新リース会計基準、適用直前の今からやるべきこと―経理だけでなく総務・法務・情シスも巻き込む全社対応

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新リース会計基準の強制適用が迫っていますが、対応準備は終えられましたでしょうか。

特に今回の制度改正は、経理部門に留まらず全社に広く影響を及ぼす内容となっています。例えば、契約の棚卸しには総務・法務部門の協力が欠かせず、システム対応には情報システム・DX推進部門が関わります。とりわけ、店舗・車両・生産設備など「モノ」を借りて事業を営む業種は、財務諸表への影響が大きいと指摘されています。

今回は、具体的なモデルケースを交えながら、業種ごとの落とし穴と、部門をまたいだ全社での新リース会計基準対応の準備の進め方を整理します。

※本記事は、新リース会計基準に関するビジネス上の気づきを提供するものです。個別の会計処理・税務判断については、公認会計士・税理士等の専門家にご相談ください。

【執筆者】
株式会社マネーフォワード
ERPドメインリサーチャー
合江 篤

2019年に株式会社マネーフォワードに入社。Fintech研究所にて金融制度、年金制度、海外金融サービス動向を中心とする調査研究をはじめ、弊社Fintech研究所Blogにおける海外Fintech企業の動向の発信や、金融財政事情などの金融専門誌への寄稿などを行う。

2022年から電子帳簿保存法・インボイス制度対応など法制度関連のマーケティング施策に従事。2024年12月からERPマーケティング本部にて企業のバックオフィス業務効率化・DXを推進する取り組みや、企業の経理・財務領域を中心としたバックオフィスパーソンへの情報発信を行っている。

制度の基本:何が変わるのか

まずは新リース会計基準の最大の変更点に関するおさらいです。これまでの会計基準では、オペレーティング・リースは貸借対照表に計上せず(オフバランス)、賃貸借取引に準じて処理できました。新リース会計基準では、借手のすべてのリース(従来のオペレーティング・リースを含む)について、原則として「使用権資産」と「リース負債」を貸借対照表に計上します。

ただし、次の2つについては簡便的な取り扱いが認められています。

少額リース
少額リースの簡便処理には複数の方法があります。自社の少額減価償却資産の費用処理基準に連動させる方法に加え、契約単位で重要性が乏しいと判断できるリース(目安として300万円以下程度)、または原資産単位で新品時の価値が少額(目安として5,000米ドル以下程度)なリースのいずれかを、自社の会計方針として選択できます。

短期リース
リース期間が12か月以内の契約。ただし、契約書上の期間だけでなく、過去の更新実績や事業上の重要性を踏まえた「合理的に確実な延長期間」を加味する必要があるため、「1年契約だから対象」と単純に判断できない点に注意が必要です。

なぜ経理部門だけでは完結しないのか

新基準への対応は、経理部門が仕訳を切り替えるだけでは済みません。リース資産の棚卸から契約内容の確認など、社内で関わりが強い代表的な部門とその役割について、改めて整理しましょう。

総務部門
オフィス賃貸借契約、駐車場、倉庫・保管契約など、契約書を管理している部門が、まず契約の全量を洗い出す起点になります。

法務部門
契約書の文言(更新条項、解約条項、特定資産の指定の有無など)を確認し、リースに該当するかどうかの一次判断に関わります。

情シス・DX推進部門
使用権資産・リース負債の計算、契約件数の増加に対応するためのシステム導入・改修を担います。

調達・購買部門
今後の取引において、たとえば、複数の少額資産をまとめて1つの契約にすると、少額リース特例の対象から外れ、オンバランス計上が必要となります。契約を1件にまとめるか分割するかという設計判断に、会計処理の視点をあらかじめ組み込む必要があるため、契約締結前に経理部門へ内容共有と、リースへの該当性に関する事前確認が欠かせません。

