コロナ禍で評価を上げた税理士の特徴!今後求められることとは。

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コロナ禍で評価を上げた税理士の特徴!今後求められることとは。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの職業でさまざまな影響がありました。税理士業界も例外ではなく、多くの変化があったと思われます。そんな中、そのような変化にうまく対応した税理士が、顧問先からの信頼を獲得したことも事実です。では、そのような税理士の特徴や今後求められることはどんなことでしょうか。本記事で詳しく解説していきます。

コロナが税理士業界に与えた影響

国内外の事業者に対して、計り知れないほどの影響を及ぼした新型コロナウイルス感染症ですが、税理士業界においても下図のような変化をもたらしました。
 

 
コロナ禍によって、税理士事務所内部の労働環境を整備する必要性が急速に高まりました。また、経営者にとっての最も身近な相談相手として、クライアントに対する迅速なサポートを求められたことが大きな特徴といえます。

倒産による取引先の減少

帝国データバンクによると、新型コロナウイルス感染症の影響で倒産した法人や個人事業主は全国で4,103件(2022年9月21日16時時点)あり、今後も新型コロナウイルスに関連した倒産件数の増加が見込まれます。
参考:「新型コロナウイルス関連倒産」動向調査|株式会社帝国データバンク
 
「コロナ倒産」によって中小企業や個人事業主が減少すれば、税理士にとっては顧客を失うリスクも拡大するため、全国的な倒産件数の増加は決して看過できる問題ではありません。

特に、税理士登録数が毎年増加する一方で、以前から全国の中小企業や個人事業主の数は減り続けています。コロナ禍によって今後さらに事業者数が減少すれば、税理士業界の競争もますます激化するでしょう。

支援制度への対応が増加

新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け、業績悪化に苦しむ事業者を救済するために、給付金や補助金、助成金、融資制度などさまざまな支援策が新設・拡充されました。

すべての手続きを税理士がサポートする必要はありませんが、制度の多くは新型コロナウイルスによって打撃を受けた事業者を対象としていたため、売上の減少が要件となるケースが大半でした。顧問先の業績を理解する税理士が、率先して適用要件と照合する必要があり、結果的に申請手続きのサポートを行う業務が大幅に増加することとなりました。

IT活用の加速

新型コロナウイルスの感染拡大による行動制限が実施され、事業者の多くはペーパーレス化やテレワーク導入などの対応に追われました。税理士業界についても例外ではなく、職員のリモートワーク化や巡回監査業務のオンライン化などの対応が必要となり、クラウドサービスやグループウェア、オンラインストレージなどのITツールの導入が加速しました。

日本税理士会連合会の会長も、コロナ禍によってデジタル化の必要性がより一層高まったことに言及しています。テレワークの推進や電子申告を活用した業務の簡素化や効率化、ペーパーレス化への対応が急務であるとコメントしています。
参考:新時代における税理士業務について(会長コメント)|日本税理士会連合会
 
また、コロナ禍をきっかけとした「ビジネス環境の見直し」については、多くの業界で行われています。その主たる手段としてIT活用に注力する事業者も多く、バックオフィス業務に対するデジタル化のニーズも着実に高まっていると考えられます。

コロナによって、税理士に求められた変化

コロナ禍による市場環境の変化については、税理士にとって必ずしも「脅威」であるとは限りません。

それらの変化に柔軟に対応し、「機会」へと転換することに成功した税理士については、クライアントからの信頼獲得や事務所の収益拡大へとつなげることも可能です。一般的には下図のような対策にスムーズに取り組むことで、コロナ禍に適応した税理士として活路を見出しやすくなります。
 

 

新たな営業手法の模索

コロナ禍によって大人数の会合や交流会が大幅に減少し、これまで対面での営業活動で集客を行っていた税理士は営業手法の見直しを強いられました。同様に顧問先の経営者や金融機関、保険会社などの担当者とのコミュニケーションについてもオンライン化が進み、既存の紹介ルートが弱まってしまった事務所も多いようです。そのような状況下では、従来の対面営業や紹介ルートに依存するのではなく、Web集客など新たな営業手法を模索することが重要です。

高齢化が進む税理士業界でもWebマーケティングの波は少しずつ浸透しており、「SNS」や「動画配信」「ウェビナー」「リスティング広告」などを活用して営業活動に取り組む税理士も増加しています。

また、コロナ禍によってクライアント側もオンライン上で税理士を探す機会が着実に増加しているため、税理士はそれらのニーズを汲み取るための適切な営業手法を習得しなければなりません。

IT技術の導入

コロナ禍での行動制限によるリモートワークの導入や、オンラインでの業務機会の増加で、税理士事務所においてもIT環境の整備が求められました。事務所内部についてはコミュニケーションツールや進捗管理ツールを導入し、リモートワーク環境下でも「業務の見える化」やスムーズな業務遂行ができるよう、急ピッチで環境整備を行った事務所も多いようです。

また、顧問先に対してもオンライン上で巡回監査業務などを行う機会が増え、非対面のまま業務を完結できる仕組みを構築するために、クラウド型会計ソフトやオンラインストレージを活用するケースも増加しています。

