• 作成日 : 2025年12月24日

スマートロックで賃貸管理が変わる!導入メリットと選び方

賃貸管理の現場では、内見対応や鍵の受け渡しに多くの時間とコストがかかり、空室対策にも頭を悩ませる場面が少なくありません。スマートロックを賃貸物件に導入すると、鍵管理をデジタル化しながら業務効率化と物件の差別化を同時に進めやすくなります。

この記事では、不動産管理会社やオーナーの視点で、スマートロック導入のメリット・デメリット、賃貸管理に適した選び方、導入ステップと運用時の注意点を解説します。

なぜ今、賃貸物件にスマートロックが求められるのか?

スマートロックは、賃貸物件の鍵管理を、現物ではなくデジタル化する技術です。入居者の安心と利便性を高めながら、管理会社の業務効率化にもつながる設備です。特に内見対応や鍵の受け渡しに課題を抱える賃貸管理では、スマートロックの導入が競争力を維持するための重要な選択肢になりつつあります。

以下では、賃貸物件でスマートロックが求められる理由を解説します。

入居者のセキュリティ・利便性ニーズが高まっているため

昨今は、防犯性の高さと生活のしやすさを両立できる賃貸物件が人気です。スマートロックを導入した賃貸では、物理鍵の紛失リスクを抑えられます。さらの、防犯性を高めつつ、スマートフォンやICカードでスムーズに解錠できる利便性が評価されます。

また、鍵を複製しなくても家族や同居人とアクセス権を共有できます。同居形態の変化にも柔軟に対応できる点も、入居者にとってのメリットです。さらに、退去時には管理画面上で権限を無効化できるため、前入居者の鍵が残っていないか不安に感じる声にも応えられます。

防犯意識が高い層や、スマホ決済などデジタルサービスに慣れた若い世代ほど、スマートロック対応の賃貸物件に魅力を感じやすいでしょう。

物件の差別化と空室対策につながるため

スマートロックを導入した賃貸物件は、セキュリティ面や利便性の面で他物件との差別化に役立ちます。モデルルームや短期利用の部屋などでも、スマートロックを活用すれば、柔軟な内見枠の設定や即日の入居対応がしやすくなり、空室期間の圧縮にも期待できるでしょう。

設備投資としての負担は発生するものの、入居者の満足度向上や成約率の改善が見込める点は、賃貸管理会社やオーナーにとって有益な投資になります。広告の訴求ポイントとしても分かりやすく、問い合わせ段階での興味喚起にもつながります。

物件管理業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速しているため

賃貸管理のDXでは、紙の書類と物理鍵に依存した業務を減らし、少ない人員で多くの物件を安定的に管理することが求められます。「鍵の受け渡し」「内見対応」「入退去時の鍵交換」をオンライン化できるスマートロックは、物件管理業務のDXに役立つ設備です。

たとえば、これまでの退去から入居までの流れでは「退去立会い→シリンダー交換の手配→新しい鍵の受け取り→仲介会社や入居者への鍵渡し」という複数のステップが発生していました。スマートロックを導入すると、「退去時に権限を停止する」「新入居者にアプリや暗証番号を付与する」というデジタルな操作に置き換えられます。

内見対応でも、スマートロックと予約システムを組み合わせると、内見予約に応じて一時的な暗証番号や解錠権限を自動発行する運用もできます。

賃貸管理会社・オーナーにもたらされる導入メリットは?

スマートロックを導入すると、賃貸管理会社やオーナーは日々の鍵対応の負担を減らしながら、内見数や成約率の向上も期待できます。ここでは、現場で実感しやすいメリットを4つの観点から整理します。

内見対応の自動化と業務効率化

スマートロックの導入により、内見のたびに鍵を店舗で貸し出したり、担当者が現地に同行したりする手間を減らせる点がメリットです。あらかじめ予約時間に合わせて一時的な暗証番号や入室権限を発行すれば、担当者が現地に行かなくても案内が可能になります。

土日や夜間など、これまで対応が難しかった時間帯にも内見枠を広げやすくなり、取りこぼしていた見学の機会を獲得できます。担当者は鍵の授受や移動に費やしていた時間を、オーナーへの報告や空室対策の提案など、より付加価値の高い業務に振り向けやすくなるでしょう。

