「インボイス制度対応はもう終わった話」――そう思っている経理担当者の方は、少なくないのではないでしょうか。2023年10月の制度導入から3年ほどが経過し、請求書のフォーマットも登録番号の確認も、日常業務に組み込まれた頃かもしれません。
ただ、実はここに落とし穴があります。制度導入時に設けられた「経過措置」には期限があり、いわゆる「2割特例の終了、8割控除の縮小」といった経過措置の変更点が2026年度の税制改正で決まりました。また、法人と個人とで扱いが分かれる点、そして見落とされがちな「上限額」の引き下げという論点があります。今回は、この2つの見落としがちな論点を整理します。
※本記事は、インボイス制度の経過措置に関するビジネス上の気づきを提供するものです。個別のご判断については、税理士、弁護士等の専門家にご相談ください。
株式会社マネーフォワード
ERPドメインリサーチャー
合江 篤
2019年に株式会社マネーフォワードに入社。Fintech研究所にて金融制度、年金制度、海外金融サービス動向を中心とする調査研究をはじめ、弊社Fintech研究所Blogにおける海外Fintech企業の動向の発信や、金融財政事情などの金融専門誌への寄稿などを行う。
2022年から電子帳簿保存法・インボイス制度対応など法制度関連のマーケティング施策に従事。2024年12月からERPマーケティング本部にて企業のバックオフィス業務効率化・DXを推進する取り組みや、企業の経理・財務領域を中心としたバックオフィスパーソンへの情報発信を行っている。
①「2割特例」の終了――法人と個人で異なるポイント
インボイス発行事業者となった小規模事業者向けの負担軽減措置として規定された「2割特例」(納付税額を売上税額の2割にできる措置)は、法人・個人を問わず、2026年9月30日を含む課税期間をもって終了する予定でした。
2026年度税制改正では、この扱いに違いが生まれています。個人事業者に限り、2027年と2028年の2年間は納付税額をその課税標準額に対する消費税額の3割とする「3割特例」が新たに設けられ、事実上の延長となりました。一方で、法人については延長の措置がなく、当初の予定通り2026年9月末で2割特例は終了します。
自社が法人であるにもかかわらず「延長されるはず」と思い込んでいると、2026年9月30日を含む課税期間の次の課税期間から想定外の納税額になる可能性があります。一方で、個人事業者やフリーランスを取引先に持つ発注担当者は、相手が3割特例の対象になり得ることを早めに把握し情報提供しておくことで、一方的な通告ではなく、双方が納得できる形で取引条件を協議しやすくなるといえるでしょう。
②「8割控除」の縮小より見落としやすい、上限額の引き下げ
適格請求書発行事業者以外の事業者からの仕入れについて、一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置(8割控除)も、段階的に縮小されます。控除できる割合は、2026年10月から70%、2028年10月から50%、2030年10月から30%と下がり、2031年9月末で終了します(7・5・3割控除)。この段階的な控除割合による経過措置は令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。
実務でより大きな影響を及ぼしうるのは、適格請求書発行事業者以外の事業者からの課税仕入れについて、経過措置を適用できる上限額が変更されるという点です。具体的には、これまで1事業者からの年間の上限額であった10億円が1億円に引き下げられることとなります。仕入額が大口になりがちな業種では、この上限額の引き下げによって、想定よりも控除の対象外になる取引が出てくることも考えられます。
今すぐ確認しておきたい3つのポイント
- 経過措置における上限額の変更に伴い、年間の取引額を取引先単位で把握できているか
- 会計システムや経費精算システムが、控除割合の区分(70%・50%・30%)に対応した更新を行えるか
- 個人事業者が取引先の場合に3割特例の対象になり得ることを踏まえ、一方的な条件変更ではなく、双方が納得できる取引条件を協議するための情報提供ができているか
インボイス制度は「対応して終わり」ではなく、経過措置という形で段階的に変化を続けています。「もう終わった話」と思わず、節目ごとに制度の現在地を確認する姿勢が、今後も求められるといえるでしょう。
なお、今回取り上げた内容も含め、制度の基本から令和8年度税制改正のポイントまで、より詳しく知りたい方は「インボイス制度 徹底解説(2026年2月最新版)」もご覧ください。
【出典・参考文献】
財務省「令和8年度税制改正の大綱」(2025年12月26日閣議決定)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/20251226taikou.pdf(最終閲覧日:2026年8月25日)
国税庁「インボイス経過措置の見直し等」『令和8年度税制改正特集』、https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice-review/index.htm(最終閲覧日:2026年8月25日)
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