忘年会の余興で思いっきり転倒、しかも骨折…労災はおりる?

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あっという間に12月中盤。サラリーマンの皆さんは忘年会で大忙しでしょうか。

大々的な忘年会になると余興も楽しみの一つです。余興をまかされがちな若手社員はちょっと憂鬱な気分かもしれないですね。

さて、そんな忘年会の余興で大怪我を負ってしまう不運に見舞われた男性がいます。男性の怪我は労災認定されるのでしょうか?

年末余興の「ももクロ」ダンスで転倒

新卒のとき、会社の忘年会で余興をすることになりました。
僕は同期と一緒に、ももクロの『行くぜ!怪盗少女』を踊ることに。

しっかりと練習を重ね、当日も準備万端でした。
ですが、なんと本番でステージに入場するときに、思いっきり転んでしまったのです。

そのまま踊り続けようと思っても足が痛くて動かせず、すぐに腫れてしまいました。
その後すぐに病院に駆け込むと、左膝が骨折していたことが分かりました。
全治1カ月半です。

そのときは自分で治療費を出しました。
ですが、あの忘年会は全社員が出席しなければならない会社のオフィシャルな飲み会。
今思えば、あれは労災申請できたんじゃないかと思います。

僕の怪我は労災認定される可能性があったのでしょうか?(IT企業勤務・29歳男性)

全社的な忘年会の余興での怪我。労災認定される可能性はあったのか、社会保険労務士の金田朋子さんに聞きました。

金田さん:会社の飲み会で体を張った余興で怪我をしてしまったり、帰り道に酔っぱらって転んでしまったり、という事例、結構ありそうですよね。これらが労災として認められるかについては、一律に判断できないのですが、過去の判例を見ると労災として認められることは難しいと言えます。

というのも、労災認定がなされるためには、その怪我や病気が“業務上”生じたものであることが明白でなければならず、一般的に「飲み会」というのは、業務の一環であるとは認識されにくいからです。

過去の判例を見ると、「業務終了後、どれくらいの時間が経過しているか」「参加は強制であったか(参加しないことによって不利益な取り扱いを受けるか)」「主催者は誰で費用負担は誰にあったか」「その行事が催された目的は何か」などを総合的に見て判断されています。

分かりやすく極端な例を出すと、今回の忘年会が「社長が、社員との意見交換を目的に主催したもので、全社員業務を早めに切り上げ、通常の営業日であれば業務時間中の時間帯に行われ、参加しない社員は早退扱いになるなど、参加が強制的であり、今回の怪我の要因となった余興も、上司に実施を強制されたものである」などといった場合には、労災として認められる可能性は高まるかもしれません。

今回のように「全社員が出席しなければならない会社のオフィシャルな飲み会」であったとしても、それだけでは労災として認められるとは言い難いでしょう。

そもそも“労災”とは?


そもそも労災とは「労働災害」の略で、労働者が業務あるいは通勤を原因として負傷・疾病・死亡することをいいます。

こういった場合に、労働者や遺族に対して必要な保険給付を行う制度が「労災保険(労働者災害補償保険)」です。労働者を1人でも雇用している会社は、労災保険の加入義務があるため、労働者は業務によって負傷した場合などに労災保険給付を請求することができます。

さらに労働災害は、業務が原因として起こる「業務災害」と通勤によって起こる「通勤災害」に分けられます。今回の男性のケースは業務災害に問えるかどうかが争点となりましたが、業務災害と認定されるのはどのような場合でしょうか?

業務災害が認められる条件

業務災害に認定される前提条件として「業務起因性」と「業務遂行性」があります。この2つの条件が揃っていなければ業務災害は認められません。

業務起因性:
業務が原因となったということであり、業務と傷病等との間に一定の因果関係があること。

業務遂行性:
労働者が労災保険の適用される事業場に雇われ、事業主の支配下にある状況で、発生した災害であること。

さらに、業務災害と一口に言っても、「負傷」と「疾病」で、認定される要件は異なります。

負傷については、一般的に、次の3つの場合は、特段の事情がない限り業務災害が認められます。

<業務上の負傷について>

(1)事業主の支配・管理下で業務に従事している場合
所定労働時間内や残業時間内に、事業場施設内において業務に従事している際に、業務上の行為や施設・設備の管理状況等が原因となって発生するもの

(2)事業主の支配・管理下にあるが業務に従事していない場合
昼休みや就業時間前後に事業場施設内にいて業務に従事していない際に、事業場の施設・設備や管理状況等が原因で発生するもの

(3)事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
出張や社用での外出等により事業場施設外で業務に従事している際に発生するもの

疾病については、一般的に、次の3要件が満たされる場合は、原則として業務上疾病と認められます。

<業務上の疾病について>

(1)労働の場に有害因子が存在すること
有害因子とは、業務に内在する有害な物理的因子、化学物質、身体に過度の負担のかかる作業態様、病原体等の諸因子を指します

(2)健康障害を起こしうるほどの有害因子にばく露したこと
(1)の有害因子が、健康障害を起こすに足りるばく露であったかどうかのばく露条件の把握も必要になります

(3)発症の経過および病態
有害因子の物質、ばく露条件等からみて、発症の経過や病態が医学的に妥当なものでなければなりません

心身ともに健康で新年を迎えられるよう、忘年会は怪我に注意して楽しみたいですね。

参考|労災保険給付の概要(厚生労働省)

取材協力:金田 朋子(社会保険労務士)

社労士事務所にて給与計算、各種社会保険事務、就業規則の作成・改定、行政機関調査対応等に関する社会保険・労務コンサルティング業務に従事後、現在はベンチャー企業内の社内社労士として勤務。社労士事務所での外部コンサルタント、ベンチャー企業内での労務担当者としての経験を生かし、ベンチャー・中小企業に強い社労士として社会保険・労務コンサルティングを行っている。



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