導入事例

「半日」の作業を「30分」へ。老舗事務所がAIとクラウドで描く、自発的な提案が飛び交う組織づくり

税理士法人矢﨑会計事務所
代表社員 矢﨑 誠一様

税理士法人矢﨑会計事務所

代表社員 矢﨑 誠一様

業種
会計事務所
都道府県
東京都
事務所人数
40〜99名
利用サービス
  • クラウド会計・確定申告

東京都練馬区で75年以上の歴史を紡いできた、税理士法人矢﨑会計事務所。かつてはクレームに悩み、沈んでいた組織が、「全ての人の笑顔を結ぶ幸せの懸け橋」という理念を掲げ、マネーフォワード クラウドとAIの活用によって見事に生まれ変わりました。
徹底した業務効率化を進める一方で、AIを「人間力を磨くツール」と捉え、最終的な提案には必ず「人」の温かみを添える。そんな独自のこだわりを持つ同所に、クラウド定着への歩みと、スタッフが自発的に輝く組織づくりの秘訣を伺いました。

目的
業務改善・効率化
解決策
マネーフォワード クラウドの導入、段階的なAI活用
効果
残業の圧倒的削減、資料回収の手間削減、スタッフの提案力・自発性の向上

静まり返った組織から、笑顔を結ぶチームへ。「感謝される仕事」を目指し理念の再構築

事務所のご紹介を兼ねて、貴社の成り立ちや、大切にされている理念について教えてください。

矢﨑様(以下、敬称略):当事務所は、戦後に私の祖父が運送業向けの経理支援から始め、東京都の練馬という地域に密着して活動してきた事務所です。私が父から代を引き継ぐ際、「周りの人を大切にしてほしい」という思いを受け取り、「全ての人の笑顔を結ぶ幸せの懸け橋」という経営理念を作りました。ただ、私がこの業界に入ってきた当時は、毎日のようにクレームの電話が鳴り、スタッフは賃金が安く残業で疲弊しており、飲み会を開いても食器の「カチン」という音しか聞こえないほど沈んだ状態でした。このままではいけないと思い、長年勤めてくれているスタッフたちに「本当はどんな仕事をしたいか」をヒアリングしたんです。

スタッフの皆様からは、どのような思いが聞けたのでしょうか。

矢﨑:当時は単に「会計入力と税務申告だけしていればいい」といった雰囲気に見えましたが、実際にはみんな「お客様に感謝される仕事がしたい」という熱い思いを持っていることが分かりました。そこで、その思いも含めて新しい理念を掲げ、同じ目標に向かって一緒に頑張ろうとスタートを切りました。

テクノロジーとの「共存」。マネーフォワード クラウド一択だった理由

クラウド黎明期からマネーフォワードを導入されていますが、その背景にはどのような思いがあったのでしょうか。

矢﨑:ちょうど私が業界に入った2013年頃、野村総研の「会計事務所の仕事の大部分はITに取って代わられる」という予測を目にしました。テクノロジーの進化は変えられないのであれば、それに逆らうのではなく「共存していく」という未来しかないと確信したんです。
クラウドという技術も、いずれ世の中のスタンダードになることは明らかでした。クラウドが当たり前になる時代が必ず来るなら、最初から使っていくという選択肢しかありませんでしたね。

数あるソフトの中で、マネーフォワード クラウドを選ばれた決め手は何でしたか?

矢﨑:一番の理由は、マネーフォワードさんが真っ先に会計事務所に対してアプローチをかけてくれたことです。当時の他のクラウドソフトはユーザー(企業)向けのアプローチが主でしたが、マネーフォワードさんは最初から我々のような会計事務所を向いてくれていました。
また、新しいシステムへの移行は現場のスタッフにとって大きなハードルになりますから、業務フローの構築を含め、スタッフにとって少しでも馴染みやすく、使いやすいものを選ぶ必要がありました。

その後、10年以上にわたってマネーフォワード クラウドをご利用いただいていますが、他社のソフトに乗り換えることなく長く使い続けている理由は何でしょうか。

矢﨑:一貫して「会計事務所の方を向いてくれている」という姿勢が全く変わらないことですね。我々のようなスタッフを多数抱える事務所にとって、主力ユーザーとして会計事務所を大切にしてくれる姿勢は、非常に大きな安心感であり、使い続ける最大のメリットになっています。
また、単なる業務効率化だけでなく、常にお金の「もっと先の未来」について考えているマネーフォワードさんのビジョンにも深く共感しています。そうした未来志向の姿勢が、私たちが長く共に歩んでいけるという安心感に繋がっているのだと思います。

長年続く組織に新しいシステムを定着させるにあたり、反発や苦労はありませんでしたか?

矢﨑:業務フローやルールを新しく決めるのには時間をかけました。しかし、全社一気に無理やりやらせることはせず、「既存のお客様のやり方は変えずに、新規のお客様からマネーフォワードを使う」というルールにし、ITリテラシーの比較的高いメンバーから徐々に浸透させていったんです。
既存の使い慣れたソフトを使っているお客様を無理に移行させるような、お客様の仕事を奪うやり方はしませんでした。スタッフに小さな成功体験を積み重ねてもらう戦略が功を奏し、焦らずじっくりと段階を踏むことで自然にスタンダードとして定着しました。今ではスタッフが自発的に「マネーフォワードに切り替えましょう」と既存のお客様へ提案し、切り替わる件数が増えてきています。

深夜0時までの残業が劇的改善。自ら提案できる「笑顔の組織」へ

マネーフォワードを導入したことで、事務所の働き方や雰囲気はどう変わりましたか?

