グループ間売買で利益を「偽装」していないか? 別表14(6)が暴くグループ法人税制のリアル

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決算書は経理担当者にとって見慣れた書類ですが、法人税申告書の「別表」には、決算書からは読み取れない会社の実態が記されています。

本シリーズでは、CSアカウンティング株式会社 代表取締役社長の中尾篤史氏(公認会計士・税理士・社会保険労務士)に、経理担当者が押さえておくべき別表の見方を解説いただきます。

第2回は「別表14(6)」——取引先の与信判断やM&Aの検討、グループ会社の決算チェックなど、決算書と申告書をあわせて確認する場面で、グループ内の資産売買が生む「見かけの利益」を読み解きます。

<シリーズ記事>
Vol.1 別表7(1)から読み解く赤字の実態とキャッシュフロー
Vol.2 別表14(6)が暴くグループ法人税制のリアル(本記事)

決算書だけ見て安心していないか、という問いかけ

親会社と複数の子会社を持つグループ企業の単体決算書を眺めていて、こんな違和感を覚えたことはないでしょうか。

「本業の営業利益は厳しいはずなのに、特別利益に多額の『固定資産売却益』が計上されて最終黒字になっている」

「赤字すれすれの会社が、急に保有資産を整理してきれいな決算書に仕上がっている」

決算書の損益計算書だけを見れば、立派に利益が出ており、純資産も維持されているように見えます。

しかし、その売却相手が「100%資本関係のあるグループ会社」だったとしたらどうでしょうか。

第三者への売却ではなく、身内同士で資産を動かしただけで作られた利益だとしたら、その会社の「実力」を信じてよいはずがありません。決算書の表面的な利益に安心していると、実態のない数字に惑わされることになります。

法人税申告書からしか読み取れない情報とは何か

単体の決算書(個別財務諸表)では、固定資産売却益が計上されていても、「誰に売ったのか」「取引価格が妥当なのか」までは注記等を見ても容易には判別できません。ましてや、その売買がグループ内の利益操作目的であるかどうかを決算書だけで見抜くのは困難です。

ところが、税務の世界では話が異なります。平成22年度税制改正で創設された「グループ法人税制」により、100%の資本関係(完全支配関係)がある内国法人間で一定の資産を譲渡した場合、税務上はその譲渡損益を「なかったもの」として将来に繰り延べるルールが定められています。

そして、このグループ間売買による損益の繰延べ状況を詳細に記録・管理しているのが、法人税申告書の「別表14(6)(完全支配関係がある法人の間の取引の損益の調整に関する明細書)」です。決算書には堂々と計上されている資産売却益が、税務上はどのように扱われ、将来どんな影響を及ぼすのかは、この別表14(6)を開いて初めて白日の下に晒されます。

最低限見ておくべき箇所とそのポイント

別表14(6)が添付されている申告書を見た場合、実務担当者が最低限おさえておくべきチェックポイントは以下の通りです。

  • 1.「譲渡資産の種類と取引金額」調整対象となるのは、譲渡直前の帳簿価額が1,000万円以上の固定資産、土地、有価証券(売買目的外)などの「譲渡損益調整資産」です。どの資産を、どのグループ会社へ、いくらで譲渡したのかが明記されています。
  • 2.「当期の損益調整額(益金算入・損金算入)」
    • 譲渡益が出た場合:会計上の利益と同額を税務上「損金算入(減算)」し、利益を打ち消す
    • 譲渡損が出た場合:会計上の損失と同額を税務上「益金算入(加算)」し、損失を打ち消す

    別表14(6)で調整された金額は、そのまま別表4に連動します。これにより、「決算書には利益が出ているが、税務上は所得として認識されていない」という状態を確認できます。

  • 3. 「翌期以後に損金・益金に算入する金額(将来のインパクト)」繰り延べられた損益は永久に消えるわけではありません。譲受会社がその資産をさらに売却したり、除却・減価償却したりしたタイミングで、「当初の譲渡会社」において損益が実現します。将来の事業年度で、突然巨額の課税(益金)や節税(損金)が発生する潜在的リスクをここで把握します。

粉飾や異常値のサインが申告書側に出るケース

グループ法人税制の仕組みを使った悪用は、別表14(6)に明確なサインとして現れます。

そのサインとは、税金を払わずに「決算書の利益だけをカサ増し」する行為です。

グループ法人税制の最大の特徴は、「完全支配関係のあるグループ内で譲渡損益調整資産を売却して会計上は巨額の利益を計上しても、税務上は損金算入されるため、法人税の納税が発生しない」という点にあります。

これを利用し、資金難で納税する余裕はないが銀行向けに決算書を良く見せたい企業が、子会社に含み益のある不動産を売却して「見かけの純利益」を捻出するケースがあります。決算書だけ見れば黒字企業ですが、別表14(6)を見れば、その利益の全額がグループ間取引による一時的な仮初めの数字であることが一目瞭然となります。

まとめ:決算書と申告書、両輪で会社の実態を見る

親会社単体の決算書がどれほど好調に見えても、それがグループ内での資産のキャッチボールによって作られたものであれば、企業グループ全体としての実質的な企業価値は何一つ向上していません。

決算書には「会社が世の中に見せたい姿」を描くことができますが、法人税申告書には「税務当局に対して嘘をつけない実態」が記録されます。

特に100%の資本関係のある同族企業やコングロマリット企業を評価する際、別表14(6)のチェックを怠ると、グループ内取引による利益のかさ上げや、将来持ち越される潜在的な税金の負担を見落とす危険があります。決算書に計上された特別損益の「真実」を確かめるために、別表14(6)というフィルターを通して会社の実態を見極める習慣を身につけましょう。


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