『社畜ちゃん』原作者に聞く、ネット時代の「マンガ家の収入事情」

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『いきのこれ! 社畜ちゃん』というマンガをご存知でしょうか? 同作はちょっとブラックな企業で働くシステムエンジニア「社畜ちゃん」の日常を描いた作品です。Twitterやブログを通して人気となり、単行本は40万部を突破。まさにスマッシュヒットを記録しました。

今回は『いきのこれ! 社畜ちゃん』の原作者でもあり、フリーランスのプログラマーとしても活躍するビタワンさんに、会社員時代から現在に至るまでの経緯や、マンガ家の収入事情などを聞きました。

【プロフィール】ビタワン @vitaone_
マンガ家/プログラマー
大学時代より同人誌を書きはじめる。東方ProjectのZUNに憧れてゲーム等のプログラミングを学び、プログラマーとしてIT系の会社に就職。一度転職を経験した後、フリーランスとして独立。会社員プログラマーとしてアプリを開発する傍ら、創作活動も行う。オリジナルキャラクター『社畜ちゃん』を生み出し、作画を担当する「結うき。」とともに『社畜ちゃん』をTwitterで連載。ネット上で話題となり、KADOKAWAから書籍化の話が舞い込む。コミック『いきのこれ! 社畜ちゃん』発売後もTwitter連載を継続。マストドンやクラウドファンディングを開始し『社畜ちゃん』ファンとともに、働く人を元気にするコンテンツ制作に取り組んでいる。

貯金ゼロからフリーランスへ転身した理由

――ビタワンさんは現在どのような活動をされているのでしょうか?

フリーランスのプログラマーとして働きながら、『いきのこれ! 社畜ちゃん』の原作を担当しています。

フリーランスになる前はIT企業でシステムエンジニアとして働いて、4年間の会社員生活を送った後、独立しました。

――最初はIT系企業の会社員だったそうですが、フリーランスになったきっかけは?

いろんな理由がありますが、まず会社の給料がものすごく低かったことですね。1社目ではかなり残業をしていたのに、手取りはわずか10万円程度

就活とリーマンショックが重なった時代に社会人になったので、なかなか仕事を選べる立場ではなかったというのもありましたが、ちょっと低すぎますよね(笑)。

その後、1度転職をしました。残業は多少減りましたがやっぱり給料は低いままで。

――給料はモチベーションの1つですもんね。収入面以外にフリーランスを選んだ理由は?

時間面ですね。今でこそリモート制度など自由な働き方を取り入れる企業も増えてきつつありますが、勤めていた当時はあまり浸透していませんでした。

その弊害で、飼っていたペットの死に目に立ち会えなかったんです。あとは趣味のバイクの旅行も年に一度、お盆休みのタイミングでしか行くことができませんでした。

そうした収入面、時間面でもっと自由になりたくてフリーランスを選びました。

――フリーランスの生活に向けた蓄えや準備は進めていたんですか?

いえ、それがほぼしていませんでした。貯金がほとんどない状態で会社を辞めましたから(笑)。

幸い、仕事はすぐに見つかりましたが、フリーランスだと委託費の支払いが1カ月先になりますから、フリーランス1カ月目は結構しんどかったですね。

それでも仕事は楽しかったですね。自分が好きなプログラミングだけを担当するようになりましたから。

会社員時代だとプログラミングだけでなく様々な関連業務や苦手な仕事もしなければならなかったので、かなり気は楽になりました。

収入も前職の倍以上に増えましたし、好きなタイミングで休むこともできるようになったので、とても充実しています。

自分の経験をマンガに。『社畜ちゃん』ができるまで

――『いきのこれ! 社畜ちゃん』の制作は、フリーランスになってから始めたのですか?

