電子保存義務に対応した運用方法|施行まであと【4ヶ月】電帳法対応の最終チェック⑥

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前回まで5回にわたって電子保存義務の概要、対象、対応方法などを見てきました。今回は、それらを要約して、全体を再確認します。

1.電子保存義務とは

電子帳簿保存法は、①帳簿や決算書類の電子保存、②電子取引情報の電子保存、③スキャナ保存による電子保存、から構成されています。

うち、①と③は任意の「できる」規定です。②は、長い間例外規定により紙面保存が認められていましたが、令和6年(2024年)1月1日から原則通りに電子保存が義務付けられることになりました。法人の場合も、決算期に関わらず1月1日から適用となります。

2.電子保存義務の対象者

電子保存義務の対象者は幅広く、法人税と所得税の保存義務者が対象になっています。このため、法人のほか、個人事業主も含まれることになります。また、法人についてもすべての法人が対象であり、規模などによる除外規定などはありません。

3.電子保存の対象

見積書、契約書、注文書、請求書領収書などに相当する情報を書面ではなくデータでやり取りした場合(このような取引を「電子取引」といいます。)、そのデータを保存する必要があります。

たとえば、取引先と電子メールでやり取りした際の見積書や請求書など(こちらから送信した場合も含みます)のPDFファイル、インターネット通販サイトで商品を購入・販売した際にそのサイト上に表示される注文情報や領収書などが該当することになります。

なお、保存する際のファイル形式はとくに規定されていません。PDFファイルや画像ファイル(たとえばPCやスマホの画面をスクリーンショットで保存したもの等)などでも問題ありません。

4.電子保存の要件への対応

電子保存の要件は、①電子計算機処理システムの概要を記載した書類の備付け(自社開発の場合)、②見読可能装置の備付け、③検索機能の確保、④改ざん防止措置、になります。

このうち、③と④の要件が重要になります。

(1)検索機能の確保(③)への対応方法

要件への対応方法をまとめると、以下のとおりになります(詳細は前回の記事をご参照ください)。

売上高検索要件を「不要にする」方法検索要件に「対応する」方法
(下記のいずれか)
5,000万円以下①ダウンロードの求めに応じる一覧表を作成する/ファイル名を工夫する電帳法対応の会計システム等を利用する
5,000万円超①に加えて、②印刷した書面を一定の要件を満たすよう整理しておく

 

お勧めする対応方法は、以下のようになります(規模感で分けるため売上5,000万円以下の部分を1,000万円を基準にして分割しています)。

売上高不要にする方法対応する方法
一覧表/ファイル名会計システム等
1,000万円以下
1,000~5,000万円
5,000万円超

 

  • 売上高1,000万円以下の小規模な事業者の場合は、ダウンロードの対応または一覧表の作成やファイル名を工夫して対応することで十分かもしれません。

 

  • 売上高が1,000万円を超える規模ですと、一覧表の作成などの方法は事務が煩雑になるかもしれません。ダウンロードの対応または会計システムや経費精算・債務支払システムの利用による対応を検討したほうが良さそうです。

 

  • 売上高が5,000万円を超える場合は、検索要件を不要にするための事務負担も重くなります。会計システムや経費精算・債務支払システムの利用による対応をお勧めします。

 

(2)改ざん防止措置(④)への対応

以下の4つの措置のうち、いずれかを採る必要があります。実際には、取引の方法や内容などに応じてこれらを使い分けることになると考えられます。

措置難易度対応方法
(1) タイムスタンプが付された後の授受取引先がタイムスタンプを付してから送付してくる場合は、それだけで対応していることになります。未来の理想形といえるかもしれません。
(2) 速やかに又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかにタイムスタンプを付す対応した会計システムやクラウド型請求書受領サービス、債務支払システム、経費精算システムなどと共に規程を用意し、処理プロセスを整備・運用することが必要
(3) データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用して、授受及び保存を行う対応した会計システムやクラウド型請求書受領サービス、債務支払システム、経費精算システムなどで対応が可能要
(4) 訂正削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用、備付け小規模事業者でも比較的容易に対応が可能

 

まとめ

今回は、電子保存義務についてこれまで掲載してきた5つの記事を要約しました。

大切なのは、それぞれの会社や事業者の規模や業務内容に応じて、適切な対応方法をきちんと選択することです。自社での判断が難しい場合には、公認会計士や税理士などの専門家に相談されることをお勧めします。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

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