導入事例
「不夜城」から繁忙期の平均残業9時間へ。クラウド会計と組織改革で変えた働き方と組織づくり
伊藤会計事務所
伊藤 桜子様、相良 義則様
- 業種
- 会計事務所
- 都道府県
- 福岡県
- 事務所人数
- 40〜99名
- 利用サービス
-
- クラウド会計・確定申告
- STREAMED
- Manageboard
伊藤会計事務所様は、かつて「不夜城」とまで呼ばれ、繁忙期には平均残業時間が90時間を超えていました。そこから、「マネーフォワード クラウド」や「STREAMED」の導入による業務効率化、工数の見える化、体系的な研修制度、評価・給与制度の改革を進め、現在では繁忙期の平均残業時間を9時間まで削減しています。
こうした変革によって実現したのは、単なる残業時間の削減だけではありません。業務品質の向上や月次決算の早期化、採用面の改善にもつながり、以前は応募者ゼロだった採用活動にも、最大2,000名の応募が集まるようになりました。
今回は、伊藤会計事務所様がどのようにして長時間労働の環境から脱却し、組織を成長させていったのか、その改革の背景と、「マネーフォワード クラウド」が果たした役割について、詳しくお話を伺いました。
- 目的
- 業務改善・効率化、属人化・計算ミスの防止、リアルタイムで数字を把握
- 解決策
- STREAMED、マネーフォワード クラウド、ManageBoardの導入
- 効果
- 業務効率化・品質向上
顧問先企業の100%黒字化により、地域社会に貢献
事務所のご紹介を兼ねて、理念や大事にしていることを教えてください
相良様(以下敬称略):私たちは「会社やそこで働くすべての人の幸せに貢献し、社員・お客様・社会から必要とされる組織であり続ける」ことを経営理念としています。そして、「顧問先企業を100%黒字化することで、福岡を中心とした地域社会に貢献する」ことをミッションに掲げ、開業当初から適正な税務申告と会計サポートを通じて、顧問先の黒字化を徹底的に支援してきました。
「人手不足」と「長時間労働」の悪循環を断ち切るために
「マネーフォワード クラウド」や「STREAMED」を導入したきっかけを教えてください
相良:かつては、まさに「不夜城」と称されるような状況でした。繁忙期の平均残業時間は90時間を超え、平常時でも60時間オーバーが常態化していました。この過酷な労働環境は専門学校生の間でも有名になってしまい、採用募集をしても半年間応募がゼロ、退職者も続出するという深刻な悪循環に陥っていました。
顧問先企業の黒字化を支援する前に、まず自社の働き方を根本から変革し、社員が安心して働ける環境を作らなければ存続できない。そんな強い危機感から、業務効率化とクラウド会計の導入に踏み切りました。
記帳業務の効率化、月次決算の早期化、採用力の向上へ
「マネーフォワード クラウド」や「STREAMED」の導入、そして業務改革を進めたことで、どのような変化がありましたか?
相良:大きく分けると、「業務効率」「業務品質」「組織・採用」の3つの面で変化がありました。
1. 業務効率化の成果
記帳代行では、顧問先の約4割を1時間以内で処理できるようになりました。「マネーフォワード クラウド」や「STREAMED」を活用し、銀行口座やクレジットカードなどのデータ連携や自動仕訳を進めることで、手入力の作業を減らしています。
中には、年商5,000万円・毎月250仕訳の顧問先で、「マネーフォワード クラウド会計」「給与」「経費」を連携させることで、毎月の記帳を約15分で完了できるケースもあります。

2. 業務品質と顧客への情報提供の向上
手入力する作業が減ったことで、転記ミスの削減にもつながっています。また、これまでより早く経営数値を把握できるようになり、その数字をもとに顧問先へ提案できるようになりました。
例えば、年商7億円の飲食店様では、従来の紙資料を中心とした経理2名体制から、クラウド化によって経理1名体制へ移行しました。経営数値を把握できる時期も10日以上早まり、より早く経営判断ができるようになりました。
3. 働き方・採用面の変化
繁忙期の平均残業時間が90時間超からわずか9時間まで減少しました。また、以前は応募者ゼロだった採用面でも、現在では最大2,000名の応募が集まるようになりました。現在は50名規模の体制となり、業務効率化によって生まれた時間を、より付加価値の高いサービスの提供に活用しています。

クラウド活用を定着させるためのルールと推進体制
クラウドへ移行する際、現場の職員の方々からの抵抗や戸惑いはありましたか?
相良:もちろんありました。慣れ親しんだ紙や手入力のやり方を変えることに、戸惑いや不安を感じる職員もいました。
その抵抗や戸惑いに対して、どのように対処し、事務所全体に定着させていったのでしょうか?
相良:大切にしたのは、「見て確認し続けること」と、「事務所のルールとして継続して取り組む方針を、経営側が繰り返し伝えること」です。
「クラウドと手入力、どちらが早い・遅い」を議論するのではなく、「まずクラウドやSTREAMEDを通すことが事務所のルールである」と明確に示しました。「今は手間がかかって大変かもしれないけれど、将来的に絶対に楽になるから検証のためにまずやろう」と言い続けました。
また、日報や業務の進捗状況についても、上司や経営陣が確認し、必要に応じてコメントを返す運用に変えました。取り組みを継続的に確認し、困っていることや進捗の遅れを早めに把握することで、クラウド活用の定着を図りました。
さらに、現場に推進責任者を置き、「困ったことがあればまず責任者に相談し、必要に応じて責任者から経営層につなぐ」という体制を整えました。最初は戸惑い、なかなかクラウドを触ろうとしなかったベテラン職員も、一度クラウドのスピードに慣れると、「もう手打ちの時代には戻れない」と言うようになりましたね。

