「経理の仕事は、これからこうなっていく」 経理・会計の人材紹介のプロに聞いた、現場のリアル(後編)

読了まで約 6
ジャスネットコミュニケーションズ様

経理業務のクラウド化やRPAの導入が進むこの先、経理の仕事はどう変化し、どんな力が必要になるのだろうか? そんな気になる話題を、会計・経理分野に特化した大手人材エージェント、ジャスネットコミュニケーションズ株会社の小山満也さんと中村陽さんにお聞きしました。後編のテーマは、「経理の仕事は、これからこうなっていく」です。

前編はこちら:「今、こんな経理が引く手あまた」 経理・会計の人材紹介のプロが語る、現場のリアル(前編)

取材ご協力:
ジャスネットコミュニケーションズ株式会社
紹介事業部長 小山 満也(おやま みちなり)氏
管理部 中村 陽(なかむら よう)氏
【経理実務の学校】https://edu.jusnet.co.jp/
【Accountant’s magazine】https://career.jusnet.co.jp/magazine/
【Accountant’s Library】https://library.jusnet.co.jp/

経理として、会社に「うまくプレゼンできること」も重要

──今後、経理業務の現場はどうなっていくと思われますか?

中村さま:いま部門を問わず世の中的に業務の効率化といったところが言われていますが、経理部門ではそれを特に強く感じます。クラウド化やRPAといった話題を、ここ数年で本当によく耳にするようになりました。実際に弊社でも、クラウド会計システムの導入を検討しています。

20年ほど前に会計ソフトの波がやってきて、手で情報を書くということがなくなってだいぶラクになりました。ただそうした会計ソフトの完成度が高かったためか、ここ10年ほどは進歩が足踏み状態だった気もします。それがまたクラウドやRPAが入ってきたことで、20年前を超える大きな業務転換の波が始まるのかなと感じています。

ジャスネットコミュニケーションズ中村様

──そうした新しいシステムを導入する側に求められるものとは?

中村さま:多くが直感的に使えるものなので、特別な知識やITスキルが必要という感じではないと思います。逆に現状の業務フローの中にどう導入するのかという部分がひとつの課題になってくるのではないでしょうか。

たとえば、会社にクラウド会計システムを提案したのに、経営者に「そんなものは必要ない」と却下されるというのは往々にしてあると思います。あるいは会社全体で請求書のペーパーレス化を進めるなかで、取引先の会社に「うちは紙で受け取る以外は一切認めません」と突き返されてしまったり。またクラウド会計システムの導入を現場に提案したところ、経理のスタッフ陣から「自分たちの仕事がなくなってしまう」と抵抗を受けることもあるでしょう。

そうした現状のフローや考え方をどう変えていくか。そのためにはやはり、会社全体としてこれだけの利益が享受できるといったビジネス的・経営的な視点を持つことと、それをうまくプレゼンする能力が重要になってくると思います。

在宅勤務、地方勤務etc. 経理の遠隔地での就業は増えている

──働き方という面では、この先どうなっていきそうでしょうか。

小山さま:正社員以外でこのところ目立つのが、在宅勤務をはじめフリーランスに近い形で経理の仕事をしたいという方々です。多くが女性ですね。

たとえば、現在ある会社に週2日勤めていて、それとは別に在宅で経理の仕事を週2日したい、というような方です。経理のクラウド化も進むでしょうから、今後はそういう働き方がどんどん増えていくでしょう。

特に経理業務の場合、数字なり資料なり、会社から求められるアウトプットの形が比較的わかりやすいですよね。だからITを利用した在宅勤務やフリーランスでの就労が非常に現実的になってくるのかなと思います。

──働き方改革の流れもあるのでしょうか。

小山さま:そうですね。監査法人の会計士でさえ、家で働くような流れが生まれています。

それと東京だと売り手市場でなかなか人材が確保できないため、労働力を確保しやすい地方に拠点の一部を置く企業も増えてくるでしょう。すでにアウトソーシングの会社などは、一部の経理機能を沖縄や海外に置いているところがあります。

遠隔地でも本社にいる場合と同じ仕事のクオリティでやろうとなると、必然的にITインフラを導入することになります。そうなると、働く側としてはますます場所を選ばず働けるようになってくるでしょう。

──経理の人材をマネジメントする側には、今後どんな視点が必要ですか。

小山さま:経理の現場で多いのが、会社側としては「将来を見越していろいろな業務を経験させよう」と他部署に異動させたのに、本人的には「経理の現場から離れるのなら辞めよう」と離職してしまうケースです。こうしたコミュニケーションギャップによる離職を減らすには、会社側は、その人にどういう人材になってほしいのか、働く側は自分がどんなキャリアを積みたいのかを、互いにきちんと伝え合うことが大切になります。

とはいえ、会社としては多様な経験をバリバリ積んでCFOのような方向性を目指してほしいのに、働く側はただ黙々とルーティンをこなして安定した給料と有給が欲しいと志向している場合もあります。それはそもそも採用のミスマッチなので、採用時にしっかり方向性をすり合わせることがまずは重要になってきます。

経理部=「会社の意思決定を担う部署」が当たり前の時代がくる

──この先、経理という部門の位置づけはどう変化していきそうですか。

小山さま:経理業務のシステム化に伴い、ビジネス視点に立って現場にアドバイスできるような能力が経理に求められ始めているという話をしましたが(前編)、それをふまえると今後は必然的にそうした素養が高い人、そもそもがマネジメントや経営に興味がある人たちが経理を担うようになってくるのかなと思います。誤解を恐れずに言うならば、エリートの人たちがどんどん集まる部門、というふうになっていくのではないでしょうか。

これはある大企業の話なのですが、あるとき監査法人から会計士が経理部に出向してきたことがあったそうです。その会社では新人はまず経費精算の業務に就く習わしだったので、その会計士も経費精算業務に就きました。

ところがその人はただ経費精算業務をこなすだけでなく、どうすれば各部門が手間なく精算が行えるかや、いかに提出率を高めるかといった視点に立ち、そのための仕組みづくりを行ったそうです。それはこれまで誰も考えもしなかった視点で、会社の経費精算のあり方自体を変えてしまったそうです。

ジャスネットコミュニケーションズ小山様

こうした事例を見ると、やはりどんな視点に立ち、どこを目指すかによって、経理業務のあり方というのは大きく変わってくるのかなと。そして、そうした経理発信で業務の効率化が図れたり、会社全体の売上げを高められる余地が、経理の現場にはたくさんあると思います。

──そうした流れは、経理の職域の広がりや、経理の地位向上といったところにもつながっていくのでしょうか。

小山さま:従来の単純作業や職人的な作業の多くが今後自動化されていくという前提に立てば、会社全体の売り上げを上げたり経営を効率化するにはどうすればいいかを考えるのが経理部門、という位置づけに自然となっていくと思います。経理はただ黙々と仕訳をする部門ではなく、会社の意思決定の一翼を担う重要な集団。そんな立ち位置ですね。

 

前編の記事はこちら:「今、こんな経理が引く手あまたです」 経理・会計の人材紹介のプロが語る、現場のリアル(前編)

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。