公認会計士は転職しやすい?監査法人での経験を活かせる転職先を紹介

独立・開業

公認会計士は転職しやすい?監査法人での経験を活かせる転職先を紹介
公認会計士として監査法人で一定の経験を積んだ方は、これからのキャリアを考えると転職が視野に入ってくることと思います。もちろん監査法人でキャリアをさらに積み上げていく選択肢もありますが、転職することで理想の働き方に近づけたり、スキルアップを図ったりが可能です。この記事では転職を検討する公認会計士へ向けて、経験を活かせる転職先や転職の考え方についてお伝えしていきます。

公認会計士は転職がしやすい

公認会計士は他の職種と比較して、転職しやすいことが特徴です。会計のプロであるため、その知識と経験を活かしてさまざまな業界や職種にチャレンジできます。

転職市場でも、公認会計士は売り手市場です。公認会計士の数は、2006年に試験制度が大幅に変更されて合格者が増えたため、増加しているものの、需要はそれを上回るスピードで増えています。

需要が増える理由として挙げられるのは、まずグローバル化が進んでいることです。海外に進出する企業が増えたため、各企業は会計基準の変更や法律の見直しなどの対応に追われており、公認会計士の力を必要としています。

また、起業が増えていることも理由として挙げられます。新しく会社を作れば会計業務は欠かせないため、公認会計士の需要が増えることになるわけです。

以上のように、転職市場で不足している公認会計士は、転職しやすい状態です。年収も比較的高望みができるでしょう。

転職するには目的意識が大事

転職を成功させるためには目的意識が大事です。現状の課題や将来の目標を見据えて転職先を選択すれば、理想とする働き方に近づけます。特に公認会計士の転職では、選択肢を広く持つことが可能となるため、何のために転職するかを明確にしておくことが必要です。

転職の一般的な目的意識をいくつか以下で見てみましょう。

年収アップのため

転職の目的意識としてまず挙げられるのは、現在の収入に満足していない、もっと高収入を目指したい、というものです。監査法人も比較的高収入ではありますが、転職によってさらに年収をアップさせることもできます。

年収アップのために重要なのは、まず自分のこれまでのキャリアを活かせる転職をすることです。また、コンサルタントなど収益性が高い業界に転職するのも良いでしょう。

スキルアップのため

監査法人に勤務していれば、携わる業務はどうしても監査業務が中心となります。監査業務にこれ以上の伸び代が感じられず、新たなスキルを身に着けたいと考えて転職する人も多くいます。

たとえば、税務業務の知識と経験を得るために税理士法人に転職する、あるいは経営に近い立場でオールラウンドに活躍できる能力を身に着けるため、ベンチャー企業に転職する、などが挙げられるでしょう。

ワークライフバランス実現のため

監査法人はかなりの激務を求められるケースもあります。そのため、転職によってワークライフバランスを実現し、ゆとりのある働き方を目指すという考え方もあるでしょう。

たとえば、一般事業会社の経理財務職なら、ある程度ワークフローが固まっていれば、決算期を除いてそれほど忙しくはありません。また、内部統制・内部監査部門も、公認会計士としてのスキルを活かした無理のない働き方ができやすいといえるでしょう。

独立開業のため

将来の独立開業を視野に入れて転職する公認会計士も多くいます。独立すれば、年収2,000万円を超える高収入を得ることも決して不可能ではありません。

公認会計士が独立すれば、顧客は監査法人時代のように大企業・上場企業ではなく、中小企業が中心になります。中小企業向けのサービスとして税務業務やコンサルティング業務を身に着けるため、税理士法人やコンサルティングファームへ転職することが考えられます。

活躍できる職場を見つけるため

人によっては、素質や能力が職場での仕事内容とマッチしないケースが出てきます。そのような場合には、より活躍できる職場へ移ったほうが働きがいを見出しやすいでしょう。

転職にあたっては、自分の適性などを見据えたうえで転職先を選ぶことが大切です。

やりがいのある仕事のため

やりがいのある仕事を求めて転職する人もいるでしょう。監査業務は意義のある仕事ではありますが、独立性を担保するため顧客と一定の距離を保つことが求められ、価値提供につながる業務を行うことに制約があります。そのような立場では、やりがいを感じにくい人もいるからです。

やりがいのある仕事をするためには、たとえば所属する組織を大きくする、あるいは顧客に喜ばれる仕事をするなど、自分が何にやりがいを感じるかを明確にすることが大切です。

公認会計士の主な転職先と特徴

公認会計士の資格や経験を活かすことができ、転職しやすい主な転職先と、それぞれの特徴を紹介します。

税理士法人

【特徴】
税理士法人での業務の中心である、税務申告書の作成や顧問先の帳簿チェックは、公認会計士の資格や経験と直接はつながりません。しかし、多様化・複雑化する顧客のニーズに応えるためコンサルティングに力を入れる税理士法人は、会計に関する専門知識を備えた公認会計士をコンサルタントとして積極的に採用しています。公認会計士は税理士法人において、税務以外でも活躍の場が見出しやすいでしょう。

