
Bizpediaでも何度かテーマに取り上げている、「RPA」。大量の定型業務を抱える経理部門にとって、業務効率化の武器として期待したいツールの一つです。
一方で導入するとなれば、他システムとの比較や費用対効果の検討、そしてRPAの基礎知識も不可欠。多忙な経理の方々にそんなRPAを分かりやすく解説いただきたい、と今回白羽の矢が立ったのは、「楽しく技術を学ぶコミュニティ『さるでき』」の管理人であり、『RPAのはじめかた』著者のカワサキタカシさん。分かりやすく軽快な語り口で教えていただきます。
RPAとは
みなさま、『RPA』という言葉を聞いたことはありますか?
Bizpediaをご覧のみなさまであれば、既にいくつかの記事で目にしていると思いますが、RPAとは「Robotic Process Automation(ロボディクス・プロセス・オートメーション)」、という言葉を略したものです。日本語に直訳すると「ロボットによる・工程の・自動化」ということになりますね。
このままだと少々イメージしにくいですので、カッコよく言葉を補いましょう。RPAとは、私たち「新しいものを生み出すこと」が得意な『人間』と、「素早く・正確に作業をすること」が得意な『事務作業用のロボット』が一緒に仕事をする、新しい『仕事のカタチ』のことを言います。
『ロボット』という言葉が付いているので、一瞬「ドラえもん」や「ペッパー君」のような、「手足が付いていて、歩いたり喋ったり、時にどら焼きを食べたりできる物理的なマシーン」を想像してしまいますが、RPAのロボットは、パソコンの中に入っている「ロボット機能」のことを指しています。
……おや、どうしました?
ディスプレイ越しにみなさまの「ガッカリ感」が伝わってきましたよ?
まあ確かに。一席に一台、ゆるキャラのような丸顔のロボット君がいてくれれば、殺伐とした仕事場にもホンワカとした雰囲気が出るに違いありません……が、よく考えてみてください。キャビネットを開けたら布団が敷いてあって、ロボットが寝ている光景。
……うん、多分邪魔ですね。
RPAロボットに代表されるイマドキの事務作業用ロボットは、普段はパソコンの中にそっと隠れていて、いざという時にだけ画面に出てきてササッと仕事をしてくれる、クールな存在なのです。
RPAツールの仕組み
そんなクールなRAPロボットを、「作り出して、管理する」ための『専用ツール』のことを、「RPAツール」と言います。現在、『BizRobo!(ビズロボ)』『WinActor(ウィンアクター)』『UiPath(ユーアイパス)』など、業界を代表する有名なツールが大活躍するすぐ後ろから、新しいツールが続々と登場し、激しい競争を繰り広げています。まさにRPA花盛り、という活況ですね。
ただ、そんな日々進化を続けているRPAツールですので、新しい機能も続々と加わり、今からRPAを学ぼうと思っているみなさまにとっては、どの機能が「基本となる機能」なのかが逆に分かりにくくなってきているのも実情です。
「なんだか複雑そうだなー」とRPAの世界に苦手意識を持たないように、今日みなさまはひとつだけ、次の『基本機能』だけを覚えていってくださいね。
すべてのRPAツールに共通する機能は、『私たちのパソコン上での操作を記録して、再生する』という機能です。
例えば、マウスでボタンをクリックしたり。
例えば、キーボードで文字を入力したり。
一つ一つの操作を記録して、それを順番に再生すること。それが、RPAツールでRPAロボットを作り出すためのベースとなるやり方なのです。
私たちがパソコン上で行っていることは、案外「定形作業」が多いのですね。
例えば毎朝、「①ブラウザを開いて(アイコンをクリック)」「②ニュースサイトにアクセスして(キーボードでURLを入力)」「③プロ野球の試合結果をチェックする(リンクをクリック)」みたいな。『同じ動き』を繰り返していることがよくあります。
こういう定形作業について、一連の流れを「分解」して、一つ一つの操作として「記録」、順番に「再生」することで、あたかも私たちの代わりに仕事をしているようなロボットを作り出す。というのが、RPAツールというわけです。
RPAツールの歴史
実は、こういうツールはITシステム開発の現場には結構古くからありました。
例えば、みなさまも普段「会計システム」を利用していると思いますが、会計システムを構築する際にも、「膨大な量の仕訳データを入力したり」「複数人で同時に保存の処理をしたり」と、事前に様々な操作をテストする必要があります。
それらをすべて人力で行おうとすると、大勢の「人」と操作を覚える「手間」が必要になるので、人間の代わりにパソコン自身が記録した操作を実行してくれる、「テストツール」と呼ばれる便利なツールがあったりするのです。
RPAツールは、こういうテストツールのような「システム開発の現場で使われていた、専門的で特殊なツール」を、「どんな職場でも、誰でも」使えるように進化させたものなのですね。
進化、と言えば。ここまでのお話でピンと来た方もいらっしゃるかと思いますが、RPAツールで作り出されたロボットは、「イマドキのロボットのイメージ」と少し違っていて、「自分で考える」ということはしない、私たちの『ものまね』をするロボットです。
ものまね、ですので、私たちが事前に「こうしなさい」と操作の指示をしなければ、動くことができません。旧来のテストツール的には、そういう機能で十分だったわけです。
