電子帳簿保存法（電帳法）ってなに？｜施行まであと【10ヶ月】電帳法対応の最終チェック①

数年前から「電帳法」という言葉をよく聞くようになりました。メールで受け取った請求書は印刷して紙で保存することができなくなり、電子保存が義務づけられるらしい、といったことが話題になっています。

そもそも、電帳法は何を目的としているのでしょうか。まず、このあたりから見ていこうと思います。

電子帳簿保存法は、正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。平成10年（1998年）に施行されていますので、すでに25年経過していることになります。

電子帳簿保存法の目的

第1条では、この法律の趣旨を次のように記載しています。

この法律は、情報化社会に対応し、国税の納税義務の適正な履行を確保しつつ納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する等のため、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等について、所得税法、法人税法その他の国税に関する法律の特例を定めるものとする。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=410AC0000000025

このように、この法律の目的は、納税者の税務関係の帳簿書類の保存に係る負担を軽減することにありました。

制定当時、主要な企業においては何らかの会計システムが導入され、経理情報はすでに電子的に処理されていたのですが、税法上は帳簿類（仕訳帳、総勘定元帳、補助簿など）を紙面で保存することが義務付けられていました。これに対応するため（だけ）に膨大な量の帳簿を紙面に出力して保存せざるを得ず、その労力や保管コストは企業にとって大きな負担となっていました。

このような状況に対応するために制定されたのが電子帳簿保存法でした。これにより、会計システムで電子的に作成された帳簿を電磁的記録（ハードディスク、コンパクトディスク、DVD、磁気テープ等）もしくはマイクロフィルム（COM:Computer Output Microfilm）で保存することが認められるようになりました。

また、最近話題になっている「電子取引情報の電子保存義務」も制定当初から規定されています。ただしこちらについては、例外的に印刷して紙面で保存することが容認されてきていました。

なお、「国税の納税義務の適正な履行の確保」も目的に挙げられています。税務当局としても会計帳簿を電子データで受領したほうが調査等を効率的に行えますので、元々電子データで作成されているのであればそのまま提出してもらうのがよいという趣旨です。

電子帳簿保存法の対象とその変遷

制定当初は帳簿書類と電子取引情報のみが対象となっていて、証憑書類等のいわゆる「スキャナ保存」に関する規定は存在していませんでした。

当初の制定から7年後の平成17年（2005年）に施行されたe-文書法（民間事業者に書面での文書保存義務が課されている場合、スキャナ保存を含む電子保存を原則として容認した法律）に伴い、同年の改正で初めてスキャナ保存が規定されています。

現在の電子帳簿保存法の原型（①帳簿や決算書類の電子保存、②電子取引情報の電子保存、③証憑書類のスキャナ保存）はこの段階で出来上がりました。

 
※紙面保存は国税に関する法令で原則として定められている方法

③のスキャナ保存は、鳴り物入りで導入されたもののその後10年の間の利用申請が150件ほどであり、まったくと言ってよいほど利用が進みませんでした。一部の書類（3万円以上の領収書など）をスキャナ保存の対象として認めなかったこと、事務処理の要件が実務の実態に合っていなかったことなどが原因として挙げられます。

平成27年（2015年）の改正により金額基準の廃止、電子署名の要件廃止、適正事務処理要件の導入などが行われ、続いて平成28年（2016年）の改正ではスキャナ装置の要件緩和（スマホ利用可）、小規模事業者の特例などが定められました。このような規制緩和により、スキャナ保存を利用する企業が徐々に増えることになります。

その後、令和元年（2019年）、令和2年（2020年）と小規模な改正が続きました。令和3年（2021年）には、税務署による事前承認を不要にすることなどの大幅な改正が行われています。

令和4年（2022年）には、②の電子取引情報の保存に関する例外的な容認規定（印刷して紙面保存可）が削除され、電子保存が義務付けられることになりました。ただし、こちらの改正については実質的に令和6年（2024年）まで延期されています。

まとめ

ここでは、電子帳簿保存法の当初の目的と対象、その後の変遷を辿りました。個々の対象（電子保存義務やスキャナ保存）については、別稿で詳しく見ていきたいと思います。