借金の返済に困った場合の私的整理ってなに?

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事業者が借金を当初のスケジュール通りに返済できなくなるなど、自力では資金繰りがつかない状況になった場合には、法的整理又は私的整理の方法により事業の再建を図ることになります。中小企業や個人事業主が借金の返済に困った場合には、いきなり法的整理を検討するよりも、まずは私的整理の検討を行うケースが多くなっています。
もしもの事態に備えて、私的整理では何をするのか、またメリットやデメリットについて解説します。(執筆者:株式会社ナレッジラボ 取締役 山邊泰匡 )

借金に関して私的整理をするとどうなるの?

借金の返済に困った場合の再建において、法的整理は民事再生や会社更生などの裁判所が関与した上で法律に基づいて行われる手続きであり、私的整理はそれ以外の手続きを言います。

整理するのは金融機関からの借金のみ?

私的整理の場合、基本的には金融機関からの借金だけに限定して、「借金額自体を減額する債権カット」や、「借金額自体は減らさずに返済期間を伸ばし、毎月の返済額を減額するリスケジュール」などの対応を依頼します。
このような金融機関からの借金に限定する背景は、仕入先などに資金繰りが厳しい実情を知られてしまうと信用不安や風評が生じ、取引が解消されるなどの可能性があり、かえって事業の再建が難しくなるためです。私的整理は風評や信用不安の発生を避けるためには有益な方法となっています。
なお、私的整理は、裁判所が関与した上での法律に基づく手続きではなく、あくまでも債権者との合意に基づき行われるものであるため、必ずしも対象を金融機関からの借金に限定しなければならないわけではありません。

私的整理では返済額を減額するリスケジュールが多い

私的整理の実務においては、債権カットではなく、毎月の返済額を減額するリスケジュールが採用されるケースが多いです。
金融機関も経済合理性の考えの下で企業活動を行っていることから、債権カットを金融機関に受け入れてもらうためには、当然ながら、返済額を減額するリスケジュールではなく、借金をそもそも減らす債権カットこそが金融機関にとって最大の回収方法であることの説明が必要となります。
しかし、その点について十分な説明を行うことは多くのケースで難しいため、実務上は借金額自体を減額する債権カットは少数となっています。

返済額を減額するリスケジュールを依頼するためには

金融機関に対して、毎月の返済額を減額するリスケジュールを依頼するためには、主に以下のようなステップで進めることが多いです。

  1. 金融機関の融資担当者へ相談する
  2. 私的整理は金融機関の合意の下で行うため、特にメインバンクの融資担当者には事前に相談を行い、協力が得られるかどうかを確認しておくことが重要です。

  3. 財務及び事業面の調査をする
  4. 現在の事業がどのような状況にあり、借金の返済ができない要因となった財務上の課題や改善すべき経営課題を把握するために、公認会計士や中小企業診断士等に財務と事業面の調査を依頼して行うことが多いです。

  5. 再建のための計画書を作成する
  6. 財務及び事業面の調査で把握された課題に対して、改善策を織り込んだ再建のための計画書を作成します。改善策はより具体的に示し、誰が、いつ、何をするのかを明確にします。さらには、その改善策を見込んだ上での事業計画数値と返済計画を作成します。

  7. 借金のある金融機関から合意を得る
  8. 借金の返済計画を含む再建計画の説明を行い、借金のある全金融機関から合意を得ます。全金融機関から合意が得られたら、その返済計画に基づき借金の返済を進めていきます。

私的整理のメリットは?

私的整理は、法的整理の場合と比較してどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは法的整理と比べた場合の主なメリット3つを説明します。

信用不安が発生しにくい

法的整理に対する私的整理の1つ目のメリットは、信用不安が発生しにくいという点があります。
私的整理は、整理の対象を金融機関からの借金に限って行うことができます。このため、仕入先などの取引先に業績が苦しいことを知られることなく進めることができます。但し、従業員などの内部者から情報が漏れる可能性などには要注意です。
一方、民事再生や会社更生などの法的整理の場合には、手続きの開始決定が行われると、買掛金や未払金のある仕入先を含む全債権者に通知が行われるため、仕入先を中心に取引の継続を拒否されることも多いです。

手続きのための期間が短い

2つ目のメリットとして、私的整理は、法的整理と比べて手続きに要するための期間が短いという点が挙げられます。
法的整理の場合には早くても6ヵ月程度、場合によっては1~2年かそれ以上かかることもあります。一方、私的整理の場合には3~6ヵ月程度で再建計画を作成し、金融機関との合意に至ることが多いです。

法的整理に比べてコスト負担が少ない

3つ目のメリットとして、コスト面が法的整理よりも少なくすむという点が挙げられます。
私的整理のアドバイザーとして、弁護士、公認会計士、中小企業診断士などに依頼する場合には、それらの専門家費用が発生しますが、法的整理の場合よりも少ないことが一般的です。
また、私的整理は風評を最小限に抑えることができますが、法的整理の場合には、多くのケースで風評による減収などが発生するため、機会ロスの負担も大きくなります。

私的整理のデメリットは?

私的整理の場合は法的整理の場合と比較して、どのようなデメリットがあるのでしょうか?ここでは法的整理と比べた場合の主なデメリットを2つ説明します。

借金のある全金融機関との合意が必要

1つ目のデメリットとして、私的整理は、法的な強制力のある手続きではありませんので、返済計画を含む再建計画に対して、借金のある全金融機関から合意を得ることが必要となります。
一方で、法的整理の場合には、一部の債権者が反対しているような状況であっても、法律が定める要件さえ充たせば、整理の手続きを進めていくことが可能です。

再建計画に客観性が欠けていることもある

2つ目のデメリットとして、私的整理は、裁判所の関与なく進められるため、再建計画が一部の金融機関にとって有利に作成されているなど、裁判所関与の下で再建計画が作成される法的整理の場合と比較して、客観性に欠けるケースもあると言われています。
ただし、近年は、私的整理のためのガイドラインの整備に加え、中小企業再生支援協議会スキームなどの手法も確立されるなど、客観性に欠ける再建計画が作成されるようなケースは減っていると考えられています。

まとめ

リーマンショックへの対応策として、いわゆる金融円滑化法が施行された2009年以降、借金の返済に困った場合に私的整理を行うケースは増えています。
私的整理を行った場合には、金融機関から新規に借金ができなくなると不安を感じられるかもしれませんが、リスケジュールの場合には2~3年程度再建計画通りに業績が推移し、借金の返済を行えれば、金融機関は新規での借金を前向きに検討してくれることが多いです。
資金繰りが厳しくなってきた場合には、事業を守る1つの方法として私的整理によるリスケジュールがあるということを知っておきましょう。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:山邊 泰匡 (公認会計士)

株式会社ナレッジラボ 取締役
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