鍵交換・管理コストの大幅な削減

スマートロックを使うと、退去のたびにシリンダー交換や合鍵作成を行う必要がなくなる点もメリットです(交換や再設定が必要なケースもあります)。入居者の退去後は、管理画面で対象部屋の権限を停止するだけで、次の入居者に鍵情報を引き継げます。

これまで発生していたシリンダー代、交換工事費、合鍵の作成費だけでなく、店舗での保管ボックスや鍵台帳の管理にかかる手間も減らせます。複数拠点で管理している場合でも、物理鍵を社内便や宅配便で送るコストを抑えられるため、管理戸数が多いほどコスト削減効果を実感しやすい部分です。

入退室履歴の把握と遠隔での鍵管理

スマートロックの多くは、いつ誰が解錠したかという履歴をクラウド上で確認可能です。管理会社は、空室期間中に行った内見や点検の履歴を後から振り返られるため、オーナーへの報告や社内の業務管理にも活用できます。

万が一トラブルが発生した場合でも、入退室のログを確認することで状況の整理が行いやすくなります。また、遠隔から一時的な入室権限を発行すれば、緊急の設備点検や清掃業者の立ち入りにも柔軟に対応可能です。

物件の付加価値向上による競争力強化

スマートロックを導入した賃貸物件は、「鍵を持ち歩かなくてよい」「非対面で入居開始をしやすい」といった点で入居者に選ばれやすくなります。防犯性への安心感に加えて、荷物で手が塞がっているときもスマートフォンやICカードで解錠できる利便性は、日々の生活のストレスを減らす要素になります。

賃貸ポータルサイトの物件情報にスマートロック対応を明記すれば、同じエリア・賃料帯の物件と比べたときの差別化要素として訴求しやすくなるでしょう。結果として、空室期間の短縮や賃料水準の維持につながり、オーナーにとっても中長期的な収益性の向上が期待できる設備投資になります。

スマートロック導入で懸念されるデメリットと対策は?

スマートロックには多くのメリットがありますが、導入前に把握しておくべき懸念点もあります。主な懸念は「費用」「トラブル時の対応」「既存ドアへの設置可否」の3つです。ここでは、それぞれのポイントと現実的な対策を整理します。

導入・運用にかかる費用

スマートロックの導入では、本体代だけでなく、設置工事費やクラウドサービスの利用料、電池交換や保守にかかるランニングコストも発生します。特に管理戸数が多い管理会社やオーナーの場合、全戸一斉導入を前提にすると初期費用が大きく感じられるでしょう。

費用面の不安を抑えるには、まず「全戸」ではなく「空室が多い棟」「人気エリアの物件」など、投資回収を図りやすい対象から段階的に導入する方法が有効です。クラウド利用料についても、戸数連動型や物件単位の料金体系など、料金プランの違いを比較し、現在の管理規模と今後の拡大方針に合うものを選ぶとよいでしょう。

内見の無人化や鍵交換費用の削減によってどの程度コストを回収できるか、簡単な試算を行ってから導入判断を行うと、オーナーにも説明しやすくなります。

電池切れや通信障害時のトラブル

多くのスマートロックは電池と無線通信を前提としているため、運用設計が不十分だとトラブル対応に追われる原因になります。

対策としては、まず電池残量を定期的に確認するルールを決め、残量が一定以下になった時点で計画的に交換する運用を整えましょう。交換作業を清掃や点検のタイミングに組み込むと、訪問回数を増やさずに管理しやすくなります。

また、非常用の物理キーや非常電源による解錠方法がある製品を選び、社内マニュアルに「電池切れ時の対応フロー」「通信障害時に現地で解錠する手順」を明記しておくことが重要です。入居者には、事前に非常解錠の手段や連絡先を案内しておくことで、不安を和らげやすくなります。

賃貸管理では、空室中にWi-Fiがない、入居者の回線に依存できない、といった事情もあるため、「空室時でもクラウド連携できる構成か(専用ゲートウェイ/LTE対応の有無)」を事前に確認しましょう。

