5月病が長引いたり重症化したりと例年以上に疲れを感じている人もいるかもしれません。

今回は産業医の私が、5月病になりやすい人や放置した際のリスク、企業ができるケアを解説します。(執筆者:産業医 浅野大樹)

5月病は医学的には「適応障害」の状態

例年、5月の連休明けに「倦怠感」「不眠」「不安・憂鬱」「集中力の低下」といった症状を訴える人が現れます。こういった状態を俗に「5月病」と呼びます。

5月病という言葉自体は正式な医学用語ではありません。医学的には「適応障害」の状態と考えられています。4月に新生活を始めた学生や職場環境の変わった社会人が、新たな環境にうまく適応することができないためにストレスを抱え、そのストレスがもとになって出てきた症状とされています。

うつ病との区別は難しくはありますが、適応障害の場合にはストレスの原因(仕事、人間関係等)から離れると症状が急激に改善すると考えられています。

5月病になりやすい人はこんな人

5月病と言われる適応障害の状態は、人口の1%程度の人が陥っているとされています。誰しもが適応障害を起こす可能性を秘めていますが、ストレスとの付き合い方が苦手なタイプの人に多いと考えられています。当てはまるのは次のタイプの人です。

・悩みなどを周りに相談せず一人で抱え込みやすい人
・そもそもストレスに対処した経験に乏しい人
・責任感が強く真面目で融通が利きにくい人

自分の周りにこのようなタイプの人がいて、これまで難なくこなせていた仕事でミスが目立ったり、調子が悪そうだったりする場合には、気にかけて声をかけてあげるとよいでしょう。適応障害の状態の人は本人もどうしていいかわからず誰にも言い出せずに苦しんでいることも多いからです。

5月病を放置するとうつ病リスクも

「ちょっと疲れがたまっているだけ」と、5月病を放置するとどのようなリスクがあるのでしょうか? 「5月病なんて職場に慣れてくれば自然と回復する」などと軽く見ていてはいけません。

適切な対応を行わずに適応障害を放置すると、うつ病に移行することが知られています。適応障害と診断された方の40%以上が5年後にはうつ病と診断されているとの報告もあります。(出典:厚生労働省 みんなのメンタルヘルス

適応障害の状態でも判断力や能率は低下しますが、うつ病に移行するとそれが長期に渡ることになります。人手不足が叫ばれる今の時代、従業員の能力低下は企業にとっても大きな損失につながります。

また、ブラック企業等が厳しく批判される現代においては、対応を誤れば企業にとって貴重な人材を失うだけでなく、経営者も善管注意義務(善良な管理者の注意義務)違反に問われかねません。したがって、「たかが5月病」と軽く考えて見過ごすのではなく、企業のリスク管理の一環としてしっかりとケアすることが大切です。

企業が従業員にできる5月病のケア

企業は従業員の5月病にどう向き合えばよいのでしょうか?

前にも触れましたが、5月病はストレスによってもたらされます。したがって5月病に苦しむ従業員のストレスを軽減してあげることができれば予防あるいは治療できると言えるでしょう。

しかし、ストレスの原因となるものは人それぞれで画一的に対応をするのは困難です。したがって5月病の予防・治療の第一歩となるのは、労務担当者や管理職、異変に気付いた同僚がその従業員とのコミュニケーションを図り、ストレスが何かを理解することです。

ストレスの原因が特定できれば環境調整を

その結果、ストレスの原因となるものを特定できたならば、可能な限り環境を調整してあげて、ストレスの原因を少しでも軽減してあげることが重要です。

場合によっては部署の異動や業務フローの見直しのような対応が必要になるかもしれません。適応障害の場合はストレスの原因が遠ざかっただけで症状が改善することが多いため環境調整は非常に有効な手段のひとつと言えるでしょう。

ストレスが本人の認知の問題であれば改善のアドバイスを

また、従業員とのコミュニケーションの結果、5月病に苦しむ従業員のストレスが本人の受け止め方(認知)の問題によって起きていることがわかった場合は、受け止め方の改善を行うようにアドバイスします。受け止め方の改善を通してストレスを軽減しようとするアプローチは、精神科の領域では認知行動療法と呼ばれて広く行われており、効果が期待できる対処法です。

よい意味での「いい加減さ」も必要

前述の5月病になりやすい人の例として挙げた中でも見られるように、適応障害に陥りやすい人の中には真面目であるが故に物事の見方に柔軟性が欠けてしまい、ストレスを抱える人が多くいます。さらに変化の激しい現代においては思うように物事が進むことのほうが少なく、自分の中の「こうあるべき」という考え方に一致しないことに納得ができずストレスを抱えることも少なくありません。

だからこそ、よい意味での「いい加減さ」のようなものも必要です。ストレスを抱えそうな人には日頃から周囲が働きかけ、物事の様々な考え方や見方があることを伝えてあげるとストレスへの対処方法を学べるでしょう。

ストレスを自覚したら仕事から離れる時間も作ろう

また、ストレスを自覚したら、仕事から離れ、趣味や運動の時間を持つことや、十分な睡眠や休息を取ることもストレスの軽減に効果的です。

仕事に熱中している人は仕事から離れることに抵抗を感じるかもしれませんが、仕事でより十分に能力を発揮したいのであれば思い切って休息を取ることが大切です。ストレスコントロールも仕事の一部です。
 

まとめ

5月病の症状が長引いたり、対策をしても改善しなかったりする場合には、他の精神疾患だったり薬物療法を含めた医学的な介入が必要になることも。そうなると労務担当者は産業医に相談し、適切な専門家への受診を進めることも出てきます。労務担当者は日頃から産業医とのコミュニケーションを密にし、職場としての対応を決めておきましょう

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:浅野 大樹 (あさの ひろき)

医学博士/MBA/日本医師会認定産業医/日本血液学会認定血液専門医
東京大学医学部にて助教として勤務した後、フリーランスの医師・産業医として都内を中心に活動。合同会社スケールフリー代表社員として医療情報の発信にも携わる。



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