はい。時間的に余裕もできて「何かやりたいな〜」と思っていたときに生まれた作品です。

学生の頃から同人活動をしていたのですが、社会人になってからはあまりに忙しすぎて活動できなかったんです。もともとマンガを描いたりストーリーを考えたりするのは好きでした。

フリーランスになってから、Twitterでなにげなくつぶやいた“ブラック企業ネタ”がフォロワーにウケたことから『社畜ちゃん』の構想がスタートしました。

「ちょっとブラック(?)な企業に勤める女の子が、仕事に追われて大変ながらも楽しい日常を送る様子をマンガにしたら面白いのでは?」と。

――ビタワンさんの趣味と会社員時代の経験が結びついたんですね。

そうですね。フリーランスになったことで、会社員時代の自分を客観的に見られるようになったというか。実際に『社畜ちゃん』では、自分の会社員時代にあった出来事を脚色することも多いですからね。

――“ブラック企業あるある”の経験が読者の共感を生んでいるんですね。マンガ家とプログラマーの仕事はどのように両立しているんですか?

連載が1本だった頃は週5日、プログラマーとして仕事をして、就業後や土日を使ってネームを書いていました。今は連載が2本に増えて、マンガの仕事量が2倍になってしまいました。

さすがに忙しいので、プログラマーの仕事量を週5日から週3日程度に減らしてもらい、その分の時間と労力をマンガに割いています。

――プログラマーとマンガ家、どちらの収入が多いですか?

圧倒的にプログラマーですね(笑)。私の場合はほぼ全てがプログラマーの仕事の収入です。マンガ家の収入は、人によってかなりばらつきがありますね。

ネット時代の「マンガ家の収入事情」

――マンガ家の収入事情はどうなっているのでしょうか?

マンガには2種類の収入ポイントがあります。

1つ目は原稿料。これはもうシンプルに「1ページあたりいくら」といった具合に、出版社との間で価格が決定します。

2つ目は印税。「マンガ家の収入といえば印税」というくらい有名な言葉ですよね。マンガの売上のうち、何%かはマンガ家(著作権者)に入ってくる、というものです。

――『いきのこれ! 社畜ちゃん』は40万部も売れているので、結構な収入になりそうですが……。

いえいえ(笑)。原稿料にしても印税にしても、私は原作しか担当していないので、作画も原作もやる人に比べたら全然お金をもらっていません。

原稿料は時給換算でおそらく数百円単位の世界ですし、印税も単行本が出版されないと発生しません。だから40万部売れたといっても、マンガの仕事だけで食べていくのは正直今は難しいですね。

――マンガ家一本で生計を立てるのはとても難しいんですね。

いまお話ししたのは、あくまで「出版社から自分の作品を売り出す」という従来的なマンガ家のスタイルです。

しかし、最近はSNSを通して企業からタイアップの依頼を受けたり、ファンの方から活動を支援していただく「パトロンサービス」が生まれたり、マンガ家も新しい生存戦略を立てられるようになりました。

私は、このサービスで集めたお金で、『社畜ちゃん』のLINEスタンプや動画などを制作しました。自費ではなかなかできないことも、ネットをうまく活用することで実現できるようになりつつあるのは大きいですね。

大手出版社と連載して単行本を出しても、昔に比べると爆発的にヒットすることが少なくなっているので、あえて大手出版社とは契約せずに自費出版やKindleで販売するマンガ家も増えているんですよ。

――「プログラマー兼マンガ家」として、今後の目標はありますか?

プログラマーとしては、アクションゲームの制作をしたいですね。普段はゲームを作ることを仕事にしてはいないのですが、ずっと興味のある分野だったので挑戦してみたいです。

マンガ家としては、社畜ちゃん以外の連載を獲得してなんとか第2巻まで出すことが目標ですね。

プログラマーとして収入を確保しつつ、マンガ家としては新連載はもちろん、これからもいろんなことに挑戦したいです。これが“二足のわらじ”の1番の利点だと思っているので、今後もこのスタイルで活動を続けていけたらいいですね。(文・サムライト)

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Bizpedia編集部

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