既存ドアへの設置可否

既存の賃貸物件では、ドアの厚みやサムターンの形状、鍵の位置、共用部オートロックとの連動方式などが原因で、そのままでは設置が難しいケースもあります。

導入検討の早い段階で「対応物件の条件」をメーカーや施工会社に確認し、対象物件の図面や写真を共有した上で適合可否を判断してもらうことが大切です。賃貸物件の場合、原状回復の観点からも、穴あけが不要な後付け型を優先的に検討すると、オーナーの心理的ハードルを下げやすくなります。

賃貸管理に適したスマートロックの選び方は?

賃貸物件にスマートロックを導入する際は、見た目や価格だけでなく、設置方法・解錠方法・管理システムの3点を軸に比較することが重要です。特に賃貸管理では、1件ではなく複数物件・複数戸をまとめて運用するため、以下のような点をチェックして、現場のオペレーションに合うものを選択しましょう。

設置方法(後付け型・シリンダー交換型など)

原状回復のしやすさと施工の負担を考えると、まず設置方法から検討するのが効率的です。賃貸管理向けのスマートロックは、主に「後付け型」と「シリンダー交換型」の設置方法から選びます。

後付け型は、既存のサムターン部分に機器をかぶせるタイプが多く、ドアに大きな加工を行わずに導入できるケースが多いです。原状回復が前提になる賃貸物件との相性が良く、退去時に取り外して次の物件に再利用しやすい点も管理会社にとってメリットになります。一方で、サムターンの形状やドアの厚みなど、対応条件を満たすかどうかを事前に確認する必要があります。

シリンダー交換型は、既存の鍵穴部分をスマートロック対応のシリンダーに交換する方式です。見た目がすっきりしやすく、入居者にとって通常の玄関ドアに近い印象を与えられますが、工事が必要になるぶん、戸数が多い物件では初期費用と施工調整の負担が大きくなりがちです。

物件ごとの契約年数や入れ替え頻度を踏まえ、「長く運用する基幹物件はシリンダー交換型」「試験導入や短期契約物件は後付け型」のような基準で使い分けましょう。

解錠方法(スマホ・ICカード・暗証番号など)

スマホ・ICカード・暗証番号など複数の解錠手段を選べるかどうかは、トラブル回避や入居者満足度に直結します。

スマホ解錠は、スマートフォンアプリで操作する方式で、若年層や単身者を中心に受け入れられやすい方法です。内見や短期利用にも一時的なデジタルキーを発行しやすく、賃貸管理との親和性も高いと言えます。ただし、スマホに慣れていない高齢者のいる世帯への配慮や、スマホ忘れ・電池切れのリスクを考え、別の解錠手段もある機種を選ぶのがおすすめです。

ICカード解錠は、交通系ICカードや専用カードを使う方式で、かばんや財布に入れたままかざして開けられる点が利便性のポイントです。家族分のカードを配布しやすく、子どもや高齢の方にも説明しやすい方法です。

暗証番号解錠は、カードやスマホを持ち歩きたくない入居者や、セルフ内見・清掃スタッフの一時利用にも向いています。一方で、番号の管理ルールを決めておかないと、共有・使い回しによるリスクが残るため、入退去や担当変更のタイミングで番号を変更する運用が必要です。

管理システム(一元管理機能・API連携)

賃貸管理におけるスマートロック選定では、ハードウェアだけでなく管理システムの使いやすさと拡張性も重要なポイントです。複数物件・複数戸を運用する場合、部屋ごとに個別アプリで管理する方式だと、現場の負担が大きくなります。

一元管理機能を備えたシステムであれば、管理画面上で物件と部屋を一覧表示し、内見用・入居者用・業者用などの権限をまとめて発行・停止できます。退去時には対象部屋の権限を一括で無効化できるため、鍵の消し込み作業が明確になり、ヒューマンエラーを減らすことも可能です。また、担当者ごとに操作権限を分けられる仕組みがあれば、支店単位や業務内容ごとに権限管理を行いやすくなります。

さらに、将来的なDXを見据えるなら、予約システムや入居申込システムとのAPI連携が可能かどうかも検討材料に加えましょう。たとえば、内見予約が入ると自動で一時パスコードを発行する仕組みや、入居契約の完了と同時に入居者のアカウントを作成する仕組みがあれば、手入力によるミスを減らしながら業務を効率化しやすくなります。

賃貸物件へスマートロックを導入する方法は?