提携関係の強化

以前より、顧問税理士がさまざまな業務の窓口になる事例が多く、補助金や助成金申請など、税務会計以外の業務領域について相談を受けることもありました。

コロナ禍では経営に困窮する事業者が大幅に増加し、それらの事業者を救済するためのさまざまな支援策が展開されたことで、税理士に対する相談内容も多岐にわたっています。

支援制度には社会保険労務士や中小企業診断士などの他士業や、外部のコンサルタントとの連携が必要な事例もあるため、コロナ禍での業務遂行に必要な人脈を開拓し、顧問先を多角的にサポートするためのネットワーク構築が必要です。

また、自治体ごとに独自の支援制度を設けているケースもあるため、提携する士業との間で定期的に情報交換を行うなど、クライアントにとって有益な情報にアンテナを張るよう心掛けましょう。

アフターコロナにおける税理士業務

コロナ禍によって税理士を取り巻く環境は大きく変化しており、その変化への柔軟な対応が求められています。

しかし「税理士としての専門的な知識を顧客へ提供する」という業務の本質は決して変わるものではないため、アフターコロナにおいても高付加価値なサービスを提供できるよう、下図のように事務所環境の整備に取り組みましょう。
 

 

積極的な提案

コロナ禍によって窮地に追い込まれた事業者は非常に多く、その中で融資制度の活用や納税猶予の提案、給付金や助成金申請のアドバイスなどを積極的に行った税理士については信頼を獲得できました。

一方でそれらの提案を行わず、経営状況の悪化に苦しむ顧問先に対して十分な支援ができない税理士については、経営者からの信頼を失い、最悪の場合には顧問契約の解消に至るケースもありました。

今回のコロナ禍での経験が教訓となり、今後も顧問先の危機に対して的確な解決策を提案できる税理士が求められるため、税理士にとっては専門分野以外でのサポートを必要とされる機会が増加すると予測されます。

求められることは基本的には変わらない

新型コロナウイルス感染症による市場環境の変化に伴い、税理士が携わるべき業務領域は着実に拡大しています。ただし、それらの環境変化への適応が必要である一方で、アフターコロナにおいても税理士に求められる業務の本質は決して変わらないと考えられます。

税理士登録者数が毎年増加する環境下においては、税理士法で定められた独占業務に留まらず、高い専門性やコンサルティングスキルを発揮し、高付加価値業務に注力して差別化を図ることが必要不可欠です。

そのためにはAIやITツールなどを積極的に活用し、事務所全体における業務効率化への取り組みが欠かせません。仕訳入力などの定型業務や単純作業をテクノロジーに任せることで、税理士は新たな業務領域に踏み出すためのリソースを確保しましょう。

オンラインとリアルのバランス

コロナ禍によって急速に普及した「オンライン化」や「非対面化」は、業務効率化などのメリットが期待されている一方で、対面形式によるオフラインでのコミュニケーションに比べて信頼関係を構築しづらいなどのデメリットがあります。

アフターコロナでは「オンライン」と「リアル」のいずれか一方に依存するのではなく、業務内容やクライアントごとの適切なバランスによる使い分けが欠かせません。一般的な税理士事務所ではオフラインによる業務の比重が大きいため、業務の一部に「オンライン」の導入を検討することをおすすめします。

たとえば「Web集客」や「オンライン面談」によって営業活動や顧客対応の効率化が図れるため、オンライン化による集客効果や顧客満足度の変化に注意しつつ、導入を推進することも選択肢となります。

また、リモートワークを導入することで、事務所内部の業務効率化やコスト削減だけでなく、労働環境の改善によって優秀な人材の確保も期待できます。ただしリモートワーク導入にあたっては、あらかじめハード面とソフト面の両方の観点から然るべき環境整備を行う必要があるためご注意ください。

コロナに柔軟に対応して、生き残る税理士になろう

新型コロナウイルス感染症は税理士業界にも確実に影響を及ぼしており、そのような環境の変化に適応し、柔軟に対応できる税理士ほど評価を上げる傾向にあります。コロナ禍で生じた市場環境や顧客ニーズの変化をしっかりと汲み取り、アフターコロナを見据えて適切な対策を講じることが必要不可欠です。

オンラインとリアルのバランスに注意しながら、厳しい環境下でも自らのスキルを活かして活躍し続けられる税理士を目指しましょう。

よくある質問

コロナ禍が税理士業界に与える影響は?

コロナ禍によって倒産する事業者が増加しており、税理士としては顧問先を失うリスクが拡大しています。またさまざまな支援制度に関するサポートや、オンラインによる業務遂行への対応などが求められています。

コロナ禍で求められる変化とは?

オフラインでの営業活動だけでなく、ホームページやSNSなどのWeb集客に取り組むなど、新たな営業手法へのシフトが必要でしょう。また、オンライン化の流れに対応するために、IT環境の整備も求められます。

アフターコロナへの対応方法は?

コロナ禍で税理士に対するニーズは着実に広がっています。AIやITツールを活用し、既存業務の枠を超えた高付加価値業務に注力できる体制を整備することが重要です。また、「オンライン」と「リアル」の使い分けも必要になりそうです。

【監修】税理士・中小企業診断士 服部 大

2020年2月、30歳のときに名古屋市内にて税理士事務所を開業。
平均年齢が60歳を超える税理士業界の数少ない若手税理士として、顧問先の会計や税務だけでなく、創業融資やクラウド会計導入支援、補助金申請など、若手経営者を幅広く支援できるように奮闘中。
執筆や監修業務も承っており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えられる専門家を志している。

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