また、公認会計士は無試験で税理士登録が可能です。税務は中小企業向けのサービスとして必須であるため、それを経験することは独立開業にも有利なキャリアステップといえるでしょう。

なお、公認会計士の税理士登録については、以下の記事でも詳しく解説しています。

【収入】
中小税理士法人の年収は、キャリアにもよりますが、平均で約600万円です。税理士法人に公認会計士が転職する際は、大手監査法人の職位をスライドできることもありますが、多くの場合はランクが下がって転職するため、公認会計士なりたてで監査法人4、5年目くらいの転職だと400~500万円程度の場合もあります。

【ワークライフバランス】
税理士法人は一般に比較的忙しいといわれており、特に2月~3月の確定申告時期、および5月の法人決算時期には、休日出勤が発生するほど多忙となります。ただし、閑散期となる夏~秋は、ゆとりを持った働き方ができるでしょう。

中小の監査法人

【特徴】
中小の監査法人に転職すれば、大手監査法人と比較してゆとりがあり、多様な選択肢のある働き方が望めます。また、大手監査法人よりも出世しやすく、パートナーになることも十分目指せるため、組織経営に参画したい人には向いているといえるでしょう。

【収入】
収入は監査法人によりますが、準大手でパートナーの場合1,200万円以上、大手では1,500万円以上が相場です。準大手より小規模な監査法人の場合、勤務先とは別に個人事務所を経営している人も多く、そのような人は大手以上の報酬が見込めます。また、中小の監査法人では副業を許可する監査法人もあるため、収入増の選択肢が増すことになるでしょう。

【ワークライフバランス】
BIG4監査法人と比べると中小監査法人は、組織として厳格さが緩やかであるため、社内で提出する書類が少ない傾向にあります。そのため、業務量を調整しやすく、ワークライフバランスを実現するのは比較的容易でしょう。

コンサルティングファーム

【特徴】
コンサルティングとは、企業の経営課題を解決するアドバイスを行うことです。人事労務や会計、IT導入など、各分野に特化したファームもあります。そのほかFAS、TAS等のM&Aアドバイザリー会社の転職も多いです。業務量の多寡がボーナスに反映されるため、監査法人より忙しい分、平均より数百万円年収が高い場合が多いです。公認会計士としての知識と経験を活かすなら、資金調達を支援する財務コンサルティングや、会計分野でのIT導入などが選択肢となるでしょう。

【収入】
コンサルティングの収入は成果報酬で決められます。そのため、やり方や頑張り次第で監査法人時代をはるかに上回る高収入が期待できるでしょう。

【ワークライフバランス】
コンサルティング業界は業務時間が長くなる傾向が昔から見られます。ワークライフバランスは、「ワーク」が多くを占めることになるでしょう。

経理財務

【特徴】
公認会計士は事業会社で、経理財務職に就く選択肢があります。公認会計士の資格があれば、管理職としての採用も見込めるでしょう。監査だけでなく、資金調達などの経験があれば、評価はより高くなります。

【収入】
転職先企業の業種や規模により異なります。

【ワークライフバランス】
決算期や四半期決算期のほか、税務調査があった際には忙しくなる傾向があります。ただし、仕事がある程度仕組み化できている企業なら、ゆとりのある働き方が実現しやすいでしょう。

内部統制・内部監査

【特徴】
事業会社の内部統制・内部監査部門も、公認会計士が転職しやすい転職先の一つです。業務内容が監査法人の監査業務と共通するため、経験を活かしやすいのがメリットといえるでしょう。その反面、監査以外の業務を広く経験できないことがデメリットかもしれません。

【収入】
企業の業種や規模によりますが、一般的な経理財務職より高収入なことが多いでしょう。

【ワークライフバランス】
経理財務職と同様、決算期や四半期決算期に忙しくなる傾向があります。全国展開している企業の場合は、支店、工場、子会社の監査、海外子会社往査のために出張が発生することも多いでしょう。

独立開業

【特徴】
転職とは異なりますが、公認会計士には独立開業も、働き方の選択肢の一つとして挙げられます。独立開業すれば、責任はすべて自分にある一方で、好きな仕事をする自由があります。開業までのパターンとしては監査法人の退職後、コンサルティング会社や税理士法人、一般事業会社を経験してから独立する人がいる一方で他を経ずに独立する人も同程度います。