経営企画・IR部門
自己資本比率・ROA等の財務指標の変化を、株主・投資家などにどう説明するか、中期経営計画のKPIとの整合をどう取るかを検討する役割を担います。

内部監査部門
契約の網羅的な把握や、リース識別・判定のプロセスが適切に機能しているかを、内部統制の観点から検証する役割を担います。金融商品取引法に基づく内部統制報告制度(J-SOX)は、すべての上場企業に課されるため、新規上場から間もない企業も含めて、契約の網羅性を担保する統制の整備が求められます。
また、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社法上の大会社では、子会社を含めた連結内部取引の資産・負債計上が、子会社の会計監査人の監査にも影響するため、早い段階からの関与が求められます。

経営層
全社横断プロジェクトとしてのスポンサーシップを発揮し、少額リース・短期リースの判定基準といった会計方針の最終決定や、投資家や金融機関など社外への説明が求められます。

リース識別が難しい「組込みリース」という論点――業種別モデルケース

新基準では、契約の名称が「リース契約」でなくても、実質的にリースとしての性質を持つ契約(いわゆる組込みリース)を識別する必要があります。

判断のポイントは、①資産が特定されているか、②その資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利があるか、③資産の使用を指図する権利があるか、の3点です。飲食店・倉庫業・運送業のように、店舗や車両の賃貸借契約が多い業種は、財務諸表への影響が特に大きいとみられます。以下、業種ごとにモデルケースを交えて見ていきます。

製造業

ケース:部品メーカーの生産管理担当Cさんはある特定の部品の生産について、外部の協力工場に製造委託をしている。契約書上は「製造委託契約」だが、その協力工場のラインは自社製品専用に設計されたものだった。決算対応の中で、経理部門から「このライン、実質的にリースに該当するのでは」と指摘され、初めて組込みリースの可能性に気づく。

契約書上は製造委託契約であっても、専用の金型・加工機材や自社製品専用の生産ラインについて、その資産から得られる経済的利益のほぼすべてを自社が享受する権利を持っている場合には、リースに該当する可能性があります。

IT業

ケース:SaaS企業の情報システム担当Dさんは、自社サービスの提供に使う専用サーバーを、データセンター事業者から借り受けている。「クラウドサービスの契約だから関係ない」と思っていたが、契約書を確認すると、特定のサーバー機器(シリアル番号指定)を借りる内容になっており、リースに該当する可能性が浮上した。

クラウドサービスやSaaS等の契約は、一般的にはリースに該当しないケースが多いとされていますが、専用のサーバー機器を借り受ける契約などは、リースとして扱われる可能性があります。また、ソフトウェアなどの無形固定資産のリースについては、国際会計基準(IFRS)と同様に、日本基準でも借手による適用が任意とされている点も、自社の会計方針を検討するうえでの判断材料になります。

小売業(多店舗展開)

ケース:アパレルチェーンの店舗運営担当Eさんは、全国150店舗の賃貸借契約を管理している。契約の多くは「固定賃料+売上歩合賃料」の組み合わせだったが、どこまでをオンバランス対象にすべきか、契約更新オプションをどう評価すべきか、契約書を1件ずつ確認する必要に迫られた。

多店舗展開する小売業では、固定賃料部分と売上歩合賃料部分の区分、契約更新オプションの行使可能性の評価(過去の出退店実績や将来計画との整合性)、建設協力金・保証金の返還条件の確認などが実務上の論点になります。

物流・運送業

ケース:食品メーカーの物流管理担当Fさんは、自社では車両を保有せず、運送会社との間で「配送業務委託契約」を結んで、全国への商品配送を行っている。契約書には車両番号が明記されており、「他社の荷物とは混載せず、自社専用車両として運行する」という条件が付されていた。決算対応の中で、経理部門から「これは運送サービスの利用なのか、車両のリースなのか、契約書を確認してほしい」と相談を受けた。

