決めたことを確実に遂行するための4つの処方

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「また半年も続かなかった…」大田区のある企業では「あいさつ運動」を10月に始めた。工場を見学に来るお客さんも多いし、なによりも挨拶をが「社員同士のコミュニケーションの潤滑剤」となってほしいとの経営者の期待があったからだ。

社員からの反対も特になく、最初の1週間程度は皆張り切ってやっていた。が、残念ながら1ヶ月も経つと無かったことになってしまった。
経営者も、管理職も、そして一般社員も「やっぱりダメだったか」と、あきらめムードだ。

またある企業では改善活動の一環として、「仕事の改善提案を月1件」という目標を掲げた。経営者の期待は大きく、「どんな改善提案が出てくるだろうか」と楽しみにしていたところ、最初の提出期限に間に合わせたのは社員の約半数のみ。

社長は慌てて社員を叱咤したのだが、次の月には全社員の3割に低下した。そして、半年後には誰もやらなくなった。

多くの人が知っているように、「決めたことをやり切る」のは、仕事の究極の処方と言っても過言ではない。しかし、組織も、個人もなぜ、決めたことがやり切れないのだろうか?なぜ決めたことを実行できないのか。実行するために必要なことは何か。

今回は「一度決めたことは確実にやり切る」ための処方を紹介する。

なぜ、決めたことを続けられないのか? 4つの「ない」

「どうすればやり切れるのか?」この問に対して答えるためには、まずは続かない原因を知る必要がある。そして、その「原因」は大別すると四つある。この中の一つだけが原因の場合もあれば、複数が原因となっている場合もある。「続けられない」と感じている組織や人は、まずはどれに自分たちが当てはまるかを判断していただきたい。

1.「時間がない」

新しいことを始める時に最も障害となるのが、「時間がない」という状況だ。挨拶程度であれば「時間がない」とは言わないが、「改善活動」となるとまとまった時間が必要となる。これは個人でも同じで、「運動しよう」「勉強しよう」「本を読もう」「人脈をつくろう」など、いずれも時間がかかる。

2.「重要ではない」

重要ではないことに力を入れたりはしない。社長は「重要だ」と思った挨拶も、社員にとっては重要ではないかもしれない。あなたが「ダイエットしよう」と決意したとしても、「ダイエットしなくても、特に支障はない」という現実が意思に勝るのだ。

3.「やり方がわからない」

例えば「机の上を綺麗にする」という習慣ほど難しい物はない。殆どの人は「どうしたら机の上を綺麗に保ち続けることができるか」について、何もノウハウを持たないからだ。実際には、「捨てる技術」や、「収納する技術」などが必要で、それらを自力で考えだすにはそれなりのパワーが要る。挨拶も同様だ。挨拶は一見簡単そうに見えて、「タイミング」や「声の大きさ」など、挨拶に慣れていない人には負荷がかかる。

「改善活動」は思ったよりも難しいのである。「簡単だよ」という方は例えば「自分の通勤を改善する方法」を考えてみてほしい。多くの方は「今さら改善なんて」「これ以上どうやって改善するんだろう」と思うだろう。やり方がわからなければ、続けることはできない。

4.「変わりたくない」

何かを始めることは、大きな抵抗を生む。慣れ親しんだやり方を変えることや環境の大きな変化は人間にとって心地よいものではないのだ。これは論理では説得できない。「感情」や「盛り上がり」が必要となる。

決めたことを確実に遂行するための4つの処方

では、4つの「ない」をクリアするためのアプローチを紹介する。

1.「時間がない」への処方

新しいことを始めるには思ったよりも時間がかかる。そのために必要なことは、「何かをやめる」ことだ。ピーター・ドラッカーは「計画を立てるより前に、時間を確保せよ」と著書「マネジメント」の中で述べた。
より優先度の低いことをすて、優先度の高いことに必要な時間を確保してから始める。「資格を取るための勉強」をしたかったら、「テレビ」や「飲み会」、「ゲーム」をやめることだ。あっという間に一日に三時間は確保できる。

2.「重要ではない」への処方

重要性を認識するためには、「インセンティブを用意する」ことだ。元気な中小企業としてよく知られる「未来工業」では、改善提案の採用不採用にかかわらず提案には500円が支給される。あるシステム開発企業では、中途採用はほとんど「社員からの紹介」である。この会社では紹介した人が採用されれば30万円を紹介者に支払う、という人事評価制度がある。2人紹介し、無事入社すれば60万円。なかなかの金額だ。

一般的に社長の「本気度」は、社員は「投資した金額」で判断する。掛け声で終わらせないためには、お金をかけることも必要だ。スポーツクラブに通う人が多いのも同じ心理で、「お金をかけたから、きちんと通おうと思う」のである。

3.「やり方がわからない」 への処方

やり方がわからないのは、課題が難しすぎるか、テーマが曖昧だからだ。漫然と「改善」と言わず、まずは「コスト」や「残業削減」などテーマを絞込むことで、活動しやすくする。また、課題が難しすぎる場合は、マニュアルを作成したり、他社の情報を与えたりするなど、行動への敷居を低くすることが重要である。

なお、web上で「ライフハック」の記事が人気を集めるのは「良い習慣を身につけたい人にとって、行動の敷居が低くなる」からである。

4.「変わりたくない」 への処方

ちょっとしたことであってもルーチンを変化させるためには納得感が必要となる。そして、納得感をもってもらうためにもっとも重要なのが、「成功事例」だ。あらゆるセミナーや、ノウハウ本は、そこに含まれている「成功事例」にどれほどの説得力があるかで満足度が決まる。

したがって、まずはある小さい部署、リーダーが乗り気の部署などでスモールスタートし、変化が起き、うまく行った時点で範囲を拡大することが定石だ。これは、世の中一般にも拡大でき、「イノベーター理論」という名で知られる。

変化は世の中のごく一部の「イノベーター(2.5%)」「アーリーアダプター(13.5%)」によって引き起こされ、それをみた多数「アーリーマジョリティ(34%)」「レイトマジョリティ(34%)」が追従する。

まとめ

あなたの組織、もしくはあなたが「やりきれない」理由はどこにあっただろうか。4つの「ない」を克服し、大きな実りを手に入れていただければ幸いである。

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