決算締めの早期化は古くて新しいテーマ

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中小企業であれば「銀行への報告のために決算を早く締めて欲しい」、上場企業であれば「30日以内の早期開示のために子会社には月初6営業日には決算を確定して欲しい」等々、企業の大小を問わず、決算の早期化というニーズは過去からのテーマではないでしょうか。

今回は、そんな古くからニーズの高い決算早期化について、最近の経理部門のインフラ整備や経理BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)も交えて解説したいと思います。

決算早期化って必要でしょうか?

そもそも、なんで決算の早期化が求められているのでしょうか?

  • 早めに数値を見て経営判断を下したい!
  • 投資家への情報開示を早めにすることが投資家への期待とマッチしている
  • 金融機関から定期的に数値の報告を求められ、融資継続にはタイムリーに月次決算の報告が必要である

等々、社内の経営者からの求めもありますし、外部からの要請もあり、早期化には応えていく必要があるのです。

四半期開示の見直しの議論もされている昨今ですが、数字を早めにまとめ上げる流れは後退することはないでしょう。

経理部門は数字屋さんから意思決定の参謀への転身が求められている

会社の経営者が早期化を求めている本当のニーズは、経理部門が数字を作り上げることで終わりではなく、その後の分析等を行うなど、未来の経営の意思決定に関わって欲しいということです。

つまり数字を確定させて終わりではなく、会社の戦略を練る参謀としての役割が期待されているのです。

これは、経理業務のDX化などで経理業務が効率化される流れのなかで生み出された時間を、未来経営のために使って欲しいということに他ならないでしょう。

未来のために仕事をするには、過去の実績である数字確定に時間を大きく取られるわけにはいかないですし、出来上がった数字がタイムリーなものであれば意思決定が後手になってしまいます。

それだけ期待されている経理部門なのでやりがいのある仕事ですが、実際早期に締めるためにはどのような工夫があるでしょうか。

クラウドシステムで可視化されていると仕事の進捗が一目瞭然

例えば、売上の計上は会社のトップラインを確定させる大切な業務ですが、現場の事業担当者が速やかに売上を確定してくれないといつまでも決算を締めることができません。

請求システムを使っている場合に、承認フローが付随しているものであれば、計上や承認が現在どのようなステータスであるのかが可視化されます。担当者の計上が遅いのか、上司の承認が遅いのかは承認フロー上の承認履歴で明らかになります。

クラウド型のシステムの場合、インターネットさえつながる環境であれば、原則としてシステムにアクセスが可能なので、滞っている担当者に連絡をし、計上や承認をしてもらうことで次の工程に仕事が進んで、早期に売上を確定させることができるのです。

また、売上の計上に関しては、月末にまとめて締めている会社も多いと思いますが、この慣習も見直して、月末の締めまで待たずに仕事が完了したら都度売上を確定させて、請求する流れに変えることによって、月末月初に業務が集中することもなくなります。

売上の締めを月末月初に集中して行っている会社の場合、それが必須なのかを検討してみるのも一つです。

請求書の到着はまずは期日までの到着督促

売上の計上に関しては、社内の従業員の協力があれば早期化を図ることは可能ですが、外部からの仕入れや経費に基づく債務の計上は、取引業者の協力がないと金額の確定をすることができません。

そこで、この点はアナログ面から攻めることも重要です。具体的には、取引業者に請求書の提出期限を厳守してもらうように依頼をするのです。例えば、「月初2営業日までに請求書を提出してください」といったお願いをします。

最近では、ペーパーレスが経理部門でも浸透してきており、請求書を郵送で送るのではなく、専用のWebサイトを通じて請求書を配信するサービスを利用することで、請求額が確定すると速やかに相手先に請求額を通知することができるようになってきています。こうなると月初1営業日あるいは2営業日に金額を入手することができるようになるのです。

社内の承認は債務計上でも可視化して確認

ただ、取引業者から請求書を入手するだけでは、月次決算は確定しません。発注部門の担当者とその上席者が入手した請求書の内容を確認した上で、経理部門に情報を共有して初めて債務が確定するのです。

債務確定ためにワークフローを利用している会社であれば、承認の履歴が可視化されますので、どこで承認等が止まっているのかが明らかになります。

請求書の内容の確認は人間が判断する業務となりますので、その点は自動化しきれませんが、承認プロセスの状況把握はシステムを活用することで可能です。人間とシステムをうまく組み合わせて決算早期化を実現していきましょう。

この点、紙の申請書で承認を行っている場合は、誰かの引き出しの中に申請書があって滞っているとは往々にしてあります。全員の引き出しを確認するなんていうことは忙しい月末月初にはできませんから、紙からの脱却も視野に入れて依存できるところはシステムに依存しましょう。

人的リソースが不足しているのであればBPOの活用も

社内の人的リソースで決算早期化が実現できるのであればそれで良いのですが、社内あるいは社外からの要請で早期化の期日がさらに短縮されたり、人的リソースが十分でない会社の場合は、経理業務の一部をBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)するのも選択肢の一つです。

早期化のための工夫をしつつ、補完できるところはBPOすることで、難局を乗り切っている会社もあります。決算早期化を図るために、現在のボトルネックを明らかにして、具体的な対策を練ってみてください。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:中尾 篤史(公認会計士/税理士)

CSアカウンティング株式会社 /代表取締役社長。 日本公認会計士協会 租税調査会 租税政策検討専門部会・専門委員。 著書に『DX時代の経理部門の働き方改革のススメ』、『瞬殺!法人税申告書の見方』(税務研究会出版局)、 『正確な決算を早くラクに実現する経理の技30』、 『BPOの導入で会社の経理は軽くて強くなる』(共著)、 『対話式で気がついたら決算書が作れるようになる本』(共著)、 『経理・財務お仕事マニュアル入門編』(以上、税務経理協会)、 『たった3つの公式で「決算書」がスッキリわかる』(宝島社)、 『経理・財務スキル検定[FASS]テキスト&問題集』(日本能率協会マネジメントセンター)、 『明快図解 節約法人税のしくみ』(共著、千舷社)など多数。