契約書に特定の車両番号が明記され、その車両を「専属的に」使用する条件が付いている場合、単なる運送サービスの利用ではなく、実質的に車両のリースとして識別される可能性があります。特に、自社側が配送ルートや運行スケジュールを指定できる場合は、「③資産の使用を指図する権利」も満たすと判断されやすく、リースに該当する可能性がさらに高まります。一方で、運送会社側が複数の荷主の荷物をまとめて配送する「混載便」を利用している場合は、特定の車両を専属的に使用しているとはいえず、リースに該当しない可能性が高くなります。

いずれの業種も、「賃貸借契約」「リース契約」という名称の契約だけを棚卸しの対象にしてしまうと、実質的なリースを見落とすリスクがあります。自社の業種がここに挙げた例と異なっていても、「特定の資産を、一定期間、実質的に独占して使っている契約」がないかという視点で、一度契約を確認する価値がありそうです。

財務指標への影響と、経営層・金融機関との対話

リース資産のオンバランス化により、総資産・総負債がともに増加します。これに伴い、複数の専門機関の分析で共通して指摘されているのが、次のような財務指標への影響です。

  • 自己資本比率・ROA(総資産利益率)・総資産回転率の低下
  • 一方で、リース料の一部が「支払利息」として営業外費用に振り替わるため、営業利益・EBITDAは見た目上、改善する(実態が良くなったわけではなく、表示区分が変わるためである点に注意)

特に、金融機関からの借入に財務制限条項(コベナンツ)が付されている場合、自己資本比率や有利子負債に関する条項に抵触するリスクがあるため、早めに金融機関へ事前相談・説明を行っておくことが重要になります。

直前対応として今すぐ着手すべきポイント

適用開始が2027年4月1日以後に開始する事業年度の期首からであることを踏まえると、次の点から着手することをおすすめします。

契約の全量棚卸し
総務・法務部門と連携し、「リース契約」という名称の契約だけでなく、業務委託契約・製造委託契約・物流委託契約の中に組込みリースがないかを含めて洗い出す

会計方針の選定
少額リースの判定基準(300万円基準か5,000米ドル基準か)、短期リースの判定方針を、自社の実態に即して決定する

財務指標への影響試算
現有のリースをオンバランスした場合の自己資本比率・ROA等の変化を試算し、経営層・金融機関への説明資料を準備する

システム対応の検討
契約件数の増加や、使用権資産・リース負債の複雑な計算(割引率の設定、延長期間の見積り等)に対応できるシステムの導入・改修を、情シス部門と早めにすり合わせる

社内の役割分担の明確化
経理・総務・法務・情シス・調達の各部門で、誰が何を担当するのかを早い段階で決めておく

まとめ

新リース会計基準への対応は、「経理部門が新しい仕訳のルールを覚える」という話に留まりません。契約の洗い出しから始まり、財務指標への影響、システム対応、そして部門をまたいだ役割分担まで、全社的なプロジェクトとして捉える必要があります。2027年4月1日以後に開始する連結会計年度および事業年度の期首から強制適用となった今、決して余裕のある期間ではなく、今この瞬間から早急に着手する段階だと言えます。



【編集部より】
本記事では、新リース会計基準対応にあたって押さえておきたいポイントを整理しました。実際の対応にあたっては、契約の棚卸しやリース該当性の判定など、部門をまたいだ実務が発生します。マネーフォワード クラウドでは、対応の第一歩として活用いただける「TODOチェックリスト」「リース判定管理シート」「社内影響調査リスト」の3点セットをご用意しています。ぜひあわせてご活用ください。


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【出典・参考文献】
企業会計基準委員会『企業会計基準第34号 リースに関する会計基準』(企業会計基準委員会、2024年)、https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/lease_20240913_02.pdf(最終閲覧日:2026年9月29日)

企業会計基準委員会「企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針」『企業会計基準委員会公式サイト』、2026年7月17日、https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=160(最終閲覧日:2026年9月29日)

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

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