公認会計士は、税理士登録をすることで税理士としても仕事ができます。会計士でありながら税理士の独占業務である「税務の代理」や「税務書類の作成」「税務相談」の業務を行えます。本記事では、公認会計士が税理士登録をするためのプロセスから、申請書類、費用、メリットまでを詳しく解説していきます。
目次
公認会計士が税理士登録するためのプロセス
公認会計士が税理士登録をするためのプロセスを見ていきましょう。
税理士登録までの流れ
公認会計士の税理士登録までの流れは以下のとおりです。
- 申請書類の提出(税理士事務所を設けようとする地区の税理士会宛)
- 面接を含む審査
- 不足書類があった場合は、その書類の提出
- 問題がなければ登録通知がはがきで届く
- 税理士証票・バッジの交付式を経て税理士登録完了
申請書類の準備は、役所などさまざまなところから書類を取り寄せる必要があるため、2~3週間はみておいたほうがよいでしょう。申請書類の準備を開始してから税理士登録完了までは、約3ヵ月間かかります。仮に4月に会計事務所を開業しようとする場合は、1月の初旬には準備を開始する必要があります。
公認会計士は、以前は税理士試験も免除され、無条件で税理士登録ができました。しかし、法律が改正され、平成29年4月1日以降の公認会計士試験合格者は、財務省令で定める税法に関する研修を実務補修で修了した場合のみ、税理士登録できることとなっています。
税理士登録時の面接とは
申請書類を提出すると、面接実施日を知らせるはがきが税理士会から届きます。1時間ほどの面接で聞かれる内容は、主に以下になります。
- 登録の動機
- これまでの業務経験
- これからどのような仕事を行うのか、したいのか
面接は、登録のための確認の意味合いが強く、よほどのことがない限り落とされることはありません。聞かれたことに対して、正確に、正直に答えれば問題はないでしょう。
公認会計士の税理士登録に必要な書類とは
公認会計士の税理士登録に必要な書類をご紹介します。
申請者全員に必要な書類
申請者全員が提出する必要がある書類は以下のとおりです。
書類名 | 内容 |
---|---|
税理士登録申請書 | 合計5通。用紙は税理士会(のホームページ)から |
登録免許税領収証書 | 6万円。銀行・郵便局で支払いをして受け取る |
登録手数料 | 5万円。書類提出時に現金、または郵便振込などで支払う |
写真 | 3枚。税理士証票にも使われるためきちんとしたものを |
住民票の写し | 世帯全員分。発行日から3ヵ月以内で、本籍地の記載があり、マイナンバーの記載のないもの |
身分証明書 | 成年被後見人などに該当しないことの証明。発行から3ヵ月以内のものを本籍地の市区町村で |
資格を証する書面 | 公認会計士の場合は登録証明書の原本 |
履歴書 | 日税連所定の様式 |
誓約書 | 日税連所定の様式 |
確定申告書のコピーまたは住民税の課税証明書 | 直近2年分 |
はがき | 宛先に自分の住所・氏名を記入 |
開業税理士、および登録と同時に新たに税理士法人を設立する場合に必要な書類
税理士の登録区分には、以下の3つがあります。
- 開業税理士 ……自ら税理士事務所を設置する
- 社員税理士 ……税理士法人の業務執行者
- 所属税理士 ……税理士事務所・税理士法人の補助者
このうち開業税理士、および登録と同時に新たな税理士法人を設立し、その社員税理士となる場合には、以下の書類が必要です。
税理士(法人)事務所の設置に関する書類 | 建物の賃貸借契約書のコピー、建物所有者の税理士事務所設置同意書、間取図など |
税理士事務所・税理士法人の所属税理士となる場合に必要な書類
税理士事務所・税理士法人の所属税理士となる場合には以下の書類が必要です。
所属税理士同意書 | 税理士事務所・税理士法人の代表者が、申請者を所属税理士とすることに同意する書類 |
公認会計士の税理士登録にかかる費用とは
公認会計士の税理士登録にかかる費用をご紹介します。費用には、全国共通のものと各地域の税理士会に支払うものとがあります。
【全国共通のもの】
登録免許税 | 6万円 |
登録手数料 | 5万円 |
【各地域の税理士会に支払うもの】
税理士会の入会金 | 4万円程度 |
税理士会の会館建設費 | 2万円程度 |
税理士制度発展募金 | 1万円程度 |
登録研修時テキスト代など | 1万円程度 |
登録研修時テキスト代など | 1万円程度 |
各税理士会協同組合連合会費用など | 数千円 |
税務署内税理士名札代 | 実費 |
※税理士会により多少の違いがあります。
上記のとおり、税理士登録時には約20万円ほどかかります。そのほかに、税理士登録すれば以下のとおり、毎年の年会費がかかります。
税理士会年会費 | 8万円程度 |
税理士会支部年会費 | 3.6~6万円 |
※税理士会により多少の違いがあります。
公認会計士が税理士登録をするメリット
ここからは、公認会計士が税理士登録をするメリットを解説します。
サービスの幅が広がる
公認会計士が独立開業にあたって税理士登録をすれば、まず提供できるサービスの幅が広がります。公認会計士の独占業務である監査業務は、顧客が上場企業中心のため、個人の公認会計士事務所ではなかなか受注できません。ところが、税理士登録をすれば税理士の独占業務である「税務の代理」「税務書類の作成」「税務相談」など、一連の税務サービスを提供できることになります。
個人の公認会計士事務所では、顧客は中小企業や個人事業主が中心になりますが、税理士の資格があればそれらの顧客に対し、会計と税務の両面からサポートできるようになります。
税務業務をフックにできる
公認会計士である以上、独立開業したら税務より、「財務」や「会計」「M&A」「IPO」「資金調達」「事業再生」などに関わるコンサルティング業務を行いたいと思う方は多いでしょう。実際、コンサルティング業務は税務業務より、報酬も比較的高額です。しかし、最初からコンサルティング業務を受注するのは簡単ではありません。コンサルティング業務受注のためには、公認会計士としての「信用」が重要だからです。
税理士登録をすれば、最初は税務業務で、中小企業を中心とした新規顧客を比較的容易に獲得できます。そして顧問となり中長期的に関係を構築していけば、顧客からの信用も得られるでしょう。十分な信用が得られてから、タイミングをみて提案を行えば、コンサルティング業務へのアップセルやクロスセルが狙えます。
このように税務業務を、コンサルティング業務へのフックにできるのも、公認会計士が税理士登録をする大きなメリットです。
公認会計士資格を持つ税理士として活躍しよう
公認会計士が税理士登録をすれば、登録費用や年会費はかかるものの、提供サービスの幅が広がり、さらには税務業務をコンサルティング業務へのフックにできるというメリットがあります。「公認会計士資格を持つ税理士」としてご活躍してはいかがでしょうか。ただし税理士登録は、多数の申請書類を準備しなければなりません。漏れのないよう、慎重に進めましょう。
よくある質問
公認会計士が税理士登録する流れは?
申請書類の提出 → 面接・審査 → 税理士証票の交付式を経て登録完了、の流れです。
税理士登録時の面接では何を聞かれる?
「登録の動機」「これまでの業務経験」「これからしたい仕事の内容」などで、よほどのことがない限り面接では落とされません。
税理士登録でかかる費用は?
登録免許税6万円、登録手数料5万円、税理士会の入会金4万円程度、税理士会の会館建設費2万円程度などで、合計で約20万円がかかります。