スマートロックを賃貸物件に導入するときは、思いつきで一斉に入れ替えるのではなく、以下のようなステップを踏むとよいでしょう。

導入目的の明確化と対象物件の選定

最初のステップは、スマートロックを導入する目的を整理することです。内見対応の無人化を優先したいのか、鍵交換コストの削減を重視するのか、オーナー向けの付加価値提案を強化したいのかによって、選ぶ製品や導入順序が変わってきます。

目的を整理したら、次に対象物件を選びましょう。たとえば、「空室期間が長い物件」「内見数が多い人気エリアの物件」「法人契約が中心で入退去が頻繁な物件」など、導入効果を測りやすい物件から始めると検証を行いやすくなります。

いきなり全管理物件に広げるのではなく、まずは一部の棟や部屋にテスト導入し、内見数の変化や現場の負担感を確認してから段階的に広げる進め方が現実的です。

対応製品の比較検討と見積もり取得

対象物件のイメージが固まったら、対応製品の比較に進みます。賃貸管理では、設置方法・解錠方法・管理システム・ランニングコストを軸に候補を絞るとよいでしょう。複数社から見積もりを取り、価格だけでなくサポート体制や管理画面の使いやすさも比較することも大切です。

見積もりでは、本体代と工事費だけでなく、クラウド利用料・保守費・電池交換の目安も含めてトータルコストを確認します。内見の無人化や鍵交換の削減による効果と並べてシミュレーションし、「何年で投資回収できる見込みか」をオーナーと共有しておくと、合意形成を行いやすくなります。

設置工事の実施と管理システムの設定

製品と導入戸数が決まったら、設置工事と管理システムの設定に進みます。工事スケジュールは入退去の予定と重ならないように調整し、オーナーや入居者への事前案内も忘れずに行います。後付け型の場合でも、共用部の扱いや原状回復の条件について、管理規約や賃貸借契約との整合を確認しておくと安心です。

設置が完了したら、管理画面上で物件・部屋・担当者の情報を登録し、内見用・入居者用・業者用などの権限区分を設定しましょう。最初は内見用の部屋だけに運用を限定し、社内マニュアルや入居者向け案内文を整えながら、運用ルールを固めていく進め方も有効です。

また、予約システムや入居申込システムと連携できる場合は、内見予約から一時パスコードの発行までの流れをテストし、実際の業務フローと齟齬がないかを確認してください。現場の担当者からフィードバックを集め、権限の付与・停止手順や電池交換のタイミングなどを調整しながら、自社の賃貸管理に合ったスマートロック運用を確立できるでしょう。

スマートロック導入・運用時の注意点

スマートロックの導入・運用では、機器選びだけでなく社内ルールと入居者への説明体制を整えることが重要です。まず、電池交換や権限付与・停止の担当者を明確にし、操作マニュアルとトラブル時の連絡フローを文書化します。入退室履歴の扱いについては、保存期間や閲覧できる担当範囲を決め、個人情報保護の観点からも運用ルールを共有しておきましょう。

入居者には、解錠方法や非常解錠の手段、退去時の権限停止などを契約前後で丁寧に案内し、不安や誤解を減らすことが大切です。また、共用部のオートロックや管理規約との整合も事前に確認し、管理組合やオーナーと合意形成をしてから導入を進めることが望ましいです。

スマートロックで賃貸管理の価値を高めよう

スマートロックは、賃貸管理の現場で負担になりやすい内見対応や鍵交換の作業を減らし、入居者の利便性と安心感も高めやすい設備です。導入目的を明確にし、対象物件と対応製品を丁寧に選べば、過度なコストをかけずに業務効率化と物件の付加価値向上を両立できます。

自社の賃貸管理フローと照らし合わせながら、まずは効果を測りやすい物件からスマートロック導入を検討してみましょう。


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