しかし、近頃は『AI(Arificial Intelligence/人工知能)』、という機能を持つ、自分で考えることができるロボットも実用化されてきており、単なるものまねロボットであったRPAロボットにも続々とAIの機能が搭載されるようになってきました。
『RPA 2.0』と呼ばれるこの流れは、今後RPAロボットを「より高度な事務作業ができるロボット」へ進化させていくと思います。「お願いし忘れていた作業まで、そっとやっておいてくれる」、優秀な秘書さんのようなRPAロボットも、そのうち誕生するかもしれませんよ。
RPAツールとExcelマクロの違い
鋭いみなさまのことですから、「おや?パソコンを自動的に動かすための仕組みなら、今までだって『Excelのマクロ機能』があったような……」と、気になっているかもしれません。
そうなのです。Excelマクロにもパソコンを自動化するための機能は沢山含まれていますので、その辺りに詳しい方であれば、RPAツールの機能はそれほど特別なものには見えないはずです。
では、「RPAツールとExcelマクロは何が違うの?」と言いますと。
『自動化するための機能だけで言ったら、それほど大きな違いはない』というのが、正解です。
……おっと!そんなにガッカリしないでください。
あくまでそれは、「Excelマクロをガリガリコーディングできる人」の場合です。
みなさまもご存じの通り、Excelマクロでは、ちょっと複雑なこと、例えば、「条件分岐」や「繰り返し」をするような処理をしようとすると、VBA(Visual Basic for Applications)というプログラミング言語の習得が必要になります。プログラミングに詳しい方であれば存分に機能を使うこともできますが、「Excelは計算用の関数くらいしか使わない…」という方にとっては、少々……いや、結構ハードルが高いものです。
VBA(Visual Basic for Applications)の操作画面
その点、RPAツールであれば、優秀な『ロボットエディター機能』が搭載されていますので、プログラミングを一切行わなくても、複雑な処理を行うロボットを作り出すことができるようになっています。
先ほど歴史の中でお話ししたとおり、専門性が高いパソコン自動化の仕組みを、「どんな職場でも、誰でも」使えるように進化させたもの、それがRPAツールなのです。
RPAツールを使ってみよう!
さてさて。RPA、そしてRPAツールに興味が湧いてきましたか?
せっかくの良い機会です、では早速RPAツールを実際に使ってみましょう!
……と、言いたいところなのですが。RPAツールには、ひとつだけ「厄介な問題」がありまして、ええ。ここだけの話……実は『結構お高い』のです。
私たち人間の代わりに、面倒なパソコン作業を「素早く・正確に」行ってくれる。そんなとっても優秀なロボットを作ることができるツールですので、高いのは仕方がないと言えば仕方がないのですが……うーむ。ドコかでほんの少しだけでも使えると……良いのですが。ねえ?何とかなりません?
と、そんなみなさまのために。とっておきの「無料で使えるRPAツール」をご紹介しましょう!その名も『UiPath Communityエディション』です。

UiPathの操作画面
このツールは、RPA業界の中でも屈指のシェアを持つ「UiPath社」が提供している「個人ユーザー向け無償ツール」でして、個人ユーザーであれば、誰でも無料でUiPathを体験することができる素晴らしいサービスです。(企業で使う場合は有償版になりますので、あくまで「お試し用」として使ってくださいね)
海外製のツールなのですが、シッカリ日本語化もされていますし、日本語のマニュアルも豊富に用意されています。入門者用の書籍も出ていますので、RPAに興味が湧いた方は、ぜひ一度体験してみてくださいね!
RPAロボットと一緒に働こう!
おつかれさまでした!『RPAの基礎知識』いかがでしたか?
「RPAという言葉を最近よく聞くけど、情報が多すぎてドコから手を付けたら良いものか、サッパリ……」という、「RPAジャングル」特有のややこしさを、少しでもスッキリさせるお手伝いができたていたらうれしいです。
『働き方改革』という言葉が職場を独り歩きする中、RPAはひとつの「具体的な手段」として、現在様々な方面で期待されています。ただ、期待がとっても大きいために、実際に使ってみると、「こんな面倒な設定をするくらいなら、自分の手でやってしまった方が楽だな……」と、ガッカリしてしまうことも多いです。
でも、そこで手作業に戻ってしまったら、いつまで経っても私たちの仕事の時間は減っていきません。RPAツール、そしてRPAロボットの「自動化力」は、実績を積み重ねてきた確かなものです。ですので、RPAのロボットは、ついつい手作業でやってしまおうとする私たちの「意識」を変えるキッカケ、と考えるのが良い付き合い方なのではないかなと、思います。
最初は愛想のない彼らですが、そのうち「これだけ役に立つなら、どら焼きのひとつやふたつ買ってあげようかなー」と、相棒として頼りに思える日がきっと来ますので、みなさまの職場でも、機会があればぜひ一緒に働く仲間に加えてあげてくださいね。
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