デキる上司の部下だから、上司の身代わりに部下が潰されやすい|前田康二郎さんに聞くハイ・パフォーマーの“心を折らない”マネジメント術Vol.3

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毎回大好評の前田康二郎さんの連載・第3回をお届けします。

連載テーマはすばり、「デキる上司がデキる部下を潰してしまう。はなぜ起こるのか?~経理編~」

そして今回は、なんともコワい、「現場のリアル」がテーマです。とは言え、そのメカニズムを知れば、対処のしようがあります。

前田さんの最新刊『デキる上司がデキる部下を潰してしまう。はなぜ起こるのか?』(クロスメディア・パブリッシング社刊)の特別版として、経理やバックオフィスをご担当のみなさまにお届けします。

【連載一覧】
デキる部下を守れるのはデキる上司だけ!|前田康二郎さんに聞くハイ・パフォーマーの“心を折らない”マネジメント術Vol.1
「復職」に重要な4つのマインドセット|前田康二郎さんに聞くハイ・パフォーマーの“心を折らない”マネジメント術Vol.2
デキる上司の部下だから、上司の身代わりに部下が潰されやすい|前田康二郎さんに聞くハイ・パフォーマーの“心を折らない”マネジメント術Vol.3(本記事)

デキる上司には、敵が多い理由

皆さんの会社にもデキる社員の方がいることでしょうが、特にデキる上司というのは、組織においては社内に「敵」が多いのが一般的です。デキる上司は、会社から使命を受けて、新規事業や社内改革など、会社を向上させるためのプロジェクトや施策に関わっていることが多いはずです。

しかし、それに社内の全員が賛同しているわけではありません。「今日も明日も毎日同じ作業をして定時で仕事を終えて給料をもらいたい」という人たちからすると、ともすれば疎ましい存在となります。「あの人が活躍すればするほど、私たちは新しい仕事が増えて大変になるから、あの人がやっている計画が頓挫すればいいのに」と思っている人も現実にはいるのです。

以前、ある会社が新規事業で海外進出をしようと、その使命を受けた優秀な現場社員が赴任をしました。

その際に、経理社員の一部が「海外進出がうまくいって実際に売上が計上され始めたら英文会計も覚えないといけないし、経理処理が大変になるから大変だ。こんなプロジェクト、頓挫すればいいのに」と、赴任した現地の社員に嫌がらせを陰で繰り返していました。

「経理社員は売上を持っていない」と思っている方もいるかもしれませんが、そのようなことはありません。どのようなビジネスでも金銭管理が重要ですので、優秀な現場社員をサポートできる「デキる経理社員」がいる会社は確実に事業が拡大し、売上が伸びます。

その一方で、この例のように、自分の利得しか考えていない経理社員がいる会社は、社長や現場社員がどれだけ種まきをして売上を作ろうと努力をしても、それらを社長にバレないようにことごとく摘み取って潰していくので、会社の数字がなかなか伸びません。

経理の仕事は会社が縮小していくほど業務量も減って一時的に楽になる特性があります。このようなことが現実にできてしまうことが経理部門の怖いところです。

だから経理部門というのは、業務スキルも大切なのですが、まず人間性がきちんとしているか、ということが採用基準において極めて重要になります。業務スキルは上司が教えれば後から何とでもなりますが、その人の「人間性」は、デキる上司でも簡単に変えることはできないのです。

デキる上司の敵は、デキる上司の直属の部下を狙う

会社員時代を振り返ると、デキる上司の下にいたときほど、仕事の人間関係が大変だった記憶が私にはあります。デキる上司が新規のプロジェクトや業務改革などを指揮する場合、全体の統括は上司が行いますが、具体的な実務作業は部下が行います。

つまり、デキる上司の部下は、反発する人たちからすると「手下」「子分」と勝手にみなされ、ありとあらゆる妨害をしてデキる部下を潰すことで、デキる上司が進めているプロジェクトを頓挫させようとするからです。上司より部下のほうが、年齢、社歴なども若いことが多いですから、攻めやすいということです。

私もそのような被害を受けた経験がありますが、今振り返ると、それは私自身への妨害というより、当時の私の上司たちへの妨害だったのだなと思います。なぜなら当時、会社は新規プロジェクトを行っており、その責任者が私の上司たちだったからです。

でも彼らは百戦錬磨のビジネスパーソン、頓挫させたい人たちが攻めても返り討ちにあうだけなので、当時まだ若かった私をスケープゴートにして集中攻撃をしかけてきたということです。実にくだらない話ではあるのですが、でもその人たちにとっては死活問題なのです。それがある意味、研究などの理論の世界では出てこない会社員の「リアルワールド」ということなのでしょう。

