<つぶれない会社の負けない経理戦略> 第6回DX改革は若手主体で編成し、ベテランが見守る

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遅ればせながら先日、リモート飲み会なるものを初めてしました。その中である会社の20代の経理社員が、転職を考えているとのことでした。その方の勤める会社は規模も大きいので、コロナ禍でもすぐ経営危機になるということもありません。そして仕事の評価も、査定評価で最高ランクをつけてもらったのだそうです。それなのになぜ転職を考えているのかというと、「あまりにも会社の体質、体制が古すぎて、先が見えない」とのことでした。さらに言うには「年長者の人たちを見ていて、自分もずっとここにいたらああなってしまうのかと思うと怖い」と言っていました。ああなるって例えばどういうこと?と聞くと、「こんな大変な世の中の状況なのに、危機感がまったくない」とのことでした。

今私は40代ですが、就職氷河期を経験してきた身からすると、「もったいない。評価してもらっているなら今のところで頑張ればいいじゃない」と最初は思いましたし、私と同世代の人たちならきっとそう思う方が多いのではないかと思います。そう言いかけた時に、ふと自分が20代だった頃を思い出して、言うのをやめました。私も20代後半から30代前半はジェットコースターのように毎日迷走していたことを思い出したからです。

若手経理が持つ「危機感」の正体

自分の将来や仕事について悩むというのは、よく考えれば20代の頃が一番「漠然とした悩み」があり、それが30代、40代になると、今度はより「リアルな悩み」に変わっていった気がします。その反面、年齢を重ねて人生経験が増えてくると、そのような悩みにも上手に付き合う、折り合いをつけてなんとかやっていく、というスキルも身に付いていきます。それが多くの方たちのリアルな生き方だと思いますが、20代の人たちから見ると、折り合いをつける年長者の姿に、思うところもあるのかもしれないと感じました。

この話を聞くまで私は、コロナ禍でも財務体質が盤石な会社よりも、経営が大変な会社に勤めている会社員の人たちのほうが転職について考えていると思っていたのですが、それはまったく関係なく、「個々の危機感の差」なのだなと思いました。

もちろんコロナ禍で影響を受けている会社で働いている方たちはもっと大変です。以前テレビで、新入社員の人が入社研修もオンラインでしか受けられない中で、「自分は何の役にも立っていないから、この会社に居てはいけないのではないか」と一時期思いつめて転職を考えていた、ということをインタビューで答えていました。社会人経験は少なくても危機感は人一倍ある人ほど、ひとりで悩み、そしてひとりで結論を出してしまう傾向があります。上司の方たちは、若い社員の方たちがこういった考えにならないように、特に今のような、なかなか毎日直接コミュニケーションがとれない環境下では気を付けて見守っていただければと思います。

このような方たちの悩みに答えてあげられることは何だろうかと考えると、やはり「その人たちにとって、やりがいのある仕事」を任せてあげるということが一番なのではないかと思います。ただ簡単にそう言っても、業務レベルもありますし、実際にどのような仕事を作ってあげ、そして任せてあげられるかという課題もあります。

DX(デジタルトランスフォーメーション)業務は、候補の一つ

その中で、私は、今盛んに言われているDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する業務が候補の一つとして良いのではないかと思います。社内の業務フローなどでデジタルツールなどを使いながら改善できる点はないか、総点検してもらうのです。私の周囲の経営者の方々もDXについて盛んにおっしゃっていますし、私自身もDXに関するセミナーのご依頼なども増えています。ただ、私自身は厳密に言えば、これは言葉が変わっただけで、いつの時代も常に言われている業務改善の一つなのではないかと思います。

今私はある会社の社外役員をさせていただいているのですが、そこでご一緒している会計士の先生が30年前に編集に携わったという書籍を取り寄せて読んでいたところ、苦笑いしまった箇所がありました。そこに何が書かれていたかというと、