未経験者の成長を支える、体系的な教育・研修体制
業界未経験者の採用比率が7割を超えているとお聞きしました。未経験者を育成するために、どのような教育体制を構築されたのでしょうか?
相良:現在、当事務所は50名規模ですが、職員の70〜75%が会計業界未経験での入社です。そのため、「ゼロから教えて戦力化する」ことが組織運営の大前提にあります。
以前から教育には力を入れていましたが、どうしても「この機能は知っているが、別の機能は知らない」といった知識やスキルのばらつきが生じていました。そこで、教える人によって内容に差が出ないよう教育を標準化し、未経験者でも必要な知識を体系的に学べるカリキュラムを作ることにしました。
社内でプロジェクトチームを編成し、クラウドサービスを体系的に学ぶための教材と研修プログラムを作成しました。教材は、クラウドサービスの操作方法だけでなく、自動化の考え方やエラーへの対処方法まで体系的に学べる内容にしています。こうした学習の土台を整えたことで、未経験者でも必要な知識を段階的に学べる教育体制を構築しました。
全社の工数を可視化し、業務量と人員配置を最適化
クラウド会計の導入と並行して、業務管理の徹底も推進されたそうですね。
相良:クラウドの導入と業務管理の徹底は、残業削減における「両輪」です。当事務所では、業務管理ツールを活用して、全業務の予定工数と実績工数を見える化しています。
私たちは、現在抱えている受託業務を一種の「在庫」として捉え、今の人員で処理するために必要な工数を把握しています。一人ひとりの予定工数を可視化することで、誰にどれだけ業務が集中しているかを事前に把握し、業務の再分配や平準化を行うことができます。これにより、業務量と人員のバランスを事前に把握し、残業が発生する前に対応できる体制を整えています。
また、この管理画面は職員全員が確認できるようにしています。業務の進捗状況を共有することで、遅れやサポートが必要な状況にも早く気づけるようになりました。
長時間労働ではなく「効率と品質」を評価する仕組みへ
残業時間を大幅に削減する一方で、職員の評価や給与の仕組みも見直されたのでしょうか?
相良:はい。「長く働くこと」ではなく、業務の効率や難易度、品質を評価する仕組みに変えてきました。
当事務所では、業務ごとに「標準工数」を設定しています。例えば、「この案件の月次処理は5時間」といった具合です。
評価の軸は主に3つです。
1. 時間効率(達成率):標準工数に対して何時間(何%)で完了できたか
2. 難易度ランク(A〜D):対象企業の規模や処理の複雑さ
3. 品質ランク(A〜C):転記ミスや修正事項の有無、処理の正確性
また、業務効率化を進める一方で、基本給のベースアップを行い、現在は固定残業代も廃止しています。残業時間の長さではなく、限られた時間の中で効率よく、質の高い仕事をすることが評価につながる給与・評価制度へと見直してきました。
こうした評価は、年2回の賞与にも反映しています。単に多くの業務をこなすだけではなく、業務の効率や品質、難易度などを踏まえて評価する仕組みにしています。業務効率化によって残業時間を減らすだけでなく、効率よく質の高い仕事をすることが職員の評価にもつながります。この両方を進めることが大切だと考えています。
「改善し続ける文化」が築く伊藤会計事務所の未来
最後に、伊藤会計事務所の今後の展望をお聞かせください。
相良: 私たちは、今のやり方がベストだとは考えていません。より良い働き方やサービスを考え、試して、改善します。その繰り返しをこれからも続けていきたいと思っています。
「マネーフォワード クラウド」をはじめとするクラウドサービスも、導入すること自体が目的ではありません。テクノロジーを活用して業務を効率化し、そこで生まれた時間を、人の成長やお客様へのより良いサービスにつなげていくことが大切だと考えています。また、自分たちの事務所で試行錯誤しながら培ってきたクラウド活用のノウハウや教育、業務改善の仕組みを、講座などを通じて他の会計事務所や企業の方々にも提供していきたいと考えています。
また、自分たちの事務所で試行錯誤しながら培ってきたクラウド活用のノウハウや教育、業務改善の仕組みを、講座などを通じて他の会計事務所や企業の方々にも提供していきたいと考えています。
まずは自分たちで実践し、改善し続けます。そして、そこで得たノウハウを外部にも還元していきます。テクノロジーを活用しながら、人がより成長し、活躍できる仕組みをつくっていくことが、これからも私たちが目指していきたいことです。
