「食料品の消費税が下がるらしいけど、うちは食品を扱う会社じゃないから関係ない」と考えておられる経理担当者の方は、少なくないのではないでしょうか。
しかし、令和9年4月から2年間限定で実施される予定のこの制度変更の影響は、食品業界だけの話ではありません。首相官邸が公表した記者会見の内容によれば、政府はすでに「農業従事者」と「外食産業」という2つの業種を名指しして、影響を見極めた支援策の検討を進めています。取引先にこれらの業種を持つ企業であれば、間接的に影響が及ぶ可能性があります。今回は、この制度の全体像と、業種を問わず発生する実務対応を整理します。
※本記事は、消費税率の引下げに関するビジネス上の気づきを提供するものです。個別の税務判断については、税理士等の専門家にご相談ください。
株式会社マネーフォワード
ERPドメインリサーチャー
合江 篤
2019年に株式会社マネーフォワードに入社。Fintech研究所にて金融制度、年金制度、海外金融サービス動向を中心とする調査研究をはじめ、弊社Fintech研究所Blogにおける海外Fintech企業の動向の発信や、金融財政事情などの金融専門誌への寄稿などを行う。
2022年から電子帳簿保存法・インボイス制度対応など法制度関連のマーケティング施策に従事。2024年12月からERPマーケティング本部にて企業のバックオフィス業務効率化・DXを推進する取り組みや、企業の経理・財務領域を中心としたバックオフィスパーソンへの情報発信を行っている。
制度の全体像:なぜ「0%」ではなく「1%」なのか
飲食料品(軽減税率対象品目)の消費税率は、令和9年4月から2年間、8%から1%に引き下げられる予定です。0%ではなく1%とされた理由について、政府はレジ等のシステム改修期間を理由に挙げています。0%への引下げでは事業者の準備が令和9年4月に間に合わないため、1%であれば対応可能という判断です。
令和9年4月からの2年間は「つなぎ」の期間と位置づけられており、令和11年4月には「就業者負担軽減支援金」という所得に連動した給付制度が本格的に導入され、それに合わせて税率は8%に戻される予定です。つまりこの制度は、単に税率が下がって終わりではなく、2年後にもう一度、元の税率に戻すタイミングが控えているという特徴があります。
なお、令和11年4月から本格施行予定の「就業者負担軽減支援金」が開始されるまでの「つなぎ」期間の給付についても、令和9年6月以降、1%相当の範囲内で先行導入される予定です。財源は特例公債に頼らず、税外収入や予算編成改革を通じて確保する方針が示されていますが、年5兆円規模の財源が必要とされており、具体的な確保策は今後の予算編成プロセスで示される見通しです。
政府が名指しする、影響の大きい2つの業種
企業への影響として、首相官邸の記者会見では次の2業種に関する具体的な支援策の検討が進められていることが明言されています。
農業従事者:多くが免税事業者であるため、仕入税額控除の「還付」を受けられない構造にあります。税率が下がっても、その恩恵を直接実感しにくい立場にあり、過去の支援策も参考にしながら、政府の予算編成プロセスで対応が具体化される見通しです。
外食産業:軽減税率の対象外(10%のまま)でありながら、仕入れる食材は1%の対象になるという「税率のねじれ」が生じる業種です。原価と売上の税率が異なる状態が続くため、資金繰り面での支援策が検討されています。
自社がこの2業種に該当しない場合でも、取引先としてこれらの業種と関わりがあるかを確認する価値があるといえます。整理すべきポイントをまとめました。
業種を問わず発生する実務対応のポイント
- 税率区分の変化
税率区分が「10%/8%/1%/不課税・非課税」という形になり、会計・請求書システムの税率マスタ更新が必要になります- 消費税減税をまたぐ取引の扱い
施行日(令和9年4月1日)をまたぐ取引について、どちらの税率を適用するかという経過措置の判定が必要になります- 消費税減税期間終了後の切り替え
令和11年4月に税率が8%へ戻る際、同種の切替対応がもう一度発生します。通常の税率変更とは異なり、短期間に2回の切替が起きる点は、システム改修やマニュアル整備の負荷という観点で見落とされがちなポイントです
今のうちに確認しておきたいこと
- 自社の取引先に、農業従事者や外食産業に該当する事業者がいないか
- 会計・請求書・POSシステムが、新しい税率区分(1%)に対応した更新スケジュールを組めているか
- 令和9年4月と令和11年4月、2回の税率切替を見据えたスケジュールを、社内で共有できているか
食料品の消費税減税は、1989年の消費税導入以来、初めての税率引下げです。「食品業界の話」と捉えず、取引先を通じた間接的な影響も含めて、早めに現状を確認しておく姿勢が求められそうです。
【出典・参考文献】
首相官邸「『飲食料品に係る消費税率の引下げ』及び『給付付き税額控除』についての会見」『首相官邸公式サイト』、2026年7月30日、https://www.kantei.go.jp/jp/105/statement/2026/0730kaiken.html(最終閲覧日:2026年9月18日)
自民党「飲食料品消費税率の臨時的な引き下げと就業者負担支援金導入に向けた大綱を決定」『自民党公式サイト』、2026年9月15日、https://www.jimin.jp/news/policy/214205.html(最終閲覧日:2026年9月18日)
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