- 作成日 : 2025年12月25日
賃貸の更新料とは?金額相場や更新時のトラブル予防方法を解説
賃貸物件の更新料は、契約期間満了後も同じ入居者に住み続けてもらうために受け取る一時金です。慣行上、契約継続の対価や賃料の補充という役割もあります。
この記事では、オーナーや管理会社向けに、更新料の基本的な仕組みや金額相場、支払い時期、火災保険料や保証会社料など更新時に発生しやすい費用を整理します。あわせて、未払いへの対応手順や金額交渉の考え方、相談窓口の活用方法まで、現場で迷いやすいポイントを一通り確認できるため、ぜひご活用ください。
目次
賃貸物件の更新料とは?
賃貸物件の更新料は、契約期間満了後に賃貸契約を更新する際に支払う費用です。更新料は、主に契約者と貸主との間で交わされる合意に基づき、賃貸契約に含まれることが一般的です。日本では、特に商業用や住宅用の賃貸契約において、一部の地域で更新料が発生します。
通常、更新料は契約期間の終了時に支払われることが多く、金額は契約内容によって異なります。
更新料は通常家賃の一部と見なされ、金額が高額に過ぎないなどの事情を総合して有効性が判断されます。一般的には、家賃の1か月分が相場として広く認識されていますが、地域や契約内容により異なる場合もあるため、事前に確認が必要です。
更新料の金額の相場は?
賃貸物件の更新料は地域によって異なり、都市部と地方で相場に差が見られます。東京都などの大都市圏では、一般的に更新料は家賃の1か月分程度が標準的です。例えば、東京都内の賃貸物件では、月額家賃が10万円であれば、更新料も同様に10万円というのが一般的です。また、北海道のように、都市圏・郊外を問わずそもそも更新料を請求しない地域もあります。
以下は全国の更新料の相場です。
| 地域 | 更新料の相場 |
|---|---|
| 東京都・名古屋市・福岡市などの大都市圏 | 1か月分 |
| 地方都市や郊外 | 0.5~1か月分 |
| 北海道・宮崎県・奈良県などの一部エリア | 更新料なし |
※あくまでも目安で実際には物件ごとに異なります。
更新料の地域差
更新料の金額に地域差が生じる主な要因は、物件の立地や家賃の金額です。例えば、大都市圏では、物件の需要が高いため、更新料が高く設定される傾向があります。また、物件が駅から近い、または商業エリアに近い場合などは、家賃が高くなるため更新料もそれに比例して高くなります。
一方、地方都市では家賃自体が低いため、更新料も家賃相場に合わせて設定されています。家賃の0.1〜0.5ヶ月分程度で設定することもあり、金額に直すと5,000円から数万円程度の更新料が一般的です。
さらに、地域ごとの文化や慣習も更新料に影響を与えます。例えば、関東地方の首都圏では家賃の1か月分前後の更新料を徴収する物件が多い一方、関西地方では京都府を除き更新料を設けない物件が比較的多いとされています。
特に住宅地では、賃貸オーナーと借主が契約時に合意した条件に従って更新料が設定されるため、明確に規定された相場はありません。したがって、賃貸契約を結ぶ際には、地域ごとの相場感を理解した上で契約内容を確認することが重要です。
更新料の支払い時期は?
更新料の支払いは契約更新の際に発生しますが、支払い時期に関しては賃貸契約書に記載された期日内に行う必要があります。通常、更新料は契約期間が満了する前に支払われることが多く、その支払い期限を守らないとトラブルにつながる可能性があります。
更新料の支払い期限
更新料の支払い期限は、契約更新前に定められていることが一般的です。契約更新時には、オーナーや管理会社が更新料の支払いに関する案内を郵送し、借主は案内に従って支払いを行います。支払い期限は通常、更新日の1か月前から数週間以内に設定されることが多く、この期限内に支払わなければなりません。
契約書に支払い義務が明記されているものの、支払い期限を過ぎた場合は、借主の債務不履行となります。賃貸オーナーや管理会社から催促が行われ、合意更新がまとまらないと法定更新として扱われるか、条件変更や退去の協議が必要になる場合があります。
期日超過時の取り扱い
更新料の支払い期限を過ぎてしまった場合、一律で解約とするのではなく、借主の事情や物件の稼働状況も踏まえて柔軟に判断する必要があります。
前提として、更新料を含む更新条件は、賃貸人と賃借人の合意によって決まるものです。そのため、借主が支払いや更新に同意しない場合、合意更新は成立しませんが、そのまま占有が続いているときには、借地借家法に基づく法定更新が問題になることがあります。
また、法定更新が成立したと評価されると、更新料特約の有効性や適用範囲について、個別の解釈が必要になるケースもあります。
更新時に発生し得るほかの費用は?