  • 経理もこれまでのアナログ作業から、機械化などで効率化していかなければいけない
  • これから機械化が進んでいく中で、経理社員の新しい仕事の役割は何か

など、今日現在も言われていることばかり書かれていました。思わず本当にこれは30年前の本なのかと、発行日を二度見してしまいました。ということは裏を返せば、これからさらに機械化が進んでも、既存の仕事は減ってもまた新たな経理の仕事というのは生まれてくるのだろうと思います。ですから「経理などをやっていて、自動化されたら私の将来は大丈夫でしょうか」と悩んでいる若い方がいたらそれは不要で、むしろ経理は人手不足になる統計も出ているくらいなので大丈夫だ、とお伝えいただければと思います。

ですからDXといっても、1から何かを勉強しなければいけないとか、ハイレベルのスペックの人しか携わってはいけない業務ということではなく、むしろ感覚がまっさらな人たちのほうが、「どうしてこの経理処理をアナログでやる必要があるのだろう」「この経理の証憑をわざわざ印刷する意味はあるのかな。データで保管するだけではいけないのかな」「このクラウドソフトを使えば、毎回半日かけている経理の手作業がなくなりますよね」といったように、若い世代の社員の人たちから見たら「一見非効率や無駄、あるいは機械化や自動化ができるように見える、思える」業務を洗い出してもらうことはできると思います。

当然、多くの会社で現在残っている「アナログ作業」や「一見無駄に見える作業」というのは、本当にその通りのものと、必然性があってわざとアナログにしている、わざと面倒な手順を踏んでいるものの2種類があります。たとえば不正防止の観点から、わざわざ紙の確認票に直筆でサインをしている、複数のチェック承認を要する作業フローにしている、という会社もあるでしょう。

若い方、実務経験の浅い方に、業務フローには「効率化したほうがより良い」ことと、「効率化のみ追求し過ぎると不正や計上漏れなどのリスクが生じるもの」の2種類があるということをこれらのプロセスで伝えることもできます。このような経理業務の本質をまず理解してもらい、その上で業務改善の提案をする、ということは、会社にとっても、そして社員教育にとっても有益ではないかと思います。業務フローの改善やソフトウェアの導入は、会社に「足跡」を残すことですから、自分の成果が「見える化」されます。「自分がこの会社に貢献できている」「自分はこの会社に居ていいんだ」と思えることができるのではないかと思います。

上司が若手に「丸投げ」しない

ただ、気を付けなければいけない点は、若い社員の人たちに「すべて丸投げをしない」ということです。冒頭の若者が、「会社で新しく導入したクラウドソフトの入力の仕方を年長者の方たちに毎日教えているんですけど、おじいちゃんおばあちゃんが孫に接するみたいに『ありがとう、助かる』と言ってくれてそれは嬉しいんですけど、自分が教える側ばかりだと、虚しくもなるんですよね」と言っていました。

30年前でも今でも、尊敬できる先輩や上司というのは、必要不可欠です。若手社員に仕事を任せつつも、いざピンチの時にはベテランがフォローする。わからないから、面倒くさいから若手社員に仕事を丸投げしているのではなく、自分たちのために、やりがいのある仕事を作ってくれているのだということがわかれば、若い社員の方たちは、先輩や上司のように一から最後までひとりで仕事ができるようになるまで、今の環境で頑張ってみよう、と思うのかもしれません。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:前田 康二郎 (まえだ こうじろう)

フリーランステレワーカー。数社の民間企業で経理総務・IPO業務等を行い、海外での駐在業務を経て独立。現在はフリーランスでのコンサルタント活動、講演・執筆活動の他、節約アプリ『節約ウオッチ』(iOS版)を運営している。 著書に『スーパー経理部長が実践する50の習慣』『AI経理 良い合理化 最悪の自動化』『職場がヤバい!不正に走る普通の人たち』『伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣』(以上 日本経済新聞出版社)、『スピード経理で会社が儲かる』(ダイヤモンド社)、『ムダな仕事をなくす数字をよむ技術』『自分らしくはたらく手帳』(以上 クロスメディア・パブリッシング)、『経営を強くする戦略経理』(日本能率協会マネジメントセンター)など。最新刊は『つぶれない会社のリアルな経営経理戦略』(クロスメディア・パブリッシング)



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