人事労務の最新トレンドを解説!2025年に取り組みたいポイントとは?
作成日:2024年11月25日
少子高齢化の進展による人手不足が深刻化した影響で、2024年には多くの企業が従業員の賃金を大幅に引き上げました。また働き方改革の推進によって、人事労務に関わる大きな法改正が実施されています。ここでは、2024年の動きを振り返りながら、人事労務が2025年に取り組みたいポイントについて解説します。
2024年 人事労務の最新トレンド解説
1.政府が推進する「働き方改革」法改正
(1)時間外労働の上限規制の適用
労働基準法改正により、これまで猶予されていた運送業界や物流業界、医療業界にも2024年4月から「時間外労働の上限規制」が適用されます。2024年問題と呼ばれる人手不足が加速し、物流の停滞など経済全体への影響も出ています。
(2)社会保険の適用拡大
該当者の社会保険加入手続きが必要になるとともに、加入を避けるために労働時間を短縮する従業員も発生し、人手不足が深刻化する可能性もあります。
(3)男性の育休取得率の公表義務化
2023年4月、従業員数が1,000人超の企業に対して、男性の育児休業取得率の公表が義務化されました。2025年4月には300人超の企業も義務化の対象となります。育休取得率を高めるとともに、育休中の業務体制の整備が必要です。
2.労働市場の変化
(1)人手不足の深刻化と賃金の上昇
2010年代以降、人手不足は長期化するとともに幅広い業界に及んでいます。その結果、2023年の賃上げ率は3.6%、2024年は5.1%と、およそ30年ぶりの高水準です。また、人手不足や物価の上昇などにより、今後も賃金の上昇圧力は高いことが予想されます。
(2)多様な働き方の広がり
働き方に対する価値観の多様化や、コロナ禍で在宅勤務が浸透した影響などにより、短時間勤務やフレックスタイム、場所を選ばない働き方など、さまざまな働き方を希望する人が増えました。その結果、企業は優秀な人材を確保するために、労働者の多様なニーズを受け入れる仕組みづくりが求められています。
(3)高齢者の就業率アップ
高齢者の就業率は増加傾向にあり、65歳から69歳の人の就業率は50%を超え定年後も働き続けることが当たり前になりつつあります。高齢者を活用することで、人材確保を図る企業も増加傾向です。
3.企業の対応強化
2024年の法改正や労働市場の変化に対応して、企業は人事労務面で以下のような取り組みを強化しています。しかし、取り組みに対する経営者の理解不足や、取り組み実現に向けた人材やノウハウの不足など、多くの企業が課題を抱えています。
- 働き方改革の推進(長時間労働の是正、有給休暇や男性育休の取得推進)
- 人手不足や賃金の上昇に対応し生産性を上げるためのDX化
- 人材確保に向けた人材のダイバーシティ化(高齢者や女性、障害者、外国人の雇用)
- 企業環境の変化に応じた人材の再戦力化と、人材のつなぎ止めを目的としたリスキリング
…など
2025年に取り組みたいポイント
人事労務に関して2025年に取り組みたい主なポイントは、「法改正への対応」「雇用制度の見直し」「事務の効率化やDX化による生産性の向上」です。

法改正① 高年齢者の雇用確保など
2025年3月に65歳までの雇用確保義務(65歳まで定年引上げ、65歳までの継続雇用制度の導入、定年廃止)の経過措置が終了し、完全実施が必要です。また、2021年4月より努力義務となった「65歳から70歳までの就業機会の確保(定年引上げや業務委託制度など)」についても具体的な検討を始めましょう。

法改正② 育児介護休業法の改正
仕事と育児・介護の両立を支援するために、2025年4月より次の改正が行われる予定です。そのため改正に応じた社内制度や就業規則の見直しが必要になります。
・子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
・介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化

雇用制度の見直し
人手不足や賃金の上昇、法改正への対応を個別に行うだけでなく、抜本的に雇用制度を見直すことも検討してみましょう。働きやすい勤務体制を提供することで従業員の定着率を高め、多様な人材の受け入れによって人材の確保が容易になります。
・従業員が働きやすい勤務体制づくり(フレックスタイムや在宅勤務の導入など)
・多様な人材の受け入れ(高齢者や女性、障害者、外国人の採用と職場環境づくり)
参考資料「テレワーク導入までの9ステップ」

事務の効率化やDX化による生産性の向上
人手不足を解消し企業活動を維持・発展させるためには、事業の再構築や業務量の削減、人材の確保などが必要です。事業の再構築や業務量の削減には、効率化やDX化による生産性の向上が効果的です。また、生産性を高めて従業員の待遇改善や労働時間の短縮が実現すれば、従業員の満足度を高め企業の魅力が高まり必要な人材確保も期待できます。
参考資料「労務管理のペーパーレス化で今の仕事はどう変わる?」