更新のタイミングでは、更新料以外にもいくつかの費用が同時に発生します。そのため、「借主から見たトータル負担」を意識しながら条件を設計しないと、「更新時の負担が重すぎる」という印象から、解約(退去)につながるリスクがあります。
以下では、更新のタイミングで発生する各種費用について解説します。
火災保険の更新費用
火災保険は法律上の加入義務はないものの、多くの住居系賃貸契約で加入が義務付けられています。契約期間2年で、更新する商品が一般的です。更新時には、借主が保険会社や代理店を通じて更新手続きを行い、数千円から1万円台程度の保険料を支払うケースがよく見られます。
更新案内の文面に保険更新の注意喚起を一言添えたり、契約時に保険証券のコピーを保管したりしておき、有効期限が切れていないかを定期的に確認する運用を整えると、トラブル防止に役立ちます。
保証会社の更新保証料
保証会社の更新保証料は、入居期間が長期化するほど累積していくため、借主の総負担に与える影響が大きい費用です。保証会社を利用している管理会社では、入居時に初回保証料(賃料などの30~100%程度)を支払い、その後1年または2年ごとに更新保証料を支払う形が一般的です。
更新のタイミングでは、更新料・火災保険料と同時に更新保証料の請求が発生することが多く、借主にとっては「まとまった出費」として感じられます。そのため、更新案内文には更新保証料の金額と支払い方法も明記し、請求の根拠となる保証委託契約書や重要事項説明書と整合しているかを必ず確認しましょう。
更新事務手数料
更新事務手数料は、管理会社が更新契約書の作成や押印手続き、システム登録、オーナーへの報告などに要する事務コストをカバーするために設定する費用です。金額は各社の方針によって異なりますが、賃料の0.2~0.5か月分程度が一般的な相場です。
更新料はオーナーの一時金収入という性格が強いのに対し、更新事務手数料は主に管理会社の事務コストを賄うためのものです。そのため、請求書や案内文でも名目を分け、「更新料○円(貸主受領)」「更新事務手数料○円(管理会社受領)」のように記載しておくと、借主の誤解を招きにくくなります。
また、更新料と更新事務手数料を混同した結果、二重取りをしていると勘違いされるのはよくあるトラブルです。説明不足のまま請求すると不信感につながるため、契約時の重要事項説明や入居時ガイドの中で、あらかじめ違いを明示しておきましょう。
契約更新の類型
賃貸住宅の更新には、大きく分けて「合意更新」と「法定更新」があります。
合意更新は、契約期間満了前に貸主と借主が協議を行い、新たな契約期間や賃料、更新料などの条件に合意した上で、改めて契約書を取り交わす仕組みです。国土交通省の賃貸住宅標準契約書も、「甲および乙は協議の上、本契約を更新することができる」と合意更新を前提とした条文構成になっています。
一方、法定更新は、契約期間が満了した後も当事者が従前どおり賃貸借関係を継続させている場合に、借地借家法の規定により従前と同一条件で契約が更新されたと見なされる仕組みです。普通借家契約では、満了の1年前〜6か月前の間の更新拒絶や条件変更通知などの連絡がない限り、法定更新として扱います。なお、貸主が期間満了を理由とする解約を行うには正当事由が必要とされるため、実務上は多くの居住用賃貸で法定更新が生じ得ます。
どちらの類型になるかによって、更新料特約の適用可否や請求の根拠が変わる可能性があるため、それぞれの特徴を知っておきましょう。
合意更新のポイント
合意更新を円滑に進めるためには、「事前の説明」「条件の妥当性」「手続きの分かりやすさ」という3つの要素が重要です。
まず事前の説明として、入居時の段階から「本物件はX年ごとの契約で、更新時には賃料の○か月分の更新料が発生する」といった情報を、募集図面・重要事項説明書・賃貸借契約書の3つに一貫して記載しておく必要があります。
条件の妥当性については、周辺相場との比較が欠かせません。同じエリア・同じ築年数・同程度の設備水準の物件と同等の範囲内に収まる水準であれば、借主にとっても納得感を得やすくなります。
手続きの分かりやすさという点では、更新案内の書式を社内で統一し、「更新条件の一覧」「返信方法」「質問窓口」を明示しておくとよいでしょう。新人担当者が電話や窓口対応を行う場面でも、案内文を一緒に見ながら説明すれば、言い間違いや認識のズレを減らせます。
法定更新のポイント
法定更新は、契約期間が満了したにもかかわらず、貸主・借主双方が特に解約や条件変更の手続きを取らず、そのまま賃貸借関係を継続させている場合に生じます。借地借家法では、建物賃貸借について、期間満了後も借主が使用収益を続け、貸主も異議を述べないときは、従前と同一条件で契約が更新されたものと見なすと定めています。
法定更新にあたって、更新料特約については「契約書に明確に定められ、重要事項説明などで借主に十分な説明が行われており、金額も賃料水準や契約期間とのバランスから見て暴利的とまでは言えない場合」には有効と考えられています。
そのため、法定更新が想定される物件では、更新料の条文を「更新のたびに支払うもの」であることが分かるような表現にしておくことが重要です。また、期間満了前に必ず更新の意思確認と条件提示を行い、「法定更新だから説明しなくてよい」という姿勢を取らないことが、後の紛争を防ぐ上で大切です。
更新料に関するトラブル予防と対応方法は?