矢﨑:圧倒的に残業時間が減りましたね。以前は毎日20時過ぎまで残るのが当たり前で、確定申告時期は深夜0時(24時)や期日ギリギリまで作業していましたが、今はほとんど残業がなくなり、繁忙期でも遅くとも20時にはほとんどのスタッフが退社し、確定申告もどんどん前倒しで終わるようになりました。
特に大きかったのは、通帳の回収や紙の給与台帳などを「お客様から集める手間」がデータ連携によって一切なくなったことです。担当者とお客様、さらにお客様の社内での伝達のタイムラグが消え、劇的に効率化されました。

効率化によって生み出された時間は、どのような価値に繋がっているのでしょうか。

矢﨑:最初は「提案をしない、できない事務所」でしたが、今ではスタッフが自発的にお客様へ新しい提案ができる組織に変わりました。行動計画を自分で作り、無理やりやらされるのではなく自分の意思と行動で成功体験を積むことで、どんどん成長し、今では事務所で活用しているITサービスやクラウドシステムのノウハウをお客様に提案できるようになりました。
また、スタッフ自身が「最先端のクラウドを使っている」という自信を持てるようになったことも大きいです。今では寸劇をやることもあるくらい、賑やかでイベントもしっかり楽しむ事務所になりました。お通夜のような状態から見事に脱却できたと感じています。

矢﨑会計事務所様事例_写真

1週間かかった作業が「一瞬」に。実務に溶け込むAI活用

最近ではAIの活用にも積極的に取り組まれていますね。導入はどのように進められたのでしょうか。

矢﨑:はい。AIについても、クラウドを導入したときとまったく同じ発想です。AIがスタンダードになる未来が見えているのであれば、早い段階から触れ、業界の先行者になるべきだと考えました。そこで、AIの専任担当者を置き、段階的に導入を進めています。
2025年10月頃から検証を始め、年明けにはGeminiを全社に開放し、その後、NotebookLMやClaudeも順次導入しました。ここでも適度なスピード感を大切にしています。
また、「AIシステム推進部」を設立し、AIを一人ひとりの業務効率化にとどめず、総務業務や社内ルール、部門をまたぐ業務プロセスそのものの見直しにも活用しています。AIを前提に組織や働き方を変えていく「AX(AIトランスフォーメーション)」を進めているところです。

実務面では、具体的にどのような業務でマネーフォワードとAIを掛け合わせて活用されていますか?

矢﨑:一つは新規顧問先の過去データ移行です。他社ソフトの仕訳データをマネーフォワード形式に合わせる際、以前は消費税の設定などが複雑で1週間ほどかかっていました。そこをAIで一瞬でマネーフォワード形式に整形できるようにしたことで、スムーズな移行が可能になりました。
また、当事務所は飲食店の顧問先が多いのですが、売上が10%と8%に分かれていたり、クレジットカード決済、QRコード決済、Uber Eatsなどの予約サービスなど、入金と手数料引落しのタイミングが非常に複雑です。以前は半日かかっていたような手入力作業も、AIを活用してデータをマネーフォワード形式に自動整形しインポートすることで、30分以内で完了できる体制を構築しています。

矢﨑会計事務所様事例_写真

AIは「削減」のためではなく、「人間力」を鍛えるためのツール

AIによる徹底した効率化を進める中で、矢﨑氏が目指す「AIとの向き合い方」を教えてください。

矢﨑:実は、私自身はAIによる「業務の削減」そのものにはあまり重きを置いていません。今は「AIに慣れておくフェーズ」だと捉えています。
AIは確率論で一般的な答えを出すため、お客様個別のニーズに完璧に応えることはできません。最終的には、AIの情報を噛み砕き、相手が理解しやすい言葉に変えて提供する「人間」が必ず必要になります。人間と契約するのは人間ですからね。
例えば当事務所では、あえてAI(Geminiなど)に税務の質問を投げかけ、AIの回答(ハルシネーション)の裏付けを自分で調べさせることで、税務教育の「壁打ち」として使っています。この確認作業がスタッフの成長に繋がっているんです。
AIを使いこなす能力は、コミュニケーション能力と同じです。相手(AI)を理解し、適切な言葉を投げかけるトレーニングです。AIをただの自動化ツールとして使うのではなく、結果としてスタッフの「人間力」を鍛えるための手段として活用していきたいと考えています。

最後に、新しいツールの導入や変化に踏み出せない事務所様へ、メッセージをお願いします。

矢﨑:私は、すべての会計事務所がAIを導入しなければならないとは思っていません。今のやり方で上手くいっているだとか、今は静観すべきと判断して、導入しないというのも、もちろん一つの選択肢です。
ただし大切なのは、AIをよく知らないまま避けるのではなく、まず実際に触れ、その可能性と限界を理解したうえで、自分たちの事務所に必要なのかを能動的に判断することだと思います。
AIを使うか、使わないか。その判断をすることこそ、AIにはできません。どんな事務所をつくりたいのか、スタッフにどんな仕事をしてほしいのか、お客様にどんな価値を届けたいのかを考え、決断するのは経営者の役割です。
その未来を実現するためにAIが必要だと腑に落ちれば、何から始めるべきかは、おのずと見えてくるはずです。恐れるべきなのは、AIを導入しないことではなく、知らないまま判断を止めてしまうことだと思います。AI時代に問われているのは、AIを使えるかではありません。事務所の未来を、自分たちの意思で選べるかです。

矢﨑氏が実施しているAI×マネーフォワード×飲食の実例が知りたい方

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