税理士事務所の平均的な売上高ってどれくらい?事務所の売上を向上させる方法も解説。

事務所経営

税理士事務所の平均的な売上高ってどれくらい?事務所の売上を向上させる方法も解説。
税理士事務所を経営していくためには安定した売上が必要です。しかし、近年は顧客となる企業数の減少もあり競争が激しくなっています。それでは、現在の事務所の平均的な売上高はどのくらいなのでしょうか。今回は、税理士業界の平均的な売上高の紹介から売上を向上させるポイントまで詳しく解説していきます。

税理士業界の平均的な売上高とは

税理士業界においては、一般的に規模が大きいほど事務所全体の売上高も増加します。
しかし、事務所内の労働生産性や効率性を表す「職員1人あたりの売上高」については、事務所の規模と必ずしも連動するとは限りません。
そのため、このような数字をひも解くことにより、税理士業界としての平均値を知るだけでなく、事務所規模に応じた組織の在り方を確認することができます。

事務所ごとや職員1人あたりの売上高はいくらになる?

平成28年に実施された経済センサスの活動調査によると、税理士事務所の「1事業所あたりの売上高」や「従業者1人あたりの売上高」は以下のように分布しています。

上図では、従業者数が増えるにつれて税理士事務所としての売上高も右肩上がりで増加することが示されています。それに対して「従業者1人あたりの売上高」に関しては、10~19人の場合には940万円であるのに対し、20~29人の場合には894万円と減少。必ずしも従業者規模とは比例していないことがわかります。

従業者規模による組織体制の違い

一般的な税理士事務所の場合、職員数が10人前後の小規模事務所であれば、所長自らが顧問先を訪問するなど、顧客や事務所全体を管理するケースが大半でしょう。
しかし、職員数が20名を超えるような中規模事務所となると、所長1人で事務所内、顧問先の双方をマネジメントすることは非現実的です。そのため総務やアシスタントなど、売上に直接関わらない職員を増員するケースも多く、結果的に職員1人あたりの売上高が減少するものと考えられます。

事務所・職員の売上を向上させるには

税理士が事務所の売上だけでなく、職員1人あたりの売上高を向上させるためには、売上管理を行い、収益獲得の効率を高めていく必要があります。
具体的には以下のような方法が挙げられます。

事務所・職員の売上を向上させるには

既存顧客を維持した上で、新規顧客獲得を目指す

売上アップを目指す場合、新規顧客の獲得ばかりに意識が集中してしまいがちですが、まずは既存顧客を維持することを第一に考えなければなりません。新規顧客獲得の場合には集客や広告宣伝費用などの突発的なコストが発生しますが、既存顧客を維持する場合にはそれらの費用が不要であるためです。
もちろん無条件にすべての既存顧客を維持する必要はありませんが、新規顧客の獲得ばかりに注力するあまり、既存顧客へ提供するサービスの質が低下し、結果的に顧客流出へとつながることがないよう注意しましょう。

→既存顧問先のサポートを通じた契約の継続や顧問先の単価の向上を実現する、カスタマーサクセス経営の概念についてご紹介「今後の事務所経営のポイントとカスタマーサクセス経営の概念とは

顧客単価を上げる

顧問料などの顧客単価を上げることができれば、事務所全体や職員1人あたりの売上高を増加させることが可能です。
顧客単価については、現状の顧問料では採算が合っていない顧問先への値上げ交渉だけでなく、顧客へ提供するサービスの質を向上させることによっても引き上げることができます。

職員の離職率を下げる

職員1人あたりの売上高を増やすためには、業務に習熟した職員を維持することが必要不可欠です。職員の離職率が高く、頻繁に入退社を繰り返しているような職場環境では、経験の浅い職員の割合が増え、労働生産性が低下してしまう要因となります。
したがって顧客満足度だけでなく、職員の満足度も高め、離職率を下げることが重要です。

→「 採用難・離職率高環境における予防人事的アプローチとは

属人的な業務を減らし、教育体制を整備する

小、中規模事務所の場合、業務マニュアルなどが整備されておらず、各担当者が自己流で業務を行うケースが非常に多いです。しかしそのような「属人的な業務」が増えることで、ミスの発見が遅れやすく、また他の職員では対応が難しいことから、その担当者が離職した場合には顧問契約の解除へとつながってしまう可能性があります。
したがってできる限り業務を標準化し、事務所内の教育体制を整備することにより、職員の業務効率を高め、担当者が退職した場合のリスクを軽減することができます。

税理士と他の士業との売上高の比較

先述した経済センサスの活動調査では、税理士事務所以外の士業についても調査結果が公表されており、それらを比較したものが下図となります。

まず事務所ごとの売上高については、やはりどの士業も従業者数が増えるにつれて売上高も右肩上がりで増加しています。また士業間の比較としては、20~29人までの従業者規模に関しては弁護士事務所が最も大きく、税理士事務所と公認会計士事務所では金額にさほど大きな差はありません。グラフの形状から、従業者規模に応じた売上高の推移についても非常に類似していることがわかります。

次に職員1人あたりの売上高の推移について、士業ごとに比較したものが下図となります。

士業によって金額の大小はありますが、20~29人の従業者規模においては、弁護士事務所を除いて職員1人あたりの売上高が減少しています。
このことから、税理士以外の士業においても、20人を超えた段階で所長がすべてを管理する組織体制から脱却したほうが賢明でしょう。
管理部門を導入するなど、組織としての転換期を迎える段階であることが予想されます。

税理士業界の売上を知って、事務所経営の参考に

今回は税理士事務所の売上について、他士業との比較も踏まえて解説しました。
職員の数が増えるにつれて事務所の規模も拡大しますが、職員1人あたりの売上高を向上させることは容易ではありません。税理士事務所としての売上を増やすことだけでなく、職員の生産性を高め、利益の残る経営を目指す必要があります。
今回ご紹介したデータをもとに、平均を上回っている事務所はさらに高みを目指し、下回っている事務所は課題に向き合い、改善活動に取り組みましょう。

 

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よくある質問

税理士事務所の平均的な売上高はどれくらい?

事務所の規模によりますが、職員数が1~4人であれば1,908万円、5~9人では5,108万円、10~19人では1億1,988万円、20~29人の場合には2億1,016万円となっています。

税理士事務所の職員1人あたりの平均売上高は?

一般的に約800万円~1,200万円の間で推移します。ただし必ずしも事務所規模に比例するものではなく、職員数増加に伴う組織体制の変化などにより、生産性が低下するものと想定されます。

他士業と比較して売上高は高い?低い?

弁護士事務所と比較すると事務所全体や職員1人あたりの売上高は劣りますが、社労士事務所よりも高い結果となります。また公認会計士事務所とは金額の差はさほどありません。

【監修】税理士・中小企業診断士 服部 大

2020年2月、30歳のときに名古屋市内にて税理士事務所を開業。
平均年齢が60歳を超える税理士業界の数少ない若手税理士として、顧問先の会計や税務だけでなく、創業融資やクラウド会計導入支援、補助金申請など、若手経営者を幅広く支援できるように奮闘中。
執筆や監修業務も承っており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。

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