【収入】
収入は個人のやり方や頑張り次第です。独立後に監査法人のパートナーレベルにまで収入を伸ばす人もいます。

公認会計士の独立開業後の収入については、以下の記事でも詳しく解説しています。

【ワークライフバランス】
ワークライフバランスは、個人の希望ややり方次第でいかようにも調整できます。

ベンチャー企業のCFO

【特徴】
ベンチャー企業のCFO(最高財務責任者)は、公認会計士の転職先として需要があります。役員として働くほか、社外CFOのように業務委託契約を交わして働くことも可能です。経理職のほか、資金調達や上場準備など、ベンチャー企業のお金にまつわる業務の一切を引き受けます。

【収入】
収入は企業の業種やステージにより異なります。IPOが視野に入っている企業なら、年収1000万円以上もあり得るでしょう。それ以前のステージなら年収は下がる一方、ストックオプションの形で報酬を渡されることもあります。

【ワークライフバランス】
成長中のベンチャー企業の財務責任者となるため、ハードワークを求められるのが一般的です。

銀行

【特徴】
公認会計士として培っている企業価値を計るスキルを、銀行では存分に活かせます。具体的には投資業務やM&A業務に従事することが多いでしょう。そのほか、公認会計士は経理財務職としても歓迎されます。

【収入】
銀行は高収入の業界です。公認会計士の資格も評価され、収入に加味されるため、十分な高収入が期待できるでしょう。

【ワークライフバランス】
ワークライフバランスは、職種によって異なるため一概にはいえません。

投資ファンド

【特徴】
投資ファンドにおいて、投資先の決定や、投資後のアドバイザー、あるいは投資先の役員として出向するなどの業務に、公認会計士は需要があります。投資ファンドは投資先企業の株価が上がり、売却益を得ることを目的とするため、投資先に数年にわたって向き合うことになるでしょう。会計や監査だけでなく、多角的な経営知識・経験が求められます。

【収入】
一般に高収入が期待できますが、投資先の成果によっても変わります。投資先の成果が上がるかは、投資先の選定や個人のやり方・頑張り、市場の影響など、さまざまな要因が関係します。

【ワークライフバランス】
役員のような働き方を求められることが多いため、比較的多忙といえるでしょう。

年代別の転職の考え方

人によっても異なってくるのはもちろんですが、年代によって一般的に転職市場から期待されること、および転職の際の考え方を紹介します。

20代の公認会計士

監査法人で3~4年勤務すると、シニアスタッフとしてスタッフの教育や業務の取りまとめ、顧客とのやり取りを行うことを期待されるようになります。シニアスタッフとして上場企業の主査を経験すれば、監査業務全体を俯瞰できるようになり、監査業務で一人前になったといえるでしょう。シニアスタッフになってから、さらにマネージャーを目指す人もいる一方、転職を考える人も出てくるようになります。

20代であれば未経験でも、さまざまな職種に挑戦できます。自分の希望や展望をよく検討し、キャリアを選択していきましょう。

30代の公認会計士

シニアスタッフとして4~6年勤務すると、適性を認められた場合にはマネージャーに昇進します。マネージャーへの昇進は30代となるケースが多く、この時点で次のキャリアを考える人もいます。公認会計士のキャリアは高く評価されるため、30代前半であればさまざまな職種で歓迎されるでしょう。

30代後半になっても転職先は多くありますが、経験を評価される傾向が強まります。監査業務の経験だけだと評価が低くなるケースがあるため、それまでにキャリアパスを決めておきましょう。

40代の公認会計士

40代まで監査法人で勤務したあとの転職は、監査以外の経験を評価される傾向が高まるため、転職先は限定されます。とはいえ、転職先が内部監査部門や別の監査法人なら、豊富な監査経験が評価されやすいでしょう。また、税理士法人なら職種の関連性が高いため、40代でも歓迎されます。

豊富な選択肢と実現したいことを検討しよう

公認会計士が転職しやすい転職先は、豊富な選択肢があります。転職を成功させるためには、自身が転職を通して実現したいこと、および転職先の特徴を、併せて検討することが大切です。

よくある質問

公認会計士は転職しやすい?

会計のプロである公認会計士は、その知識と経験を活かし、さまざまな業界や職種に転職できます。

公認会計士の転職先の選択肢は?

税理士法人や中小の監査法人、コンサルティングファーム、事業会社の経理財務職、ベンチャー企業のCFOなど多様な選択肢があります。

公認会計士の転職を成功させるためには?

自身が転職を通して実現したいこと、および転職先の特徴を、併せて検討することが大切です。

【監修】公認会計士 福留 聡

福留聡税理士事務所代表、監査法人パートナー、MFクラウドプラチナメンバーで日米の公認会計士及び税理士資格を有し、法定監査、IPO支援、決算支援、IFRS導入支援、日米の法人の税務顧問等を行っている。本、雑誌、DVD等で約50の出版をしており、代表的な著作として『7つのステップでわかる税効果会計実務入門』がある。

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