更新料に関するトラブルは、賃貸住宅の相談の中でも典型的なテーマの1つです。国土交通省がまとめた相談事例集や、自治体の消費生活センターの公表資料を見ても、「更新料の根拠が分からない」「説明を受けていない費用を請求された」といった声が多く寄せられています。
以下では、代表的なトラブルの事例と、対応方法について解説します。
未払いへの対応手順
更新料の未払いが発生した場合、オーナーや管理会社としては感情的にならず、あらかじめ決めた手順に沿って粛々と対応することが大切です。場当たり的な対応をすると、借主ごとに扱いが異なり、「あの部屋とは対応が違う」といった不公平感を招きかねません。
そのため、状況ごとに以下のような対応を行うのがおすすめです。
| 更新当日になっても入金がない | まずは電話や書面で支払い忘れの可能性を確認し、速やかな支払いを依頼する |
|---|---|
| 猶予期間を過ぎても連絡・入金がない | 書面で「このまま支払いがない場合は解約として扱う可能性がある」旨を通知し、記録を残す |
| 継続入居を希望しているが、支払いが難しいと相談があった | 分割払いへの変更や一部減額など、例外的な対応を検討する |
| 連絡が取れず、賃料の滞納も発生している | 更新問題にとどまらず、賃料不払いとして法的手続きを含めた対応を検討する |
判断基準が属人的だと、借主間の公平性を欠き、不満やクレームにつながりやすくなります。最終的な法的判断が必要な場合には、早めに弁護士や専門家へ相談する体制を整えておくと安心です。
「更新料未払い=直ちに退去・解約」ではありません。順を追って対応することで、法的リスクを軽減できます。
金額や支払い条件の交渉
更新料の金額や支払い条件について、借主から「負担が重いので下げてほしい」「分割払いにしてほしい」といった相談を受ける場面も少なくありません。オーナーとしては収益を確保したい一方で、解約されて空室期間が長引けばトータル収入はかえって減少する可能性もあります。
どのように支払い条件を交渉するかはケースバイケースですが、重要なのは、個別ケースで例外対応を行った際に、その理由と内容を社内で記録しておくことです。記録があれば、別の借主から同様の要望が来たときにも、一貫性のある判断がしやすくなります。
交渉の場面では、「更新料をゼロにする」か「満額を支払ってもらう」かの二択で考えず、「解約リスクをどこまで許容するか」「長期的な関係性をどう位置付けるか」といった視点でオーナーと一緒に検討する姿勢が重要です。事前に「空室リスクを考慮したシミュレーション」や「周辺相場との比較資料」を用意しておけば、判断材料が明確になり、感情論に流れにくくなります。
相談窓口の活用
更新料をめぐる紛争が深刻化した場合や、法的な解釈に迷いがある場合には、外部の相談窓口を活用することも検討すべきです。国民生活センターや各自治体の消費生活センターには、賃貸住宅に関する相談が毎年多数寄せられており、更新料や更新事務手数料に関する事例も蓄積されています。借主側がこれらの窓口に相談するケースも多いため、オーナー・管理会社側も情報収集の意味でチェックしておくと参考になります。
また、業界団体が発行する解説書や、国土交通省が公表している標準契約書・解説コメント、民間賃貸住宅に関する実態調査資料なども、実務の判断材料として有用です。更新料特約の有効性や消費者契約法との関係など、法的評価が分かれやすいテーマについては、最高裁判決や判例解説を確認した上で、必要に応じて弁護士へ相談すると安心です。
更新料のトラブルを防ぐためにも事前にルールを決めておこう
更新料は、オーナーにとって安定収益を支える一方、条件設定や説明を誤るとトラブルの火種にもなります。地域相場や契約更新の類型を踏まえた妥当な金額設定を行い、支払い期限や他の更新費用との関係を分かりやすく伝えることが重要です。迷ったときを想定して事前に対応ルールを定めておき、入居者との信頼関係を損なわない対応を心掛けることで、長期安定経営につながります。この記事を現場でのチェックリスト代わりに活用し、更新業務の標準化も意識しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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