経理部門でいえば、例えば株式上場や経理業務のデジタル化、月次決算化などのプロジェクトや業務改善などの施策で、これらのようなケースを経験した方たちもいるかもしれません。

いずれも社長や経理にとっては前向きな内容ですし、現場の人たちにとっても業務改善後はメリットを理解していただけることなのですが、そのプロジェクトや業務改善の「遂行中」は、現場に負担をかけることがあります。

そのため、「将来より今が大事」という人たちにとっては、「こんなに負担が強いられることなど、頓挫してしまえばよい」という考えに舵を切る現場社員も出てきます。そのようなときに、現場社員の不満やストレスの矛先は経理部門の上司ではなく、吐き出しやすい直属の経理の部下に向かいます。

例えば株式上場へ向けて準備段階の会社では、一部の現場部門の社員から「株式上場のために現場の私たちが取引先に1件ずつ受注書の依頼をしたり、発注申請を細かく申請したり、そういう負担や苦労をあなたたち経理はわかっているの?」となじられる経理の部下もいるかもしれません。

あるいは経理業務のデジタル化の際には「経理のために、また私たちが新しいソフトのやり方を覚えなきゃいけないの?」「これって結局経理が楽になるだけでしょ」となじられる経理の部下もいるかもしれません。

そして月次決算の際は「私たちは月末単位じゃなくて案件単位で仕事をしているのだから、なんでそんな面倒くさいことしなきゃいけないの」となじられる経理の部下もいるかもしれません。

このようなときに、機転の利く世渡り上手な経理担当者でしたら「そうですよねえ。私もそう思います!」「私は上から言われているだけなんで、ちょっと細かいことわからないです!」「じゃあそのとおり、上司にも言っておきます!」と相手からのなじりを上手く交わすことができますが、多くの経理担当者はそうではなく、「それはですね…」と、真面目に上司の代わりに説明したり説得したりすることでしょう。

デキる経理の上司と現場部門との板挟で、ストレスを抱えることもあるわけです。

デキる部下への批判は、直属の上司への批判と自覚する

デキる経理の上司の方にお伝えしたいことは、もし皆さんが会社の将来のためとはいえ、社内の多くを敵に回すようなプロジェクトにまい進しているとしたら、それは間違いなく、皆さんよりも、皆さんの「部下」に不平不満が集まります。

そのため、まずやっていただきたいことは、定期的に部下に「自分のことや自分のプロジェクトのことで何か嫌な目にあっていない?」と確認をしていただくことです。

その返答が「まあ、いろいろ言われますけど、今のところ大丈夫です」と言われたら、部下も隠し事をしていないでしょう。しかし「いや、特にありません」という場合は、本当にないのではなく、上司が聞いたら激昂するだろうから、と黙っているか、上司に負担をかけたくなくて部下が自発的に黙っているか、そのどちらかだと思ったほうがいいでしょう。

人というのは、恨みを持つ人へ直接恨みを果たせないときにはその子どもや孫へその恨みを移す人がいるように、デキる上司に不平不満をぶつけたいと思ってもできない場合は、その部下に不平不満が向かいます。

それを上司が勘違いし、現場の社員から「あなたの部下が周囲とうまくいっていないらしいよ」と周囲から耳打ちされて、自分の部下に「もうちょっと周囲とうまくやりなさい」「肝いりのプロジェクトなんだから(私の)足を引っ張らないように」と指導したら、それこそ相手の罠にまんまとはまった、ということなのです。

尊敬する上司からそう言われた部下は「上司のプロジェクトを推進するために、自分は言いたくない厳しいことも現場に伝えてきたのに」と、ショックを受けて転職をしていく場合もあるでしょうし、メンタルを病んでしまい休職、退職してしまうこともあるでしょう。

デキる上司とデキる部下の仲を裂くことによりプロジェクトが進められなくなり、新規プロジェクトや業務改善も頓挫する。それがまさに相手の最終目的なのです。

デキる部下への批判は、部下自身への批判ではなく、上司である自分への間接的な批判と解釈し、部下に「君、もうちょっと皆とうまくやりなさい」ではなく「私へ文句を言えないから君に文句を言っている人がいるということだね。悪いね」と声掛けして差し上げてください。

「デキる上司とデキる部下」、この組み合わせが会社の売上・利益の8割を占めます。経理部門も「会社のお金を守る部門」として、この組み合わせを堅持して会社の数字に貢献し、上司と部下で信頼関係を強固にしてご活躍いただければと思います。

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