公認会計士の資格はさまざまなキャリアの選択を可能にします。独立を一つの目標とする公認会計士もいる一方で、年齢による懸念や不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。この記事では、公認会計士が独立する際の年齢に関する課題と、成功に向けたポイントを探っていきます。
目次
公認会計士の独立のタイミングと年齢
公認会計士の独立が年齢によって有利になること、あるいは不利になることはあまり多くはありません。
監査という独占業務があり、また税理士登録により税理士業務も行われる公認会計士の資格によりビジネス上優位になることは、年齢によってそれほど左右されないからです。
公認会計士の資格を取得するためには、公認会計士試験に合格(免除者を含む)のうえ、3年以上の実務経験(業務補助など)、およびそれと並行して3年かかる実務補習の修了が必要となります。そのため、ほとんどの方は資格が取得できるまで、最低でも3年間は監査法人で働きます。その一方で、資格を取得したら、すぐに独立する方もいます。
公認会計士・監査審査会の調査によると、2022年の公認会計士試験の合格者の平均年齢は24.4歳でした。資格を取得してすぐに独立する場合、独立時の年齢は27~28歳の計算になります。その一方で、監査法人に長く勤務し、さまざまな経験を積んでから独立するという方も少なくありません。
公認会計士の独立の年齢層によるメリットとデメリット
公認会計士の独立は年齢層によりそれぞれメリット・デメリットがあります。ここでは、20代、30代、40代での独立のメリット・デメリットを見てみましょう。
20代で独立するメリットとデメリット
【メリット】
- 若いからこその体力と柔軟性があるため、未経験の分野に飛び込んでもやり遂げられる
- 20代での独立は相対的に少ないため、「若き経営者」として他の経営者と差別化しやすい
- 仮に独立に失敗しても、キャリアの仕切り直しがしやすい
【デメリット】
- 専門家としての経験が浅いため、得意領域をこれから伸ばしていく必要がある
30代で独立するメリットとデメリット
【メリット】
- 25歳から監査法人に勤務したのであれば、すでにシニアスタッフかマネージャーになっており、監査の専門家としての経験が一通り積めている
- 監査法人を退職後、コンサルティングファームや税理士法人などで働き、独立に向けた新たな業務経験を積む時間が取れる
【デメリット】
- 多くの公認会計士が30代で独立しており、タイミングとして適切といえるため、大きなデメリットはない
- 結婚や出産などのライフイベントが発生しやすい年齢であるため、家庭への一定の配慮が生じ、キャリアの選択肢が狭まる可能性はある
40代で独立するメリットとデメリット
【メリット】
- 業務経験が豊富なため、それぞれのキャリアに応じた得意領域を持っており、専門性での勝負がしやすい
- 実務で培った人脈があれば、独立後に紹介などを受けられるため集客が容易になる
【デメリット】
- 業務経験が監査のみの場合、独立後に苦労する可能性があるため、独立を見据えた業務経験を積むことが望ましい
公認会計士の年齢に合わせた独立戦略の立て方
以上で、年齢層ごとの独立のメリット・デメリットを見てきました。ここでは、独立のための戦略を年齢層ごとに解説します。
20代で独立する場合の戦略
公認会計士が20代で独立する場合の戦略例として、「若さ」を武器にスタートアップ企業へ積極的にアプローチすることが挙げられます。スタートアップ企業は経営者や役員も若いケースが多く、同世代だからこそ共有できる経営上の悩みなども多くあります。クライアント獲得にはネットワーキング(異業種交流会、士業交流会など)やSNS(ブログ、X(旧Twitter)など)、HP集客などを活用し、若さをアピールして知名度を高めるのもよいでしょう。
20代での独立なら、業務経験はまだ浅いことが一般的です。そのため、専門知識の習得に努めることはもちろん、知識を得られる業界の方との人脈の構築も重要となるでしょう。
なお、20代で独立した公認会計士の具体的な事例は以下をご覧ください。
30代で独立する場合の戦略
公認会計士が30代で独立する場合の戦略として挙げられるのは、経験に基づく専門性を前面に出し、クライアントに信頼感を持ってもらうことです。特に、監査インチャージやマネージャー経験があれば、マネジメント能力、コミュニケーション能力を武器に営業展開できます。
また、前述の通り監査以外の業務経験を積むことも、30代で独立する一つの手順といえるでしょう。複数の専門スキルを持ち、クライアントの幅広いニーズに対応していくことで、市場競争力を高めることが可能です。
集客は、前職での人脈があるのならリファラルマーケティングを活用するのもよいでしょう。リファラルマーケティングとは、既存のクライアントなどから新たなクライアントを紹介してもらうマーケティング手法です。紹介を促進するために、紹介してくれた方に対してその報酬を支払うといった方法もあります。ただし、会計監査では紹介料の支払いが倫理規則上認められないため、リファラルマーケティングが活用できるのは税務やコンサルティングなどに限定されます。また、士業では既存顧客や他の士業、銀行などのつながりから、顧客を無料で紹介されることも多くあります。他の士業や銀行と相互で送客する関係ができれば、継続的な集客に結びつきやすいでしょう。
なお、30代で独立した公認会計士の具体的な事例は以下をご覧ください。
40代で独立する場合の戦略
公認会計士が40代で独立する場合の戦略は、豊富な経験と実績を背景にクライアントの信頼性を高めることです。ブランディングを重視し、自身の強みや専門家としての魅力を丁寧に発信すれば、顧客の獲得が可能でしょう。長い業務経験の中で人脈を築いていれば、集客だけではなく採用でも有利に働く可能性があります。また、40代での独立は、独立前の継続的な学習による専門性のブラッシュアップ、あるいは監査以外の業務経験も必要となるでしょう。
公認会計士の独立へのステップと準備
公認会計士が独立するにあたってのステップと準備を見てみましょう。
公認会計士の独立には、以下の準備が必要です。
- 自分の強みがどこにあるかを見極める
- 独立後に相談できる人脈を作る
- 独立のための資金を貯める
また、独立後は、仕事は自身で獲得しなければなりません。どのような分野に参入し、どのような層をターゲットに、どのような方法で営業をかけていくかということも十分な検討が必要です。さらに一定の収入に達するまでは、保険として監査法人や会計コンサルティングの非常勤ができる先を確保しておけば、独立後の厳しい時期を乗り越えることができるでしょう。
公認会計士独立のステップと準備について詳しくは、以下の記事もご参照ください。